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life of "love the life"

都市とデザインと : 丹波口・角屋

5/16。『島原大門』をくぐってしばらく直進。3つめの角を左折すると、破格に広い間口を持った建物が現れる。格子に覆われたそのファサードは圧巻だ。こちらが『角屋』(すみや)。1500年代末創業の揚屋。現在の建物はその遺構で、美術館として公開されている。揚屋とは今で言う料亭のこと。中でも『角屋』は特別高級な文化サロンだった。現在の建物は1641年に六条三筋町から移築され、その後1787にかけて増改築が施されたもの。六条三筋町に花街が出来たのは1602年のことだから、部分によっては400年近い年月を経ていることが推測される。

上の写真は通りの南側から見た店構え(こちらは通りの北側から見たところ)。学生が集合しているところがかつての正面入口で、写真のさらに左側に美術館の入口がある。以下、写真はクリックで拡大。

こちらは正面入口を敷地内から見返したところ。石畳を右(写真では左の方)へ進むと玄関が現れる。上の写真は玄関から石畳を見返したところ。べんがらの赤が目に鮮やか。正面入口の真向かいには運営用の内玄関。

本来なら豪華絢爛な座敷の数々を筆頭に上げるべきところかもしれないが、個人的にそれら以上の魅力を覚えたのは内玄関を抜けてすぐ(上の写真)に登場する巨大な台所と配膳場。商業建築の迫力を存分に味わえる空間だった。中でも印象深いのが立花を頂いた飾りかまど。天井からいくつか吊るされた「八方」と呼ばれる照明器具も特徴的。天窓を含め開口部が多く設けられており、明るい作業場となっている。こちらはずらりと並んだおくどさん(かまど)。

上の写真が台所全景。内玄関の右側は板の間を挟んで配膳場がひろがっている(写真右端が帳場)。こちらは板の間からおくどさんを見返したところ。こちらは奥から見た配膳場と台所の全景。

客用の玄関を正面に進むと左手に中庭、右手に上の写真の座敷がある。一室に様々なデザインの格子が用いられた様子が面白い。床の間の掛け軸は井上士朗『不尽の山』。

中庭の手前を左へ進むと大座敷に至る(上の写真)。こちらは座敷から見える庭。臥龍松を中心に茶室などの離れがいくつか点在している。

玄関脇の階段を2階へと上がると、有名な「扇の間」「青貝の間」を含む6つの座敷がある。残念ながらこちらは撮影不可。とは言え、装飾物のコンディションからすると、間近に拝見できただけでも十分にありがたいことだ。ご高齢のガイド氏が揚屋と遊郭の違いを何度も繰り返して江戸の吉原との格式の違いを力説される様子も面白かった。なんとも京都らしいではないか。

角屋(Wikipedia)
角屋保存会

August 10, 2010 8:00 PM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 丹波口・島原大門

5/16。『長江家住宅』を見学後、昼食を摂ってから京都市街を移動。堀川通を横切り五条通を渡って花屋町通を西へ。壬生川通との交差点を過ぎて道なりに少し歩くと花街「島原」(しまばら/嶋原とも書く)。のエリアに入る。

入口の大門と立派な見返り柳に思わず感動した(写真はクリックで拡大)。東京では落語で聞いたことしかなかった光景を、京都で目にすることができるとは。

石碑案内図によると島原の遺構として現在残るのは置屋『輪違屋』(わちがいや)と揚屋『角屋』(すみや)、この大門だけのようだ。

遊女・遊郭年表(極める京)
京の花街(Wikipedia)

August 9, 2010 6:00 PM | trackbacks (0) | comments (2)

都市とデザインと : 烏丸四条・長江家住宅

5/16。荒川先生に引率していただいてインテリアデザインコースの一回生と一緒に『長江家住宅』を見学。こちらは1736年創業の呉服商で屋号を「袋家」と言う。現在の町家は1822年に建てられ、主に大正期にかけて増築や改修を経たもの。以下、写真はクリックで拡大。

場所は烏丸四条の近く。新町綾小路の交差点を下がると右手に江戸期の面影を色濃く遺した重厚な店構えが現れる。こんな風に時代から取り残されたような建物が点在するのが現代の京都市中心街の風景だ。

南棟左手の玄関をくぐると正面に土間、右側に畳敷の部屋が奥へと連なる。上の写真は手前からふたつ目の部屋(ナカノマ)から道路側の部屋(ミセノマ)を見返したところ。左にある収納家具の上は天窓になっており、室内は思いのほか明るい。続く一部屋(ダイドコ)を挟んでオクノマを見たところがこちら

一方、土間は道路側からミセニワ、ゲンカンニワ、調理器具を備えたハシリニワへと続く。上の写真はハシリニワの吹き抜けを見上げたところ。こちらの写真右はハシリニワ手前側にある井戸のまわりで、写真左は奥側にあるおくどさん(かまど)のまわり。

オクノマのさらに奥には坪庭がある。縁側から浴室と脱衣所の前を通って坪庭の右手にまわると二間続きの離れ座敷。上の写真はその奥側の部屋から坪庭を見返したところ。こちらはその道路側の部屋の内観(こちらは床の間まわりの近景)。こちらは奥側の部屋。障子の向こうには立派な蔵がある。

先程のハシリニワを抜けて洗面所や便所の脇を過ぎ、作業場の中を通ってさらに進んだところにあるのがプライベートなもうひとつの庭。これが敷地の終点となる。鰻の寝床は斯様に細長い。

ダイドコの急な階段はその上とオクノマの上にある二階へと繋がっている。こちらは二階道路側の窓からナカノマとミセノマの屋根を見たところ。軒先の一文字瓦のディテールが分かりやすい。こちらは奥の縁側に面した猫間障子(こちらの写真左が小障子を開けたところ、写真右は縁側から見た小障子のディテール)。このスタイルは珍しい関東猫間。縁側から坪庭を見下ろすと上の写真のような眺め。こちらはミセノマの上にある屋根裏部屋。ミセニワから梯子を使って上がる。屋根の「むくり」に沿ってカーブしながら低い天井が張られている。

事前に情報の全く無いまま訪れただけに、京の大店の典型がこれほど良好なコンディションで維持され、しかも現役で使用されていることに心底驚かされた。それでいて造作は内外ともに簡素そのもの。この衒いの無さがこそが美しく、さらに感動を深める。商い場の原点を訪ねにまたぜひお伺いしたい。

京町家(Wikipedia)

August 5, 2010 7:00 PM | trackbacks (0) | comments (2)

都市とデザインと : 表参道・根津美術館

5/1。竹橋から表参道へ移動。根津美術館『国宝燕子花図屏風 琳派コレクション一挙公開』。2009年の新装開館以来、訪ねるのはこの日が初めて。建築デザインを手掛けたのは隈研吾建築都市設計事務所。以下、写真はクリックで拡大。

表参道突き当たりの外観は一瞬あれっ?と思うくらいに仮設倉庫風。しかし門を抜けた後、アプローチからの光景は見事だ。軒下のディテールのミニマルなこと。エントランス手前から見ても建物自体はやはり仮設倉庫っぽいが、薄っぺらい屋根を支える鉄骨柱まわりのラフな納まりを眺めるうちに、これは数寄屋なんだな、と納得。

竹集成材と砂岩、ガラスと鉄で出来たインテリアには、隈建築ならではの質感の高さと軽快さが存分に発揮されている。上の写真は1Fホールから展示室の方を見たところ。こちらは展示室手前からミュージアムショップの方を見たところ。こちらの写真左はミュージアムショップ手前の空間。その上階にあるラウンジ(先の写真右)には、ロゴデザインから着想したと思われる特徴的なかたちのベンチが並ぶ。これも竹集成材。

南東側の軒下をくぐって庭園へ。上の写真は庭先から振り返ったところ。この控えめな佇まいが建物を最も魅力的に見せる。こちらは南東側外観の近景。こちらはB1F茶室口からの見上げ。

広大な庭園はやや鬱蒼としており良くデザインされているとは言い難いものの、都心に居ることを忘れさせる野趣がインパクト大。上の写真は展覧会に合わせて咲き誇る燕子花。その向こうの池では親亀子亀が甲羅干し。さらに奥には古びた木の小舟が一艘

本館から離れ、庭園の樹々に埋もれるような姿で建つのが『NEZU CAFE』(ネヅカフェ)。手前から見ると平屋の体裁。地形を上手く利用して、裏手の地下レベルに車寄せなどの動線を隠している。ガラス越しには溢れんばかりの緑。和紙調のシートを通して店内には木漏れ日のような光が差し込む。食器類にはさりげなくエンボスで燕子花があしらわれていた。会計やサービス機能を一手に引き受けるカウンターは席数のわりに小さい。カウンター背後の扉類も和紙調シート張りなので汚れがちょっと心配。それにしてもこの贅沢な眺めの中で快適に一服させていただけるのはありがたいことだ。運営は大変そうだけど、ぜひとも頑張ってこのスタイルを守っていただければと思う。

展覧会は思いのほかこぢんまりしてはいたが、おそらく初見の『桜下蹴鞠図』(俵屋宗達工房の作と言われる)は大きな収穫だった。一見しておおらかで優雅。その実、構成といいタッチといい、極めて厳しく洗練されている。『夏秋渓流図』(鈴木其一)と『燕子花図屏風』(尾形光琳)もそれぞれじっくりと味わうことができた。凄いコレクションだなしかし。

July 29, 2010 6:00 PM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 建築はどこにあるの? 7つのインスタレーション

5/1。朝から展覧会をはしご。先ずは東京国立近代美術館の『建築はどこにあるの? 7つのインスタレーション』へ。門をくぐるとロビー脇の庭に最初の作品が。以下、写真はクリックで拡大。

『まちあわせ』はアトリエ・ワンによるインスタレーション。竹でできた大型動物の一群が竹橋でまちあわせ。上の写真はロビーとショップのあいだから門の方を見返したところ(門側から見た写真)。楽しく軽快でチャーミングな佇まいに思わず顔がほころぶ。芝生に落ちる影も美しい。

展示室に入るとすぐに出くわすのが中村竜治氏によるインスタレーション『とうもろこし畑』。か細い紙のフレームによる構築物。爪楊枝くらいの部材が接着剤でトラス状に繋がり、100立方メートルほどの塊となる(近景1近景2)。思わず目を疑うくらいに儚げで、それゆえ逆説的に強烈な印象を放つ作品。まるでリアルとアンリアルの大断層だ。その傍らのアントチェアには2006年の作品『クマ』がちょこんと置かれていた。こちらも紙製。

この展覧会で個人的に最も心を動かされたインスタレーションが中山英之氏の『草原の大きな扉』。その手法は1/3スケールの建築模型とそのドローイングを配置しただけの至って単純なもの。プロジェクトの内容は、ふたつのちいさな建物の片方(写真1写真2)にカフェの運営機能を、もう片方(写真1写真2)にテーブルやチェアを収納し、必要に応じて周辺の草原を客席として利用するというもの。シェルターとしての建築ではないオープンな場としての非建築。微妙なスケール感が相まって、不思議に心地の良い空間を味わうことができた。

より建築的な体裁でありながら、一層微妙で曖昧なスケールを感じさせるのが鈴木了二氏によるインスタレーション『物質試行 51:DUBHOUSE』(遠景近景)。模型ともインテリアとも家具とも捉えることのできる「建築の中の建築」。研ぎ澄ました切っ先を突き付けるような端正な空間性とシャープなディテール。

建設現場で見たレーザー墨出し器から着想を得たと言う『赤縞』(写真1写真2)は、レーザーが描く無数の平行線の中を人や物体が移動することで生まれる極めつけに抽象的で変幻自在なインスタレーション。展示室入口で貸し出されるオーガンジーの切れ端を使えば、より多層的で複雑な空間が現れる。これが内藤廣氏の作品だとは実に意外。

さらに菊地宏氏による『ある部屋の一日』伊東豊雄氏による『うちのうちのうち』(写真1写真2写真3)と作品が続く。過去にもコンセプチュアルで体験的な展示手法を用いた建築展を見たことはあるが、これほど明快に新作のインスタレーションのみを揃えた展覧会に出会ったのは初めてのこと。広大なフロアに作品はたったの7つ。贅沢だ。比較的オーセンティックな美術作品を扱って来た美術館までもがいよいよ彫刻や絵画だけの入れ物ではなくなりつつあることは興味深いし、その先鋒が建築であるのも面白い。

July 27, 2010 5:00 AM | trackbacks (0) | comments (2)

都市とデザインと : 京都駅・マールブランシュカフェ

4/28。授業後、学校から京都駅へ。新幹線の発車時刻まで『マールブランシュカフェ』でひと休み。辻村久信デザイン事務所がインテリアデザインを手掛けた洋菓子店&カフェ(以下メニュー以外の写真はクリックで拡大)。

南北自由通路を八条側へとしばらく歩き、新幹線中央口のところで右折。エスカレーターを下ると近鉄名店街の入口右手のガラス越しに『マールブランシュカフェ』の客席が現れる。タイルと木材を使い分けた質感の高い壁、ぽってりと丸みを帯びた一人掛けソファが特徴的だ。エントランスは写真左手の通路を少し進んだところにある。

フロア中央にキッチンと物販カウンター。客席はそれを取り巻くように配置されている。上の写真はエントランス左側のガラス越しに見た客席。こちらは先程とは一転してスクエアなデザイン。薄く張り出したベンチシート、麻の葉のパターンを抜いたフェルト状のクッション、ファブリックに印刷を施し布団張りしたサインボードなどユニークなディテールが散りばめられている。

上の写真はフロア奥から先程の客席を見返したところ。ライティングはほぼ間接光、しかも主に下方からの照明で賄われている。テーブルの上に置かれた箱にはカトラリーやお手拭きなどがすっきりと納まっていた。

上の写真は同じ場所からエスカレーター側を見たところ。向こうに最初の写真のソファ席がある。この日いただいたのはフレンチトーストのセット。一緒に付いてきた濃茶味のラングドシャ「茶の葉」が美味しかった。赤い鱗紋の鉄瓶はこちらのオリジナル。

駅ビル施設内のカフェテリアとあって、全体に機能重視でざっくりとまとめられた空間ではあるものの、辻村デザインならではのディテールがそこかしこに散りばめられた楽しい店だった。カジュアルでいて落ち着きのある雰囲気が有り難い。今後は出張時の息抜きに大いに利用させていただこう。

マールブランシュカフェ
京都府京都市下京区東塩小路釜殿町31-1 近鉄名店街みやこみち
075-661-3808/9:00-LO20:30/無休

July 14, 2010 1:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 白川今出川・慈照寺

インテリアデザイナーたるもの、京都に来たら真っ先に詣でるべき名所旧跡と言えば慈照寺(じしょうじ/銀閣寺)に他ならない。境内にある東求堂(とうぐどう)北東の一室・同仁斎(どうじんさい)は書院造最古の現存例。つまりは我が国におけるインテリアデザインとディスプレイデザインの原点を垣間見れる場所だ。そんなわけで4/27、春の特別公開を目当てに雨の中をバスで白川今出川へ(以下写真はクリックで拡大)。

庭までのアプローチ沿いにある銀閣寺垣(ぎんかくじがき/近景)。

銀沙灘(ぎんしゃだん/近景本堂南西から本堂南東から)と東山。

観音殿(銀閣)と向月台(こうげつだい)を銀沙灘越しに見る(近景)。

東山から見た境内と京都市街。

そしてこれが東求堂(遠景近景)。残念ながら内部の撮影は不可。同仁斎の心地良い狭さと簡素さ、その付書院の窓からの眺めに思わずじーんと来た。この日のディスプレイには君台観左右帳記の写しも。こちらは裏から見た東求堂。左手に小さく見える「同仁斎」の扁額は足利義政筆とのこと。

庭木越しに見た観音殿(遠景近景)。こちらはその裏手に置かれていた屋根の杮葺(こけらぶき)の原寸カットモデル。

東山麓の斜面はうねる苔の森。素敵なテクスチャー。こういうのを「触景」と呼ぶのだろうか。

センス良く人手の掛かった庭を介してひと繋がりになる風景とインテリア。やはり本物はいいな。秋の特別公開も見に来よう。

東山慈照寺

July 6, 2010 10:00 PM | trackbacks (0) | comments (2)

都市とデザインと : 烏丸一条・虎屋菓寮 京都一条店

4/25。家事と仕事の合間に『虎屋菓寮』京都一条店まで散歩。和菓子店『とらや』の喫茶スペースとして2009年に開業。建築デザインを内藤廣建築設計事務所が手掛けている。場所は御所のすぐ西側。烏丸通りを一条通りで左折すると、広い間口に低い妻屋根を乗せた建物が現れる。

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上の写真がその外観。左側にある蔵のような棟がギャラリーで、この日は富岡鉄斎展が開かれていた。建物の下半分を覆う白い部分は漆喰ではなく凸面状の白いタイル張り。微妙にもこもこした表情は、でっかい木綿豆腐を連想させる。

一方、菓寮の棟は高さを抑えられており外観のデザインも至って控えめ。しかしその内部には思いも寄らぬ大胆で広々とした空間がひろがっていた。

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木製アーチの連続で構成されたヴォールト天井を南北端の細い鉄骨が支える様子は実に軽やか。トップライトを含む自然光と間接照明が開放感を一層引き立てる。その中に点々とアクセントを加えるコンパクトなペンダントライトは『とらや』のロゴを象ったもの。

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北側の窓は庭に面しており、軒先にも席が設えられている。新緑を眺めくつろぎつつ、抹茶グラッセと菓子のセットをいただいた。

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菓寮とは別に、烏丸通りに面した建物が物販棟として使用されている。こちらは改装ながらデザインはやはり内藤廣建築設計事務所によるもの。さすがに手堅く美しい(壁付サインの写真物販カウンターの写真)。

菓寮はラストオーダーが17:30と営業時間が短いのが残念だが、考えてみればあの空間の魅力を存分に味わうには日の光が欠かせない。アトリエに籠ってばかりいないで、たまには昼間に贅沢をしに伺おう。

虎屋菓寮 京都一条店/京都府京都市上京区広橋殿400/075-441-3113
11:00-17:30(土日祝10:00-17:30LO)/元旦を除き無休

June 16, 2010 3:00 PM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : ハナエモリ銀座店 '10年2月のディスプレイ

2/22。ギンザグラフィックギャラリーで『田中一光ポスター 1953-1979』を見た後、ハナエモリ銀座店の脇を通り掛ると、こんなウィンドウディスプレイが。

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これはまさしく。展覧会に合わせた計らいだとしたら実に粋ではないか。

April 12, 2010 3:30 AM | trackbacks (0) | comments (0)

身体と空間の芸術, 都市とデザインと : 展覧会行脚のメモ 2009年12月-2010年1月

12/11。初台・東京オペラシティアートギャラリーで『ヴェルナー・パントン展』。デジャヴと言うかなんと言うか、実に不思議な感覚にとらわれた。20年近く前から作品集で見るたび大きな刺激をもらっていた「ファンタジーランドスケープ」。本物を体験できるとなると感動で涙ぐむんじゃないかと思っていたが、いざ中に入るとまるで実家に帰ったみたいに懐かしく、すっかりリラックスしてしまった。あまりに好きで、すでに自分の一部になってしまっていたんだろうか。ビデオ映像のパントン師匠が、デザインにおいて先ず考えるのは機能、フォルムよりも重要なのは色、と語っておられたのが特に印象深い。

1/8。三菱一号館で『一丁倫敦と丸の内スタイル』。これは予想外の収穫だった。1968年に解体、2009年に復元された三菱一号館の詳細な建築的解説を中心に、3作家の写真展を絡めながら、丸の内の発展史とそこでのライフスタイルを紹介する内容。ホンマタカシ氏の作品は230万個の煉瓦を製造した中国の工場を取材したもの。神谷俊美氏の作品はこの10年間の丸の内の風景をモノクロで捉える。順路の一番最後に控えた梅佳代氏の作品は三菱一号館の復元を工事現場で支えた人々のスナップ写真。この構成はずるい。泣ける。

1/10。サントリー美術館で『清方ノスタルジア』。最終日手前の会場は着物のご婦人方で盛況。お一人でじっくり鑑賞なさっている姿が多数あった。都市部での着物ブームと日本美術ブーム、双方が定着しつつあるような。
鏑木清方は美人画があまりに有名な明治前期生まれの画家。そうした代表作もさることながら、個人的に最も関心を覚えたのは風俗画と風景画。「朝夕安居」や「明治風俗十二ヶ月」は庶民生活の描写がなんとも瑞々しい。卓越したデッサン力。「暮雲低迷」の幽玄な空気感は「松林図屏風」(等伯)を彷彿させる。三遊亭円朝の肖像、その円朝の高座に落涙する月岡芳年の肖像など、清方が明治期サブカルチャーの直中に居たことを伝える作品も興味深い。「絵をつくるに、私は一たい情に発し、趣味で育てる。絵画の本道ではないかも知れないが、私の本道はその他にない」との気概には時代を超えての共感を覚える。

1/17。両国・江戸東京博物館で『いけばな - 歴史を彩る日本の美 - 』。ややシブめの内容だが、日本のディスプレイデザインの基本を知る上では外せない。仏事の供花から書院の成立、茶花から生花の発展までを網羅。元来男のものだったいけばなが江戸時代前期以降には女郎衆の芸事として広まり、明治以降には一般女性のたしなみとなってゆく過程も興味深いものだった。初代池坊専好による大砂物の再現CGは圧巻。信じ難い贅沢さ。

1/20。青山・スパイラルで『九谷焼コネクション』。最終日に滑り込み。これは本当に見逃さなくて良かった。上出恵悟氏が伝統工芸としての九谷焼を最少限の操作によってパロディ化した陶器とインスタレーションの数々。見附正康氏といい、九谷には突出した才能が生まれる土壌がありそうだ。

1/24。日本橋・三井記念美術館で『柴田是真の漆×絵』。柴田は江戸末期から明治にかけて活動した超絶技巧の漆芸家。軽妙で洒落っ気のある作風、抜群のグラフィックセンスに大いに刺激を受けた。多くの作品は米国キャサリン&トーマス・エドソン夫妻のコレクションから。図録にあるお二人の言葉「是真という人物の中に、私たちが時間をかけてこたえていきたくなる人間性を発見したのです。」との言葉は感動的だ。

同日、銀座・松屋銀座デザインギャラリーで『碗一式』。蒼々たるデザイナー師匠方が飛騨の春慶塗の手法による汁碗、箸、盆のデザインに挑む。小さなスペースながら破格の見応え。個人的に最も欲しいと思ったのは川上元美氏の一式だった。なんと簡潔で瑞々しく張りのあるフォルム。

1/29。六本木・サントリー美術館で『おもてなしの美 宴のしつらい』。サントリーの所蔵品から日本のパーティーグッズを集め、いつもよりゆったりとフロアを使いながらの展示。
個人的ハイライトは「月次風俗図屏風」(1600年代)。六曲一隻を上下二段の画面に分け、京都庶民の12ヶ月の風俗を描いたもの。群衆の生き生きとした様子のみならず、その装束や持ち物、当時の京町家の様子も克明に極めて克明に描かれている。さしづめ「熈代勝覧」の京都版。楽しい。平安セレブの新年会のセッティングを詳細に記録した「類聚雑要抄指図巻」の実物を見ることができたことも商売柄大変有り難かった。江戸末期の料理屋の様子を透視図的に描いた広重の「江戸高名会亭尽」の存在をこれまで知らなかったのは何とも迂闊。勉強しとかないと。
他の工芸品にも「縞蒔絵徳利」、「牡丹沈金八角食籠」、「吉原風俗蒔絵堤重」、「銀象嵌花丸文手燭」などなど、デザイン的に見応えのあるものが多い。「色絵春草文汁注」他で乾山の魅力も再確認。根来の漆器類の力強いフォルム、光悦の「赤楽茶碗 銘 熟柿」も素晴らしかった。

1/30。勝どき・btfで『鏡の髪型 清水久和』。平面的な作品かと思いきや実物は物体としての存在感が凄い。素朴なフォルムのインパクト。バリエーションが一気に増えたことが作品性を一段と強化する。もはや登録商標。路線継続に期待。

同日、銀座.松屋デザインギャラリーで『重と箱 見立てる器』。『碗一式』に続いて8名のデザイナー師匠方による飛騨春慶漆器の展覧会。
今回個人的に最も印象的だったのは岩崎信治氏による菱形の重。春慶の特徴を最大限に引き出す鋭角的フォルム。深沢直人氏の手提げ仕切り重も素晴らしい。簡潔なフォルムから匂い立つ趣味の良さ。川上元美氏の作品は鼓の形態を持つ弁当箱とへぎ目を生かした縁高重。前回のミニマリズムから一転、具体的な景色を感じさせる。恐るべき懐の深さ。数寄者だ。

1/31。上野・東京国立博物館で『国宝 土偶展』。土偶ってこんな感じ?という固定概念がものの見事に崩壊した。時代によってポーズや装束などに一定のフォーマットがあるにはあるが、造形そのものは皆さん自由過ぎ。
特に印象的だったのは「縄文のビーナス」と通称される品。フォルムといい文様といい、極めて簡潔で力強い。「立像土偶」や「ハート型土偶」などはシビれるファッショナブルさ。お洒落でカッコいい。かと思えば、同時代の土偶の仲間には腰の砕けそうな品も。アヒルとカメのハイブリッドのような「動物型土製品」など全く訳が分からない。アホアホかつシュール。「釣手土器」に付いたコウモリの装飾のポルコロッソぶり、「人と頭型土製品」の深遠な表情も忘れ難い。

March 2, 2010 12:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 埼玉/熊谷・Public Diner

昨年12/6。日曜の昼前にウヱハラ先生のメガーヌ号で埼玉県熊谷市に到着。『Public Diner』(パブリックダイナー)を視察した。2008年10月オープンのレストラン&カフェ。建築・インテリアデザインをKata(形見一郎さん)が手掛けている。駅からさいたま博通りを北進し、雀宮交差点を左折。ほどなく左手にもみの木のあるテラスと大きな片流れ屋根を乗せた米杉板張りの建物が現れる。

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上の写真は敷地北西角辺りから見た建物全景。こちらは敷地南西角辺りから見たところ。

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上の写真は通りに面した北側正面。敷地には柵の類いがほとんど無いに等しい。店とか建築とか言うよりも、まるで広場とその延長であるかのような潔い在り様が新鮮だ。こちらは西側の駐車場越しに見たところ。北棟と南棟を中央に張り出したテラスがつなぐ構成となっているのがわかる。テラスの下に見える白いサッシの部分がエントランス。入るとすぐに会計台を兼ねたキッチンカウンターがあり、その奥にキッチンがある。人通りの少ない場所であるにもかかわらず駐車場はほぼ満杯。店内は思わず目を見張る盛況振りだった。

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内部には100を越える席数を擁する。北棟と南棟にひとつずつの大テーブルを核とするレイアウト。禁煙席となった南棟の西側には半地階のエリアがあり、その上に被さった中二階席から二階テラスへと客席は立体的にひろがる。上の写真は二階テラスへの出口から見下ろした南棟客席全景。写真左上と右上に見える白いでっぱりの中にはエアコンが納まっている。こちらは中二階からの階段見上げ(左)と南棟東側のボックス席とピンクの壁(右)。こちらは中二階席のチェアのディテール。形見デザインならではの様々な要素が、大きなフロアにゆったりと配された様子はなんとも壮観だ。

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上の写真左は建物東側のWCへの通路途中にあるたばこ自販機、携帯電話充電コーナー、ピンナップボード。右はWCの手洗器部分。こちらはその反対側を見たところ。北側に面した窓とおむつ交換台とベンチ。

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上の写真は中二階席からキッチンを見下ろしたところ。たくさんの若いスタッフの方々が生き生きと仕事をなさっている眺めは楽しく、ここが郊外都市の外れであることをすっかり忘れさせる。

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が、テラス席からの眺めはやはり郊外そのもの。このギャップはかえって面白い。上の写真は二階テラス中央から北西方向を見たところ。ショートケーキ住宅群の左手にひろがる空き地のような場所には公園の表示が掲げられていた。スポーツ活動などに利用されている模様。なるほど。こちらは西側から見た二階テラス全景(左)と中二階テラス(右)。

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上の写真はこの日いただいた食事。どれもボリュームたっぷりでなかなかいける。デザートも期待以上にしっかりしたものだった。食器類はイケア。

この店ではそのどこに居てもテラスを介して外部との繋りが意識される。フロアを埋める幅広い客層は全くもってファミレス同様。日常生活を都市空間へ解放する装置としての機能と性能は『バワリーキッチン』や『ロータス』や『くろひつじ』などの形見作品から継承され、ここに来て数倍強化・洗練されている。感動的だ。

Public Diner(パブリックダイナー)/埼玉県熊谷市肥塚4-29
048-580-7316/11:00-1:00/無休

January 6, 2010 3:00 PM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 展覧会行脚のメモ 2009年11月

11/4。六本木・AXISギャラリーで『三保谷硝子店 101年目の試作展』。イシマル、倉俣史朗との協同などで有名な三保谷硝子店と16名のクリエーターによるガラスの試作展。個人的に最も印象深かったのは八木保氏によるルーチョ・フォンタナへのオマージュ。単純明解で力強く、群を抜いて美しい造形。しかしフォンタナの名をキャプションにはっきりと記載していなかったことが気になる。

同日、乃木坂・ギャラリー間で『隈研吾展 Kengo Kuma Studies in Organic』。夥しい数のスタディ模型が会場を埋める様子に圧倒された。興味深く拝見したのはグラナダのパフォーミングアーツセンターと浅草文化観光センターの模型。特に浅草はこれまでCGから想像していたイメージよりもずいぶん楽しげな空間が期待できそうに思われた。地元住民としては少し安心。

11/6。恵比寿・山種美術館で『速水御舟 - 日本画への挑戦 - 』。速水御舟の実作をまとめて見たのは初めて。日曜美術館で取り上げられていたような、超絶技巧の画家ではないことは一見して明らか。それでもいくつかの突出した作品は聞きしに勝る凄みを感じさせる。マットゴールドの地に厚塗りの椿を描いた『名樹散椿』の迫力。特に蕾の描写の生々しいこと。『炎舞』の深く微細なグラデーションには目を奪われた。それらに勝るとも劣らない強い印象を残したのが別室にあった『墨牡丹』と『白芙蓉』。花の重さまで感じられるくらいの生命感漲る墨画彩色。これもまた御舟のひとつの到達点。山種美術館はまだ新しい建物に運営が慣れていないせいもあってか、応対に手抜きや刺々しさが目立つ。この様子だと休日はますます辛いだろう。頑張っていただきたい。

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11/28。横浜本牧・三渓園内三渓記念館で『原三渓と美術』。三渓園は三方を高台に囲まれた大池を中心に、様々な古建築を移築点在させた庭園。人工の鄙なる風景はいかにも茶人好みの美しさだった。外から覗くだけではあったものの、京都二条城の楼閣を移築した『聴秋閣』の内部(写真1234)を見ることができたのは幸運だ。遊び心に溢れた小さな宝石のような建物。持って帰りたかったなあ。また、紀州徳川家の別荘であった『臨春閣』(こちらも外から覗くだけ)の簡素美も見事なもの。特に水屋まわりのコンポジションにはシビれた。展覧会での作品は以前に別のイベントで拝見したことのあるものが多かったが、コレクター・三渓の一貫した美意識の伝わる内容が印象的だった。例年、夏には『臨春閣』と『白雲邸』に入ることが出来るらしい。また行かねば。

December 23, 2009 10:00 PM | trackbacks (0) | comments (4)

身体と空間の芸術, 都市とデザインと : 展覧会行脚のメモ 2009年10月

10/2。汐留、アド・ミュージアム東京で『特別企画 広告跳躍時代 昭和の広告展3 - 1970年代・80年代 - 』。この施設へ伺うのは初めて。近藤康夫氏による総アルミのインテリアデザインはカッコ良かったが、まともにコンテンツを見せようとする気がほとんど無さそうな展示手法には萎えた。後半に気を取り直し、三木鶏郎先生のCMソングをたっぷり聞いて退散。キリンレモンも牛乳石鹸も素晴らしい名曲だ。

10/9。西高島平、板橋区立美術館で『一蝶リターンズ - 元禄風流子 英一蝶の画業 - 』。こちらも伺うのは初めて。こぢんまりした簡素な美術館で、展示手法はなんだか学園祭っぽく素朴な印象。
英一蝶の作品をまとめて見るのも初。個人的に最も心惹かれたのは意外にも『雨宿り図屏風』だった。屋敷の門前で様々な身分の人物達が雨宿りする様子が描かれた四曲の屏風。なんでまたこれを?と思うくらいに地味なモティーフだが、小技とユーモアと庶民への愛情に溢れた画面。いつまでも眺めていたくなる。『屋根葺図』、『投扇図』、『布晒舞図』、『不動図』の絶妙なストップモーション。『蟻通図』、『張果老・松鷺・柳烏図』、『社人図』の複数の軸によるコマ割的構成。江戸前期にしてすでにこんなダイナミックな表現があったとは。

10/13。下馬、tocoro cafeで『tocoro展 - 岡田直人 - 2009』。器を拝見しつつジェラートと冷えラテをいただく。tocoro cafeは3年ぶりの訪問。小泉誠氏デザインのインテリアは相変わらず居心地良く、エスプレッソ系ドリンクも美味い。岡田氏の器をまとめて拝見したのは初めて。独特の質感をもつ白釉に、ゆる過ぎずシャープ過ぎない薄手のフォルム。カフェで使用されている器の口触りの良さは実に忘れ難い。

10/15。慶應義塾大学三田キャンパスで『谷口吉郎とノグチルーム』谷口吉郎による慶応義塾大学に関する建築作品の写真展示と『ノグチルーム』の一般公開。写真はパラパラとお茶を濁す程度。『ノグチルーム』は谷口設計の第二研究室談話室で、インテリアデザインをイサム・ノグチが担当している。2004年に建物の一部ごと新しい南館ルーフテラスに移設された。
オリジナルの『ノグチルーム』が出来たのは1951年。戦後のデザイン再興期に美術作家によるインスタレーションとしての室内空間がいきなり登場したわけだ。以来1990年頃まで、日本のインテリアデザインは建築よりもむしろ現代美術と親密に同期しながら展開してゆく。私たちにとってここを訪れることはほとんど巡礼みたいなもの。午後から夕方にかけての光の中で見るノグチルームはあまりにも素晴らしかった。
造作や家具は想像よりもこぢんまりしており、互いに寄り添うような距離で配置されている。あたりまえの生活感覚と芸術が何の違和感も無く混交する室内。この場所を原点に、歩みを始めることのできた日本のインテリアデザイナーは本当に幸運だった。ノグチルーム移設にあたっての設計を手掛けたのは隈研吾氏。元の間仕切りや天井の代わりに設えた白く透けた布はやはり今ひとつ開放的に過ぎる。そのまんま移築していただきたかったなあ。

10/28。紀尾井町、ニューオータニ美術館で『肉筆浮世絵と江戸のファッション 町人女性の美意識』。江戸初期の美人を描いた屏風『舞踊図』に始まって、寛文小袖以降のハイファッションを簡潔に見せる内容。時代とともに緻密さを増し、グラフィカルに洗練されてゆく文様が、元禄を頂点にミニマルな空間的表現へと変遷してゆくのが面白い。古いものは300年ものの小袖や振袖を良好なコンディションで鑑賞。大変勉強になった。

10/30。上野、国立博物館『皇室の名宝 日本美の華 1期 永徳、若沖から大観、松園まで』午後遅くに到着すると、待ち時間こそなかったものの、中はやはりぎゅう詰め。第一会場を1時間半、第二会場を30分ほどでなんとか周り切った。
冒頭、狩野永徳常信の『唐獅子図屏風』の巨大さにいきなり度肝を抜かれた。そりゃ殿様も大喜びだろうさ、と納得。そして圧巻のハイライトは伊藤若冲『動植綵絵』全三十幅。江戸前期のシュールレアリスティックな画。驚異的細密さと画力、そしてボリューム。これが実質的デビュー作なのだから恐れ入る。現代の画家が一生かけてもこれだけの仕事を成し遂げる事は難しいんじゃないか。これだけでもうほぼお腹いっぱい。直後に見た酒井抱一の『花鳥十二ヶ月図』はまさに清涼剤の爽やかさだった。長沢芦雪『唐子睡眠図』、葛飾北斎『西瓜図』なども印象深い。
近現代の作品が並ぶ第二会場では並河靖之『七宝四季花鳥図花瓶』の凄まじい超絶技巧に驚愕。これが有線七宝とは信じ難い。上村松園『雪月花』は雅な筆致と斬新な画面構成にため息。松園作品は今後要チェック。

November 13, 2009 3:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 京都・Cao Cafe Ishikawa

10/22。京都へ日帰り出張。『Cao Cafe Ishikawa(カオカフェイシカワ)』で遅い昼食を採った。建築・インテリアデザインは辻村久信デザイン事務所

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三条を烏丸通りを越えて西へ。新町通りを越えると、左手に小さな前庭と簡潔なファサード(上の写真)を持つ妻屋根平屋の白い建物が現れる。現代の京都市街にあって、その潔くこぢんまりした佇まいはかえって印象的だ。

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場所柄当然ながら間口の狭さに比べて敷地は奥へと随分長い。上の写真は最奥のテーブル席からエントランスを見返したところ。インテリアの造作も至って簡潔そのもの。白くフラットなひと続きの壁と天井を、モルタルの床下からの間接光が照らす。店内中央にある木地の間仕切りの中にキッチンとWC、空調機器が納まっている。エントランス側にはハイカウンター席。

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上の写真左はキッチン側からテーブル席全体を見たところ。敷地の最奥は黒板塀に砂利敷きの小庭。写真右は建物南端のディテール。まわりにあまり高い建物が無いため、テーブル席は明るく開放的で、かつプライベート感の強い空間となっている。BGMが半端にアッパーでボリュームがやや大きいことを除けば、素晴らしく居心地が良い。

Cao Sodaと野菜たっぷりカレーを注文(写真左)。味は価格に対して可も無く不可も無く、と言ったところ。食後のカオチョコ(写真右)は大変美味しくいただいた。

店は2009年3月にオープンしたばかり。しかし空間的ポテンシャルは抜群だ。夜2時までの営業(2009年11月時点)とは近くの方が羨ましい限り。京都ならではの現代的な憩いの場所として末永く頑張っていただきたい。またお伺いします。

Cao Cafe Ishikawa/京都府京都市中京区三条通新町西入ル釜座町31
075-211-1814/11:00-2:00(LO1:00)/不定休

November 4, 2009 3:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

身体と空間の芸術, 都市とデザインと : 展覧会行脚のメモ 2009年9月

9/13に西新宿・OZONE、リビングデザインギャラリーで見た『山本達雄展 空間と家具の表情』についてはこちら

同日、初台・東京オペラシティアートギャラリーで『鴻池朋子展 インタートラベラー 神話と遊ぶ人』。ロック少女の美術部活的なイメージも、ここまでのスケールとクオリティに達すると爽快なことこの上ない。ほとんどテーマパークだ。寓話と偶像を散りばめた平面作品やインスタレーションは、繊細でありながら時に巨大で、妄想的でありながら時に生々しい。どっぷりと、その世界観を堪能させていただいた。

9/17。松屋銀座7Fデザインギャラリー1953で『内田繁の厨子 新しい祈りのかたち』。内田氏デザインの厨子と、6名の作家・デザイナーによる具足を見ることができた。厨子とは仏具や教典を納める箱形の家具、具足とはここでは仏教小道具のセットのこと。祈りの道具としての機能と象徴性を、極めてミニマルな形態の中に表現する手法は、まさに内田デザインの真骨頂。薄いステンレス扉の赤の発色は深く鮮やかで、心に染み入るように思われた。

9/26。21_21 DESIGN SIGHTで『TOKYO FIBER '09 SENSEWARE』。様々なクリエーターとメーカーのコラボレーションによって、ハイテク人工繊維が主素材のプロダクトを試作、提案する展示会。事前情報では『笑うクルマ』(日産デザイン本部+原デザイン研究所)が目玉として紹介されていることが多く、正直なところやや敬遠気味。しかし足を運んでみると見るべき作品が多数。実に楽しく、勉強になった。個人的には『風をはらんでふくらむテーブルクロス』(シアタープロダクツ)と『柔らかく隆起するソファ』(アントニオ・チッテリオ)、『モールディング不織布による立体マスク』(ミントデザインズ)が特に印象的。素材の持ち味を最大限に引き出しながら、さりげなくディテールにまで気の利いた作品だった。

9/27。パナソニック電工汐留ミュージアムで『建築家 坂倉準三展 モダニズムを住む - 住宅、家具、デザイン』。最終日の閉館間際に滑り込んでセーフ。坂倉準三がこれほど多くの木造住宅を手掛けていたとは全く知らなかった。コルビュジェの直弟子として学んだ経験と、日本人として身に付けたヴァナキュラーな感覚が、活動の最初期から一貫して違和感無く自然に調和している。陸屋根にもピロティにもまったく執着せず、単なるスタイルではない本質的なモダニズム建築を展開する姿勢に深く感銘を受けた。ああ不勉強が悔やまれる。

October 16, 2009 4:00 PM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 山本達雄展 空間と家具の表情

9/13。西新宿・OZONEで『山本達雄展 空間と家具の表情』。リビングデザインギャラリーが7Fの奥へ移ってからの最初のイベントとのこと。こちらへ足を運ぶのはずいぶん久しぶり。たぶん2007年の『関洋展』以来か。

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上の写真が会場全景。白い床と壁に無数の黒ぶちがシート貼りされた空間。

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その中にこれまた白地に黒ぶち模様のちいさなスツールがぽつぽつと点在する。まるでダルメシアンの子犬たちが気ままに走り回っているような光景だ。

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スツールはスチールプレートとスチールロッドによる華奢な構造にフェルトのような細かい起毛のある塗装処理を施したもの。黒ぶちの輪郭は抜かり無くぼかされている。さらに秀逸なのがそのディテール。後脚にお腹、そして尻尾(!)。抑制された張りのあるラインで「生き物っぽさ」が見事に表現されている。ほとんど凶悪と言いたくなるくらいの可愛らしさ。持って帰りたい。

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カウンターの脇には2009年のミラノサローネで発表された『バンビチェア』がふたつ並んでいた。こちらのデザインコンセプトもダルメシアンと同様。模様はさらに凝ったものとなっている。下の写真がそのディテール。

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実際に腰掛けさせていただいたところ、どちらも軽快な見た目からは意外くらいに丈夫そうだった。ますます持って帰りたい。商品化の予定を訪ねると、表面処理の耐久性を確保可能な工程を検討中のため、現在のところはまだ未定とのこと。

優れた提案性と洗練されたデザイン手法に敬服。今後が楽しみな作品だった。大胆かつ直球なインスタレーションを含め、いまのところ2009年の個人的ベスト家具展。見逃さなくてよかった。

Tatsuo Yamamoto Design Inc.(山本達雄)

October 10, 2009 4:00 PM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : Cafe Ring 銀座並木通り店

9/10。夕刻『Cafe Ring』銀座並木通り店のプレオープンに伺った。名前はカフェだがお茶やコーヒーの店ではなく、プラチナとダイヤモンドをメインに扱うジュエリー店。内外装を手掛けたのは野井成正デザイン事務所。場所はプランタン裏の並木通り沿い。隣にはワークショップ108(西野和宏氏)デザインの『蕪屋』(1994)、斜め向かいには設計事務所imaデザインの『marimekko』銀座(2009)がある。店の様子のより良く分かる写真はこちらで。

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明るいグレートーンのモザイクタイルで仕上げた内外装をサッシュレスのガラススクリーンで隔てた店構えは実に開放的だ。照明を埋め込んだボーダー状の天井造作のラインと、手前右側に2本ズラして配置された柱形ショーケースラインが縦横に連なり、店の奥行きを強調する。

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店内の動線は左右の壁沿いに置かれた楕円形のカウンターショーケースによって滑らかにかたちづくられており、そのまん中から微妙にズレた場所にふたたび柱形のショーケースが1本そそり立つように登場する。この最少限の破調の要素が、せせらぎの中に打たれた杭のように、店内の移動にゆらぎをもたらし、眺めの起点となる。

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上の写真はカウンターショーケースとその内部照明のディテール。回転可能な円いステンレスミガキのプレートは三本の柱で支えられており上下にも動かすことができる。このユニットがカウンター腰に内蔵されたハロゲンランプの光を商品へと反射する仕組み。調整にはやや手間取るかもしれないが、LEDなどでまんべんなくギラギラと照らすよりもずっと見た目に軽やかで品がある。

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細かなアクリルのディスプレイ什器やミラー什器も野井さんのデザイン。これらがまた機能的で、いい佇まいなのだ。なんたる繊細さとクオリティ。

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中央の柱形ショーケースには野井さんがデザインを手掛けたプラチナのリングが数種展示されていた。プレートを半円形に切って起こしただけのかたちが至ってシンプルで可愛らしい。野井さんもお気に入りとのことだった。

店構えから細部に至るまで、野井デザインならではの簡素の美に貫かれた快作。私たちもここまでの仕事を目指さねば。まだまだ精進。

September 30, 2009 8:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : CROSS TALK 菊竹清訓×妹島和世×西沢立衛

8/19。清澄・小山登美夫ギャラリー『建築以前・建築以後』展内のイベントとして開催された『CROSS TALK 菊竹清訓×妹島和世×西沢立衛』の簡単な覚え書き。

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菊竹:建築家にはキャリアの最初に自邸を建てる人と、後になってから立てる人が居る。/独立して最初の3年間の仕事は木造建築の改装ばかりだった。/好きなように建てたい、という思いから『スカイハウス』(自邸)へ。/九州の旧家の座敷を基にプラン。/傾斜地だったので湿気を逃がすため高床に。→風通しが良過ぎて冬はすごく寒かった。

妹島:菊竹氏を『梅林の家』へ案内した時に「すごく透明な家ですね」と言われたのが印象的。「透明であることは多様であること」とも。

西沢:近頃は「庭と室内が全く別の世界でもいい」と思っている。

菊竹:『スカイハウス』が出来て、隣の土地が売りに出されてしまった。また、庭によくゴミを捨てられた。/子供部屋を子供の寸法に合わせて小さなモジュールでつくったことは大きな失敗だった。子供部屋は大人の個室と同じようにつくれば良い。もしくは子供部屋自体無くても良い。/バスルームを小さくしたことも失敗だった。ゆっくりと過ごす上で全く合理的ではない。/キッチンを小さくしたのも失敗。料理が出来ない。/コアシステムは一般に問題が多い。家のまん中にトイレがあると、とても使い辛い。/清家清氏の自邸は水廻りが家の端にあり、かつ建具が無かった。実に合理的。/『梅林の家』は動線がひと続き。連続性が透明性に繋がる。ガラスを多く使ったからと言って必ずしも「透明」にはならない。

西沢:「軽やかさ」をテーマにしたことはない。結果的に軽くなってしまう。

妹島:「壁」を基本には考えない。軸組的に発想しているのかもしれない。

菊竹:「仮説」が立てられることが建築家の条件。「仮説」は考えて立てるものではなく、偶然にやってくるもの。/地主(九州の実家)の家には本は無い。日々の興味は「ぼーっと過ごすこと」と天気だけ。/日本の独自性があるとすれば、異質なものを改変しながら数百年かけて受け入れる能力だろう。/ヨーロッパのデザイン様式は流行っては無くなってゆく。日本人は様式を平行して持ち続ける。/50年代に「人間は土地をつくることが出来るのではないか」という仮説から様々なプロジェクトを手掛けて来た。以来ずっと同じことをやりつづけている。/「土地」の話をレム・コールハース氏にすると(『スカイハウス』来訪時)、深く共感していたようだった(コールハースはオランダ人)。「菊竹の活動はアーキグラムに近いものと考えていたが、全く違うことが分かった」とのこと。/建築はコンテンポラリーアートとは距離を置いた方が良い。

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ギャラリーでは菊竹氏による1950-70年代のスケッチや模型をいくつも見ることができた。純粋な夢と理想に溢れきらきらと輝くような作品たち。なんと言うかもう「癒し系」なのだ。氏がギャラリーの壁に直接描いたドローイングも素敵過ぎる。

今週末まで開催「建築以前・建築以後」展(August 27, 2009 / excite.ism)

September 23, 2009 2:00 PM | trackbacks (0) | comments (2)

身体と空間の芸術, 都市とデザインと : 展覧会行脚のメモ 2009年8月・2

こちらからの続き。

8/21に六本木・AXISギャラリーで見た『ナインアワーズ展 - 都市における新しい宿泊のカタチ』についてはこちら

8/24。六本木・21_21 DESIGN SIGHTで『山中俊治ディレクション「骨」展』。「生物の骨をふまえながら、工業製品の機能とかたちとの関係に改めて目を向けます」と言うコンセプトに最も深く合致した作品は、やはりニック・ヴィーシー氏の『X-RAY』シリーズと、玉屋庄兵衛氏と山中俊治氏による『骨からくり「弓曵き小早舟」』だろう。他の作品も補足の役割を十分に果たし、一貫した楽しい展覧会となっていた。「電信柱を取り上げて欲しかった」との三原昌平氏の感想は興味深い。

8/30。千葉県佐倉市・国立歴史民俗博物館の第3展示室で『百鬼夜行の世界』。展示替えのため、オリジナルとされる大徳寺真珠庵蔵の『百器夜行絵巻』(1500年代・伝土佐光信)を見ることが出来なかったのは残念。それでも室町の頃から繰り返し描かれ、時代ごとに変容した『百鬼夜行』のうち主立ったものを一同に見ることができたことは貴重だ。万物から霊性を感受し、それをユーモラスに「キャラ」化してしまう日本人の、ひとつの原点がここにある。中でも伝土佐吉光とされる絵巻の、暗雲立ちこめる妖しいエンディングには心惹かれた。

同日、同館企画展示室で『日本建築は特異なのか - 東アジアの宮殿・寺院・住宅 - 』。先ずは床面にシート貼りされた長安、ソウル、平安京の同寸配置図を眺める。似通った骨格を持ちながらも、結局のところ三者三様の様相を呈しているのが面白い。宮殿、寺院、住宅、それに大工道具についても同様だ。展示手法的にキャプションに頼り過ぎでは、とは思ったが、結局のところ「特異」なのは日本建築だけではない、と言うことは理解できた。精巧な展示物の数々の中でも平等院鳳凰堂の実物組物彩色模型は忘れ難い。表面を埋め尽くした鮮やか過ぎる文様のなんとサイケデリックなことか。

同日、佐倉市美術館で『オランダデザイン展』。ドローグの名作の数々に今では懐かしさと新鮮さの両方を覚える。歴史になったんだな。マーティン・バース『スモークチェア』は実物を初めて見た。焼け跡のエレガンス。実にクール。この展覧会の個人的ハイライトは中盤のポスター作品群だった。簡潔な平面に上位次元をするりと忍び込ませるような、巧みな表現が多く見られる。まるでパラレルワールドの覗き窓だ。終盤に展示されたリートフェルトモンドリアンらのデ・スティル関連作品も見応えがあった。

September 22, 2009 12:00 PM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : ナインアワーズ展・都市における新しい宿泊のカタチ

8/21。六本木・AXISギャラリーで『ナインアワーズ展 - 都市における新しい宿泊のカタチ』。京都市に2009年12月オープン予定のカプセルホテル『9h』のデザインプレビュー。柴田文江氏がクリエイティブディレクションとカプセルなどのプロダクトデザインを、廣村正彰氏がサインやアメニティ類のグラフィックデザインを、中村隆秋氏がインテリアデザインを担当なさるとのこと。

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上の写真が会場全景。右側にカプセルが壁に収まった状態をグラフィカルに再現し、うち5箇所にカプセルの実物が展示されていた。黒い床に大きく表示されたカプセルの位置を示す矢印と番号が、即物的で実にいい。カプセル手前の天井スリット内に整列した照明なども、おそらく実際のインテリアに即したものと思われる。

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図面を見ると、計画そのものは至ってまっとうなカプセルホテルそのものだ。2機のエレベーターを男女別にして乗降できるフロアを限定することで動線を分離し、シャワー、WCなどの設備をそれぞれ別のフロアに提供している。女性用水廻りフロアのプランが男性用と同じだとするとパウダースペースが不足する可能性が高いが、実際のところはどうなのだろうか。
細かいことはさておき、シンプルながらも質の高い共用空間がカプセルホテルにもたらされることの意味は大きい。簡潔で力強いグラフィックデザインも、大いに快適性を高めてくれるだろう。実際のところ、既存のカプセルホテルの弱点の大部分は、カプセルそのものではなくむしろ共用部分の貧弱さにあることは、泊まったことのある人なら誰しも感じているはずだ。

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上の写真はカプセルユニットの外観。優しい曲面を描くFRPの造作はコトブキが製作を担当したとのこと。こうして見ると、なんだかメタボリズム、あるいはアーキグラムが連想される。

料金は一泊4900円とのこと。場所は四条寺町を下ったところで利便性は高そうだ。チャンスがあればぜひ利用させていただこう。

September 22, 2009 9:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 展覧会行脚のメモ 2009年8月・1

8/6。乃木坂・ギャラリー間で『カンポ・バエザの建築』。スペインの建築家、アルベルト・カンポ・バエザ氏はヤギにとって古くからの心の師匠的存在。簡潔な展示にやや物足りなさは残ったものの、ノーチェックだった近作をいくつも拝見できたのは有り難い。扱う空間のサイズは大きくなっても、作風は相変わらずミニマルなまま。そこを満たす光はますます詩情を豊かにしている。

同日、赤坂見附・ニューオータニ美術館で『謎のデザイナー 小林かいちの世界』。京都の図案化・小林かいちが大正後期から昭和初期にかけてデザインした絵葉書・絵封筒を一堂に集めた展覧会。ひとつひとつの作品はほんのちいさなもの。しかし木版で制作された精緻な画面が極めて饒舌に語りかける。和洋をひとつの世界観に束ねるかいち独特のセンスは今なお斬新で、そのクールな描線には生き生きとした力が漲っている。終わってみれば見応え十二分の重厚な展覧会だった。

同日、赤坂見附・オカムラデザインスペースRで『透明なかたち』。建築家・妹島和世氏、構造家・佐々木睦朗氏、美術家・荒神明香氏によるインスタレーション。厚さ3mmの透明アクリルの曲面パネルが組み合わさって自立し、迷宮的な空間が現れる。薄い紙で出来た押し花のような造花がパネルをなぞり、時折その内側に浸透しながら、境界の存在を一層曖昧なものにしてゆく。自分自身までが幻想の中に溶けてゆくような、不可思議な感覚。

8/8。ギンザグラフィックギャラリーで『ラストショウ:細谷巖アートディレクション展』。1Fに1950年代から90年代にかけての代表的なポスター作品が、B1Fには過去の細谷氏の発言、記述に新しくビジュアルを組み合わせたパネルがずらり。2006年の『クリエイターズ』展以来久しぶりに拝見した初期のポスターは、やはり強烈だ。『Oscar Peterson Quintet』が19歳、『勅使河原蒼風展』が20歳の頃の作品。骨太とはこういうことか。B1Fの展示では1956年の日宣美展出品前夜の様子を書き留めた文が心に染みた。デザインと青春。

同日、銀座・ギャラリー小柳で『石上純也+杉本博司』。両氏の建築作品を紹介する写真と模型、ドローイングなどの展示。美術家・写真家である杉本博司氏の建築作品を初めてまとまったかたちで見ることができた。地形を読み取り宇宙と繋がるランドアート的作風と、ディテールに集中することで一点突破する作風の対比が興味深い。石上純也氏の作品については、先ずは実物を拝見しないと。

8/14。上野・東京国立博物館で『染付 - 藍が彩るアジアの器』。中国、ベトナム、朝鮮、日本の染付の歴史を概観。スペースは平成館の特別展示室第1室と2室。いつもの特別展の半分なので余裕で見終わるかと思いきや、あまりの見応えにすっかり足が棒になった。染付の技術は元の時代の景徳鎮でいきなりほぼ完成の域に達している。『青花蓮池魚藻文壺』(せいかれんちぎょそうもんつぼ/1300年代・中国)の鮮やかな発色と、生命感あふれる筆致に思わず見入った。ベトナムの染付の奔放で力強い描線、朝鮮の染付の余白を生かした素朴美にも心惹かれる。それにしても1700年代後半以降の鍋島など、日本の染付に散見されるクールなグラフィックセンスはちょっと異様なほどだ。中でも『染付連鷺文三足皿』(そめつけれんろもんさんそくさら/1600-1700年代・鍋島)の洗練性は頂点にある。『染付子犬形香炉』(1800年代・三川内)のスーパーリアルな造形と愛らしい表情も忘れ難い。

8/21に六本木・AXISギャラリーで見た『ナインアワーズ展 - 都市における新しい宿泊のカタチ』についてはこちら

続きはこちら

September 22, 2009 6:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : ユーハイム 千駄ヶ谷店

8/29。国立能楽堂へ茂山狂言を見に行く前に時間が空いたので、以前から行かねばと思っていた『ユーハイム』千駄ヶ谷店でお茶。1988年オープンのレストラン&カフェ。インテリアデザインを手掛けたのはカザッポ&アソシエイツ(植木莞爾氏)。書籍では作品名を『レストランユーハイム イン津田ホール』などと紹介されている。場所は千駄ヶ谷を出ると右手目の前にある津田ホールの地下。

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チェーン店でしかもできたのが20年以上前、ということからコンディションにはあまり期待していなかったが、インテリアの状態はかなりオリジナルに近かった。特にエントランス右手のカウンター席まわりはほぼ往時のまま。イエローの地にビアンコの大理石を散りばめたテラゾタイルも健在だ。上の写真はエントランス左手のカウンターショーケース前からカウンター席越しにテーブル席のエリアを見たところ。

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カウンター席を反対側から見ると上のような具合。赤味掛かった木の内装を背景に、ミガキのステンレスによるショーケースやカウンターチェアのマッシブな造形が映える。天井には完成時には無かったスポットライトが増設されていた。二箇所にある光天井の光源色が違ってしまっているのはなんとも残念だ。

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客席はL字に曲がりながらさらに奥へと続いている。こちらは白い塗装とダーク色のウッドフローリングの空間。上の写真はテーブル席のエリア手前から最奥を見たところ。天井に並ぶ逆円錐型の掘り込みはインパクト大。しかしその中に取り付けられたシーリングライトは完成時とは似ても似つかぬものだ。テーブルとチェアもオリジナルではない。

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上の写真左はテーブル席エリア床ステップ部分のディテール。左手の床に取り付けられたステンレスのバーは壁に家具がぶつかるのを防ぐためのもの。こうした細かな心配りとヘビーデューティー性は植木デザインならでは。壁にある小さな丸い照明器具は点灯していなかった。写真右はカウンター席チェアのディテール。西洋甲冑を連想させる重厚さとふくよかなフォルム。ハイチェアながら座面はたっぷり。高齢の方が好んで陣取っておられる様子だったのが印象に残る。

テーブル席奥に向かって左手のパントリー(写真左)もまたピカピカのステンレスによる造形が特徴的。ただ、ショーケースともども現在はあまり有効に活用されておらず、物置に近い状態になってしまっていた。他にも間接照明が消えてしまっているところがあったりと荒れた使用状況が目立つのは、デザイナーとしても客としても重ね重ね残念でならない。とは言え、貴重なデザイン遺産が曲がりなりにも維持されていることは素晴らしい。今のうちにオリジナルの状態へと完全復活させられれば、ユーハイム(創業100周年とのこと)も津田塾大も株が上がるというものじゃないか。たぶん。

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バウムクーヘンとカプチーノをいただいて、いざ能楽堂へ。振り返ってエントランス(写真右)を見ると、嬉しいことにここも完成時の写真で見たままの姿だった。ステンレスフレームの華奢なゲートに赤いファブリックのサインがエレガントな旗印を思わせる。

ユーハイム 千駄ヶ谷店/東京都渋谷区千駄ヶ谷1-18-24 津田ホール
03-3401-1357/11:00-22:00/無休

ユーハイム
ユーハイム(Wikipedia)

September 18, 2009 4:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 京橋・100% ChocolateCafe.

8/8。『妻家房』日本橋店から銀座方面へ移動。途中、京橋で『100%ChocolateCafe.』に立ち寄った。明治製菓が運営するチョコレート専門店&カフェ。内外装デザインはWanderwall(片山正通氏)。グラフィックデザインはgroovisions。オープンは2004年。これまた5年も経っていたとは。

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ガラス面にふたつ小さくシート貼りされた店名を除き、看板らしいものの無い極めてすっきりした昼間の店構え。暗くなると店内最奥の白いタイル張りの壁に取り付けられたステンレス製の大きなロゴが、ダークな染色の木造作による板チョコ状の天井とともに象徴的に浮かび上がる。ロゴを挟んで右側のドアがトイレ、左側のドアがキッチンへ続いている様子。中央のドアを開けると、右側に二人掛けのハイテーブル席がずらり。左側に物販・レジカウンター。先に会計を済ませてから席へ移動。背後の壁一面に並ぶショーケースには2リットルくらいの大きさの透明樹脂ケースが56個。それぞれに異なる種類のチョコレートが詰まっている。

売り物を明確に示した直球のテーマ性と、ぬめるような質感を感じさせる光は、片山作品に特有のものだ。時間によっては行列のできる人気店だが、内装全体が良好なコンディションのまま維持されていることも素晴らしい。

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上の写真はショコラドリンク(HOT)とショコラスカッシュ。どちらもなかなかの濃厚さ。

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上の写真はワッフレート。長円皿から威勢良くはみ出すサイズに驚いた。細長い箱状のワッフルにチョコレートがみっちりで満足度大。

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内装と同様、店先の置き看板も実に可愛らしく細部まで美しい。

価格設定は全体に至ってリーズナブル。今度はチョコレートケーキをいただいてみよう。

100%ChocolateCafe. /東京都中央区京橋2-4-16明治製菓本社ビル1F
03-3273-3184/8:00-21:00(土日祝11:00-19:00)/無休

100%ChocolateCafe.(Wonderwall)

September 3, 2009 12:00 AM | trackbacks (1) | comments (0)

都市とデザインと : 妻家房 日本橋店

8/8。日本橋で遅い昼食。コレド内4Fにある『妻家房』日本橋店へ。2004年オープンの韓国料理店。インテリアデザインを手掛けたのは飯島直樹デザイン室。ぜひ伺わねば、と思い続けて不覚にも5年が経ってしまっていた。

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錆風塗装の鉄板に丸穴をグラフィカルに配した店構え。2枚の薄いプレートが細いフレームを挟んで共用通路側と客席側にビス止めされ、厚み数cmほどの壁を成している。その内側、と言うかスキ間は白くペイントされており、下方からハロゲンランプの間接照明がライトアップする。

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店内は思いのほか広く、席数は合計80弱とのこと。上の写真は最奥からエントランスの方を見返したところ。左手には絶妙な高さのローパーティションで区切られたボックス席がいくつか並び、そこを通り抜けた向こうにもさらにテーブル席がある。内装もまた錆鉄の質感と、同じトーンに染色された木材とで構成され、丸形蛍光灯によるサークル状の照明器具が間仕切りの丸穴に呼応する。基本的な照度は壁際の間接照明と、最少限のダウンライトでまかなわれている。

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上の写真は店内側から見た間仕切りのディテール。重厚な素材と、浮遊感さえ覚える軽やかな形式。他ではまず味わえないアンビバレンス。これが実に心地良い。

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石焼ビビンパ・プルコギセットと冷麺・チヂミセットでがっつり腹ごしらえ。どれもさっぱりとした味付けで、近頃すっかり縮こまってしまっている私たちの胃袋にもすんなりと収まった。この内容、この空間にして価格は至ってリーズナブルだ。昼から夜までノンストップで営業しているのがまた有り難い。

妻家房 日本橋店/東京都中央区日本橋1-4-1 コレド日本橋4F/03-5204-0108
11:00-23:00(日祝-22:00)/不定休(コレド日本橋に準ずる)

August 25, 2009 1:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : はらドーナッツ神戸本店,自由が丘店

7/2。神戸出張の合間に『はらドーナッツ』の神戸本店へ。『原とうふ店』(1968年開業)が2008年5月にオープンしたおから・豆乳ドーナツ店。

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地下鉄・湊川公園駅から商店街を北上。アーケードを抜けるとすぐ右手の角に、白く簡素な店構えが現れる。ドーナツをモチーフにぺたっと「刷っただけ」の控えめなグラフィックの用い方がかえって印象深い。

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電球色に統一されたあかりにぼんやりと包まれた店内。その造作もまた簡素そのものだ。しかしディテールは明らかに厳しく整理されたもので、こうしたテイストの店にありがちな、いかにもあざといローファイさは感じられない。手法は包装資材や印刷物のデザインにも徹底して踏襲されている。プロの仕事なのだ。

7/9。久しぶりに自由が丘の雑貨店をリサーチしたついでに『はらドーナッツ』自由が丘店に寄ってみた。2009年6月にオープン。

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場所はすずかけ通りと自由通りの交差点近く。以前からここにあるベージュの外装パネルに覆われたちいさな3階建てのビル全体がリニューアルされ、白くフラットで豆腐のような建物へと変身していた。『はらドーナッツ』に合わせたのだろうか。

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駅よりのビル角に本店同様のあかりが灯る。隣の区画はこの時まだ工事中。間口は本店に比べるとずいぶん広く、大きくとられたガラスの間仕切りを通して、奥のキッチンのよく片付いた様子が見える。

現時点で『はらドーナッツ』の店舗数は全国に19とのこと。本店オープンから1年あまりにして実に大変な勢いだ。ホームページの写真を拝見すると、どうやらこの質の高いつくりがきっちり全店に行き渡っている様子が伺える。きっと優れたアートディレクターがおられるに違いない。どなたの仕事なのか大いに気になるが、今のところその辺の情報は全然キャッチできず。ご存知の方、ぜひ教えて下さい。

おからドーナツの味は一言で言うと「懐かしい」。やや弾力のある素朴な食感に油の残り香。『栃木家』ほど洗練されてはいないものの、十分いける。

August 10, 2009 4:00 PM | trackbacks (0) | comments (0)

身体と空間の芸術, 都市とデザインと : 展覧会行脚のメモ 2009年6,7月

6/11。清澄白河・東京都現代美術館で『池田亮司 +/- [the infinite between 0 and 1]』。過剰なほど明瞭なコントラストを伴い、もしくは認知できるギリギリの微小な差異とともに、白と黒と数列とが厳密に対置された空間。ビデオプロジェクターによる巨大で高精細な映像、フォトプリント、正弦波のサウンドなどで構成されたインスタレーションの中で、私たちは自らが無限のデータのうちに解放されるような至福と、ノイジーで変数的な生々しい個としての実体とを交互に覚える。数学については知識もセンスも無いため、作品コンセプトを十分に理解することはかなわなかったが、この凄まじい体験は極めつけだ。東京都現代美術館の企画展示室がこれほど贅沢に、しかも有効に用いられているのを見たのは初めて。見逃さなくて本当に良かった。

6/14。六本木・Gallery le bainで『TONERICO:INC. Case Study 01 [STOOL]』。ホワイトアッシュの成形合板による至ってシンプルな16の形状のスツールがそれぞれ柾目・板目の木取りで計32タイプ。基本形から徐々に展開されたと言うデザインスタディをそのまま提示した微妙なバリエーションは、まるで八百屋のカゴに整列した果物や野菜を見るようでなんとも楽しく微笑ましかった。

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6/23。外苑前・PRISMIC GALLERYで『ISOLATION UNIT / 柳原照弘展「real fake」』。大阪を拠点に活動する柳原氏は今その動向が最も気になるデザイナーの一人。パスタの形状をそのまま金属に置き換えたジュエリー。見慣れたものから思いがけない美しさがひき出される不思議。展覧会としてはかなりボリュームが少なかったのが残念だが、それもまた狙いなのかもしれない。

6/26。勝どき・オオタファインアーツで『見附正康展』『イ・スーキョン展』。九谷焼赤絵の作家・見附氏による大皿4点。細密な絵付けは以前の展覧会よりもさらに自由度を増し、グラフィカルになっていた。いつか必ずや購入したい。
全くノーチェックだったイ・スーキョン氏のインスタレーションは思いがけず素晴らしいものだった。韓国のトラディショナルな陶器を破砕、シャッフルし、原形無視で金継ぎした、いびつなフォルムのオブジェたちが、天井から吊るされた軽量鉄骨のフレームに並ぶ蛍光灯に照らされ、ぬめるような光沢を放つ。その様子は実験室で培養された生物群、あるいは『AKIRA』ラストシーン近くの鉄男を彷彿させる。辰砂による赤い線で描かれた大きなドローイング2点も圧巻。

7/23。六本木・Gallery le bainで『内田繁展 2009 NY展へ向けて ぼやけたもの 霞んだもの 透けたもの ゆらいだもの』。手前のオープンスペースには合板を切り抜き組み合わせた樹木のオブジェと立礼の茶席。ギャラリーに入るといつもは白い壁面が真っ黒に塗られ、カラフルなメラミン化粧板をグリッド状に造作した「棚」がずらりと取り付けられていた。最奥の概ね完全な形状から次第にその部分が欠落し、やがて断片化して手前側の壁一面に飛び散るその様子は、メンフィス的である以上にソル・ルウィットのキューブやドナルド・ジャッドの後期作品との関連を感じさせる。フロアには2007年の展覧会にも登場した半オブジェ・半家具の「ムー」が数体。その上には水の入った撹拌装置付きの黒い箱がふたつ。それを通過した強い照明が足下で揺れる。徹底してドライでコンセプチュアルな空間表現に対して、「ムー」の存在はいかにも野蛮で無邪気だ。そのユーモアと違和感、そしてある種の不気味さが、いま内田氏の心中にある「わび」なのだろうか。

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July 30, 2009 12:00 PM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 外苑前・ドーリック

6/23。八雲で打合せの後、外苑前へ移動。プリズミックギャラリーで『「ISOLATION UNIT」展』を見てから外苑西通りを駅へと戻る途中、青空にそびえる『ドーリック』の前で思わず立ち止まった。1991年築のオフィス・商業ビル。設計は隈研吾建築都市設計事務所。

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出来立ての頃に発散されていた濃厚なハリボテっぽさはすっかり薄れた。ややくすんだ質感の中に繊細な面処理が浮かび上がり、落ち着いた佇まいさえ感じさせる。ドリス式(私たちが学生の頃には「ドーリア式」と教わった)の巨大な柱の中身はエレベーターシャフト。別アングルからの写真はこちら

年月が建物を完成へ導く、とは言うものの、この『ドーリック』にそれが当てはまるとは、よもや思わずにいた。都心にある隈作品の中で、個人的には一番好きかもしれない。ポストモダンの華。

July 22, 2009 2:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 銀座・CAFEきょうぶんかん

5/21。京橋・INAXギャラリーで『チェコのキュビズム建築とデザイン』展を見た後、銀座・教文館のカフェでひと休み。1933年に完成したこの『教文館・聖書館ビル』はふたつのビルが最初から連結された状態で建てられている。中に入るのは初めて。設計はアントニン・レーモンド。奇しくもチェコ繋がり。

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中央通りに面した外観は極めて控えめ。こちらのページ中段にある写真と比べると、そのモダンな佇まいは70年以上前の完成時からさほど大きくは変わっていないようだ。一部に施されたアールデコ調の装飾がテナントのファサードやネオンサインに隠された分、元来の匿名性がより高まったのは、果たして幸か不幸か。

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装飾を最も良く残しているのが聖書館のエントランスホール。上の写真がその奥側からの見返し。装飾部分のアップはこちら。エントランスホールを抜けると中央の壁でふたつ分かれた階段室がある。こちらの写真左側が教文館ビルで右側が聖書館ビル。

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上の写真がその階段室。どうと言うことはないが、不思議に魅力的な空間だ。上階のエレベーターホールも両ビルの共用となっており、往時の面影がわずかに感じられる。

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上の写真は4Fの『CAFEきょうぶんかん』にある中央通り側のカウンター席からの眺め。もとは6Fにあったのだそうで、2006年3月にこちらへ移転したとのこと。白漆喰とダークな木造作の内装が東からの自然光とうすぼんやりした照明に浮かび上がる。壁には小沼充氏の手による可愛らしい左官の装飾。コーヒーもお菓子もリーズナブル。銀座の真ん中にこんな場所があるのは嬉しい限りだ。重宝しそう。

CAFEきょうぶんかん/東京都中央区銀座4-5-1教文館ビル6F/03-3561-8708
11:00-19:00(日13:00-19:00)/水休

June 1, 2009 2:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 表参道・Ao

5/2。遅ればせながら『Ao』を視察。青山・スパイラル斜め向かいに出来た約40ほどのテナントを抱える複合商業施設。2009年3月にオープン。その偉容を遠くから伺ったことはあったが、ちゃんと足を運ぶのは初めて。

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この施設について、これまで人づてには散々な評判しか聞いたことがなく、実際に拝見してみた私たちにも特に書くべきことは思い当たらない。でも青山通りを逸れて細道をビルの裏側へまわれば意外に面白いことを発見した(上の写真/縦位置の写真)。
都心に取り残された低層の建物たちを背中にして見上げると、電線で細かく分割された空高く、乱雑なグリッドパターンがそびえ立つ。青山という街の混乱の縮図であるかのようなその眺めは、やや哀感を伴って、なかなか美しかった。

夜景になる前にそそくさと退散。あの電飾だけはどうしたって見るに堪えない。「LEDは工夫とセンスをもって使用すべし」って誰か法律で定めてくれないものか。いっそのこと「LED禁止」でもいいくらいだ。

May 26, 2009 4:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

身体と空間の芸術, 都市とデザインと : 展覧会行脚のメモ 2009年3,4月

3/6。青山・ワタリウム美術館で『島袋道浩展:美術の星の人へ』。島袋氏がゆるゆると手掛け続けるアートプロジェクトのうち、2001年から2008年までに手掛けられた十数点を主にビデオによって紹介する内容。オオタファインアーツで見た『シマブクロ・シマフクロウ』(1996)からいつの間にやら十数年。その作風はますます下らなさを増し、洗練され、強靭になっていた。探し物が見つかったり見つからなかったり、思わぬ出会いがあったり無かったりのプロジェクトは、どれも格好良く収束することはなく、ただ漫然と拡散してゆく。作品も下らなければ、それをぼんやり眺める私たちもまた実に下らない。生きてるってそんなもんだよね。と思ったり思わなかったりしながら会場を出た。何より最高だったのが『自分で作ったタコ壺でタコを捕る』(2003)。タコが捕れた瞬間の皆の嬉しそうな顔!、そして岸から海へと還されるタコの姿が忘れられない。

3月某日。初台・東京オペラシティアートギャラリーで『都市へ仕掛ける建築 ディーナー&ディーナーの試み』。これを見逃さなくて本当に良かった。スイス・バーゼルを拠点にヨーロッパ各地のプロジェクトを手掛けるD&Dの展覧会。彼らのデザインする建物は都市景観の中で擬態するように、あるいはひっそりと佇むように存在し、何らこれ見よがしなところがない。そこに周到に仕組まれた規則性と精緻なディテールが、日々建物を訪れ通り過ぎる人々の生活の中へと、美しい旋律を響かせるだけだ。会場の展示デザインもD&Dの手による。通常の展覧会では閉じられているギャラリー2手前の戸が、ここでは大きく開かれエントランスへと通じていた。些細なことながら、いつにないその風通しの良さが心に残る。チラシやポスターの「窓からの眺めも、私の部屋の一部なのでしょうか?」というコピーに『東京窓景』を思い出した。

3月某日。上野・東京都美術館で『「生活と芸術 - アーツ&クラフツ展」ウィリアム・モリスから民芸まで』。モダンデザインに反商業主義の遺伝子を組み込んだ男、モリスのことが最近とみに気になっている。タイミングよく拝見できてラッキーだ。会場冒頭、「役に立たないもの、美しいと思わない ものを家に置いてはならない」というモリスの言葉にいきなりガツンとやられる。ジョン・ラスキンのスケッチにはじまり、イギリスから中央ヨーロッパ、ロシア、北欧へのアーツ&クラフツのひろがりを一通り見ることができたのは有り難い。フィリップ・ウェッブのモダンな感覚、モリスのタペストリーの精巧さ(しかもかなり大きい)も印象的だった。後ろ1/3の日本の民芸運動に関するエリアにも見るべきものは多かった。でも全体としてはやや蛇足だったかも。

4/3。谷中・SCAI THE BATHHOUSEで『光の場 - 大庭大介』。7.5m×2mの大作を含む淡いパールカラーで点描された森の樹々のシリーズが素晴らしかった。角度によってその表情がダイナミックに変化することから、見るものは自然と身体を動かし、さながら絵の中を散策するような気分になる。ギャラリーを出ると、墓地周辺のあちこちで咲く満開の桜がこれまた点描の風景だった。
さらに同時開催の展覧会を見に4/5に恵比寿・magical ARTROOMへ。こちらは同様の画材を用いながらもぐっと抽象的な作品シリーズ。光学的イリュージョンの試行としてはより分かりやすいものの、細部に残る手仕事の跡がノイジーに感じられる。やっぱり森が好き。

4/5。パルコファクトリーで『浅田政志写真展 浅田家 - あなたもシャッター押してみて』。実在の「浅田家」であるご両親と兄弟の四人家族全員が揃って、大掛かりながら微妙にゆるいコスプレ(と言っても題材は「消防隊員」とか「ロックバンド」とか「選挙カー」とか)でおさまった写真がずらり。滑稽極まりないその様子が、やがていとおしくなる。なんて楽しそうなんだ、この家族は。馬鹿馬鹿しいくらいに単純であり、ハッピーであることが、なにより鋭く心に刺さり、泣ける。

May 23, 2009 4:37 PM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : TKG代官山

4/11。花見の後、旧山手通りを鎗ヶ崎交差点方面へ向かう途中で『TKG代官山』の前を通り掛った。小山登美夫氏の運営するギャラリー。2007年10月オープン。閉廊後も照明が点された店内は、ほぼ「ショーウィンドウ」と言って差し支えの無いくらいにこぢんまりとしている。

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内装デザインを手掛けたのは西沢立衛建築設計事務所。フロアのまんなかで透明アクリルのパーティションが大きくうねるような曲面を描く。いくつかのユニットを上下のちいさな金具で繋ぎ、床置きで自立させている。なんという軽やかさ。

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実際に間近で見ると、その空間は図面や写真から想像するよりもはるかに楽しげだ。引いた位置から大きな作品を見るにはパーティションが邪魔になるかもしれないが、このギャラリーは手頃な小品の販売に注力しているようなのでさほど問題は無いのだろう。やや難があるとすればライティングの「むら」くらいか。

近いうちにぜひ中へ伺ってみよう。昼間の様子もきっと美しいに違いない。

TKG代官山/東京都渋谷区猿楽町29-18 ヒルサイドテラスA棟1
03-3780-2150/11:00-19:00/日月祝休

May 12, 2009 3:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 代官山・ヒルサイドテラスの桜

4/11。午後に三鷹・星のホールで柳家さん喬独演会を見て夕刻代官山へ。『boy』で髪を切り、『猿楽珈琲』で二十三番地珈琲とバニラアイスのせアイスコーヒーをいただいて一息ついた後、夜のヒルサイドテラス(1967-1992/設計:槇総合計画事務所)を少し散歩。

旧山手通り南側、D棟とC棟の間にある猿楽塚古墳(6-7世紀)のまわりをぐるり。C棟中央の細い通路を駐車場の方へ向かう途中で右手の視界がぱっと開け、ライトアップされた立派なしだれ桜が目に飛び込んできた(縦位置の写真)。

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桜左手にヒルサイドプラザ(多目的ホール)への入口、右手には旧朝倉家住宅(1919)が見える。地下への階段に植え込まれたつつじもすでに満開。

思いがけず、今年最高の花見に。代官山にヒルサイドテラスがあって良かった。

地名で読む街の歴史 恵比寿・代官山・中目黒編(TokyoRent通信)
猿楽塚古墳(坂東千年王国)
代官山ヒルサイドテラスに今も残る旧家と古墳(東京レトロ散歩)
猿楽町 (渋谷区)(Wikipedia)

May 9, 2009 1:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 大阪・VADE MECVM. Showroom #2

3/30。『アメリカン』を出て地下鉄四つ橋線で本町まで。靭公園を縦断して『VADE MECVM. Showroom #2』(ヴェイディミーカン・ショールームナンバーツー)へ。2006年4月開業のギャラリーショップ+カフェ。内外装のデザインを手掛けたのはISOLATION UNIT(柳原照弘氏)。柳原氏の作品を拝見するのはこれが初めて。

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店は靭公園に裏側を面した小さなビルの1Fにあり、公園から直接入ることができる。黒いフレームの大きな窓越しに、店内のすっきりとした内装がよく見える。

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エントランスのすぐ脇に、窓と平行してレジとキッチンとディスプレイを兼ねたコンクリート製のカウンターが床面から直接立ち上がっている。他には、おそらく柱型を利用したものと思われるふたつの棚を除き、固定物は置かれていない。客席には学校用の椅子と机を黒くペイントしたものが十数組使われており、客の人数に応じてそれらが並べ替えられる。黒尽くめのスタッフ諸氏が入念に客席を配置するのを待つ間、店内を興味深く拝見したり、壁にプロジェクターで流されていた『おいしいコーヒーの真実』を眺めたり。この日は上映のせいもあってかフロアの状態はゆったり、と言うよりほとんどがらんとしていた。なんとも商売っ気が薄い。ゆえにショールームなのか。

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これ見よがしな造作は一切ないが、空間そのもののディテールに見所がいくつもある。特にパネル材による天井造作エアコンの納め方、照明器具の選び方などに独特のセンスが感じられる。この店のデザインテーマは、そうしたさりげないディテールが構成する空間の、容器としての佇まいにある。濃密な「がらんどう」。その在り方はまさに公園の延長であるにふさわしい。

デザートメニューは『BROADHURST'S』製とのこと。これが実に美味かった。

VADE MECVM. Showroom #2/大阪府大阪市西区京町堀1-13-21高木ビル1F奥
06-6447-1335/8:00-19:00/水休

夕刻に店を出て、阪神百貨店でいか焼き。ホテルへ戻り荷物をピックアップして新幹線で帰京。

May 5, 2009 2:00 PM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 倉俣デザインの公園があった

倉俣史朗デザインの公園を発見したのでメモ。


大きな地図で見る

作品名は『マンションの中の児童公園』。ふたつの集合住宅棟のあいだにある。建物の竣工は1971年7月とのこと。その他のデータは一切不明。『JAPAN INTERIOR DESIGN』1975年4月号(no.193)に掲載。航空写真を見る限りコンディションは割合良さそうだ。ただし完成当時公園の北端に置かれていた飛行機(おそらくモランソルニエMS-880bの実機)は撤去されている模様。

近いうちに見に行ってみよう。

May 1, 2009 5:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 大阪市中央公会堂

3/28。『大阪市中央公会堂』のレストランで野井成正さん、アシスタントの松本直也さんと昼食。『大阪市中央公会堂』は1918年に竣工。岡田信一郎が設計原案、辰野金吾片岡安が実施設計を手掛けている。老朽化のため一時は取り壊しの危機に瀕したものの、1999年に免震装置の設置、耐震補強、内装の改修などを含む大規模な保存再生工事が開始され、2002年に完了。地下食堂は中央フードサービスが運営するレストラン『中之島倶楽部』へと様変わりした。

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上の写真は南面(土佐堀川側)外観。リニューアル後に見るのは初めて。こぢんまりした佇まい、繊細なディテールはそのまま。それにしてもあまりに綺麗になっていて少々面食らった。やればできるじゃないか大阪市。

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上は南面左側の出入口。このすぐ右脇にバリアフリー化に伴いエレベーター乗降口のガラスボックスが設置されている。レストランは建物中央の大きな階段を降りたところのちょっとした広場に面しており、地下とは言っても明るい雰囲気だ。海老フライ定食(写真では分かり辛いが海老がかなり大きい)やオムライスをいただきつつ談笑。

話しに夢中で時間が無くなってしまったため、建物の見学はまたの機会に。すぐ近くにできた京阪電車中之島線なにわ橋駅(設計は安藤忠雄建築研究所)も含め、またゆっくり拝見したいものだ。

April 13, 2009 5:00 PM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 大阪・地下鉄御堂筋線淀屋橋駅

3/28。心斎橋のホテルから地下鉄で淀屋橋へ。

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梅田駅心斎橋駅に比べると、淀屋橋駅のヴォールト天井はややスケールダウンしており仕様も簡素。それでも御堂筋線名物・40W蛍光灯の巨大ペンダントライトはしっかり取り付けられている。

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こちらのペンダントライトはミガキ仕上げのスチールパーツが蛍光灯と同じくらいに存在を主張する武骨でレトロフューチャーな造形が特徴。中央の円筒型パーツ下面に埋め込まれたダウンライトは使用されていない様子だった。

April 11, 2009 2:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 大阪・なにわ探検クルーズ

3/27。大阪へ3日間の小旅行に出発。主なミッションは落語会。

心斎橋のホテルに荷物を置くとすぐさまタクシー移動。湊町リバープレイスの窓口で手続をして船着き場に降り、きらり号に乗船。『落語家と行く なにわ探検クルーズ』へ。この日16時便の案内役は笑福亭呂竹さん。

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船は道頓堀川を西へ。道頓堀川水門を抜けて木津川を北上し、中之島北側の堂島川(旧淀川)を東へ。大川に入って少し北上したところで折り返し、東横堀川を南下。水門を抜け、再び道頓堀川に入って湊町船着場へ還ってくる。途中、呂竹さんの案内で落語『あみだ池』(和光寺)と『お血脈』(善光寺)の関連などについて興味深く伺う。造幣局の桜がまだほとんど咲いていなかったのはちょっと残念。

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大阪市内を流れる堀川の水位は付近の地盤沈下のためやたらと高く見える。上の写真は中之島と堂島浜を繋ぐ大江橋(1935)あたり。橋と水面との間隔が極めて狭い。こうしたスキ間を通るため、堀川を運行する船の形状はかなり平べったい。この日乗ったきらり号は航路の条件に合わせて客室部分の船体そのものが上下する。船体を高くすると窓は全開になり、低くすると窓は閉じられる。川風の当たる開放的なクルーズと、水面ギリギリの目線を交互に体験できるのが面白い。

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一番盛り上がったのはやっぱり道頓堀川戎橋界隈。上の写真はドンキホーテの見上げ夕景。

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こちらはグリコ。

この場所で、これだけ川面の近くにいても嫌な匂いはほとんど全くと言ってよいほど感じられない。実に快適なクルーズだった。『野崎詣り』や『三十石船』、『遊山船』の風情は望めないが、21世紀の水都大阪もなかなか楽しいものだ。

April 8, 2009 6:00 PM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 上野・西郷会館

3/8。地下鉄銀座線上野駅から東京都美術館へ向かう途中、JR高架下の交差点で国立西洋美術館の世界遺産登録推進に関する大きめのバナーが目についた。

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バナーの取り付けられた解体用仮囲いの建物は『西郷会館』(1952)。設計を手掛けたのは土浦亀城。一般には『上野百貨店』、もしくはメインテナントであった『聚楽台』の名前の方が通りが良い。中央通りの突き当たりに位置し、上野公園の台地東側斜面にへばりつくようなデザインは、都心の近代建築物としては珍しく、ダイナミックな地形を生かしたものとなっている。銀座『三原橋センター』とともに、ユニークな敷地条件を生かした異色の土浦作品として知られる建物だ。『聚楽台』は2008年4月に閉店。改築後、2010年秋頃に再オープン予定とのこと。

国立西洋美術館云々については、基本的にフランス政府が目指すコルビュジェ作品のまるごと世界遺産登録の一環なわけで、台東区民としてはまあ勝手にやって下されば良いと思っている。

聚楽台(聚楽グループ)
昭和の残影 上野の老舗レストラン「聚楽台」閉店(産経ニュース)
閉店直前 上野の大衆食堂 聚楽台に行ってきた(メレンゲが腐るほど恋したい)

ル・コルビュジエの建築と都市計画の世界遺産推薦について(国立西洋美術館)
国立西洋美術館世界遺産登録推進(台東区)

March 18, 2009 12:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと, 食べたり飲んだり : 神楽坂・龍公亭

3/7。矢来能楽堂で『日本の伝統芸能絵巻』を見てから神楽坂を下って『龍公亭(りゅうこうてい)』へ。1889年に『あやめ寿司』として開業。1924年の改築時に2Fを『龍公亭』とし、その後全フロアを中国料理店に。現在4代目が店主を務められているとのこと。2007年にビルの建て替えに伴い一時閉店。その間にheads(山本宇一さん)プロデュース、Kata(形見一郎さん)デザインによる姉妹店『SO TIRED』が新丸ビルにオープン。『龍公亭』は2008年6月にリニューアルオープンした。

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白く塗り潰された煉瓦調のファサードに黒いフレームの開放的なガラススクリーン。大きめの自動ドアから店内へ入ると、レジカウンターのすぐ手前にデザートのショーケースが置かれている。アイドルタイムを廃し、カフェとしての営業にも力を入れている模様。フロアは最奥にキッチンを備えた1Fと、神楽坂を見下ろすテラスのある2Fに分かれている。この日は1F中ほどのベンチシートへ。見渡すと『SO TIRED』と同じ三方の競演となった店構えのそこかしこに、それらしいディテールが見られる。特に階段脇のカラーガラスのスクリーンは、姉妹店の記号、と言った趣だ。

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赤と銀による力強い構成が印象的なグラフィックデザインを手掛けたのは、なんと松永真氏。上の写真はメニュー表。裏面にはローマ字ロゴとイラストが。

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蒸し鶏のネギ・ショウガ風味、中国野菜の海老味噌炒め、カニ玉に酢豚。どの味にも尖ったところが無く、ホっとするようなやさしさと安心感がある。

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そしてチャーハンの食感の素晴らしいこと。まさにザ・スタンダード。甘さ控えめの中国茶あんみつにマンゴープリン、フルーツソースと相性抜群の杏仁豆腐も美味しくいただいた。サービスを含めどこを取っても至ってさりげなく、それでいて質の高い、新しい老舗。虚勢と厚化粧に彩られた神楽坂という街の真ん中にあって、実に地に足の着いた爽やかな印象の店だった。『SO TIRED』も含め、またぜひお伺いします。

龍公亭/東京都新宿区神楽坂3-5/050-5535-3972
11:00-22:00LO(金23:00LO)/年中無休

March 16, 2009 10:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

身体と空間の芸術, 都市とデザインと : 展覧会行脚のメモ 2009年2月

2/14。銀座・巷房で『佐藤卓展「2つの実験」』。巷房は奥野ビルディング(旧銀座アパートメント)内に3つのスペースをもつギャラリー。奥野ビルディング(鉄筋コンクリート造7階地下1階建)は1932年築。西条八十、吉田謙吉(参考)らが入居した由緒ある古ビルだ。設計を手掛けたのは川元設計事務所とされており、この「川元」が川元良一だとすると、奥野ビルディングは同潤会アパート九段会館(旧軍人会館)の兄弟、と言うことになる。
さて、先ずは地下へ。小部屋が1室と階段下が展示スペース。小部屋には円筒形の台が置かれ、その天面に小さな人形が埋め込まれていた。レトロでバタ臭い様式のキャラクターは、上方から投射されるビデオプロジェクターの映像や光で刻々と表情を変え、やがてたどたどしい子供の声色で「いろは」を順に喋りはじめる。固有の表層を持たないアウトラインデータとしてのキャラクター。階段下ではその様子をビデオモニターを介して見ることができた。照明が落とされたフロアはビルのつくりと相まって、いかにも怪しい実験室の様相。
3Fのギャラリーに入ると、一辺30cmほどの木の小箱が床上にずらりと並ぶ。数にして50ほど。透明の上蓋を通してひらがながひとつずつ収まっているのが見える。ひらがなは白い紙がゆるやかに変形しながら積み重なることで立体化されており、それぞれに特徴的なボリュームを持つ。質感を伴ったオブジェクトとしての文字。「い」には「い」らしいかたち、「ん」には「ん」らしいかたちが与えられているのが楽しい。いや、しかし、地下の展示を思い返すとなんだか不気味だ。ここでは実体と非実体が容易に入れ替わり、その曖昧な境が現実世界を浸食するように思えて来る。小さいながら、とても印象深い展覧会だった。

佐藤卓デザイン事務所

同日。六本木・サントリー美術館で『国宝 三井寺展』。個性豊かな仏像群に目を奪われた。中でも不動明王立像(通称:黄不動尊/鎌倉時代・13世紀)は凄かった。息づかいが聞こえてきそうな生々しさと、近寄り難い高潔さを同時に感じさせる佇まい。如意輪観音菩薩坐像(平安時代・10世紀)のしなやかなポーズ、毘沙門天立像(小振りでリアルな方/平安時代・10世紀)の凛々しさ、阿弥陀如来立像(鎌倉時代・13世紀)の超絶ディテール、十一面観音菩薩立像(平安時代・9世紀)の愉快な四頭身、新羅明神坐像(平安時代・11世紀)の繊細な造形とミステリアスな表情も忘れ難い。狩野光信の障壁画は個人的には今ひとつ。

2/24。銀座・ギャラリー現で『倉重光則 - 不確定性正方形 - 』。ガラス部分を鉄板で閉ざされたドアを開け、ギャラリーに入ると床一面がこれまた鉄板で綺麗に覆われていた。まるで重力が増したような錯覚を覚えながら壁面へ目を向けると、ビデオプロジェクターから白い正方形が投射されている。明滅する正方形とギャラリーの床壁の際を、それぞれ一部分ずつ赤いネオン管が縁取って不完全な領域を強調する。軽やかさと重厚さ。静けさと凶暴さ。極めつけに単純で、体験的なインスタレーションだった。
眺めていると、なんと倉重氏ご本人からお声がかかった。ギャラリーのスタッフの方からコーヒーをいただきつつ、初期の作品とアメリカのミニマル・アートとの偶然の同時性について、昨年開催された赤坂アートフラワー08で自分の作品を見るために行列に並んでみたこと、などなど、貴重なお話や愉快なお話を伺う。私たちにとって奇跡のような数十分だった。ギャラリーを出てから感激がじわじわと。作品の厳しい抽象性からは全く想像のつかない気さくなお人柄にかえって面食らってしまったことが悔やまれる。願わくば日本のミニマリストたちが体験した1970年前後の空気感について、もっとお話が伺ってみたい。

倉重光則(JDN)

March 10, 2009 4:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

身体と空間の芸術, 都市とデザインと : 展覧会行脚のメモ 2009年1月

1/16。日本橋三越本店新館7階ギャラリーで『画業40年 東京芸術大学退任記念 田淵俊夫展』。画家・田淵俊夫氏の手掛けた1966年から2007年までの主要な作品が一堂に。すべてが日本画のテクニックで描かれてはいるものの、用いられた多様なモティーフと手法に触れるうちに、それらを敢えて「日本画」と呼ぶことの無意味さを痛感する。水墨画ですら現代的な絵画として自然に受け入れられるくらいにストレートでニュートラルな田淵氏の表現が、厳しい写実によって支えられていることは興味深い。女竹の細密で瑞々しい輪郭をふわりと覆う緑色の霞。金色の海面にぽつんと浮かぶ一艘の船。深い藍色に塗り込まれた何気ない都会の風景。目の前に在る圧倒的なリアリティに、私たちはほとんど愕然とした心持ちになった。自身が感じた事物をこれほど真摯に作品化することが、果たして私たちに可能だろうか。

同日。日本橋高島屋8階ホールで『智積院講堂襖絵完成記念 田淵俊夫展』。計60面の墨絵の襖がゆったりと展示された贅沢な空間。三越の後で見ると、一連の襖絵がこれまでの田淵作品の集大成としての意味合いを持つものであることがよく分かる。5室のうち、最も強い印象を受けたのは、秋の情景を描いた『智慧の間』。無数のレイヤーを重ねたような奥行きを感じさせるすすき野が、一発勝負の墨で描かれたものであるとは信じ難い。枝一杯に実をつけた柿の木は、田淵氏の言う「寂しさ」よりも、むしろ爆発的な生命の喜びを強く感じさせた。

さらに同日。六本木・21_21 DESIGN SIGHTで『第4回企画展 吉岡徳仁ディレクション「セカンドネイチャー」展』。全体に作品の成り立ちや背景に関する解説が乏しく、一般向きの内容とは言い難い。メインの展示室は全て吉岡氏の作品に割かれており、ほぼ個展の様相。場末に追いやられた他の7組がなんだか気の毒ではあったが、あからさまにアンバランスなスペース配分はある意味見物だったかも。
特に印象的だったのは東信氏(あずままこと/フラワーアーティスト)とロス・ラブグローブ氏の作品。骨の組成を下敷きにした光造形によるスタディモデル『CELLULAR AUTOMATION Origin of Species 2』(ラブグローブ作/2008)は、そのレゴブロックさながらの不完全さがかえって自然の造形のエレガントさを思い知らせる。わさわさの葉っぱをトルソに組み合わせた『LEAF MAN』と五葉松を氷漬けにした『式2』(どちらも東作/2008)は、乾いたユーモアの刃で命の本質へ斬り込む。瞬殺的。他方、中川幸夫氏の作品『迫る光』(1980)は断ち落とされたような片腕を象った透明なガラスのオブジェ。植物どころかまったくの無機物であるにも関わらず、生々しいことこの上ない。逆説の生け花。期せずして見応えある新旧フラワーアーティスト対決を楽しませていただいた。

1/23。京橋・INAXギャラリー1で『デザイン満開 九州列車の旅』水戸岡鋭治氏(ドーンデザイン研究所)がデザインを手掛けたJR九州の車両の数々を紹介する内容。スケッチや図面、実際に使用されている部材や資材などがギャラリー狭しと詰め込まれていた。ここでの水戸岡氏のデザインの対象は車両本体だけでなく、ロゴやポスターなどのグラフィック、椅子とその張地、乗務員のユニフォーム、弁当のパッケージにまで及ぶ。結果として、水戸岡氏はほとんど都市環境規模と言えるくらいのクリエイティブディレクションをやり遂げてきた。『つばめ』や『ソニック』などの言わずと知れた代表作の影には、地味ながら魅力的なローカル車両が数多く存在する。その丁寧なデザインがあたりまえのように生活に馴染んでいる様子は感動的だ。列車に乗ることを目的に、また九州を旅してみたくなった。

February 22, 2009 8:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : CSデザインの過去・現在・未来

CSデザインセンターで開催された『2つのトークセッション - CSデザインの過去・現在・未来』に関する簡単な覚え書き。

トークセッション〔1〕(11/25)永井一正×内田繁
ナビゲーター:萩原修

CSデザイン賞概説(中川ケミカル・中川幸也社長)
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看板製作『中川堂』 - ペンキを顔料から調合する時代
・1940年代に蛍光灯の普及
 行灯看板の増加/ペンキを延ばしてフィルム化して対応
・戦後の経済復興/技術者不足
・デパートのディスプレイ製作の増加/工事時間短縮の必要
→1961年にディスプレイ用新製品開発に着手
・カッティングシート(CS)の誕生
・ほとんど売れずに数年が経過
・新幹線や成田空港のサインなどから普及
・CIブームへの対応
→『中川ケミカル』の分離独立
・色公害への懸念
・ボカシができないことによる新しい表現の必要性
→デザイン賞を発案
勝見勝氏へ審査員を依頼/トロフィーは五十嵐威暢氏がデザイン

歴代CSデザイン賞受賞作品解説(永井氏,内田氏)
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・第1回:つくば万博の告知/ビルファサードへのグラフィック表現
・第2回:タイポグラフィとパターンの複雑化
・第3回:西武美術館(田中一光)/グラフィックとCSが格調高く結びつく
・第4回:松屋ウィンドウ(ハルオ宮内)/イラストの拡大による表現
・第5回:七十七銀行/地方での表現の可能性がひろがる
・第6回:なんば高島屋/立体的表現
・第7回:地下鉄南北線/切り絵イラストとのマッチング
・第8回:金馬車(妹島和世)/建築素材化するCS
・第9回:イッセイ・ミヤケのウィンドウ/多彩な色による表現
・第10回:資生堂(工藤青石)/はがすことで変化するグラフィック
・第11回:資生堂(工藤青石)
・第12回:原宿のビル工事仮囲い/都市空間に対する節度ある表現
・第13回:名古屋デザインデパート/フロア全体にグラフィック
・第14回:ヒロオ・コンプレックス(廣村正彰)/建築表現の深まり
・第15回:イナリアンジェラート・ロノ(三宅博之)/「影」の素材化

まとめ
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永井氏
・時代の証言としてのCSデザイン賞
・グラフィック・建築・素材の三位一体的表現の発達
・空間デザインとグラフィックデザインのボーダーレス化
内田氏
・軽さ・薄さ・はかなさへの志向
・サイズに制約の無い平面表現

トークセッション〔2〕(12/5)廣村正彰×小泉誠
ナビゲーター:萩原修

廣村正彰氏・小泉誠氏とカッティングシート(CS)
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廣村氏
・第14回の大賞などを受賞
小泉氏
・第9回の装飾部門銀賞受賞
・住空間にCSはほとんど使わない
・展示イベントでは自分でシート貼りをやることがある

CIとカッティングシート(中川社長)
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・全く同じ色を繰り返し使用できる
・コンピューターカッティングの発達
リタックシート、カバーシートの開発
→第3回CSデザイン賞でふたつの準大賞 - 三菱銀行CI,日石CI

CSデザイン賞について(廣村氏,小泉氏)
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・金馬車(妹島和世建築設計事務所)
 小泉氏:現代の看板建築/ソットサスが高く評価していた(JCD
・ヒロオ・コンプレックス(廣村デザイン事務所
 廣村氏:単なる「表面」ではなくなってゆくCS
    「素材だけでは伝わりにくいもの」を意識化するCS
・イタリアンジェラート・ロノ(三宅博之デザインオフィス
 廣村氏:物質性に寄らないデザインの可能性
     →案内サインに物質性は必要ない
 小泉氏:フェイクぽさが個人的に好きではない
・東証アローズ(廣村デザイン事務所)
 小泉氏:空間に挑むCS
・丸ビル(廣村デザイン事務所)
 廣村氏:空間に入り込むCS
・横須賀美術館(廣村デザイン事務所)
 廣村氏:ピクトサインがあれば文字サインはいらない
     写真をサインに使おうとしたが却下される
     →女子社員に判断を委ねるクライアント担当者について
     「カッコいい」が「カワイイ」に負ける
     「カワイイ」を取り入れながらデザインする
・心斎橋そごう工事仮囲い(イチハラヒロコ)
 廣村氏:言葉(コピー)の力を再認識させられた
     元来工事仮囲いは新しいメディアとして「表現」された
     →現在は「広告」化して別物となりつつある

まとめ
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小泉氏
・手切り“リアル”な表現もあり得るのでは
 (コンピューターカッティングだけではなく)
廣村氏
・住宅にCSが入っていない原因は何か?
 →CSは生活に入ってゆけるのか?
・グラフィック表現の空間化・建築化
 →より体験的な部分にまで評価基準を拡げることは可能か?
 (単なる見た目による評価ではなく)

February 16, 2009 4:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 銀座『樽』へ行くなら今のうち

先日、都市徘徊blogを見て気がついた。銀座の『樽』はどうやら数年以内に無くなりそうだ。『樽』は1953年開業のバー。渡辺力剣持勇の両氏がインテリアデザインを手掛けている。

初代オーナーの故・赤羽猛は銀座でバー『機関車』も経営していた。こちらは交詢ビル隣の瀧山町ビル(第22ポールスタービル/1928年築/設計:三輪幸左右衛門)内に1934年開業。翌年同ビルに『ミラテス』(ブルーノ・タウトがデザイン、経営に携わった雑貨店/現存せず)も開業している。『機関車』の最初のオーナーは俳優・斉藤達雄で、赤羽が店を譲り受けたのは1938年頃。1966年にコリドー通りへ移転し、1988年に赤羽の逝去とともに閉店した。瀧山町ビルの『機関車』は舞台美術家・吉田謙吉(今和次郎とともに考現学の成立に寄与した人物)が、コリドー通りの『機関車』は先の渡辺・剣持両氏がインテリアデザインを手掛けている。ふたつの『機関車』を橋渡すように、伝説となるべくして『樽』は開業した。

さて、『樽』があるのは銀緑館(第一銀緑ビル/設計はビルオーナーの松岡清次郎が手掛けたようだ)の地下1階。1924年築の建物だから、おそらく『樽』の開業時にはすでに結構な古ビルだったに違いない。その後オーナーやバーテンダーの代替わりを経て、銀緑館ともども『樽』はしぶとく生き延びてきた。
そして、今世紀に入って松坂屋と森ビルが進める松坂屋銀座店および銀座六丁目2街区の一体開発計画が徐々に具体化し、その命運は遂に絶たれようとしている。2007年の報道によると、地上15階建(松坂屋は低層階のみ)程度となる新ビルのデザインは谷口吉生氏が手掛ける予定とのこと。インテリアデザインの名店が消えることは残念だが、谷口氏が開発の完了(今のところ2013年を予定)まで関わるなら、あの場所にさぞかし端正な景観が生まれるに違いない、と期待も膨らむ。

バーとしての『樽』は別段突出した美点の無い店だ。人に薦めはしない。それでも、ふたりの巨匠がその最も脂の乗った時期に共作した空間は、いまそこにしかない。長いカウンターと変形の大テーブルが広いフロアにざっくりと配置された居心地の良いその空間には、インテリアデザイン全盛を目前に控えた時代の自由でカジュアルな雰囲気が息づいている。

/東京都中央区銀座6-11-10銀緑館B1F/03-3573-1890
18:00-1:00/日休

銀緑館銀緑館 その2(都市徘徊blog)
松坂屋、銀座店の高層化断念(看板よもやま話)
松坂屋銀座店(J.フロントリテイリング)
銀座の街に、昭和モダンの名残りを求めて(枝川公一)
解体されます。瀧山町ビルヂング(ゆる〜り、ゆるゆると〜)

February 12, 2009 11:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

身体と空間の芸術, 都市とデザインと : 展覧会行脚のメモ 2008年11,12月

11/1。江戸東京博物館で『ボストン美術館 浮世絵名品展』。江戸中期から幕末までの浮世絵を網羅する内容。懐月堂派にはじまり、鈴木春信鳥居清長喜多川歌麿東洲斎写楽葛飾北斎歌川広重歌川国芳らの作品がぎっしりと居並ぶ様は壮観。見終えてぐったり。画面を覆う繊細なエンボスは数百年の時を越えて未だ生々しい。
春信の作品をまとまった数で見たのは初めてのこと。簡潔で、女性的で、なんとも可愛らしい。写楽の後期作品(全身像の役者絵)には印刷物を見る限りではさほど魅力を感じなかったが、実物はやはり力強い。ポスターにも使用されていた歌川国政の作品は、少数ながら期待を上回る素晴らしさ。生命感漲る輪郭線によってキャラクター化された役者のクローズアップ。極めつけに現代的でグラフィカル。

11/7。田町・ AATロビーギャラリーで『武藤奈緒美作品展 空想文学旅 VOL.1』。文学作品に寄せた三重・和歌山の風景写真。展示手法としてはやや散漫な印象だったものの、写真から伝わる空気感はガツンと濃密。妙な言い方かもしれないけど、まるで人物写真のような風景写真だ。『かわら版』などで撮り続けておられる落語家の写真展をぜひとも見たい。

12/16。ギャラリー間で『安藤忠雄建築展 挑戦 - 原点から - 』。原寸大『住吉の長屋』に度肝を抜かれた。ギャラリーと屋上テラスを隔てるガラススクリーンを取り去り、2つのフロアに跨がっての完全再現。単純明快で破壊力満点なこのやり方はいかにも安藤氏らしい。極小の敷地に最大限の自然を取り込みつつも周辺環境から隔絶された室内には、さながら孤島のようなユートピア性が感じられる。他にもいろいろ展示されていたような気がするが、『住吉の長屋』のおかげですっかり記憶から吹っ飛んでしまった。

February 11, 2009 1:00 PM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 歌舞伎座建て替え計画案

歌舞伎座、再開発で29階建て複合ビル併設(2009.01.31/銀座経済新聞)

なんだろうか、この完成予想図から漂うやる気の無い感じは。

歌舞伎座、装飾を抑え現代風に(2009.1.28/asahi.com)

いろいろと横やりが入ったみたいだけど、本当にこんなハエ男みたいな建物になってしまうとしたらなんとも残念な話だ。挑戦さえ恐れなければ、伝統に則った、この地にふさわしい高層建築はきっとあり得るはずなんだが。

歌舞伎座(東京・銀座)建替(2008.10.29/日刊建設工業新聞)

発表された立て替え案のニュースに、デザインを担当するはずだった隈研吾氏の名が全く出て来ないのが少々気になるところ。

February 1, 2009 9:00 AM | trackbacks (0) | comments (4)

身体と空間の芸術, 都市とデザインと : 展覧会行脚のメモ 2008年10月

10/7。パナソニック電工汐留ミュージアムで『村野藤吾 - 建築とインテリア ひとをつくる空間の美学』。村野と共働者たちの「手」の痕跡が心に残る展覧会だった。『十合百貨店(心斎橋そごう)』(1936)の階段手摺の原寸図、『世界平和記念堂』(1954)のために描かれた無数のファサードスケッチ、『新高輪プリンスホテル(グランドプリンスホテル新高輪)』(1982)客室入口枝折戸の原寸指示図など。『日生劇場(日本生命日比谷ビル)』(1963)天井の試作とスタディ模型の側には、粘土を削るための道具や模型の曲線を計るために手作りされた道具(枠にはまった百本くらいの木片を模型に押し付けてそのラインをトレースする)が生々しく置かれていた。最晩年の作品である『谷村美術館』(1983)の外観スタディ模型からは今でもはっきりと湿った粘土の臭気が感じられる。そこにはまるで村野の気配が立ちこめているようで、思わずぎくりとした。年譜を改めて見ると、主要な作品のほとんどが60歳代から80歳代までの20年間ほどの間に設計されていることが分かる。建築家とはかくも体力勝負だ。図録末尾にある隈研吾氏の寄稿「商品の対極にあるもの」は必読。

10/13。東京オペラシティアートギャラリーの『トレース・エレメンツ - 日豪の写真メディアにおける精神と記憶』に駆け込んだ。最終日の閉館20分前。古橋悌二の『LOVERS - 永遠の恋人たち』(1994)だけを鑑賞。1998年に青山スパイラルガーデンで行われた展示以来ちょうど10年振りの体験。
真っ黒な壁で正方形に区切られたスペース。その中心の回転台上にはビデオプロジェクターとスライドプロジェクターが各数台。壁面には全裸の人体がぼんやりと写し出され、振り向き、ゆっくりと走り、止まって誰かを抱きしめるような動作を見せては幻のように消えてゆく。
私たちにとって古橋はかつて最も大きな影響を受け、今も敬愛するクリエーターの一人。墓前に参詣するような気分の十数分だった。久しぶりにお会いできて良かった。

10/17と11/12。東京国立博物館で『大琳派展 - 継承と変奏』。前期の印象は中小の名品を上手く編集した展覧会、と言ったところ。会期中に主要な展示作品の入れ替えがあり、後期に再訪した際のインパクトはより大きかった。
第一会場の中ほどに風神雷神図の主要4作品が勢揃いした様はまさしく圧巻(俵屋宗達尾形光琳酒井抱一の二曲一双屏風と鈴木其一の襖/宗達と抱一は後期のみ展示)。オリジナルである宗達の作の素晴らしさは言うまでも無い。その向かいにあった其一の作(初見)は細部の表現をグラフィカルにそぎ落とし、超ワイドな画面へと二神を解き放つ。抜群の空間センスを痛感させる野心的改作。間に挟まった光琳と抱一はやや居心地が悪そうに見えた。
終盤にあった其一作『夏秋渓流図屏風』(初見/後期のみ展示)も期待を遥かに上回るもの。林立する杉の幹の太いラインで分断されたぶつ切りの画面に、極彩色の琳派モティーフが大胆に配置される。ぞっとするような鮮烈さ。

10/28。ギンザグラフィックギャラリーで『原研哉「白」』。1Fはパッケージデザインや装丁の作品で構成され、B1Fには近年に催された展示会や展覧会での超撥水加工技術を用いたインスタレーション3点が一同に。NHK『視点・論点』で放送された「白」にまつわるトークと、『蹲』を転がり落ちる水滴の描く優雅な軌道が印象的だった。本、買おう。

同日。クリエイションギャラリーG8とガーディアン・ガーデンで『福田繁雄 「ハードルは潜(kugu)れ」』。G8には手作りの習作からパブリックアートまでを含む立体作品の数々がぎっしり。ガーディアン・ガーデンには代表的なポスター作品とそのアイデアスケッチの現物、さらには中学、高校時代の漫画作品が展示されていた。限られたスペース内に濃縮された福田ワールドが展開し、二つの会場を見終えた頃にはもうお腹いっぱい。どこまでも一貫したユーモアと美意識、そして飽くなき探究心に感動を覚えた。個人的にはやはり立体作品の思考と最終形態との馬鹿馬鹿しいまでの直結ぶりに心惹かれる。

November 23, 2008 5:00 PM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 銀座の気になるビル・2

10/28。銀座でデザイン展をはしごの途中、こんな建物の前を通り掛った。

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『竹川画廊』。ざっと見たところ地上2階、地下1階建ての鉄骨造かと思われる。上左右の三方が薄いオフホワイトの壁で囲われ、少し奥まったところに華奢な暗色のスチールサッシ。ガラス越しのすぐ向こう側に階段があり、上りきったところにちいさな箱状のバルコニーが突き出す。屋根の中央には大きなトップライトがあることが伺え、その下に調光板が吊られている。日中は自然光、夜間は蛍光灯による間接光が2階を満たす仕組みのようだ。1、2階とも天井は木材で仕上げられ、無機質な空間のアクセントとなっている。

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築年数も設計者も不明。佇まいからしておそらく1950年代から60年代の作ではないかと思われる。それにしても実に濃厚なモダニズム。

竹川画廊/東京都中央区銀座7-7-7

銀座の気になるビル(May 11, 2006)

November 15, 2008 6:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 日光東照宮

10/19。ウヱハラ先生のルーテシア号で日光東照宮へ。東京に暮らして十年以上になるにも関わらず、なんと権現様にご挨拶するのはこの日が初めて。

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参道を逆に見たところ。国の特別天然記念物であり特別史跡もである日光杉並木(1625頃から20年ほどをかけて植栽されたもの)にいきなり度肝を抜かれた。あまりに壮大過ぎる。入口にある石鳥居は、石造の鳥居としては最大級のもの(高さ5m)。この杉並木の狭間にあってはごく常識的なサイズにしか見えない。鳥居をくぐるとすぐ左手にある五重塔もまたしかり。それでも五重塔を間近で見上げ、極彩色の斗栱(ときょう)にシビれた辺りで、脳のどこかのスイッチが何やらパチンと入ったような感覚になってバシバシ写真を撮りはじめた。そして、この恐るべき超絶造作は、奥へと向かうに連れてぐんぐんとテンションを上げてゆくのだ。

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表門を向かって右側の裏側脇から見上げたところ。

三神庫(さんじんこ)のうち下神庫中神庫(全景)中神庫(部分)
中神庫の前から御水舎の方を見る上神庫(全景)上神庫(部分)
神厩舎(しんきゅうしゃ/全景)神厩舎(部分)
御水舎(おみずや/全景)御水舎(部分)輪蔵,伊達政宗公奉納南蛮鉄灯籠
御水舎前から陽明門見上げ1御水舎前から陽明門見上げ2
鐘楼前欄干を支える狛犬(右),鼓楼前回転灯籠本地堂前から東側を見る

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鐘楼を手前から見上げたところ。

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廻廊。半立体の花鳥彫刻(部分1部分2)が陽明門の両脇に延々と居並ぶ。

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そして陽明門正面(全景1全景2全景3部分)見上げ。

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陽明門の向かって左側を裏側から見上げたところ。
狂気の沙汰と言いたくなる過剰さ。

陽明門裏面(全景)陽明門裏面(部分)神輿舎(しんよしゃ)
御本社唐門(全景)御本社唐門(部分)唐門左脇透塀(すきべい)の千鳥

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有名な眠り猫は祈祷殿の脇、坂下門手前回廊の蟇股にちょこんと寝ている。大きさは仔猫程度。坂下門(全景部分1部分2)を抜けて、長い石段を奥宮へと上がると、拝殿の裏に宝塔(家康廟)がある。眠り猫の凄さは、その出来不出来以上に、こうした重要な場所にこんな可愛らしい彫り物を配置してしまうセンスにある。左甚五郎の作と伝わるのは、そのセンスゆえなんだろうな、と了解した(事実なのかもしれないけど)。

奥宮の鳥居(全景)奥宮の鳥居(部分)奥宮の狛犬(左)

御本社まわりは現在修復工事中。神前だけに撮影は不可だった。陽明門に勝るとも劣らぬ造作振りだっただけに心残りではあるが、またぜひ伺うとしよう。

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石段から坂下門を見下ろしたところ。

その過剰な人為と信仰の力の漲りに思わずフィレンツェのドゥオモを思い出した日光東照宮だったが、それは広場に鎮座するのではなく、巨大な木々の狭間に埋もれるようにして在った。そして、その森もまた人間の手でかたち作られている。これが日本の宗教観であり都市観なんだな、と感じ入った。

日光杉並木と保護活動(日光東照宮)
日光東照宮(Wikipedia)

November 9, 2008 6:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 港区赤坂区民ホール

9/12。『夕刊フジ第12回平成特選寄席』を見に港区赤坂区民ホールへ。ホールとその付帯施設のデザインは近藤康夫デザイン事務所。1995年にオープン。

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パンチングメタルのドーム。太いボーダーでオレンジとグレーに色分けされた壁。近藤デザインならではのインダストリアルで明朗な空間が心地良い。スロープを大きくとった400の客席はステージが見やすい上にとても近く感じられ、落語には打ってつけのこぢんまりしたホールとなっている。

港区のホームページによると、ホールは改装のため11月25日から来年の1月17日までクローズされるとのこと。内装デザインには手をつけないでもらえるといいんだが。

赤坂コミュニティぷらざ(YASUO KONDO DESIGN)
港区赤坂区民ホール(港区Kissポート)

September 26, 2008 11:00 PM | trackbacks (0) | comments (0)

身体と空間の芸術, 都市とデザインと : 展覧会行脚のメモ 2008年8月

8/3。サントリー美術館で『小袖 江戸のオートクチュール』。展示作品のほとんどは松坂屋京都染織参考館のコレクション。先ずはその質的内容の高さに驚く。国立博物館でもお目にかかったことの無い優れたデザインの小袖が延々並ぶ壮観に思わず目眩いがした。染色と刺繍とを巧みに組み合わせた超絶技巧は友禅を除いてほとんど桃山時代には完成されており、江戸時代を通してそのグラフィックセンスは最高潮に達することが見て取れる。中ほどに展示された雛形本(ファッション誌みたいなもの)にはお洒落を楽しむ女性たちが「気に入ッたもやうヲ見や」とか「めづらしいひながたじや」などとおしゃべりする様子も。これまた楽しい。

8/20。ギンザグラフィックギャラリーで『THA/中村勇吾のインタラクティブデザイン』。場内に入ると黒い壁をバックにモニターが縦位置でずらりと並ぶgggではお馴染みの展示風景。階段を降りて地下のスペースへ。こちらは白い壁にPCや配線が剥き出しのワイルドな展示手法。『FFFFOUND!』のネオンサインが絶妙にハマる。そして、数十秒後に鳥肌が立った。インタラクティブな作品も含む全てのモニター展示が突如連動し、1分ごとの時報とともにthaのロゴにポーンと切り替わるではないか。カ、カッコいい。多くは既にどこかで見たことのある作品ながら、こうして見事に整理して展示されることで、その表現はより明快になり強度を増す。パソコンの画面の中でこんなに凄いことが起こっていたのか、と、あらためて感動を覚えた。それはそうと、ここの係員はなんでいつもあからさまに不機嫌なんだろうね。

8/21。スパイラルマーケットで『モノエ(森昭子 尾上耕太)古展』。陶を主素材とするオブジェや容器の展示。手のひらに収まりそうな大きさの中に、古びた佇まいと乾いたユーモアを含んだ作品の数々。フォルムと質感に対する作家の繊細な感覚が伝わる。底に家のかたちがくっついたカップと、階段がくっついたカップをひとつづつ購入。

8/22。東京国立近代美術館工芸館で『所蔵作品展 こども工芸館 [装飾/デコ]』。1室から4室までの内容が素晴らしい。高度な伝統的技術と現代的なセンスがシンプルに、かつ分ち難く結びついた20世紀工芸の名品たち。中でも田口善国(たぐちよしくに)、佐々木英(ささきえい)、音丸耕堂(おとまるこうどう)、松田権六(まつだごんろく)、磯井如真(いそいじょしん)らの漆器が印象深かった。稲垣稔次郎(いながきとしじろう)の虎の型絵染のタペストリーはグラフィックセンス抜群。加藤土師萌(かとうはじめ)の磁器飾壺は実に繊細で可愛らしい。最後の5室はほとんど秘宝館もかくや、と言った有様。過剰なアイコンにまみれたドロドロな作品ばかり。蛇足の感は否めない。

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8/22。オカムラガーデンコートショールームで『伊東豊雄×タクラム・デザイン・エンジニアリング「風鈴」』。うすはりガラスシェードのLED照明が、うねるような高低差とともに斜めのグリッドに沿って細かなピッチで配置されていた。その天井取付部にはハンマー式のチャイムが内蔵されており、下を通るとその周辺でLEDが点灯し、涼しい音が鳴る。互いに連絡し合う人感センサーの微妙なチューニング、ローテクなサウンド、半工芸的なガラスの造形の組み合わせ。なんとも不思議な感覚を覚えるインスタレーションだった。

8/27。松屋銀座8階大催場で『デザイン物産展ニッポン』。デザイン性に優れた地域物産を各都道府県別に紹介する内容。各地域におよそ1m四方のステージが割り当てられ、その脇に下がった札を帰りに提示すれば展示品を購入することもできた。ただし品物を手に取ってみることはできない。必ずしも各地域において最高の品が選ばれているわけでもない。この程度がニッポンのデザインの実力だと思われたりするとちょっと困るな、と一瞬思ったが、おそらく一般消費者の見識はそんなに甘くはないから大丈夫だろう。とは言え、見たことがないものも多かったので簡易なショーケースとしてはそこそこ楽しむことができた。iPod touch / iPhone用の解説サイトは、会場では回線の混雑のためあまり活用できず、アトリエに帰ってからゆっくり拝見した。

8/30。全生庵で『円朝コレクション幽霊画展』。江戸後期から明治期にわたるコレクションは、事前の予想以上に質の高いものだった。各々個性的な幽霊の表現は見飽きることがない。渡辺省亭(わたなべせいてい)、月岡芳年(つきおかよしとし)、歌川国歳(うたがわくにとし)、河鍋暁斎(かわなべきょうさい)、高橋由一(たかはしゆいち)、尾形月耕(おがたげっこう)、伊藤晴雨(いとうせいう)、林隣(りんりん)、萩原芳州(はぎわらほうしゅう)など印象的な作品は数多い。しかしやはり池田綾岡(いけだあやおか)の『皿屋敷』の美しさは群を抜く。来年、またお菊さんに会えるだろうか。

September 15, 2008 1:00 PM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 御茶ノ水・黒岩スリッパ店

8/21。西小松川町(江戸川区)で型小紋の三橋工房を見学の後、総武線を御茶ノ水まで引き返して『ミロ』で軽く食事。途中、駅の聖橋口を出て右手にある『黒岩スリッパ店』という店の前で足が止まった。

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4本の光柱を中央に据え、まわりを無機質な内装造作が取り囲むガラス張りの店構え。エントランスの両脇にあるクローム色の階段型のディスプレイ棚といい、その上にカールコードで吊るされた蛍光灯のペンダントライトといい、実にクールなデザインでまとめられている。スリッパだけがひたすら整然と並ぶ様子がまた渋い。

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所々で造作の軸線のズレが多少気にはなるものの、設計者の方の腕前はなかなかのものと見た。濃厚な70年代の香り漂う秀作だ。機会があればぜひスリッパをオーダーしてみたい。

黒岩スリッパ店/東京都千代田区神田駿河台2-6-4/03-3291-9618

September 14, 2008 6:00 AM | trackbacks (0) | comments (4)

都市とデザインと : 銀座・マーケットワン跡地

8/20。ギンザグラフィックギャラリーで『THA/中村勇吾のインタラクティブデザイン』を見た後、以前に東さんのブログで話題となっていた『マーケットワン』の跡地前を通りかかった。倉俣史朗が1970年にデザインしたブティック。現在はその内装をほぼ残したままの状態で別のブティックが入居し、営業している。

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ところどころあるべきものが取り去られ、無かったはずのものが付け加えられた姿は痛々しい(なんて書いてしまうのは現在の店舗オーナーに申し訳ないが)。研ぎ澄まされた空間が生命線の倉俣作品であればなおのこと。彼が存命であればいっそのこと跡形も無くなってほしいと願うことだろう。

とは言え、FRPで造形された洞穴のような空間はほぼ健在。ここは敢えて、今のうちに足を運んで往時を偲んでみられることを(特にプロの設計者の方々に)お勧めしておく。ちなみにこの『マーケットワン』跡地のある尾張町ビルは1933年竣工(設計者は不明)の近代建築とのこと。『ビヤホールライオン』しかり、そこかしこで意外なデザイン史の堆積が、その断面をのぞかせているのが銀座という街の面白いところだ。

見つけました「MARKET ONE」(JA Laboratory / News 2007/09/21)

September 10, 2008 1:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

身体と空間の芸術, 都市とデザインと : 展覧会行脚のメモ 2008年7月

7/1。印刷博物館で『デザイナー誕生:1950年代日本のグラフィック』。日本のグラフィックデザインの最初の大きな発展期の作品が一同に会した展覧会。ポスターや包装紙、雑誌や書籍、商品パッケージなどなど、あらゆる印刷物を網羅した展示点数は500あまり。物量も凄ければ中身もまた凄い。『グラフィック'55』展の参加メンバー(伊藤憲治大橋正亀倉雄策河野鷹思早川良雄原弘山城隆一の7氏)をはじめとする先駆者たちの作品は、クオリティにおいてすでに欧米のグラフィックデザインと同列にあり、その斬新さ、力強さはいまだ色褪せることが無い。細谷巖氏による『1958年三菱化成工業のカレンダー』(1957)は鳥肌もののクールさ。三越の包装紙(白地に赤い切り絵風のもの/1950)をデザインしたのが猪熊弦一郎であることは恥ずかしながらこの日初めて知った。Mitsukoshiの文字レイアウトは当時三越宣伝部員であった柳瀬たかし(やなせたかし)氏とのこと。

7/4。成山画廊で『松井冬子について』。思いのほか小さなギャラリーで、一度に入室できるのは6人まで。前の人が出るまでしばらく廊下で待つ。その甲斐あって松井作品の精緻な画面を息のかかりそうなくらい間近に見ることができた。ところが、そこかしこにぐしゃっと無造作に置かれた多量の生花の香りがあまりにきつくて十数分で退散。それもまた展示演出のうちだったのかどうかは良くわからない。
偶然、何日か後にNHKで松井氏の特番の再放送を見た。フェミニズム方面からの薄っぺらな解釈を自信満々に押し付ける社会学者がやけに滑稽だった。ジェンダーが先か。芸術が先か。

7/8。ギャラリー夢のカタチで『「倉俣史朗+小川隆之」展』

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ギャラリー自体のオープニングでもあったため、大勢の来場者が歩道にまで溢れ出していた。ギャラリー入口のドアハンドルは『イッセイ・ミヤケ・メン』(1987)と同じものだろうか。フロアには倉俣の家具作品がいくつか(ピラミッドの家具(1968),硝子の椅子(1976/写真),ミス・ブランチ(1988/写真1234)など)。壁には小川氏の撮影した写真の小さなモノクロプリント数十枚が、3つ4つのグループに分かれてランダムに配置されていた。『エドワーズ本社ビルディング』(1969)の1人用エレベーターに『引出しの家具』(1970)が収まった写真にびっくり。松屋デザインギャラリーで催された『倉俣史朗の造形』(1973)の展覧会風景の中には渡辺力氏による序文を読み取ることができた。しかし、この日個人的に最もインパクトが大きかったのは三保谷友彦氏(三保谷硝子店代表)の粋な夏着物姿。カッコ良過ぎ。

7/10。東京国立博物館で『対決 巨匠たちの日本美術』。日本美術の蒼々たる巨匠の作を二人一組で計12のコーナーに区切って展示する内容。それぞれの個性が対比され、実に分かりやすい。楽しく、大いに勉強になった。特に印象に残ったのは長谷川等伯の『萩芒図屏風』(はぎすすきずびょうぶ/16-17世紀)。琳派に先行してここまでグラフィカルで洗練された表現が完成されていたとは。また、曾我蕭白による一連の大作(群仙図屏風(1764頃),寒山拾得図屏風(1759-62頃),唐獅子図(1764頃))のエキセントリックさには度肝を抜かれた。俵屋宗達による『蔦の細道図屏風』(烏丸光広賛/17世紀)のミニマルな表現も忘れ難い。

7/20。21_21 DESIGN SIGHTで『「祈りの痕跡。」展』。文字と文字以前のプリミティブな表現行為によって遺された人間の思考の痕に着目した展覧会。ディレクションはアートディレクターで地球文字探検家の浅葉克己氏。展示作品は神前弘氏の封筒の連作、大嶺實清氏の作陶の連作、浅葉氏による世界の文字の紹介やご自身の10年にわたる制作日誌など。それぞれコーナーごとに十分な余白を設けてボリュームたっぷりに展示されており、この場所でこれまでに見た企画展の中では抜群のまとまりと見応えを感じさせる内容だった。会場デザインは内田繁氏、照明デザインは藤本晴美氏が手掛けている。会期中にもう一度見に行きたい。

7/24。西村画廊で『町田久美 Snow Day』。全て売り切れの作品価格表を見て「バブルの一種だな」と思った。マンガやアニメのひとコマを思わせる構図に伝統的な童子のキャラクターをミックスし、現代的日本画のテクニックで描く手法はネオポップ以降のトレンドに正しく収まっているが、それでも(あるいは、それゆえに、か)2004年の『日本画二人展』で町田氏の作品を初めて目にしたときほどの妖しい輝きは感じられなかった。手跡に技量の不足を残した画面は、縮小コピーされることでようやく力を得る。500円の展覧会カタログは買い得だ。

7/25。スパイラルマーケットで『Taichi Glass Art』伊藤太一氏によるヴェネチアングラスの手法で制作された吹きガラスの器の展示。造形は微妙にいびつでサイズもまちまちだが、色ガラスの描く極細のラインや編目(その間に小さな気泡がひとつずつ配置されていたりする)は手作りであることがほとんど信じ難いほどに緻密。「これってCGですか?」と訊きたくなるような超絶技巧に思わず見附正康氏の作陶を連想した。

August 27, 2008 7:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 表参道・浅葉克己デザイン室

7/25。OVEでレクチャーの打ち合わせ後、少し時間が空いたので周辺の裏通りを久方ぶりに散策。フロラシオンの正面から青山通りへの抜け道の中ほどにある『浅葉克己デザイン室』の前を通り掛った。言わずと知れたグラフィックデザイナー・浅葉克己氏のオフィス。建築設計はアルド・ロッシ+モリス・アジミ。1991年完成。

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ブルーのスペイン瓦屋根に煉瓦タイルの袖壁。開口部にスライド式の板戸がずらりと並び、正面を覆う。窓枠のライトブルー、金物部分のグリーンが曇り空の下にも鮮やかに映える。3階建てのちいさなビルにはアルド・ロッシ好みのディテールが散りばめられ、オフィスにしてはなんとも楽しげで賑やかだ。全体の可愛らしい佇まいに対して、金色の鉄板で囲われた重厚なエントランスはまるで取って付けたような具合でやけに印象に残る。敷地左右の塀の表には竹垣を模したグリーンのパイプが並ぶ。

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築後17年を経て、木部や塗装の傷みは少々目立つものの、そのくたびれ具合がかえって建物の魅力を増している。一方、近隣にはここ1年ほどのうちにますます空き地が目立つようになっており、本格的な再開発の気配が漂う。このままひっそりと生きながらえてくれれば良いが。

August 8, 2008 12:00 PM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと, 食べたり飲んだり : ビヤホールライオン銀座七丁目店

7/20。博品館で電撃ネットワークと桃太郎師匠を見てから15:00過ぎに『ビヤホールライオン銀座七丁目店 』でビールと食事。1934年に大日本麦酒(サッポロビール、アサヒビールの前身)本社ビルの1、2Fで開業。建築設計を手掛けたのは菅原栄蔵。1978年に全面改装が施されたものの、1Fビアホールと6Fクラシックホールの内装はほぼ建設当時のまま残されている。場所は新橋寄りの中央通り沿い。2軒隣にニコラス・G・ハイエック センターがある。昼間にもかかわらず歩道に大きくはみ出した行列に少しひるんだものの、十数分ほど並んだところで無事8名様ご入店。席回転の速さが嬉しい。

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上の写真はエントランスから見た店内全景。石とタイルに覆われた大空間。補助椅子(赤いビニールレザー張りの剣持スタッキングスツール)も含めると300人くらいは入るだろうか。斜めのアーチを多用したシャープな造形感覚と重厚な素材との組み合わせが、独特の洗練された雰囲気を醸し出す。あぶくを思わせる照明器具のデザインも秀逸。

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上の写真は店内中央左側からエントランス右側への見返し。

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上の写真は同じ位置から右奥側を見たところ。黒髪の女性群像を鮮やかに描いたガラスモザイク壁画のデザインも菅原による。

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ビールのお供は名物のお好み焼き、ではなく紙カツ。大皿にどかんと盛り付けられた様が男前だ。薄い。デカい。さっくりと旨い。おそらくフロアマネージャーかと思われるスタッフ氏の応対も楽しく、大いに盛り上がった。

ビヤホールライオン銀座七丁目店

銀座ライオン/100年の歩み(銀座ライオン)
美術建築師・菅原栄蔵(松岡正剛の千夜千冊)
銀座の街に、昭和モダンの名残りを求めて(edagawakoichi.com)

July 31, 2008 1:00 PM | trackbacks (0) | comments (2)

都市とデザインと : 東京国立博物館法隆寺宝物館

6/21。この日も須賀さんご夫妻とご一緒。『道明』から『うさぎや』、さらに『ラパン』で昼食を採ってから東京国立博物館へ。法隆寺宝物館を一巡りした。建築設計は谷口建築設計研究所(谷口吉生氏)。

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人工池とともに現れる軽快な箱。上野の森の鬱蒼とした木々の狭間にぽっかりと、大きな穴のように空が広がる。

シンプルなボリュームの組み合わせからなる内部空間も、ガラスケースの林立による美しい展示構成も、それはもうため息の出るほど見事なもの。でも私たちがこの場所で最も好きなのは、池と建物、森と空の関係だ。

東京国立博物館法隆寺宝物館

July 19, 2008 3:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : スワロフスキー銀座

6/20。須賀さんご夫妻と新橋ー丸の内間を散策。『かおりひめ』で昼食後、中央通りを北へ。博品館の斜め向かいにある『スワロフスキー銀座』を初めて訪れた。2008年3月オープン。内外装デザインは吉岡徳仁氏による。

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ファサードを構成するのは数にして幾千本と言う六角のステンレス製異形パイプの束。圧倒的量感。無数の鏡面が通りの風景をモザイク状に変換する。

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上の写真左はクリスタルビーズを混ぜ込んだテラゾタイルの床(左)。研ぎ出されたクリスタルビーズがこれほど美しい光沢を放つとは驚いた。写真右はファサードのステンレスパイプのディテール。パイプ下面にある小さな穴は水抜き用だろうか。

店内の什器は壁埋込のガラスケース(カードキーで開閉される)をメインにゆったりと構成されている。独立の什器やカウンター類の存在は至って控えめ。フロア中央では踏面にクリスタルビーズを敷いた階段が地上階と2階を貫通する。階段室はガラスの間仕切りと光天井で囲われ、その明快なボリュームによって店内は道路から見て手前側と奥側に大きくゾーン分けされる。

主要な壁はファサードの意匠を踏襲した白いアクリル製のレリーフで覆われている。地上階左側奥の壁面のみ人工大理石で仕上げられており、スワンのマーク形にくり抜かれた内部にクリスタルビーズが詰められている。床は屋外と同様に全面テラゾタイル。『Cascade(滝)』、『Ice Branch(氷の枝)』と題された巨大で造形的なシャンデリア(それぞれヴィンセント・ヴァン・デュイセントード・ボーンチェのデザイン)も、贅沢な余白を背景にしてその存在をもてあますことがない。また、現在2階の展示スペースでは吉岡氏によるインスタレーション『シューティングスター』を見ることができる。

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細部を見ればまさしく贅の極みでありながら、空間そのものは極めてシンプルで開放的。スノビズムとは無縁のラグジュアリー感が新鮮で心地良い。デザインテーマを「クリスタル・フォレスト」と聞いて正直あまりピンと来なかったが、おそらくここで言う「森」とはビジュアル的なものではなく「環境」としての意味合いなのだろう。

素材の持つ本質的な美しさに触れること無く、とにかくたくさん使えば高級だ、とばかり闇雲にクリスタルビーズを用いた単細胞なインテリアが巷に溢れる昨今、スワロフスキーが決断した流行とは無縁のキャスティングは実に冷静で賢明なものだ。渋谷『スタイラス』の閉店以来久しぶりに、国内で吉岡氏の研ぎ澄まされた空間デザインを堪能できる場所が生まれたことを心から喜ばしく思う。

スワロフスキー銀座

July 16, 2008 6:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

身体と空間の芸術, 都市とデザインと : 展覧会行脚のメモ 2008年6月

6/6。東京国立博物館で『国宝薬師寺展』。噂通りのものすごい観客数ではあったものの、平成館での企画展には珍しくスペースをゆったりと確保した贅沢な展示構成のおかげで、割合しっかりと鑑賞することができた。スロープを設えた順路から『日光菩薩立像』と『月光菩薩立像』(7-8世紀)の様々な表情を拝む。視線を計算しての絶妙なアンバランスさ。最も心惹かれたのは『聖観音菩薩立像』(7-8世紀)。サイズ的には『日光・月光菩薩立像』より随分と小振りながら(それでも身長190cmくらいある)、真っ直ぐに正面を見据える左右対称の洗練された造形、緻密な衣装の表現がその姿を屹然として見せる。

6/8。アクシスギャラリーで『チャールズ・イームズ写真展 100 images x 100 words』。チャールズ・イームズ撮影の写真の裏側に、デザインにまつわる彼の発言がひとつずつ記され、そのパネルがワイヤー支持で宙空にある。パネルは50枚ずつ2列に構成され、観客は各列の周りを歩きながらその写真と言葉を「鑑賞」する。直球かつ極めてメッセージ性の強い会場デザインとグラフィックデザインは廣村正彰氏によるもの。唯一メモしたのはこの言葉「テーブルに食器を並べるたびに、私は何かをデザインしている」。

6/12。上野の森美術館で『井上雄彦 最後のマンガ展』。井上氏の作品は一切読んだことがない。それでもこの展覧会のインパクトはあまりに強烈だった。

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冒頭、ケント紙にペン描きのマンガ原稿からして恐るべき画力に驚愕。通常の美術館順路を逆行するかたちでストーリーが展開し、途中から全てのコマが墨描きとなり、その大きさや筆致は展示空間と呼応しながら変化する。緩急自在にして独創的。伸びやかな水墨画の技量たるや実に凄まじい。美術館は完膚なきまでに一連のマンガへと変換されていた。この膨大な作品量が、ほとんど会期前の3、4週間に制作されたものであるとはにわかに信じ難い。おそらくこのままのかたちでは巡回不可能な一期一会のマンガの「内部」でゆっくりと歩を進めながら、北斎が存命なら嫉妬に狂うだろうな、と思った。

6月某日。サントリー美術館で『KAZARI 日本美の情熱』。最初に展示された深鉢形土器(縄文中期)のグラフィカルなデザインにいきなり釘付けに。並びでおなじみの火焔型土器を見ると、その印象は今までとは丸きり別物。呪術的と言うよりも、むしろ整然として装飾的。鎌倉期の超絶金工に続いて『浄瑠璃物語絵巻』(伝岩佐又兵衛筆/1600年代)と念願の対面。室内装飾の描写の緻密さは想像を上回るもの。鍋島大皿の洗練を堪能後、平成ライダーも逃げ出しそうな江戸初期の兜、平田一式飾り辺りからいよいよヤンキー的センスが全開。最後の『ちょうちょう踊り図屏風』(小沢華嶽筆/1800年代)では被り物集団の奇態に思わず腰が砕けた。

July 13, 2008 8:00 PM | trackbacks (0) | comments (2)

身体と空間の芸術, 都市とデザインと : 展覧会行脚のメモ 2008年5月

5月某日。メゾンエルメス8階フォーラムで『サラ・ジー展』。ガラスブロックの外壁に囲われた明るいウッドフローリングのフロアに、近所の量販店やコンビニで買ってきたような雑貨、食品パッケージなどが大量にぶちまけられていた。その様子は一見雑然としているが、観る者はほどなく個々のオブジェクトの配置に一連の「物語」を思わせる緻密な流れが秘められていることを了解する。フロア中央のエレベーターから晴海通り側の丸柱を取り巻くタワー状の集積へ。エレベーター裏側のスペースから階段を上へ。歩調はゆっくりと、その流れに沿って自然に進んでゆく。所々、設備メンテナンス用の床パネルが剥がされた部分があり、消火栓や分電盤室のドアは半開きになっている。オブジェクトはスキ間に侵入し、建物と半ば一体化しつつあるように感じられる。大規模でありながら儚く繊細で、ゴミ同然でありながら圧倒的に美しい。

5月某日。サントリー美術館で『ガレとジャポニズム』。アール・ヌーヴォーの代表的ガラス工芸家、エミール・ガレの作歴を通して、当時のヨーロッパの美術シーンへの日本美術の影響がいかに大きかったかを体感することのできる内容。単純なコピーからスタートし、次第に精神性を増しつつ独自の世界観を確立してゆく過程が興味深い。最後の最後に展示されていた脚付杯『蜻蛉』(1903-4/最晩年のガレが製作し、限られた近親者だけが譲り受けていたという希少な作品。世界初公開)の深遠な表情に心打たれた。なるほど、これがガレの魅力か。この歳になってようやく理解できたかも。

5/10。水戸芸術館で『宮島達男 Art in You』。空間を贅沢に用いたシンプルな展示手法のおかげで、建物のもつ特徴的なプランニングが思いのほか際立っていた。動線を単純にも複雑にも設定し得るホワイトキューブの連なりは、まさに磯崎氏ならでは。展示作品の見所は新作の立体作品『HOTO』(2007-8)に尽きる。鏡面仕上げの金属による巨大なタワー状の塊。表面に取り付けられた無数のLEDがバラバラに明滅とカウントダウンを繰り返す。それは猥雑なエネルギーを、強力に、それでいて至って静謐に、あたかも堂内の御神体のように発散し続ける。

5/23。ギャラリー間で『杉本貴志展 水の茶室・鉄の茶室』。入場するとまず現れたのが『鉄の茶室』(1993)。パターン状に部材をくり抜いた余り鉄板を継ぎ接ぎした間仕切りは、重厚さと軽さを兼ね備える(写真/外観内部1内部2)。

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展示室と中庭との間には『古梁の待受ベンチ』が横たわる。中庭には一抱えを超える大振りの『鉄の花器』。こちらも廃鉄を転用したもの。

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中庭から上階へ。遮光された展示室内へ入ると『水の茶室』が。天地に張り渡された無数のワイヤーに沿って水滴がゆっくりと連続的に降下してゆく。ライトアップされた夥しい水滴の群れが間仕切りとなり、動線を示す(写真/123)。

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どちらの茶室もいわゆる「茶室」としての完結性を目指すものではない。特に天井を持たないことは、シースルーの間仕切り以上に決定的な要素であるように思う。破格に開放的な空間性に対し、簡易な路地からはじまる動線の設定は、茶事を行う上で至って真っ当なもの。そこに在るのは「素材」そのものの豪放にして艶やかな佇まいであり、亭主と客との間に成り立つ「作法」そのものであって、おそらく「空間」ではない。当日『水の茶室』で実際に催された茶会を内外で眺めながら、杉本氏のインテリアデザインに共通する劇場性について思いを巡らせた。

July 11, 2008 5:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : JIN'S GLOBAL STANDARD 流山店

5/10。ウヱハラ先生のルーテシア号で水戸芸術館へ。宮島達雄展を見た後、ひたちなか市の『サザコーヒー』本店で珈琲と食事。帰りがけに千葉県『流山おおたかの森 S・C』に立ち寄り『JIN'S GLOBAL STANDARD 流山店』を見た。2007年3月オープンのアイウェア店。内装デザインは中村竜治建築設計事務所

ショッピングセンターはつくばエクスプレスと東武野田線のターミナル駅に併設されているが、道路からアクセスすると周辺は未開の荒野のような状態。唐突に出現する巨大な積み木状の建造物の姿は蜃気楼のようで現実味に乏しい。駐車場棟から売場へ入り、フロア中ほどの吹き抜けに横付けされたエスカレーターで2Fへ。目当ての店は通路を挟んだ正面右手に現れた。

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床も、壁も、天井も、全てフラットなオフホワイトに塗り込められている。角地にあるほぼ正方形の店舗区画を斜めにスライスするようにして壁造作が連続し、客はその間にある狭い動線を通り抜けつつ、壁に設えられた奥行きのちいさな棚什器に並んだ眼鏡フレームを手に取って吟味する(棚什器コーナー部分)。

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壁の途中には奥へとショートカットのできる開口があり、客は割合不自由無く売場を動き回ることができる(通路と壁の開口)。角から見て最奥の隣地側には検眼や眼鏡加工のためのスペースとレジカウンターが売場をL字に挟むようにして並んでいる。均質化された空間のそこかしこにあしらわれたサイズの異なるミラーの効果と相まって、店内はまるで迷宮のようだ。要所に用いられたモールディングがその印象をより強調し、深みを増す。

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什器構成そのものはアイウェア店として至極真っ当なもの。しかし店舗のプランニングとしてこれは全くの異常事態だ。なにしろ店内にその全体像を伺える場所がどこにも無いのだから。たしかにレンズも入っていない未調整の眼鏡フレームが万引きされることはほとんど無いだろうことは頭では理解できるとは言え、これを提案したデザイナーと了承したクライアントのチャレンジには心底敬服する。まさに目から鱗。

際限なく歩き回っているうちに、自分の居場所がはっきりしない感覚に陥って、なんだか少し気持ち悪くなってきた。吹き抜けのそばのベンチでひと休み。それにしても不思議で楽しい店だ。店舗のデザインにこんな可能性があったか、と思うと希望が湧いて来る。

JIN's GLOBAL STANDARD 流山店

JIN'S GARDEN SQUARE 青山店(May 6, 2008)

July 1, 2008 3:00 PM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 六本木・hLam

5/4。サントリー美術館でガレを見た帰りに『hLam』(ラム)の前を通り掛った。レナウンが取り扱うイタリアのアパレルブランドのブティック。2007年4月に東京ミッドタウンとともにオープン。その時点ではさほど気に止めなかった店だが、何度かミッドタウンへ足を運ぶうちに、その印象がだんだんと強くなってきた。内装デザインはWonderwall(片山正通氏)。

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可動什器を除く全ての造作はエントランスを中心軸とする左右対称に厳しく構成されている。羽目板張りの天井とウッドフローリングの床は同じピッチで仕上がっており、この空間の持つ緊張感を一層高める。設備類の配置は完璧以上。特に空調などはデザインの重要な一部と言って良い。ファサード両側のショーウィンドウと店内中央のショーケースを形作る大きな曲面ガラスは、冷たくぬめるような質感を主張する。

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一方、表面を白く塗り潰した細かな横格子のストック、斜めに立てかけられたミラー、エントランスのドアなどの佇まいはいかにも欧州ブランドのブティック然としている。徹底して人工的な入れ物としての空間と、古風なディテールの対比を、色温度の高い間接照明が白々と浮かび上がらせる。

美しきアンビバレンスとでも言おうか、この感じは片山氏の多くの作品に共通するが、『hLam』のそれは特別計算高く、洗練されたものであるように思われてならない。

hLam

June 30, 2008 1:00 PM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : JIN'S GARDEN SQUARE 青山店

4/10。原宿で打ち合わせの後、外苑前の駅への通り道にある『JIN'S GARDEN SQUARE 青山店』に立ち寄った。眼鏡などのアイウェアを中心に、バッグやアクセサリーと言った雑貨までを幅広く扱うショップ。同じ場所にあった『JIN'S GLOBAL STANDARD 青山店』(2006年3月オープン)を拡大リニューアルして2007年10月にオープン。内外装デザインを手がけたのは中村竜治建築設計事務所

その空間は物販店舗として極めてユニークで、しかも実に楽しい。ベースとなるのは床壁天井を白く塗り潰した直方形。前面道路側はサッシュレスのガラススクリーンによって半ば開放された姿となっている。内部には躯体柱、疑似柱を含め数十本の白い四角柱がバラバラと林立し、それらの周囲を木製の棚が円形に取り巻く。円の中心は微妙にズレており、その高さはまちまちに設定されている。ダウンライトのレイアウトもバラバラで、特にどこを照らすでもなくフラットな光が店内全体を包み込む。

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外から覗く限りでは少々雑然とした印象があり、一見して全体像を想像することのできないなんだかミステリアスな店だ。ところが、一旦内部へと足を踏み入れ、柱の間に狭くランダムに広がる動線を縫うようにして歩きながら、そこかしこに気になる雑貨を発見する感覚には、まるで森の中を散策するような喜びがある。こんなのはまともな店ではまず体験し得ないが、店として破綻しているかと言うと、驚いたことに、全くそんなことはない。棚メインの什器構成自体はこの種の店舗としてごく真っ当なもの。適所にミラーやフックもさりげなく設置されており、売場として違和感無く成立してしまっている。商品ディスプレイから察するに、店のスタッフもこの空間の使い勝手を楽しんでいるようだ。

ついに「売場を料理できる建築家」が登場したか。改装前の店もぜひ拝見したかった。こうした優れた作品性と話題性のある店が登場することで、かつて建築家にとってほんのアルバイトのようなものだった商業建築や店舗が、むしろ「カッコいい」仕事と本格的に見なされるようになれば喜ばしい。

JIN'S GARDEN SQUARE 青山店

May 6, 2008 7:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 阿佐ヶ谷・ひねもすのたり

4/4。阿佐ヶ谷で打合せを二件。夕刻早めに『ひねもすのたり』で食事とひと休み。作家ものの器の販売も行うカフェ。2006年7月オープン。場所はJR阿佐ヶ谷駅北口を出て、線路沿いの小さな商店街にある小さな木造商店の2F。ポットのマークが入ったグリーンの小さなテントと、横長の行灯サインが目印(外観の写真)。地上階には韓国総菜店が入っている。初めて訪れたのは前月のことで、この日は2度目。

テントの下にほとんど軒は無く、すぐ目の前に急な階段が現れる。すれ違いの不可能な幅を白漆喰の壁に挟まるようにして上り、左手にある白い木枠の引戸から店内へ。

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コンパクトな空間は、白漆喰の壁、シルバーにペイントされた合板張りの天井、暗色のウッドフローリングによって簡潔にまとめられている。客席としてはおそらくオリジナルのテーブルが4つあるのみ。その他のチェアや展示棚などには、中古品と思しい家具類がバラバラに用いられている。
一見したところ緩めで、ともすると家庭的と形容したくなる体裁ながら、細部に施された仕事は厳しいものだ。各造作の見切の納まりがシンプルで実に美しい。天井は底目地でグリッド状に区切られ、照明や換気、スピーカーなどの設備類は全てその中に整然とレイアウトされている。真四角に切り抜かれた箇所の上部にはどうやら天窓があるようで、ふと見る度に光の色が変化することに不思議な感覚を覚える。
北側に面した開口部まわりは大方新しく作り直されたもの。引き違い窓の気密性は高く、不要となった雨戸の戸袋は木造作で丁寧に封印されている。ほとんど白色で覆われた展開面の中で窓枠だけは黒くペイントされており、外を見ると逆光と植栽の中に溶け込んで、まるで影のように存在感が無い。
建築的基本性能が高く、緩さの中に節度を要求する空間デザインを手がけられたのは堀部安嗣氏。

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上の写真は前回にいただいたおぜんざい(温)。玄米の餅(ワッフルメーカーで焼いたのだろうか)と甘さ控えめの汁粉。穀物の食感がいい。こちらはゆずと小豆のパウンドケーキ。これまた香ばしく美味い。お茶はそれぞれ浅煎り初摘み白折茶と煎茶。特に煎茶が素晴らしく、帰りに茶葉を購入。京都・和束町にある中井製茶場の有機栽培茶とのこと。

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この日は上のおそうざいセット(上)とオムカレー(下)を注文。どちらも素材の持ち味が引き立つ品。オムレツ+カレー+雑穀のマッチングは意外で新鮮だった。それぞれに個性的な器も楽しい。隅から隅まで女性オーナーのセンスが行き届いている。

営業の終わる時刻が早く、週休2日というマイペースさだが、この店の持つ計算された素朴さは他に代え難い。わざわざ訪れる価値は十二分にある。また近々にお伺いしたいものだ。

ひねもすのたり/東京都杉並区阿佐谷北1-3-6-2F/03-3330-8807
11:30-19:00/木日休

April 28, 2008 2:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 東京メトロ日本橋駅コンコース

4/1。午後から原宿方面で打合せをふたつ。銀座へ移動して松屋でソットサス展。十一房珈琲に立ち寄ってから、そのままあれこれ話し合いつつ中央通りを北上。日本橋まで歩いたところで地下鉄へ。

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ラッシュアワーを過ぎて人通りのまばらなコンコースを見渡すと、いつも気になっていた不思議な天井造作が一際目立つように思えたので、少ししゃがんだ位置から撮影。

金属ハニカムを透明樹脂のシートで挟んだ六角形のパネルが頭上を埋め尽くす様子はなんだかレトロフューチャー的だ。蛍光灯のシーリングライトはパネルの形状に合わせたオリジナルだろう。なんでまたこんな凝ったデザインが施されたのか。働き蜂へのオマージュだとすれば悪趣味だが、おそらく気にするほどの深い理由は無いのだろう。

April 23, 2008 10:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 日本橋・カフェテラス東洋

2/28。午後一番に東新宿でプレゼンテーションの後、日本橋へ移動。諸々の視察と買い物の前に『東洋』の1Fカフェテラスで遅い昼食を摂ることにした。開業は1964年。インテリアデザインは故・境沢孝が手がけており、1981年に同氏のデザインで一度全面改装された。その後、1983年に2Fにレストラン(こちらのインテリアも同氏のデザイン)がオープン。2001年には両フロアに境沢健次(ケンジデザインスタジオ)氏による部分改装が施され、現在に至っている。2Fレストランなどについての記事はこちら

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上の写真は中央通り側から店舗区画の奥側を見た全景。この眺めはおそらくほぼ1981年当時のままだ。入り組んだ斜め動線によるユニークな座席レイアウト、天井や壁面にちりばめられた摩訶不思議な照明オブジェはまさに「境沢節」と呼ぶにふさわしい。「造形のパターンはすべてが、たった今考えついたような執念のない、グラフィティのように実感のともなわない軽いものを考えて行った。」(境沢孝/商店建築1981年7月号)

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上の写真は中央通りに面した2001年の改装部分。以前はシックなパブカウンターの設えられていた場所が、オープンなテーブル席に変わっている。赤、白、黒のグラフィカルな造作とナチュラルな節有りの羽目板との組み合わせが特徴的。あっけらかんとカラフルな印象ではあるものの、家具については81年当時のデザインが踏襲されていることもあって、新旧の空間にはさほど違和感は無い。

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フードメニューは2Fのレストラン同様、これぞ軽食、と言った味わい(海鮮グラタンはなかなかの美味だった)。食後にいただいた苺ショートケーキとコーヒーも含め、昭和のカフェテラスとしての完成度は高い。

境沢デザインを詣でる意味も含め、これからも何度となく訪れたい日本橋の憩いの場。機会があれば各部のディテールをきちんと撮影させていただきたいものだ。

March 18, 2008 10:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

身体と空間の芸術, 都市とデザインと : 展覧会行脚のメモ 2008年2月

2/3。リトルモア地下で『DECOTORA 田附勝写真展』。小さなスペースにデコトラとそのドライバーたちの写真がぎっしりと並べられていた。それらは単純な生々しさをフレームの外に捨て置き、造形と色彩の完璧なる構成として新たなダイナミズムを獲得し、視覚を鷲掴みにする。田附(たつき)氏と被写体との距離感が絶妙だ。写真集、買わなきゃ。作品点数をもっと絞り込んでサイズの大きなプリントを主体にした方が、展示としてはより成功したかもしれない。

2/7。みつばちトート8studioで『naho ogawa / my life as a (petit) jetsetter #3』。バッグ屋さんの店先に、ナホさんの手描きイラストを切り抜いたボードが天井から無数にぶら下がった様は実に楽しく、キュートで、壮観。イラストの題材はバンコク、台北、ニューヨークの旅のワンシーン。首が疲れるまで眺める頃には、なんだかどこか遠くへ行きたい気分になっていた。
六本木に移動してギャラリー・ル・ベインで『深沢直人「木の椅子とテーブル展」』。新作椅子は一見シンプル極まりないフォルムが事も無げに身体にフィットし、違和感が無い。違和感が無いどころか、あまりの手触りの良さにうっとりするくらい。新作テーブルとの相性も完璧。これはぜひセットで欲しい、と思ったものの、そんなお金は無いし、だいいち置き場所が無い。マルニ木工の定番家具「地中海シリーズ」と「ベルサイユシリーズ」をリファインした椅子のシリーズは、深沢氏の志向する造形を間接的ながらかえって明快に示すものとして興味深い。本来のキャラクターをかろうじて留めるところまでディテールを取り除かれた猫足の椅子は、まるでその装飾性のみで存在するかのような軽やかさを感じさせる。

2/10。戸栗美術館で『鍋島 - 至宝の磁器・創出された美 - 』。17世紀半ばから18世紀半ばにかけて隆盛した鍋島の名品を一気に、かつ大量に見ることができた。何よりグラフィックデザインとしての格調の高さと洗練性に思わずため息が漏れる。精緻な絵付の技術は全て手描きであることがにわかには信じ難いほどだ。見応えがあり過ぎてぐったり。でもくたびれた分以上の収穫があった。
その後、神楽坂へ移動してラ・ロンダジルで『ハウスの革モノと金モノ』ハウスと言うブランドで先ず頭に浮かぶのは当然靴。その次に多分バッグ。しかしここで私たちの目に留まったのは革と真鍮のパーツを組み合わせたちいさなオブジェの数々だった。折り紙を思わせる素朴さと、素材の持つ確かな存在感。手のひらに乗るくらいのサイズに増満さんの造形センスがしっかりと込められている。犬のオブジェを一匹飼うことに。

2/14。ギャラリー現で『倉重光則展』。倉重氏は1960年代末頃から活動するライト・アートの第一人者。蛍光灯やネオンを用いたミニマルなインスタレーションで知られる。ここで見ることができたのは、ちいさなギャラリーの長方形の壁3面を縁取るようにして設置された赤、青、黄のネオン作品と、2点のドローイング。ネオンの縁取りはそれぞれ一部が欠落しており、その不在が見る者の意識を作品をとりまく空間そのものへと誘導する。カッコいい。

2/22。ギャラリー・エフで『トーマス・ボーレ「ちび陶」』。詳細はこちらの記事で。

2/28。SCAI THE BATHHOUSEで『横尾忠則の壺』。アーティストに転身してからの横尾氏の作品は全くのノーチェックで、申し訳ないことに見もしないうちに勝手に醒めていた、と言うのが正直なところ。初めて実作の前に佇んで、その巨大な画面から放たれる形容不可能な禍々しい魅力に圧倒された。絵画とコラージュをシームレスに混在させる手法は極めて巧みで、洗練されたものだ。物語を予感させる象徴的でミステリアスなモチーフの狭間に、群衆が細かく描かれてるな、と思って近づくと、その顔は全て白黒写真の切り抜き。背筋に悪寒が走った。

March 16, 2008 5:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 有楽町・よみうりホール

1/29。東西落語研鑽会の会場はいつもよみうりホール。場所は有楽町駅すぐ側の読売会館(元の有楽町そごう)7F。現在階下にはビックカメラが入居している。1957年築。建物とホールの設計は村野・森建築事務所。

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座席が小さめだったりトイレがビックカメラと共用だったりと、今時のホール施設としては設備的に少々厳しい面はあるものの、その空間の持つ魅力的は他に替え難い。

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1Fから2Fレベルへと優美なカーブを描く桟敷席。複雑な造形の天井面。1100席のキャパシティを持つにしてはステージが近い(柳家喬太郎師匠は「こっちに来てご覧なさいよ。被告みたいですよ。」と仰っていた。11/26)。落語を見るには打ってつけだ。

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客席両袖の壁は大きなリブが連続するように造形されており、その表面をガラス質のモザイクタイルが覆う。淡いブルーからイエローに至るグラデーションが間接照明に映えて美しい。全体にさほど豪華な意匠は施されてはいないとは言え、隅から隅まで紛れも無い村野藤吾作品。心斎橋そごうのようにあっけなく姿を消してしまわないことを祈りたい。

この日の終演後、印象的だったのは、私たち以外にもホール内を撮影している人が何人も居たこと。建築やデザイン関係者に潜在する落語ファンの割合が徐々に増えて来ているのだとしたら、私たちとしてはちょっと嬉しい。

よみうりホール
読売会館(旧有楽町そごう)(Citta'Materia)

February 18, 2008 11:00 AM | trackbacks (0) | comments (2)

身体と空間の芸術, 都市とデザインと : 展覧会行脚のメモ 2008年1月

1/14。サントリー美術館で『和モード 日本女性、華やぎの装い』、江戸東京博物館で『北斎 - ヨーロッパを魅了した江戸の絵師 - 』を見た。

期待をはるかに上回る見応えがあったのが『和モード 日本女性、華やぎの装い』。会場は6つの章に分かれて構成されていた。
1章と2章は平安から江戸時代にかけての和装の変遷を絵画や実際の衣装などで紹介するもの。和装の成立した平安時代と言えば十二単(じゅうにひとえ)だが、要するにこの頃は女性も男性も袴(はかま)履きの上に重ね着だった。平安末期に小袖(こそで)が登場し、室町時代に入るとそれが表着(うわぎ)となることでいわゆるキモノの原型が出来上がる。江戸時代には連続パターン一辺倒だったキモノの柄がぐんとグラフィカルな表現となり、いよいよファッション性が高まった。
興味深いことに、絵画を見る限り江戸前期までは誰一人として正座をせず、女性も男性もあぐらをかいたり片膝を立てたりと実に自由でリラックスした姿勢をとっている。キモノのかたちもまたゆったりしたもので、お端折の習慣は無く、帯はかなり細い。一体どのような経緯でキモノが現在のように窮屈なスタイルとなり、和室では正座が決まり事のようになってしまったのか。残念ながら展覧会ではそこまでのことは分からなかった。
3章は化粧や喫煙具、4章は髪型と髪飾りの変遷の紹介。特に髪飾りの展示は膨大で、その細工の精緻さといい実に圧巻だった。名も無き職人と江戸の大通たちのこうした小物のデザインに対する熱意には鬼気迫るものがあり、心底恐れ入る。5章は明治以降の女性のファッションの広告ポスターによる紹介され、6章はクリスマスと正月に因んだコレクション展示となっていた。

江戸東京博物館の特別展のボリュームは毎度大変なものだ。『北斎 - ヨーロッパを魅了した江戸の絵師 - 』もまたしかり。とりあえずオランダ商館からの発注により北斎とその工房が描いた肉筆画(そのほとんどがオランダ国立民族学博物館とフランス国立図書館からの一時的な里帰り)を重点的に見よう、と気構えたものの、やはり途中で目眩を覚えるような展覧会だった。
肉筆画の持つ迫力は実物ならではの醍醐味。緻密に描かれた各モチーフの輪郭と、ほとんどエアブラシを使ったようにしか見えない彩色の見事なグラデーション。生命感に溢れ、奥行きのある作品群に思わず息を呑んだ。
中盤の浮世絵のエリアは後ろ髪を引かれつつもどうにか流して見終え、国内所蔵の肉筆画のエリアに差し掛かってまた足が止まった。終盤の絵本・絵手本のエリアまでをじっくりと見て、なんとか閉館間際に終了。時には生々しく細密に、時には戯画化して軽快に、と自在にその表現を変えながら、対象物の持つダイナミズムとその本質を一枚の画にしてしまう北斎の洞察力と描写力はあまりに凄まじい。
展覧会の最後に、北斎が誰かに宛てた手紙が一枚展示されていた。そこには83才の北斎の自画像が添えられている。ユーモラスながら迷いの無い筆遣いは、全ての作品を見終えてなお一際印象に残るものだった。これまたオランダ国立民族学博物館の所蔵品なのがやけに情けない。お爺ちゃん、大事にしてもらってね。

February 7, 2008 11:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 徳島・田中家と武知家住宅

12/26。午後早くにフジグラン石井を視察してから六條大橋手前の『田中家住宅』と『武知家住宅』に立ち寄ってみた。この付近は地名を藍畑と言い、藍商家などの古民家の点在する美しい集落となってる。

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上の写真は『田中家住宅』(国指定重要文化財)の東側外観。田中家は江戸初期から続く藍商。この住宅は1859年から1887年の間に建設されたもので、1977年から1981年にかけて解体修理が施されている。左手の2棟が藍寝床(あいねこ/の葉を発酵させて「すくも」と呼ばれる染料に加工する場所)。中央に突き出して見える茅葺屋根が主屋。石垣には地元産の青石が用いられている。

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南側にある表門から中へ入ると前庭(屋外作業場)がひろがる。上の写真は敷地の南西隅から撮ったもの。

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上の写真は前庭の西側に面した藍納屋。巨大なシーソーのようなものはヒムロの古木で出来た跳釣瓶(はねつるべ)。その支柱や井戸まわりはやはり青石の見事な造作となっている(井戸まわりと表門内側の写真)。

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一方、『武知家住宅』もまた主屋(1862年築)を中心に据え、各棟が周囲をとりまく構成。青石がふんだんに用いられているのも『田中家住宅』と同様だが、主屋の屋根は入母屋の瓦葺。武知家が士分であったことを示している。上の写真は敷地西側の長屋門から撮ったもの。『田中家住宅』以上に広々とした前庭の南側(写真左)にあるのが県指定有形民俗文化財の藍寝床。

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長屋門の下に掛けられているのは竜吐水(りゅうどすい/消火用の水鉄砲)。

どちらの住宅も実際に住居として使用されており、残念ながら通常は公開されていない。この日は遠巻きに拝見するだけにした。『田中家住宅』は土日のみ見学可能(要予約)とのこと。次回の帰省時にはぜひ。

阿波の文化財建造物 - 民家 - (歴文クラブ)
石井町の民家(徳島県立図書館/阿波学会研究紀要

January 10, 2008 11:00 PM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 駒込・六義園

12/16。六義園の『紅葉と大名庭園のライトアップ』最終日。

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すでに紅葉は大方が落葉となり、園内は初冬の風情。それでも、思いのほか趣向を凝らしたライトアップのおかげで、十分に見応えのある散策となった。

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落葉樹に対しては暖色の、常緑樹に対しては寒色のライトアップ。上の写真は園内南側から見た中の島。見事に手入れされた植栽の織りなす見事な人工美は、まるで「日本庭園のフィギュア」のようだ。

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西側の吹上茶屋で松の雪吊り(樹木の雪よけのため円錐状に張り巡らされたロープの造作)越しに池を見ながらひと休み。

今度は昼間にぜひ来てみよう。

六義園(庭園へ行こう。/東京都公園協会)

January 2, 2008 1:00 PM | trackbacks (0) | comments (2)

都市とデザインと : 蔵前・厩橋地域安全センター

12/14。『KOJIRO』を出て春日通りを西へ。厩橋に少し近づいたところで見つけた物件。本所警察署『厩橋地域安全センター』。もとは『厩橋交番』として建てられたもの。警察庁による交番の統合整理によって2007年4月に衣替えとなったようだ。平日の8:30から17:15のみ地域安全サポーターが駐在する。1928年築。

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大通りの交差点の隅切りに合わせた三角の平面形と、石造りを模したコンクリートの装飾が特徴。薄暗く人通りのほとんど無い中に、ブルーのランプがぽつんと目立つ。無人の内部から蛍光灯の光がこうこうと漏れ出す光景はちょっとシュールで印象的だ。

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角から見ると上の写真のような具合。

「交番」から「地域安全センター」に移行(東京村.COM)
本所警察署厩橋交番(楓車輌)

January 2, 2008 7:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : IKEA港北

12/8。フランス車をたくさん見た後、ウヱハラ先生のルーテシア号で横浜方面へ移動。『IKEA港北』を訪れた。言わずと知れたスウェーデンの巨大ハウスウェアストア。『IKEA港北』は『IKEA船橋』(2006年4月オープン)に続き、2006年9月、ヤナセ横浜デポー跡地にオープンしている。商売柄、行っとかないとマズいかなあ、とは思いつつも、なぜか今まで縁のなかったIKEAの全貌を、この日ようやくじっくりと見ることができた。

到着したのは14時手前。お腹が空いていたため、先に2Fのレストランへ行くことに。ここだけでも一般的なファミリーレストランの3倍くらいの広さがありそうだ。しかも、ランチには遅めの時刻にもかかわらず、テーブルはほぼ埋まっていた。なんとか居場所を確保して、学食を思わせるデリカウンターへ。メニューはそれぞれ注文する場所が決まっており、迷ったり後戻りをしようものならたちまち混雑の原因となる。若干殺伐とした雰囲気の漂う中、どうにか食事を確保。

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見た目はアレだが、味はそんなに悪くない(デザートは選びようによっては危険)。野菜料理のプレートは大方ポテトによって占められている。その他のプレートにもかなりの確率でポテトがごろんと添えられており、スウェーデンの人はそんなにポテト好きなのか、と不思議な気がした。写真のボリュームで1500円分くらい。欲張り過ぎ。ランチとしてはちょっとヘビーだった(特にポテトが)。

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そして、いよいよ売場へ。入口は2F、レジは1Fにそれぞれ1カ所しかなく、客動線は大まかには一方通行に限定されている。各アイテムの売場脇に、その使用シーンを構成した四畳半から六畳間くらいのブースがずらりと並んでいるのが特徴的だ。ソファやチェア、テーブルや収納家具、テーブルウェアやファブリック、照明器具やキッチン造作に至るまで、住まいに関係するものについては置いていないものは無く、バリエーションも極めて豊富。その多くがアジア地域産のIKEAオリジナル商品であり、価格設定はかなり低く抑えられている。

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上の写真は順路の終盤に登場する組み立て式の家具パーツ売場。目眩のするような圧倒的スケール。

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上の写真はレジのエリア。かなりの台数が稼働してはいたが、それでも押し寄せる客をなかなかさばききれない様子だった。レストランと同様、ここでは客が多少我慢してでも店側のやり方に素直に従うことが求められる。

話にはなんとなく聞いていたものの、IKEAの広大さは想像をはるかに上回るものだった。見終わった後の疲労と充実感はほとんど東京モーターショーにも匹敵するほど。ただし、その安さについては商品の質からすると妥当であり、買い得だと思われるようなものはあまり無い。あれだけ夥しいボリュームの、衝動買いを誘発するには十分な価格帯の商品に囲まれていたのに、結局何一つ欲しいと思うものが無かったことには自分たち自身驚きを覚えた。

ヨーロッパの人々の生活において、IKEAの商品がどのように位置づけられているのか、私たちには分からない。はっきりイメージできるのは、おそらく日本人がこれらを後生大事にすることはまずない、と言うことだ。耐久性に乏しく、補修の難しい家具や雑貨は、値段相応の扱いを受けて短期間で使い捨てられるのだろう。

港北インターチェンジへと向かう車で、後ろを振り返って少しぞっとした。
夕闇に浮かぶIKEAの偉容が、まるでゴミ集積場のように思えたのだ。

IKEA港北
イケア(Wikipedia)

December 21, 2007 9:00 AM | trackbacks (0) | comments (6)

都市とデザインと : French-French-East 6th

12/8。ウヱハラ先生のルーテシア号で『French-French-East』へ。2004年から尼崎(兵庫)、南町田(東京)などで開催されているフランス車のミーティング。関東での開催はこれが6回目とのこと。会場はカルフール南町田店の屋上駐車場。

クルマについては運転が全く出来ない上に知識も乏しい私たちだが、乗せてもらったり眺めたりするのは大好きだ。とりわけフランス車特有の(どことなく歪んだ)モダニズムと先進性には心惹かれるものがある。とは言え、フランス車オーナーでもないのにこうしたミーティングを覗かせてもらうのは少々恐縮なわけで、どちらかと言うとこの日はルーテシア号でのドライブを楽しみに、とりあえず遠巻きに見ているつもりだった。しかし、続々と集結する珍車の群れをいざ目の前にすると、当初の奥ゆかしい思惑はものの見事に忘却の彼方へ。カメラを手に、小躍り気味に会場をぐるぐる歩き回ること3時間弱。いやはや、すっかり楽しんだ。

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上の写真はルノー・ヴェルサティス。日本には正規輸入の無い大型高級車。ヘッドライトまわりの複雑な面処理と大味なグリルの意匠が一種独特な面構えをつくり出している。特に素晴らしいのが質感高く趣味の良いインテリア。鯨が口を半開きにしたようなダッシュボードの造形は極めて印象的だ。
その他の写真:1 / 2

以下、めぼしい物件をつらつらと。

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世にも見目麗しいシトロエンDS。
その他の写真:1 / 2

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エグいスタイルにマセラティ製エンジン、シトロエンSM。
その他の写真:1 / 2

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質素なハイドロニューマチック、シトロエンGSA Pallas。いい色。
その他の写真

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ぬーぼーとした得体の知れないボリューム感、シトロエンCX。改めて見ると現行モデルのC6とのディテールや雰囲気の共通性が興味深い。CX Prestigeも見ることができた。
その他の写真

December 19, 2007 1:00 AM | trackbacks (0) | comments (4)

身体と空間の芸術, 都市とデザインと : 展覧会行脚のメモ 2007年11月・2

11/24。自由が丘『alternative』でランチの後、六本木へ移動。オオタファインアーツで『見附正康展』を見た。見附氏は1975年生まれの九谷焼の作家。現在「赤絵細描」の第一人者である福島武山氏(その作品と動画は必見)に師事し、石川県で活動している。「赤絵細描」は中国明代の赤絵金襴手を手本に金沢で発達した色絵のテクニック。
展示されていたのは大皿4点、蓋物2点、花瓶1点。シンプルなフォルムの器に描かれたパターンの細密さはあまりに凄まじく、じっと目を凝らさないとフォーカスが合わないほど。描かれているのは瓔珞(ようらく/古代インドの装身具をパターン化したもの)や七宝(しっぽう/円を重ねて繋いでいく仏教由来の吉祥文)と言った一般的な古文様だが、それらが同心円上に綺麗に配置された様は和風と言うよりむしろエキゾチック。異様なまでの細密さが、ある種呪術的な雰囲気を醸し出す。これまでに体験したことの無い感覚に、思わず息を呑んだ。

同日、銀座へ移動してMEGUMI OGITA GALLERYで『中村ケンゴ ”スピーチバルーン・イン・ザ・ビーナスと21世紀のダンス”』を見た。作品についての詳しい解説はこちら。マットな質感の中にやわらかな奥行きと光沢を秘めた画面(「近代の日本画」の技法で描かれている)が、ほぼモノトーンに近い配色によって力強く引き立つ。特に『21世紀のダンス』のシリーズは、マティスの絵画をサンプリング・再構成した結果、自然物モチーフのパターン(例えばトード・ボーンチェなど)を思わせるファッショナブルさと、暗くシニカルな批評性を同時に獲得しているのが興味深い。
シリーズ中にはダンサーが黒で描かれたものと、白で描かれたものの二通りがある。個人的に、そのミステリアスさに心惹かれるのはやはり「黒」の方だが、明るさを装った「白」の方がコンセプト的にはより捩れている。どちらも魅力的だ。

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11/30。打合せからの帰りに青山のCLEAR GALLERYで『倉俣史朗 Liberated Zone』を見た。倉俣のデザインした家具・プロダクト作品のうち、アクリルとガラスを主素材とする代表作が8点余り展示されている。私たちにはどの作品とも10年以上ぶりの再会だ。以前ならその存在感に圧倒されるばかりで、まったく目に入らなかったアクリルの継目や金物の溶接箇所を、今では冷静に見ることができる。当時持てる知恵と技術の粋を凝らした倉俣と制作者の共同を物語るそうしたディテールの囁き声に、私たちはそっと耳を傾けた。
展示作品中、その洗練性において際立っていたのが『Glass Chair』(硝子の椅子/1976/三保谷硝子製作)と『Luminous Chair』(光の椅子/1969/イシマル製作)だった。とりわけ『Glass Chair』のもつ非現実性は、現物を目の当たりにしない限り、まず実感することはできないものだ。倉俣の作品について語られる場合、そこに込められた夢とポエジーに主眼が置かれることが多い。しかし椅子や家具という概念に対するパロディとしてあまりに完璧な『Glass Chair』のデザインは、甘いロマンチシズムの彼岸にあると言っていい。『Glass Chair』のとなりに佇む『Miss Blanche』(ミス・ブランチ/1988/イシマル製作)は、なんだか少々申しわけなさそうで微笑ましかった。
『Miss Blanche』を除き、全ての作品はギャラリーで購入することができる。家具類にはおおよそ数十万円から数百万円の値が付いていた。今はとてもじゃないが、『Glass Chair』と『Luminous Chair』はいつか何とかして手に入れたいものだ。まずはどこにどうやって置くかが問題だな。

工芸とデザインと現代美術。もはやぼんやりと霞んでしまったその境界を、行き歩いたような3つの展覧会だった。

December 11, 2007 6:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

身体と空間の芸術, 都市とデザインと : 展覧会行脚のメモ 2007年11月・1

11/3。『Noi Shigemasa Exhibition ~The glass~』を見にリスン青山へ。心の師匠・野井成正さんデザインの新作インセンスホルダー(香立)の展示。通常はこの店の主要な商品展示台として使われているガラスのカウンターの上の半分近くが、この日はガラスのインセンスホルダーで埋まっていた。スタッフの方いわく、それでもイベントが始まった頃よりは少なくなったとのこと。すでにけっこう売れてしまったのだ。

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買ったのは新作インセンスホルダーの大中小三種類のうち中(直径95mmくらい)と小(直径65mmくらい)。ガラスの台に真鍮製のリングが嵌り、スティック香が立てられるようになっている。ぽってりとした手作りガラスのフォルムは今にもはじけそうな水滴を思わせる。あるいは桜あんパンみたいでもある。やわらかで無駄の無い造形、涼しげな質感、ずっしりとした重み。一見すると意外だが、じっくりと味わえばたしかに、これもまた紛れも無い野井デザインだ。

11/16。『鳥獣戯画がやってきた! - 国宝「鳥獣人物戯画絵巻」の全貌』を見にサントリー美術館へ。甲乙丙丁の4巻(鳥獣戯画として一般に馴染み深いのは甲巻)全てに加え、作画・由来的に関連性のある種々の作品を集めて展示する内容。昔の教科書だと鳥獣戯画は鳥羽僧正の作とあったが、実物を見ると甲乙巻、丙巻、丁巻で作者が異なることは素人目にも明らかで、クオリティ的にも雲泥の開きがある。特に甲巻は後年になってかなりの部分が継ぎ接ぎされており、もとはその一部だったものが切り取られて別の掛軸になっていたりもする。断簡と呼ばれるそうした部分や写し、模本などを手がかりに甲巻の原型について考察する展示は、難解ではあるがその分じっくりと楽しめるものとなっている。
それにしても、玉石含めて模造品には事欠かない甲巻だが、オリジナルの迫力は本当に凄い。迷い無く、生命感溢れる筆致で描かれた線画のキャラクターたちにすっかり心を奪われてしまった。とにかく凶悪なまでに可愛らしく、繊細で、完成度が高いのだ。現在は展示替えで各巻の後半部分を見ることができるようになっている模様。もう一度見に行かなくちゃ。

それから『佐藤卓ディレクション「water」』を見に21_21 DESIGN SIGHTへ。水にまつわる様々なインスタレーション、立体、平面作品が全部で38種。食材の製造に要する水の量を示す『見えない水の発券機』(竹村真一佐藤卓)、超撥水コーティングのステージに水滴が踊る『鹿威し』(原研哉)などが印象に残った。それぞれにスケールを置き換えた『猫の傘』と『ねずみの水滴』(佐藤卓)もチャーミングなインスタレーション。シンプルだが、リアリティのある作り込みにはっとさせられる。

ミッドタウンでもうひとつ。『とらや』に立ち寄ったところ、店内のギャラリーで『寿ぎのかたち展』が開催中。伝統的な折形、水引とその製作過程にまつわる展示に加え、オリジナル商品も見ることができた。田中七郎商店による水引の造形は実に優美なもの。伝統的折形の雛形に見られる工夫と、そのバリエーションの豊富さには驚いた。折形デザイン研究所、田中七郎商店、とらやの協同によるぽち袋を後で購入しようと思ったが、上のふたつの展覧会を見ている間にすっかり忘れていた。こちらも要再訪。

さらに同日、自由が丘に移動してバスで深沢不動前へ。天童木工PLYで『柳宗理 家具展 2007』を見た。現在新品として購入可能な柳デザインの家具を一覧することのできる内容。特にあまり出会う機会の無いダイニングテーブルを、スタッフの方からご説明をいただきながらじっくり見ることができたのは有り難かった。強度と機能の両立のために考え抜かれた天板裏の構造と、面取りの手法に思わず唸る。また、今年初めに東京都近代美術館の展覧会『柳宗理 生活のなかのデザイン』で見た『デスク』(1997)が新作の『Yanagi Desk』(白崎木工製)として販売されていた。鋭角的でソリッドなフォルムと重厚な無垢材の質感は柳デザインの家具には珍しい。こちらも興味深く拝見した。

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Tendo Classicsのカタログと『亀車』(1965/全長12cmほど/別アングルの写真)を購入。宮城県鳴子の木地こけしの老舗『高亀』のために柳氏がデザインしたもの。箱が無かったのは残念だが、入手できたのは幸運。ろくろ引きの手法を生かした見事な造形。キモ可愛い。

December 5, 2007 3:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 表参道・LOUIS VUITTONのディスプレイ

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11/3。ルイ・ヴィトン表参道店前にて。ともすれば素人くさいインスタレーションになってしまいがちなシンプルなアイデアがそうならなかったのは、そのディテールゆえ。照明器具はおそらくオリジナルだろう。蛍光管の配線や支持部の処理のスマートさが印象に残っている。

ルイ・ヴィトン表参道ビル07年9月(JDN/東京ショーウィンドー)

November 27, 2007 7:00 PM | trackbacks (0) | comments (0)

身体と空間の芸術, 都市とデザインと : 展覧会行脚のメモ 2007年10月

10/16。午後過ぎから出光美術館の『没後170年記念 仙厓・センガイ・SENGAI 禅画にあそぶ』へ。仙厓(1750-1837)は日本最初の禅寺・博多の聖福寺の住職として1800年前後の再興に務めた禅僧。宗教者としての業績だけでなく書画においても優れた人物だったが、ある時期(1810年前後と言われる)を境に細密画を描かなくなり、以後「うまへた」な水墨作品を描き続けた。その過激なまでの脱力具合、禅を極めた境地から発せられる破壊的な賛文は、簡単に「ユーモラス」などと言えるような代物ではない。『一円相画賛』などはその最たるものだろう(「これくふて茶のめ」って。。。)。展覧会では出光美術館の有する日本最大のコレクションを通して仙厓の作品と生涯が網羅的に紹介されており、そのボリュームたるや大変なものだった。図録は『指月布袋画賛』や『○△□』が見開きでまっぷたつに掲載されていたのが残念。

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神保町へ移動して南洋堂書店の『菊地宏展 - 光の到達するところ』へ。菊地宏氏の手がけたリノベーション(2007年8月完成)によって、建物(1980年築/土岐新設計)は通りに対してずいぶんと開放的になり、客動線は整理されていた。4Fのギャラリースペース『N+』での展示は合板やコンクリートを用いた模型を中心とする内容。アーシーな質感が印象的。小さなモニターでループしていた各作品の紹介映像には工事中の風景が多く含まれていた。カオティックな現場に少ない手数で端正な表情が与えられてゆく様は興味深い。中でも『LUZ STORE』は現存しているうちにぜひ見ておきたかった作品。『毎週住宅を作る会』を見ていた頃はこんなに力強い作風の建築家になる人だとは予想していなかった。月日は人を変えるのだ。翻って見ると、ウチは当時からあまり変化も成長もしていないような。いかんなあ。

竹橋方面へ移動してKANDADAの『伊藤敦個展「"777"」』へ。パチンコにまつわる様々な社会的、あるいは個人的な事情を、批判するでも肯定するでもなく、端的に示す作品の数々。インスタレーションや立体、映像によるその乾き切った表現は時に痛々しく、時に生々しい。廃棄されたパチンコ台のパーツをそのまま簡潔に再構成したシリーズ『"777" - Flower - 』では、その過剰な造形とイルミネーションに息を呑んだ。脇のプラズマモニターから流れる地方のパチンコホールの映像へと目をやると、空間を覆いつくす凄まじいまでのアイコンの羅列に思わず目眩を覚える。パチンコホールは現代日本におけるウルトラバロックなのだ。彫刻作品『"777" - Home - 』はパチンコホールのちいさな模型。エントランスの脇にぽつんと置かれた姿は妙に懐かしく、郷愁に似た感覚を誘うものだった。

10/24。松屋のデザインコレクションで『alternative』のための資材調達をした際に、デザインギャラリーで開催中だった『PHランプと北欧のあかり』を見た。PHランプの開発過程とそのバリエーション展開を概観する内容は、個人的にはこれまでほとんどまとめて見たことのなかったもので、大変勉強になった。配布されていた資料に掲載されていたポール・ヘニングセンの言葉はなかなか辛辣で興味深い。以下引用。
「夜を昼に変えることなど不可能だ。わたしたちは24時間周期のリズムで生きており、人間は爽やかな昼の光から暖かみのある夕暮れへの移ろいに、ゆっくりと順応するようにできているのだ。家庭での人工照明は、言うなれば、黄昏どきの光の状態と調和すべきであり、それは、黄昏特有の暖かみのある色の光を使うことによって実現可能だ。夕刻、ほかの部屋にはまだ薄明かりが残っているような時間に、冷たい蛍光灯がリビングルームで煌々と光っていては不自然だ。そして、強烈な光は目をくらませ、物の色は正しく再現されず、自然な陰影は生まれない。」

さらに同フロアの画廊で開催されていた『寺本守 銀彩展』へ。まったくのノーチェックでふらりと訪れたが、これが素晴らしかった。線描の上絵付に銀箔・銀泥を施してから掻き落とし、低火度で焼きつける手法で作られた陶芸作品のシリーズ。深みのある表情とクールな佇まい。思わず衝動買いしそうになったが、なんとか思いとどまった。今度出会った時のために貯金しとこう。

November 23, 2007 8:00 PM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 東京モーターショー2007

11/7。『第40回東京モーターショー 2007』を見に幕張メッセへ。いつもは閉場の2時間ほど前に到着し、荒天に翻弄され、駆け足に疲れ果て、困憊の体でぎゅう詰めの京葉線に揺られながら帰るのだが、今回は珍しく早起きして、天気の良い日を選んで訪れたので気分は上々。展示ブースのデザイン視察に重点を置きつつ、じっくりと会場を巡った。

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今回最も印象に残ったのはメルセデス・ベンツの展示ブース。照明入りのルーバー造作が流れるような曲線を描きながら展示スペースの上空をぐるりと囲う。通路部分の床は全面がグレートーンのシャギーカーペット敷き。こうした展示イベントではほとんど経験したことの無いふわふわした歩行感覚が新鮮だ。
間仕切やカウンターなど、他の造作は床から生えて来たような黒いボリュームとしてデザインされており、グラフィック類はごく控えめ。全体に要素が少なく、落ち着きと一体感のある空間が構成されている。

リサーチカー『F700』の展示エリアでは、プレゼンテーターが曲げアクリルの映像モニターを前に解説を行っていた。モニターには床下からビデオプロジェクターの映像が投影され、その内容は右側壁面の大型モニターと連動する。アクリル板を支えるフレームにはタッチセンサーが仕込まれているようで、素手で画面を操作しながらプレゼンテーションを行っていた(F700プレゼンテーションの様子)。微妙に未来的な演出が『F700』の堅実なコンセプトに良くマッチしているように思う。

その他の写真:全景部分1部分2スマート展示1スマート展示2

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続いて挙げたいのはヤマハ(二輪車)の展示ブース。デザインを特徴づけるのはこれまたルーバーだが、独特の力強い造形感覚によってメルセデス・ベンツのブースとはひと味違う空間が構成されている。床面と展示用ステージの仕上げは共に薄塗モルタルを思わせる質感。軽快さと重厚感、鋭利さと量感の対比が際立つ。

その他の写真:全景ルーバー展示ステージ

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三菱ふそう(商用車)の展示ブースはゲート状の造作の配置による極めてシンプルで大胆な構成。手前の大型観光バスが小さく見えるほどのスケールを持つ無柱の広場は、開放的でありながらまとまりを感じさせる気持ちのよい空間だった。

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アウディの展示ブースは巨大なボリュームを上部に浮かせたデザイン。造作を円筒形にくり抜いた内面に施されたグラフィックと、ダウンライトやスポットライトなどの点光源を主体としたライティングの手法は単純にオーソドックスであると言わざるを得ないが、空間全体の印象としては至って潔く、好感が持てる。

例年見事なデザインを見ることのできるBMW写真)とMINI写真)の展示ブースだが、今回は2005年のデザインをほぼ踏襲したものとなっていた。文字情報を大きくあしらったグラフィックの羅列はどうにも古びて見える。次回に期待。
その他、国内の乗用車メーカーの展示ブースとして、事前情報ではトヨタ写真)と日産写真)も注目を集めていたようだったが、個人的には印象に残らなかった。特に日産の展示ブースに見られる薄っぺらな和風趣味は、2001年、2003年の明快な建築的手法に比べてずいぶん後退してしまったように思えてならない。

国外メーカーが軒並み中国市場へとプロモーションの比重を移してしまった後に行われる初の東京モーターショーは、見終わってみるとやはりいつもに比べて少々華やかさに欠けるものではあった。国内市場の活性化を狙う国内メーカーを除いて、展示ブースは概ねヨーロッパ各地のショーで用いられたデザインを踏襲し、部材を流用したものであるとの話も聞く。
とは言え、極端な大画面映像や、無数のムービングライトなどの「これでもか」的な演出が下火となったことはむしろ喜ばしい。部材の持ち回りについてもヨーロッパのディスプレイデザインを(廉価版とは言え)概ねそのまま見ることができると言う面においては(また環境的見地からも)歓迎すべきかもしれない。展示ブースのデザイントレンドは企業の打ち出すテーマを冷静かつ確実に伝える手法へと移行している。

祝祭は終わり、クルマはその本質的な必要性を問われているようだ。

東京モーターショー

クルマについてはこの続きで。

November 9, 2007 5:00 AM | trackbacks (0) | comments (2)

都市とデザインと : 岩崎堅司展 IROIRO・DEKOBOKO

10/9。夕刻に大江戸線で六本木へ。ミッドタウンから真っ直ぐギャラリー間へ移動し『小嶋一浩+赤松佳珠子/CAt展』を見た。それから千代田線で表参道へ。ギャラリー5610で『岩崎堅司展 IROIRO・DEKOBOKO』を見た。

CAt展については特に書くことは無い。しかし岩崎堅司展は小規模ながら素晴らしい内容で、これを見るためだけにでも、仕事の合間にアトリエを抜け出した甲斐があった。グラフィックデザイナー・岩崎氏の経歴については残念ながら詳しいことが全く分からないが、ウェブ上の情報を継ぎ合わせて判断すると、おそらく御歳は古稀を過ぎておられる。杉浦康平氏、福田繁雄氏、仲條正義氏らとほぼ同じかほんの少し下の世代だ。
会場には岩崎氏がこの展覧会ために制作した平面作品と、スチールによる立体作品が並べられている。どれもが極めつけにミニマルなグラフィックアートで、その構成要素はほぼ無個性なフォントと色面のみという潔さ。連続する箱の凸凹がLIFEを描き、JOHNの細部にIMAGINEが潜み、ECOLOGYとECONOMYが微笑みながら出会い、PEACEとWARが表裏に重なり合う。作品からストレートに伝わるメッセージやユーモアが心を打つ。

この展覧会を見て私たちが感じたことを敢えて一言で表すと、それは“駄洒落力の凄味”であったように思う。こう書くとほとんどの人が引くんだろうな、と思いながら書くわけだが、あたまに“駄”とは付くものの、実のところ駄洒落は大変立派なものではないかと私たちは睨んでいる。
駄洒落とは、無縁の彼岸同士にあるふたつの概念を結びつけるパラレルな思考に他ならない。それは芸術の本質と言っても差し支えの無いものだ。あるいは駄洒落とは、“芸術を裸にしたもの”なのかもしれない。

私たち若輩デザイナーは自らのデザインをなんとなくおシャレな空気感で包んで、ぼんやり見ている人に「ちょっと良さげかも」と錯覚させることにかけては上の世代のデザイナーよりも長けているかもしれないが、表現の根本は脆弱だ。なにせ私たちはコンセプトを直接的に伝えることを“こっぱずかしい”と感じてしまう。裸では最初から勝負にならないのだ。

ギャラリーを出て骨董通りを渡り『蔦珈琲店』で庭の秋草を眺めながらぐるぐると考えを巡らせた。デザイナーたるもの、おシャレよりも駄洒落を磨かねば。
骨太で、力強く、かつなんともキュートな岩崎氏の作品は、正に裸のグラフィックアートだった。

Gallery5610

October 12, 2007 12:04 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 箱根・茶房菜の花と十六夜

9/17。『ポーラ美術館』を離れ東海道を東へ。再び渋滞に遭いつつ1時間余りをかけて箱根町湯本に到着。最終目的地の『まんじゅう屋 菜の花』を訪れた。街道沿いの小さなビルは3Fまでが店舗として使用され、1Fが『まんじゅう屋 菜の花』(2001)、2Fが『茶房 菜の花』(2001)、3Fが『そば切り 十六夜』(2006)。インテリアデザインは1Fが中村好文氏(レミングハウス)、2Fが小泉誠氏(コイズミスタジオ)の師弟共演。3Fのインテリアは小泉氏と彫刻家の神林學氏による共作(ロゴは望月通陽氏、焼物の器は内田鋼一氏の作)となっている。

箱根の宵は極めて短く、この店も1Fと2Fの営業時間は17:30まで。3Fも18:00にはラストオーダーとなる。残念ながら1Fをじっくり見ることはあきらめ、2Fでお茶とデザートをいただいてから3Fで蕎麦、という妙な順序での見学となった。

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2F『茶房』のインテリアは、塗装と左官による白い空間に大型の木造作を配置することで大胆に構成されている。エントランスから区画の長手へのパースペクティブを強調するように、各造作はゆったりとした奥行きを持つ。開口部の大きさも手伝って、全体の印象は至って開放的だ。この「開放感」は小泉デザインとしてはユニークな要素かもしれない。

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フロア中央の大テーブルに落ち着いてキッチン側を見ると、鋭角的に造形されたフードまわりの垂壁がシンプルな空間に絶妙な破調を加えていることが分かる。セットメニューは桐のプレートで、草木の飾りを沿えて提供される。

階段を上がって3Fの『十六夜』へ。スチールドアの向こう側に帯状の木材と和紙で出来たゲートが現れる。うねるような造形が『茶房』の直線的なデザインとの鮮やかな対比を印象づける。

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客席は三角形の小上がりと2つの大テーブルにゆったりと配置されている。武蔵美COZ15と店のスタッフも制作に加わったというインテリアは手作り感たっぷりの仕上がり。フロア中央には白漆喰のパーティションが象徴的に置かれ、沸き上がる雲を思わせる造形が目を引く。別アングルからの写真はこちら

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店主氏は京橋『三日月』にゆかりのある方とのこと。道理で二八のそばは見目麗しく食感・風味ともに素晴らしい。つゆは出汁の香りの際立つ上品で優しい仕上がり。インパクトには欠けるが、観光地の場所柄にはちょうど良いのかもしれない。今後趣味性と立地のどちらに比重を置いてゆかれるのか、少々気になる。
驚いたのはウヱハラ先生に分けてもらった納豆そば(撮影:ウヱハラ先生)。なんともふくよかでクリーミーな食感。そばとつゆとの相性も抜群。これはぜひともまたいただきたい。

和菓子 菜の花
そばきり 十六夜

September 30, 2007 7:00 PM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 箱根・ポーラ美術館

9/17。『とらや御殿場店』から箱根方面へ。途中地滑りによる渋滞に遭いつつ山道を登ると、両脇にギザギザとした造形的なガラスの屋根を持つバス停と『ポーラ美術館』のサインが現れた。

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ブリッジを渡ってエントランスへ。免震構造の建物は谷あいに設けられた円形の壕に浮かぶようにして、控えめにその姿を覗かせている。

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上の写真左がエントランス。巨大な扉はステンレスメッシュに覆われている。上の写真右はエントランスから下方を見た様子。壕と建物とが互いに切り離された構造であることが分かる。

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ロビーへと向かうアプローチもまたガラス張り。自然光に満ちた吹き抜け空間がひろがる。左手に見えるコンクリートの鋭角的な造形と、右側の壁一面に用いられた分厚い波板ガラスの優しい質感の対比が印象的だ。

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エスカレーターを下り、ロビーからさらに下方まで吹き抜けは続いている。奥へと進むに連れて、ガラス壁の存在は徐々に圧倒的なものへと転じてゆく。上の写真右はそのディテール。内側に照明器具とライトチューブが仕込まれており、壁全体がぼんやりと発光する。

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巨大なボリュームを持つ空間ながら、細部はどこまでも端正そのもの。建築デザインは安田幸一氏(日建設計・現東京工業大学大学院)。施工は竹中工務店

壮麗なる力技に思わずため息。ここまで凄いの見ちゃうとかえって凹むなあ。。。時間が無かったので展覧会は見ずに移動。

ポーラ美術館

September 26, 2007 10:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : とらや御殿場店

9/17。久しぶりに丸一日のオフ。ウヱハラ先生のトゥインゴ号で御殿場・箱根の日帰りツアーに連れ出していただいた。最初の目的地は『とらや御殿場店』。2006年にオープン。建築デザインは内藤廣建築設計事務所

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外観は細い短冊の木材に覆われた箱に薄い屋根を乗せたシンプルなデザイン。深い軒と、それを支える細い柱が印象的だ。店舗部分の南北は全面ガラス張りで、エントランスから店内越しに向こう側の庭までが見通せる。正面外観はこちら

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軒下では屋根の軽快さがより強く感じされる。各部のディテール(上の写真)は繊細で美しい。昇降機構を持つ暖簾まわりの天井面を見ると、各パーツがグリッド状の底目地に合わせて厳しく配置されていることが分かる。

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店内に入ると、4m前後はあるかと思われる天井の高さに対して、インテリア造作の高さは極力低く押さえられており、極めて開放的な空間が確保されている。上の写真は左手奥から右手前方向を斜めに見たところ。飲食エリア(虎屋菓寮)は物販エリアと完全にひと繋がりで、客席の間隔は広い。

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上の写真はエントランス辺りから左手奥を見たところ。東西の壁面は外部と同様の木材に覆われ、床はほぼ同色のウッドフローリング。その上に置かれたインテリア造作は主に明るい色の竹の集成材と和紙で構成され、建物との対比を見せている。大テーブル席のアップはこちら。竹集成材のキャビネットにはIH調理器とシンクが埋込まれている。引出の取手は皮の帯。

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あんみつと葛切のセットを注文。さっぱりと上品。美味い。

到着したのが午前中で、店内にあまり客が居なかったからかもしれないが、ウヱハラ先生が店の内外を写真に撮っても良いかスタッフの方に訪ねたところ、あっさりと了解していただけた。外観の撮影中、強風で巻き上がっていた暖簾をわざわざ降ろして直して下さったことには驚くと同時に恐縮。大変ありがとうございました。

御殿場の『とらや』は人も空間も実におおらかで、都内からでもわざわざ和菓子を買いに行きたくなるくらいに居心地が良い。建築・インテリアデザイン好きの方には、マナーを守りつつ(フラッシュの使用や他の客に悪い印象を与えるような動きはなさらぬよう)大いに見学させていただくことをお薦めする。

現在、御殿場では『とらや工房』の建設が進行中とのこと。デザインはこちらと同じく内藤廣建築設計事務所。今年10月末のオープンが楽しみだ。

とらやグループ
とらや御殿場店(内藤廣建築設計事務所)

東京ミッドタウン・とらやとMUJI(April 29, 2007)

September 21, 2007 11:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

身体と空間の芸術, 都市とデザインと : 国立能楽堂・納涼茂山狂言祭2007

8/18。国立能楽堂『納涼茂山狂言祭2007』の夜公演へ。ここで茂山狂言を見るのは昨年に続いて2度目。相変わらず国立能楽堂は気楽でいい。勝野は竺仙の絹紅梅、ヤギはTシャツにジーンズ、という他の能楽堂だと着物マダムの皆さんに白い目で見られそうな出で立ちだったが、ここでは余計な気遣いをしなくて済む。

建物は大江宏建築事務所1983年の作。外苑西通りと明治通りを繋ぐJRの線路脇の道を、その中ほどで少し住宅街の側に入ると柿葺(こけらぶき)を模した金属屋根が折り重なって表れる。

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ファサードや外構のデザインはまとまりに欠けるが、インテリアは見事なものだ。上の写真は終演後の舞台。光源をほとんど意識させない超フラットなライティングが異空間を浮かび上がらせる。

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上の写真はエントランスロビー。上部に木製ルーバーを設けた開口部のデザインが巨大な半蔀(はじとみ)を彷彿させる。

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上の写真はエントランスロビーからホワイエへと続くメイン通路。中庭(写真右)を半周するようにして横ルーバーの意匠が続く。

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ホワイエで天井は一段と高くなる。上部はぐるりと光壁。縦向きとなった木製ルーバーがそのスケール感を強調する。見所の外側にある通路(写真左)を含め、舞台以外のライティングには蛍光灯が上手く使われている。

最初の演目は京極夏彦作の『豆腐小僧』。千之丞氏演じる豆腐小僧の可愛らしさと、千五郎氏演じる大名の雷親父ぶりの対比が実に鮮やか。休憩をはさんでの『三人かたは』はナンセンスの極み。笑いのパワーが凄い。最後の『神鳴』(かみなり)は田楽の流れを汲む楽しくおめでたい演目。八百万の神の国に住む民衆の厚かましさとたくましさに思いを巡らせつつ、大いに笑わせていただいた。

August 30, 2007 1:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 小泉誠展 匣&函

8/9。『小泉誠展 匣&函』を見にGALLERY le bainへ。

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ギャラリーの正面は動線に対して斜めに設えた白い間仕切りで遮られていた。これは発泡スチロールの塊を積み上げたもの。小さく切り欠いたような入口から中に入ると、白いボリュームはガラス面を挟んで中庭からギャラリーへと貫入し、展示スペースはいつもと丸きり異なる印象に。コストをかけず、最少の手数で空間を変化させる手法にいきなりはっとさせられた。

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白い箱の内外にはJパネル(杉)の箱と、それを組み合わせたいくつかの作品が、ごろんところがされるような姿で置かれていた。座ったり寝そべったりは自由。それぞれが家具でありつつパーソナルな空間でもある。どの作品もかたちそのものは至って単純で、一見無造作にも思えるが、中に入ってみると妥協無く細かな寸法調整が施されていることが分かる。居心地が良いのだ。しかも楽しい。

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上の写真右はデスクとベンチの組み合わせ。上の写真左などはかなりアクロバティックな幾何学的構成。おそらく部分的に金物で補強されているのだとは思うが、外見上はふたつの木の箱でしかない。その佇まいはほとんどミニマルアートだ。

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どの展示作品にもプロダクトとしての完成度と実験性とが高い次元で両立されていた。「箱」という素朴なテーマにこれほどの深みを与えた小泉氏の手腕とクリエイティビティに驚き、頭が下がる。大変勉強になりました。

Koizumi Studio(小泉誠)

August 15, 2007 2:00 PM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 内田繁 DANCING WATER

7/8。渋谷・桑沢デザイン研究所に内田繁氏の展覧会「DANCING WATER - ミラノ’07作品展」を見に行った。展示内容は実に盛り沢山で、インテリアデザイナーの展覧会としては破格に見応えのあるものだった。

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駐車場のスペースを利用したと思しい会場に入ると、いきなり3つの茶室が登場。手前から『受庵』、『行庵』、『想庵』(1993)。奥側2室の外観写真はこちら

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茶室の中にも入ることができた。上は『受庵』の内部。外形は単純な直方体だが、メッシュの透かせ具合が部分ごとに異なることから微妙な奥行き感のある空間が生まれている。『行庵』の内部は和紙に覆われている。閉ざされ、フラットで柔らかな光に満たされた空間はある意味最も茶室らしいもの。ヴェネチアンガラスやデコラティブな金属器を交えた茶道具が違和感が無くコーディネートされているのが面白い。『想庵』の内部にはランダムなメッシュが木漏れ日のような影を落とす。座して眺めるのもいいが、立ち上がってあちこち見回すのも楽しい。

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透明のビニールシートに一輪挿しをあしらった『フラワー・スクリーン』(2004)を向こう側にまわると、ゆらゆらと波打つような光を背景に、ガラスの幹と枝をもつ樹を白い毛むくじゃらの生き物が取り巻いていた。これらは2007年のミラノサローネに出品されたインスタレーションで、それぞれに『ダンシング・ウォーター』、『グラス・ツリー』、『ムー』という作品名が付けられている。ひとつひとつサイズやかたちの異なる『ムー』は、腰掛けることもできるオブジェとも家具ともつかない作品。意外と安定感があり、このままセットでどこかに常設してあっても良さそう。

左側の赤いベンチと右側の黄色いソファは2003年にコトブキのためにデザインされたロビー用ファニチャー(『アルフィー』『ソー・イン・ラブ』)。

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上の写真左は『想庵』の裏にあった『ツリー』(2001)。木漏れ日のもとは樹を模した照明器具だった、という仕掛け。

写真右の小さなテーブルのシリーズは、それぞれ高さや形状、サイズの異なる天板に、部材の共通する三本脚のパーツを組み合わせたもの。年代・作品名は不明だが、この展覧会で内田氏が示したマスプロダクトと少量生産品、家具とオブジェのあいだに向けてのデザインアプローチが象徴された作品であるように思えた。このテーブルは『ムー』の兄弟なのだ。

90年代以降の内田デザインが、どこから来てどこへ向かいつつあるのかを俯瞰することの出来た貴重な展覧会。見ることができて本当に幸運だった。
帰り際、近著『普通のデザイン』を購入したところ、内田氏の似顔絵の金太郎飴をおみやげにいただいた。この春に内田氏が受賞された紫綬褒章のお祝いなんだそうだ。これまた大変有り難い。でも恐れ多くてとても食べられそうにないなあ。

内田繁「DANCING WATER - ミラノ'07作品展」

July 25, 2007 4:00 AM | trackbacks (0) | comments (5)

都市とデザインと : 大阪・ボンバール江戸堀

6/25。大阪視察の最後に立ち寄ったのは『ボンバール江戸堀』。立ち飲みスタイルのワインバー、というイマドキな業態ながら、オープンはなんと1992年。内外装デザインを手がけたのは『VAGRIE』と同じく我らが心の師匠・野井成正さん。

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地下鉄肥後橋駅から地上に出て四ツ橋筋を少し南下。郵便局のある交差点から西へ5分ほど歩くと例によって控えめな立て看板。手前の店の生簀を横目に見ながらビルの裏側のような半屋外の通路を奥へと進み、ようやく亜鉛メッキのファサードへとたどり着く。ロゴの入った面はもともと営業時には左手に長く突き出して客を招き入れる動線をつくっていた。現在は通路の突き当たり(暖簾のかかったところ)に店ができたため短く切り落とされている。おかげでなんとも閉鎖的な店構えとなってしまったが、隠れ家的でいい塩梅とも言えなくはない。

時間が17:00過ぎと早かったため、客はまだ私たちだけだった。バーテンダー氏にコップワインを注文。つまみに串揚げをいただく。大阪らしい、最高の組み合わせだ。

内装で先ず眼に飛び込んでくるのは、頭上に折り重なった材木群とバーカウンターとの狭間の空間。最小限にして完璧なライティングがその間合いを絶対的なものにしている(特に材木群に向けてのアッパーライトの収め方は見事)。さらに亜鉛メッキの板状の造作が千切れた屏風のように不完全な間仕切りとなり、10人も立てば満杯の店内を絶妙な居心地の良さで満たす。バック棚は節有の板材に切り込みを入れ、スチール板を差し込んだもの。隙間から漏れる光の描く陰影が美しい。安価な素材の組み合わせが豊かな空間を生み出す。野井マジックのひとつの頂点がここにある。

帰りの飛行機に間に合うように、この日は早めに引き揚げた。おそらくあと小一時間もすれば、ここの名物とさえ言えるいつもの大賑わいが訪れただろう。商売向きとは決して言い難い場所で15年。このちっぽけな店は、街と人間にとって何が本当に大切なのかを、そっと教えてくれているような気がする。

ボンバール江戸堀/大阪府大阪市西区江戸堀1-27-8
06-6448-0280/16:00-24:00/年中無休

ボンバール江戸堀(noi-shigemasa.com)

July 16, 2007 2:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 大阪・LAWRYS FARM & JEANASIS 南堀江

6/25。『VAGRIE』から四ツ橋筋の西側を南下。目的地を行き過ぎて立花通りに迷い込んだところで偶然に『LAWRYS FARM & JEANASIS』(ローリーズファーム&ジーナシス)南堀江を発見した。内外装デザインはアウトデザイン(黒川勉)が手がけている。2005年3月にオープンした最晩年の作品。現在アウトデザインのホームページには掲載されていない。

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店内は1Fに『LAWRYS FARM』、2Fに『JEANASIS』というフロア構成。手裏剣型の異形タイルに覆われたファサード(別の写真)の大きな面にそのふたつのロゴが配置されている。アンバランスなようでいて決まっているようにも見える不可思議なレイアウトが、アウトデザインの作であることを静かに物語る。

月曜の日中にもかかわらず立花通りの賑わいは大したもので、この店にもたくさんの女性客が。さすがにインテリアの写真を撮ることは断念した。

書籍などで写真を見た限りではあまりピンと来るものの無かった作品だが、実物の持つ迫力は想像をはるかに上回るものだった。安価でカジュアルな服を販売する店に黒川はあえて凝り固まった構成を与えることなく、素材の使い分けによる面の切り分けで動線と視線を大雑把にコントロールする手法をとっている。一方、空間の「ゆるさ」対して什器をはじめとする各部のディテールは極めて雄弁だ。何故そこに?と思うような箇所に施された装飾。ガラスケースの危うげな構造。大きな壁付ミラーフレームの裏に隠れたフィッティングルーム。それらの積み重なりが頭の中にひとつの風景を形作る。

何気ない佇まいに潜む気高いフェティシズム。下手なデザイナーがこれを真似すると、眼も当てられないことになる。かく言う私たちにも、こうしたバランスを成立させる自信はまだ無い。もっともっと、精進しなくては。

LAWRYS FARM & JEANASIS 南堀江/大阪府大阪市西区南堀江1-19-30
06-6533-5150/11:00-20:00/無休

July 11, 2007 12:00 PM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 大阪・VAGRIE

6/25。梅田から再び南へ移動。北堀江のバッグショップ『VAGRIE』(ヴァグリエ)を訪れた。インテリアデザインを手がけたのは我らが心の師匠・野井成正さん。

四ツ橋駅からすぐの長堀通りに面したビル入口に控えめな立て看板を見つけ、小さなエレベーターで2Fへ上がると目の前に『VAGRIE』のドア。インテリアは柱型、梁型を残しつつ至って簡素に仕上げられている。壁は白い塗装で、床もやはり白く染色されたウッドフローリング。天井面の塗装は淡いグレーで、シルバー色の配線ダクトによって8列のボーダー状に分割されており、そこにシルバー色のコンパクトなスポットライトがずらりと並んでいる。エアコン類は天井ではなく壁に設置されているため、グレーのフラットな面は至ってミニマルで象徴的に見える。また、単純な白一辺倒ではないことが、かえって空間のひろがりを感じさせる。

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店内は白い半透明の衝立て状の家具で緩やかに分節されている。この衝立てはドットパターンを漉き込んだ和紙をアクリルでサンドしたもの。しばらく店内を移動しているとなんだか雲間に浮かぶような心地がする。

商品もまた魅力的。子安一子氏のデザインする数々のバッグは、その製造工程の多くを国内でのハンドメイドに負う。端正かつ造形的な外見を持つばかりでなくどれも実に機能的で、内部の細かな箇所まで一切の妥協無く作り込まれている。使用されるシーンを周到に想定し、意外なディテールに遊び心をしのばせるセンスもまた見事。子安氏のバッグには「小粋」という言葉が真に似つかわしい。長財布をひとつ購入。今度は貯金して行こう。

『VAGRIE』のバッグは東京では日本橋三越で見ることができるとのこと。

VAGRIE/大阪市西区北堀江1-7-4-2F/06-6533-2349
11:00-19:00/日祝休

VAGRIE(noi-shigemasa.com)

July 10, 2007 9:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 大阪・地下鉄御堂筋線心斎橋駅

6/25。前日の神戸出張のついでにこの日は大阪市内を半日視察。主に地下鉄網でぐるぐると移動。地下鉄御堂筋線の主要駅は空間の使い方が贅沢で実にいい。写真は心斎橋駅のホーム。ゆるやかなヴォールトに40W蛍光灯の巨大なペンダントライトがずらり。

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ここ数ヶ月の間にICカードの相互利用にすっかり慣れてしまったため、いちいち切符を買わなければならないのが煩わしいことこの上ない。ちなみにICOCA - Suica(JR西日本 - JR東日本)はすでに相互利用可能。PiTaPa - Suica(西日本の他社鉄道 - JR東日本)もそのうち相互利用が開始される予定とのこと。関西と関東とで見るとPASMOだけが蚊帳の外(相互利用できるのは当面Suicaだけ)なんだそうだ。地域をまたがって移動する機会のある人にとってはちょっと気になる話。

大阪市交通局
Suica, ICOCA, PiTaPa の相互利用を進めます(スルッとKANSAI協議会)

June 29, 2007 5:00 AM | trackbacks (0) | comments (2)

都市とデザインと : NICOLAS G. HAYEK CENTER

6/21。gggで『廣村正彰 2D⇔3D』を見た後、中央通りへ出ると斜め向かいに見慣れない高層ビルがあった。スウォッチグループの本社機能を備える『NICOLAS G. HAYEK CENTER』(ニコラス・G・ハイエック センター)。5/24にオープンしたばかり。建築デザインは坂茂建築設計

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14階建のビルの全景を対面から写真に収めることはなかなか難しい。最上階の不整形な屋根の下にあるのがイベントホール。その下数フロアにわたってオフィス、さらにカスタマーサービスが3フロア、4FからB1Fまでがスウォッチグループ傘下ブランド(スウォッチオメガブレゲレオン・アトブランパングラスヒュッテジャケ・ドロー)のブティックとなっている。

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写真上方にあるガラスの楕円柱はブレゲのショーウィンドウ。それ自体が油圧昇降式のエレベーターとなっており、乗り込むと3Fのブレゲ・ブティック銀座へ直接アプローチできる。地上階には同様に各ブティックのショーウィンドウ兼直通エレベーターがブランドの数だけ配置されている。プラン的にかなり厄介なことになりそうだが、利用する分には至って分かりやすく、なかなか面白い仕掛け。

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写真は裏通りから中央通りの方を見たところ。地上階から4Fまでは壁面緑化の施されたアトリウムで、裏通りへの通り抜けができる。ビルのファサードは前面背面ともに巨大なガラスのシャッターで4分割されており、開放すると各フロアの大半が風の通り道となる。実際に活用されることがあるのかどうかは不明だが、実に大胆極まりない設計だ。言わば、ビルごとオープンテラス。

現状ではさすがに装備が重過ぎる印象は否めないが、こうしたことを実現できる仕組みが将来的にもっと洗練されて風通しの良いビルが増えれば、都市の景観はずいぶんと軽やかなものになるだろう。そんな想像の膨らむ楽しい建物だった。

June 28, 2007 10:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 廣村正彰 2D⇔3D

6/21。ggg(ギンザ・グラフィック・ギャラリー)で『廣村正彰 2D⇔3D』を見た。廣村正彰氏は1954年生まれ、田中一光デザイン室出身のクリエイティブディレクター。建築・インテリアデザインの世界では、埼玉県立大学 サイン計画(1999)、CODAN Shinonome サイン計画(2003)、丸善・丸の内本店 サイン計画(2004)、横須賀美術館 VI計画およびサイン計画(2007)などのプロジェクトで知られる。

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1Fでは大型のグラフィックパネルと液晶モニターを用いて、3つのデザインリサーチの紹介が行われている。中でも興味深かったのはエスカレーターそのものにグラフィック処理を施すサイン計画。実現はかなわなかったものの、グラフィック操作によって環境そのものを制御し、機能させようとする廣村氏の野心的な志向を最も端的に象徴するプロジェクトだ。

B1Fでは氏が実際に手がけたいくつかのサイン・VI計画と、さまざまなロゴマークデザインを見ることができる。壁面全体をグラフィック処理し、要所のみをパネル化して浮かせた展示手法は実に明快だ。動線の中ほどに天井吊りされたスクリーンには、表裏から各プロジェクトの実際の状況を記録したビデオ映像が投影されている。ほとんど1、2mmのチリしかない完璧なフレーミングには思わず舌を巻いた。こうした見事な収まりと施工精度の高さには、多くの現場で2Dと3Dでの作法の違いに厳しく折り合いを付けて来た氏の取り組みがそのまま表れているように思う。
展示の内容もそれぞれに興味深いものだった。フロアごとに割り当てられた色面が時に力強い縞模様を構成する『CODAN Shinonome サイン計画』は、グラフィックによる環境デザインとして最もアヴァンギャルドな試みのひとつだろう。ガラスを多用した建築に呼応し、宙空に浮かぶグラフィックが風景に溶け込む『横須賀美術館 VI計画およびサイン計画』は息を呑む美しさ。どちらも近いうちにぜひ実際の空間を拝見してみたい。

グラフィックの持つ力が本来2Dのみにとどまるものではないことを体感することのできる貴重な展覧会だった。ものや空間をねじ伏せられるだけの腕力を、廣村氏以降の世代のグラフィック・ウェブデザイナーは果たして獲得することができるだろうか。また、グラフィックの力を最大限に引き出すことのできるだけの設計力を、私たちインテリアデザイナーや建築家は今もなお持ち得ているだろうか。

廣村正彰 2D⇔3D

June 24, 2007 5:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 名古屋・ラシック

5/22。『いば昇』で昼食の後『ラシック』を視察。三越名古屋栄店の別館として2005年にオープンした複合商業施設。

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館内には建物中央の無柱空間がフロアごとに異なる手法で活用されることによって特徴的な構成が与えられている。普通なら吹き抜けにしてしまうであろうところに動線や売場が縦横に折り重なり合い、ある種迷宮的で複雑な表情を作り出しながらも、商業施設として破綻の無い分かりやすさを同時に持ち合わせているのが面白い。上の写真は1Fと5Fの共用部分。

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各フロアで写真を撮るとその表情はみごとにバラバラで、後で見ると同じ施設内には思えない。上の写真は8Fと3F。

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上の写真は4Fエスカレーター正面の様子。柱の無い大きなフロアが区分され、テナントの売場となっている。割り切った造りと共用の天井造作。ちょっと他に無い雰囲気。

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上の写真はB1Fの食料品売場。どのフロアも天井はあまり高くはないが、その眺めには独特の「抜け」感がある。

一見地味ながら、商業施設として極めてユニークで挑戦的な建物と見た。デザインを手がけたのは日建設計

ラシック

テナントでは『arco STORE』が特に面白かった。巨大な家具カウンターに店舗としての主な機能をシンプルに詰め込んだデザイン。『ete+』はいつどこで見てもやはりカッコいい。デザインは文田デザインオフィス(文田昭仁氏)。

June 2, 2007 10:00 PM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 藤森建築と路上観察オープン記念講演

4/26。東京オペラシティアートギャラリーで開催中の『藤森建築と路上観察』のオープン記念講演へ。司会を松田哲夫氏が担当し、藤森照信氏、赤瀬川源平氏、南伸坊氏、林丈二氏が対談するかたちでの進行。以下はその簡単な覚え書き。

藤森建築と路上観察
藤森照信教授のページ

May 19, 2007 10:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 新丸の内ビルディング・丸の内ハウス

新丸ビルのつづき。7Fは『丸の内ハウス』と呼ばれる飲食店フロア。プロデュースはheads・山本宇一さん。8店舗のインテリアはそれぞれ別のデザイナーが、共用部分のデザインはKata(形見一郎さん)が手がけている模様。

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上の写真は24日のオープニングパーティーの時のもの。エスカレーターを上がると、共用部分の天井に埋込まれた大きなミラーボールがきらめき、常設されたDJブースからの音楽がフロアを煽っていた。いきなりの先制パンチに一瞬呆然とし、それから思わずにんまりとなる。この日、東京のど真ん中がクラブ、カフェカルチャーに飲み込まれたのだ。

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通路からはドリンクを片手にテラスへと出ることが可能。ベンチやテーブルは固定され、建物の一部として設えられている。

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テラスの東側からライトアップされた東京駅を見下ろすのはなかなか気分がいい。この5/30からは大規模な保存・復元工事がはじまるので、この簡素な屋根形状の東京駅が見られるのはあと残り2週間足らずかもしれない。2011年末には2つのドームを擁する新駅舎がお目見えする予定。
西側へと移動すると、前川國男設計の東京海上ビルディング。その向こうは皇居の森。

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中華料理を提供するカフェ・ダイニング『SO TIRED』のインテリアはKata(形見一郎さん)のデザイン。カラフルなステンドグラス風のパーティションと大きな立体の店名ロゴが強烈な印象。チェアには教会用のものが用いられている。テラスから店内を見るとこんな具合。インテリアデザインと言うより、そこで飲食する客も含めてのインスタレーションと言った方がしっくり来るようなアーティスティックな空間だ。ジェニー・ホルツァー氏やバーバラ・クルーガー氏などの作品との関連を感じる。

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升を思わせる照明器具が美しい『ソバキチ』のインテリアデザインを手がけたのは橋本夕紀夫氏。蕎麦を提供する居酒屋。バラバラに配置されたテーブル席を、フロア中央の立ち飲みカウンターとその周りの簡素で大胆な意匠が、見事にひとつの空間へと束ねている。

ビル内の他のフロアと同様に細い通路が多いため、ひとつのまとまったフロアとしての雰囲気はあまり感じられない『丸の内ハウス』だが、結果として生じた迷宮性を逆手にとって、路地裏のような雰囲気を作り出しているのが面白い。その最も裏手にある男子禁制のバー『来夢来人』にもそのうちぜひ行ってみたい(ヤギは行けないけど)。

山本さんにも少しだけご挨拶することができた。「やり切ったと思う」という力強い言葉が心に残る。

丸の内ハウス

新丸の内ビルディング・decora、石月など(May 14, 2007)

May 16, 2007 11:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと, 食べたり飲んだり : 新丸の内ビルディング・decora、石月など

4/24のプレオープンから数日にわたって視察した新丸の内ビルディングについてのあれこれ。

全体のプランニングはビル中央にエレベーターなど共用の機能要素を配置し、その周辺を通路とテナントがぐるりと取り囲む形式。六本木ヒルズの森タワー低層フロアと同様の極めてオーソドックスなものだ。各フロアのエスカレーター周りにソファがいくつも振る舞われていること、モールディングやミラーなどを多用した偽ヨーロッパ調の装飾がそこかしこに見られることなどを除けば、特筆することは無い。

個々のテナントのデザインにはユニークなものがいくつかあった。以下、あまりに人が多くてろくな写真が撮れなかったので、そのうち差し替えるのを前提にとりあえず。

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中でも最もアヴァンギャルドで、かつ品格あるインテリアデザインを見ることができたのはアイウェアショップ『decora TOKYO』(2F)。商品の眼鏡は主に店内奥のガラス棚と手前のステージに置かれている。共用通路に対して垂直方向に並んだガラス棚の正面側には左官壁が立ちふさがり、店の外からは商品が斜めにちらほらとしか見えない。また、人の胸の位置ほどの高さのあるステージは天面が大きく凹んだつくりとなっており、そこに置かれた商品を見るには近づいて上から覗くより他は無い。ガラス張りの正面から店の全景を見れば、縦格子状の白い左官壁と黒い塊のような造作が柔らかな間接照明に包まれてあるのみ、と言った景色。カウンセリングを重視したプランを明快な手法でさらりとまとめたのはinfix(間宮吉彦氏)。

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フロア中央に巨大なオーブンを象徴的に置いたプランで度肝を抜くのが『POINT ET LIGNE(ポアンエリーニュ)』(B1F)。『d'une rarete』、『Dan Dix ans』に続く淺野正己氏プロデュースのベーカリー。オーブンの三方をカウンター造作が取り囲み、パンのディスプレイや受け渡しなどすべての運営機能をそこで賄う至ってシンプルな空間構成がとられている。右側の壁は土煉瓦のような素材に覆われ、最奥は鮮やかなピンク色の左官、そしてエントランスは一面ダークグレーの巨大な引戸。オーブンの設置場所は防火区画となるため天井内にシャッターが収められ、その帆立がイエローの面としてふたつ並んでいる。『Dan Dix ans』のような精緻さは無いが、このルイス・バラガン的な大胆さもまた素敵だ。インテリアデザインはTYPE-ONEの斉藤真司さん。

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山手線の東側に住む人間にとって、新丸ビルの飲食店(一部は朝4:00まで営業)の充実ぶりは実に頼もしい。中でも一際清逸な店構えを持つ蕎麦屋が『石月』(5F)。一部に個室を配置したフロアは、間接照明のラインを境に羽目板張りのボリュームと左官の面に分節されている。その構成は極めてシンプルだが、キッチンを区切る壁の描く緩いカーブや、通路側の開口上部を大きく斜めに裁ち落とすなどの操作も手伝って、ギリギリのところで緊張感のある空間が成立している。こうした寸止めは相当な腕前が無くてはとても出来るものではない。いただいたパンフレットを見ると、インテリアデザインを手がけられたのはレミングハウス・中村好文氏とのこと。大いに納得した。軽快な椅子のデザインも見事。

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何分オープン直後なので運営面にはまだこなれていない印象があった。それでも京橋『三日月』ゆずりの蕎麦とつまみは抜群。ほぼ出汁の風味のみで完結するつゆは『並木』とは対極のスタイルだが、美味い。今後このエリアで蕎麦をいただく店はここで決まり。

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どなたがデザインされたのかは不明だが、グラフィカルな手法で東欧のテイストを簡潔に表現したジュエリーショップ『COCOSHNIK(ココシュニック)』(3F)のインテリアは、『石月』とは真逆の方向から来てギリギリのところで踏みとどまったデザインに唸らされた。什器などの細部も素晴らしい。

その他、吊り戸棚形式のワインセラーを見せ場にした迫力あるデザインの『WW』(6F/写真)、ゴッサムシティで見かけそうな凝ったつくり込みの『ARTS & SCIENCE 新丸ビル』(1F/写真)、赤い暖簾の向こうに白い木立のような什器が並ぶ『記憶 H.P.FRANCE 丸の内店』(1F/写真)なども印象的だった。

新丸の内ビルディング・丸の内ハウス(May 16, 2007)

May 14, 2007 6:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : ルイ・ヴィトン名古屋栄店

4/23。『風来坊』を出て久屋大通を北へと歩く途中に偶然『ルイ・ヴィトン名古屋栄店』を発見。1999年オープン。建築デザインは青木淳建築計画事務所。今や東京にも多くのブティック建築が見られるようになったが、この店はその端緒と言って差し支えないだろう。

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思いがけず目の前に現れた姿は息を呑む美しさだった。表面のガラスと、その内側の壁に施された市松パターンの重なり合いが引き起こすモアレの効果が、建物としての実体やボリュームを包み込み、消し去る。

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ガラス面に斜めから寄ると上の写真のような具合。

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照明はガラスと壁の間の下面のみに入っている。よく見ると光が壁面に向かって照射されるよう、ルーバーが斜めを向いていることが分かった。

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おそらく今後私たちの生活する都市環境の中で、建築的表現はこうした薄い皮膜のデザインとして再構築されてゆくのだろう。一見儚げなその存在には、街にも商業にも組みしないイノセントな力強さがある。

LOUIS VUITTON NAGOYA(青木淳建築計画事務所)

May 11, 2007 5:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 名古屋・ideaとbeOrganic

名古屋『ミッドランドスクエア』のつづき。テナントにもインテリアデザイン的にユニークなものがいくつかあった。

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筆頭はイデアインターナショナルの扱うデザイングッズとボディケア用品の大半を見ることができるショップ『Idea Flames』(3F)。店舗区画を二分する防炎垂壁を天井造作に、防火扉をショーウィンドウに取り込むことで、大胆な空間構成が実現されている。ややこしいロケーションを味方につけてしまう見事な手腕。

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ゴムテープのルーバー内に配線を収納できる中央什器、ライン状のステンレスカバーに収納された床コンセントと配線スペースなど、この手の物販店ならではの工夫もまた面白い。表参道ヒルズにも『Idea Flames』はあるが、空間の質的にこの名古屋店とは比較にならない。プロフェッショナルで遊びのある仕事はKata(形見一郎さん)によるもの。

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オーガニック食材を扱うデリ・カフェ『beOrganic』(B1F)のインテリアは木の質感を生かしたシンプルな構成。壁面にある野菜のディスプレイや調理台と一体になったデリカウンター、半オープンのキッチンなどで、独特の活気ある雰囲気が演出されている。共用通路側の大きな木枠引戸には目線の高さにリサイクルガラスがあしらわれ、イートインのエリアにはHIDAの杉材チェア。空間にも店のコンセプトがあくまでさりげなく表現されている。インテリアデザインはイガラシデザインスタジオ(五十嵐久枝氏)。
有機野菜のサラダをメインとするメニューは極めてシンプルだが、実に納得の美味しさ。シーザーサラダのセットとローストポテトは絶品。早く東京にも出来ないものか。

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どなたがデザインしたのかは不明だが、『バカラ』(1F)のショップのシンプルで力強い空間構成も印象に残るものだった。高い天井に大きなシャンデリアが嫌味無く映える。

May 5, 2007 9:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 名古屋・ミッドランドスクエア

4/23。愛知出張の合間に名古屋駅前の『ミッドランドスクエア』を視察。2007年3月にオープンした複合商業施設。内外装のデザインを手がけたのは日建スペースデザインジオ・アカマツ

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名駅通りに面してブティックがパッチワークのように並んだファサードは上品とは言い難いが、商業エリアの環境デザインはモノトーンを基調にスッキリとデザインされている。

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通路幅は広く、天井は高い。特に低層部の共用通路の広大さは東京の商業施設では体験できないものだ。地上階に並ぶショーメやセリーヌ、バカラなどのテナントも、そのスケールを生かしてのびのびとブランドを演出している。施設全体のプランニングは東京ミッドタウンなどと同様、吹き抜けの周辺を通路とテナントが取り囲むごく一般的なものだが、余計な装飾にまみれていないことがかえって豊かさと余裕を感じさせる。

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上の写真は吹き抜けに面したエレベーター。ミニマムながら存在感のあるデザイン。アップルストア銀座を拡大したよう。

と、オープンラッシュの東京の商業施設に比較してデザイン的には圧勝の感のある『ミッドランドスクエア』だが、1日に数回の頻度でちょっと驚くようなことが起こる。

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吹き抜けの天井に並んだ照明オブジェが音楽とともに昇降、変形し、様々にその色を変える演出は、まあふた昔ほど前に流行ったからくり時計の親玉のようなものか。あきれる程のダイナミックさに、思わず笑ってしまった。

ミッドランドスクエア

つづきはこちら

May 5, 2007 1:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

身体と空間の芸術, 都市とデザインと : 21_21 DESIGN SIGHT

東京ミッドタウンのつづきでもうひとつ。オフィス・商業棟北側のミッドタウンガーデンへ出ると、その最奥に見える低層の別棟が『21_21 DESIGN SIGHT』(何と読むのだろう?)。建築デザインは安藤忠雄建築研究所。この日はギャラリー1でウィリアム・フォーサイス氏のインスタレーション『Additive Inverse』とアレッシオ・シルヴェストリン氏によるパフォーマンスを、ギャラリー2でオープニング展『安藤忠雄 2006年の現場 悪戦苦闘』を見ることができた。

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建物としてのボリュームの大半を地下に埋めたデザインミュージアムは、それ自体が最良の常設作品だ。立体的な回遊動線がコンパクトに収められ、その造形的な内部を鈍い自然光が照らす。実に簡潔で力強い空間。おそらく国内でも指折りの安藤建築だろう。展覧会では図面や模型、素材サンプルなどの展示物の大半が長テーブル(建設用足場で組まれたもの)上にずらりと並べられ、観覧者はその周囲をベルトコンベアよろしく一方通行の動線に従って流れてゆくよう構成されていた。これまた笑えるくらいにシンプル。

ウィリアム・フォーサイス氏のインスタレーションはギャラリー中央に置かれたプール状の造作内をスモークで充たし、その上部から映像を投影するもの。プールの上に蓋は無く、ほんのちょっとした空気の流れが映像にゆらぎをもたらす。急いで動くとスモークが溢れて消えてしまいそうだ。陽炎のように幻想的で儚げな存在感が印象的。
アレッシオ・シルヴェストリン氏のダンスパフォーマンスが行われたのはスモークのプールから少し離れた場所。観客との距離のあまりの近さに驚いた。ほとんど見えるか見えないかの細い糸で自ら動きを拘束しながらの表現は、インスタレーションと同様極めて繊細で美しいものだった。

さて、そんな充実した内容の『21_21 DESIGN SIGHT』だったが、残念ながらその周辺環境はまともにデザインされているとは言い難い。建物の写真を少し引いて撮ろうとすると、途端に絵にならなくなってしまう。

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この植栽とか、もう少しなんとかならなかったのだろうか(建物の背後に見える針葉樹の並木は実のところ隣地の中学校のもの)。水飲場とかベンチに至っては思わず泣けてくるような代物なんだなこれが。。。

21_21 DESIGN SIGHT

東京ミッドタウン・とらやとMUJI(April 29, 2007)
東京ミッドタウン・SAYA、Ideaなど(April 30, 2007)

May 1, 2007 3:00 PM | trackbacks (0) | comments (2)

都市とデザインと : 東京ミッドタウン・SAYA、Ideaなど

東京ミッドタウンのつづき。『とらや』と『MUJI』以外にもインテリアデザイン面で気になる店舗がいくつか。

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柳宗理氏、小泉誠氏ら、日本人デザイナーがデザインしたテーブルウェアを扱うショップが『SAYA』(3F)。運営は佐藤商事、店舗のデザインは小泉誠氏が手がけている。気取ったデザインのブティックが居並ぶ中に、剥き出しのコンクリートブロックと薄手の暖簾の店構えが現れる様は実に潔く痛快だ。店内の造作も極めて簡素だが、過不足の無い小泉デザインが伺える。ローコストかつハイクオリティ。こうした仕事にはデザイナーとして勇気づけられるものがある。

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イデアインターナショナルが運営する家電ショップ『Idea Digital Code』(3F)のデザインもまたシンプルそのもの。真っ直ぐな形状の什器のみで構成された真っ白な空間だが、主要部分の素材は人造大理石。ストックの扉や引き出しはトメ(45度にカットされた部材の突き合わせ)で収まっている。一見当たり前のようでいてその実フェティッシュなデザインを手がけたのはKata(形見一郎さん)。

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有機的なカーブを描く木造作の連なりによる洞窟のような空間が特徴的なニットショップ『lucien pellat-finet』(2F)。店舗のデザインは隈研吾建築都市設計事務所によるもの。ヒューマンスケールで質感の高いインテリア。隈氏はミッドタウン内のサントリー美術館のデザインも手がけている。

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京都から東京へ初進出のインテリアショップ『Sfera』(3F)。白い空間の中に木質の東屋をふたつ置いたようなデザインを手がけたのはクラーソン・コイヴィスト・ルネ。造作としては悪くないが、ライティングがどうしようもない。おかげで空間としての仕上がりがパっとせず、惜しいことになっている。

どなたがデザインされたのかは不明だが、ジャムやマーマレードのショップ『Belberry』(B1F/写真)はモール材とファブリックの使い方がユニークな可愛らしい空間。『MARNI』(2F/写真)(店舗のデザインはサイバーライト)は基本的にいつも通りの造りながら、スクエアな店舗区画を生かしたシンメトリカルな什器構成が新鮮。大味でカッコいい。

東京ミッドタウン・とらやとMUJI(April 30, 2007)
21_21 DESIGN SIGHT(April 29, 2007)

April 30, 2007 11:00 PM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 東京ミッドタウン・とらやとMUJI

4/16。東京ミッドタウンへ初めて行ってみた。オープン後2週間あまりを経た平日だったが、かなりの盛況ぶり。私たちを含め、物見遊山の類いと思しい格好・挙動の人が多い。

商業施設のエリアは、細長い吹き抜けの周りを共用通路と店舗が取り囲むガレリアを中心とするオーソドックスで比較的分かりやすい構成となっている。多少厚化粧ではあるが、その作法は多くの郊外型ショッピングモールに共通するものだ。ふたつの「ヒルズ」を経た結果として、こうした空間が東京の都心に臆面無く作られるようになったことは興味深い。横浜クイーンズスクエアや福岡キャナルシティ、名古屋ミッドランドスクエアなどのような個性的でスケールの大きな商環境は、おそらく東京には馴染まないのだろう。

そんなわけで、商環境としては至ってフツーな東京ミッドタウンだが、個々の店舗のデザインについては質の高いものが目立った。中でも最も素晴らしかったのが『とらや』と『MUJI』。どちらもミッドタウン随一の大型店。

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垂直面のほとんどが白い陶製の穴開きブロックで埋め尽くされた『とらや』(B1F)の空間は、その素材から醸し出される遺跡のような「重さ」と、至ってシンプルなプランニングがもたらす「軽さ」の対比が特徴的。まさに『とらや』らしい巨大な暖簾が、一際見事に映える。フランク・ロイド・ライトが現代に再生したかのような、力強く印象的なデザインを手がけたのは内藤廣建築設計事務所
空間だけを見ると『TORAYA CAFE』で評判を落とした虎屋がここに来て眼を覚ましたか、と思われたが、運営面のまずさは相変わらずのようだ。年配スタッフの要領を得ない応対と、接客テーブルの正面から伺えるバックヤードの騒々しさが気にかかる。入れ物に見合った内容を期待したい。

とらやグループ
とらや東京ミッドタウン店(内藤廣建築設計事務所)

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家具のサイズオーダーなどのサービスを付加したミッドタウンの『MUJI』(B1F)は、その店のつくりもまた規格外。面積こそ標準的ながら商品ディスプレイの間隔は大きく、他の『MUJI』とは一線を画する余裕が感じられる。化粧品や生活雑貨、文具も一通り揃うが、固定の大型ガラス製什器に積まれ、完璧なライティングが施されたその様子はとても量販店には見えない。
内装には自然な質感の木材やスチールなど、久しぶりに初期の無印良品の伝統に立ち返った素材が用いられている。それらの構成はかつてなくダイナミックで、しかも繊細だ。大胆な面とボリュームから成る空間は、近年のスーパーポテトのデザインから失われつつあった静けさと緊張感を思い起こさせる。そこには杉本貴志氏の確かな存在がある。

MUJI Tokyo Midtown

東京ミッドタウン・SAYA、Ideaなど(April 30, 2007)
21_21 DESIGN SIGHT(April 29, 2007)

April 29, 2007 10:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 目黒雅叙園

4/13。午後過ぎからランチミーティング。目黒雅叙園へ初めて足を踏み入れた。

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スペースコロニーもかくやと思わせる広大で徹底的にクリーンな空間。内装の細部はバカバカしいくらいに作り込まれているにもかかわらず、あまりにスケールが大きいため、総体としてはシンプルであるとさえ感じられる。

胸の空くようなハイパー和風。恐れ入りました。

目黒雅叙園

April 19, 2007 12:30 PM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと, 食べたり飲んだり : 吉祥寺・Dans Dix ans

4/8。花まつり茶会の前に『Dans Dix ans』(ダンディゾン)に立ち寄った。ずいぶん前から行かねばと思いつつ機会の無かった店。青山『d'une rarete』(デュヌ・ラルテ)に続く淺野正己氏プロデュースのパン屋として2003年オープン。
内外装のデザインは斉藤真司さん。斉藤さんは当時設計施工も手がけていたSHIZENのデザイナーで、現在はTYPE-ONEを主宰されている。『Dans Dix ans』は斉藤さんの代表作であると同時に、SHIZEN代表・島田武さんのテイストが色濃く反映された空間だと聞いていた。

大正通りを西へしばらく進み右手の裏路地に入ると、小さな広場に面したガラス張りの小さなビルがある。その片隅に置かれた小さな看板が『Dans Dix ans』の目印。ゆるやかな階段をB1Fへと降りて、大きな一枚板の自動ドアを開けると、パン屋と言うには実に異質な空間がひろがっていた。

店舗区画はガラスの間仕切りでキッチンとショップに大きく2分割され、双方に視線を遮るものはほとんど無い。ショップ中央に置かれたショーケースはガラス越しにキッチンの作業台へと繋がり、一体のボリュームとして存在する。ショップ側のドライエリアに面して天井吊りの商品棚(キッチンとの間をレールで移動することが出来る)があり、ガラスと垂壁を通した向こう側には緑鮮やかな笹の植込と手水鉢がのぞく。
ショーケースは小さなダウンライトと造作内のLEDで、商品棚は斜めの折り上げ天井からのスポットライトで照らされ、その他の照明はごく控えめ。暗い店内に商品と植込、そして揃いの白いユニフォームを着けたスタッフの姿だけが浮かび上がる。

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研ぎ澄まされ、清々しい緊張感に満ちた空間は、とても気軽に写真が撮れるような雰囲気ではなかった(上の写真は帰ってカットしてから撮ったもの。店内の写真は『JAPANESE DESIGN』などに掲載されている)。調理中の足下まで丸見えの、全く逃げ場のない店内が、オープン後数年を経てこれだけ美しく保たれている背景には、スタッフの弛まぬ努力と優れたプランニングがあるに違いない。これほどまでに強烈なオリジナリティを持った店を見たのは本当に久方ぶりだ。文句無しに店舗デザインの名作。

BE20(フレッシュバター20%+水)とS77(豆乳77%、油脂なし)、セーグル・オ・ルヴァン、ニームとキンカンのジャムを購入。どれも大変美味でした。S77のもちもちした食感は特に印象的。

Dans Dix ans/東京都武蔵野市吉祥寺本町2-28-2
0422-23-2595/11:00-19:00/水・第1、3火休

April 16, 2007 6:00 AM | trackbacks (0) | comments (2)

都市とデザインと : 山本秀夫/アトリエワン/山本達雄

最近見た展覧会のうち3つについての覚え書き。

3/28。studio graphia現場から銀座へ徒歩移動。十一房珈琲で一休みしてから松屋のデザインギャラリーで開催中の『断面A-A 山本秀夫のプロダクトデザイン』を見た。山本秀夫氏がデザインを手がけたプロダクトを、その簡略化・拡大された断面図とともに展示する内容。
要求される機能はそれぞれに高度であったり複雑であったりするが、それらを満たした上で山本氏の提示するフォルムは素っ気無いほどにシンプル。こうした仕事は並大抵の力量で出来るものではない。特に素晴らしいと感じたのは良品計画のための一連のデザインと、丸ビルのトイレまわりの器具デザイン。良質のプロダクトの集積が良質の環境の創出へと繋がることを示す好例。大変勉強になりました。

3/29。ギャラリー間へ『アトリエ・ワン展 いきいきとした空間の実践』を見に行った。建築プロジェクトそのものにさほど力が無く、2004年にキリンプラザ大阪で見た『街の使い方展』に比較すると、質、内容ともに退行してしまっているように感じられたのは残念。第一会場の大半を占める人形劇場は本来プロセニアムアーチのみで成立するものであって、客席を間仕切る曲げベニヤの造作が「いきいきとした空間の実践」に寄与しているとは言い難い。とは言え『ホワイトリムジン』はやっぱり最高に素敵だ。次に期待。

アトリエワン

3/31。『山本達雄「nido」』を見にギャラリー ル・ベインへ。

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通りから中庭、ギャラリー内部に到る広いスペースが仮設のパンチカーペットで競技場のトラックに仕立てられていた。あとは無造作にぐるぐると巻かれて積み重なったロープや発砲樹脂製のチューブが点在するだけ。来場者はそのロープやチューブにずどんと腰掛ける。
これは遠い昔の運動会や競技会を思い出して甘酸っぱい気分になれるインスタレーションであると同時に、おそらく山本氏の師である内田繁氏と三橋いく代氏がそのキャリアの最初期にデザインした家具『フリーフォームチェア』(1969)へのオマージュだ。山本氏はきっとロマンティストで、かつ義理堅い人物に違いない。いつかお会いしてみたいものだと思う。

山本達雄

April 4, 2007 7:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと, 食べたり飲んだり : 表参道・POISSON D'AVRIL

3/16。午前中に青山で打合せ。早めのランチを摂ってからスパイラル・マーケットの脇で開かれている帯留のちいさな展示会へ。移動中に気になる喫茶店を見つけたので、引き返して立ち寄ってみることにした。

エントランスは青山通りに面したビル1Fの、階段室のようなスペースの奥にある。看板はごくごく控えめで、注視しないと何の店がどこにあるのか分からないほどだが、赤いラインで描かれた魚のマークだけは記憶の片隅に残っていた。そう言えばずいぶん前からあったような。
壁に連なった魚のマークをたどると、サッシュレスガラスの向こうに柔らかい自然光の差し込む白い空間が現れた。表からは全く想像のつかない端正な店構え。

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店名の『POISSON D'AVRIL』(ポアソン・ダブリル)は四月の魚(フランス語でエイプリル・フール)という意味だそうだ。オープンは2004年3月。

通路はキッチンカウンターを回り込むかたちでL字型にとられており、その中ほどに一枚ガラスの大きな窓がある。向こう側は隣のビルとの狭間。白くペイントしたコンクリートブロックで囲われた中にウッドデッキが敷かれ、ちいさな庭となっている。ウッドデッキの高さは客席カウンターの天面に揃えられ、ガラス越しに感じられる空間のひろがりが心地良い。黒いカウンタートップに庭が写り込む様子がまた実にいい景色。この日たまたま展示されていた藤波洋平氏の平面作品も、その柔らかな風合いが店内の印象にマッチし、上手く引き立て合う存在となっていた。

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最奥は白い壁をくり抜いたような羽目板張りの凹みとなっており、集成材のベンチが設えられている。その手前にはテーブルと黒いプラスティックチェア(KartellのMaui)。モノトーンと素材の使い分けがなんとも絶妙。造作のディテールの美しさ、施工精度の高さにも思わず唸らされる。デザインを手がけたのは藤岡新(プラッツデザイン)氏とのこと。

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メニューはほぼ珈琲、紅茶類とケーキのみ。丁寧にいれられた珈琲は十分に満足できる味わい(堀口珈琲で指導を受けられた模様)。軽く上品でなおかつしっかりとインパクトのある自家製ケーキは文句無しに素晴らしい。食器類のセレクトについてはそのセンスこそコンサバティブではあるが、良いも