life
life of "love the life"

都市とデザインと : 東京国立博物館法隆寺宝物館

6/21。この日も須賀さんご夫妻とご一緒。『道明』から『うさぎや』、さらに『ラパン』で昼食を採ってから東京国立博物館へ。法隆寺宝物館を一巡りした。建築設計は谷口建築設計研究所(谷口吉生氏)。

080621_horyujihomotsukan.jpg

人工池とともに現れる軽快な箱。上野の森の鬱蒼とした木々の狭間にぽっかりと、大きな穴のように空が広がる。

シンプルなボリュームの組み合わせからなる内部空間も、ガラスケースの林立による美しい展示構成も、それはもうため息の出るほど見事なもの。でも私たちがこの場所で最も好きなのは、池と建物、森と空の関係だ。

東京国立博物館法隆寺宝物館

July 19, 2008 3:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : スワロフスキー銀座

6/20。須賀さんご夫妻と新橋ー丸の内間を散策。『かおりひめ』で昼食後、中央通りを北へ。博品館の斜め向かいにある『スワロフスキー銀座』を初めて訪れた。2008年3月オープン。内外装デザインは吉岡徳仁氏による。

080620_swarovskiginza01.jpg

ファサードを構成するのは数にして幾千本と言う六角のステンレス製異形パイプの束。圧倒的量感。無数の鏡面が通りの風景をモザイク状に変換する。

080620_swarovskiginza03.jpg

上の写真左はクリスタルビーズを混ぜ込んだテラゾタイルの床(左)。研ぎ出されたクリスタルビーズがこれほど美しい光沢を放つとは驚いた。写真右はファサードのステンレスパイプのディテール。パイプ下面にある小さな穴は水抜き用だろうか。

店内の什器は壁埋込のガラスケース(カードキーで開閉される)をメインにゆったりと構成されている。独立の什器やカウンター類の存在は至って控えめ。フロア中央では踏面にクリスタルビーズを敷いた階段が地上階と2階を貫通する。階段室はガラスの間仕切りと光天井で囲われ、その明快なボリュームによって店内は道路から見て手前側と奥側に大きくゾーン分けされる。

主要な壁はファサードの意匠を踏襲した白いアクリル製のレリーフで覆われている。地上階左側奥の壁面のみ人工大理石で仕上げられており、スワンのマーク形にくり抜かれた内部にクリスタルビーズが詰められている。床は屋外と同様に全面テラゾタイル。『Cascade(滝)』、『Ice Branch(氷の枝)』と題された巨大で造形的なシャンデリア(それぞれヴィンセント・ヴァン・デュイセントード・ボーンチェのデザイン)も、贅沢な余白を背景にしてその存在をもてあますことがない。また、現在2階の展示スペースでは吉岡氏によるインスタレーション『シューティングスター』を見ることができる。

080620_swarovskiginza02.jpg

細部を見ればまさしく贅の極みでありながら、空間そのものは極めてシンプルで開放的。スノビズムとは無縁のラグジュアリー感が新鮮で心地良い。デザインテーマを「クリスタル・フォレスト」と聞いて正直あまりピンと来なかったが、おそらくここで言う「森」とはビジュアル的なものではなく「環境」としての意味合いなのだろう。

素材の持つ本質的な美しさに触れること無く、とにかくたくさん使えば高級だ、とばかり闇雲にクリスタルビーズを用いた単細胞なインテリアが巷に溢れる昨今、スワロフスキーが決断した流行とは無縁のキャスティングは実に冷静で賢明なものだ。渋谷『スタイラス』の閉店以来久しぶりに、国内で吉岡氏の研ぎ澄まされた空間デザインを堪能できる場所が生まれたことを心から喜ばしく思う。

スワロフスキー銀座

July 16, 2008 6:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

身体と空間の芸術, 都市とデザインと : 展覧会行脚のメモ 2008年6月

6/6。東京国立博物館で『国宝薬師寺展』。噂通りのものすごい観客数ではあったものの、平成館での企画展には珍しくスペースをゆったりと確保した贅沢な展示構成のおかげで、割合しっかりと鑑賞することができた。スロープを設えた順路から『日光菩薩立像』と『月光菩薩立像』(7-8世紀)の様々な表情を拝む。視線を計算しての絶妙なアンバランスさ。最も心惹かれたのは『聖観音菩薩立像』(7-8世紀)。サイズ的には『日光・月光菩薩立像』より随分と小振りながら(それでも身長190cmくらいある)、真っ直ぐに正面を見据える左右対称の洗練された造形、緻密な衣装の表現がその姿を屹然として見せる。

6/8。アクシスギャラリーで『チャールズ・イームズ写真展 100 images x 100 words』。チャールズ・イームズ撮影の写真の裏側に、デザインにまつわる彼の発言がひとつずつ記され、そのパネルがワイヤー支持で宙空にある。パネルは50枚ずつ2列に構成され、観客は各列の周りを歩きながらその写真と言葉を「鑑賞」する。直球かつ極めてメッセージ性の強い会場デザインとグラフィックデザインは廣村正彰氏によるもの。唯一メモしたのはこの言葉「テーブルに食器を並べるたびに、私は何かをデザインしている」。

6/12。上野の森美術館で『井上雄彦 最後のマンガ展』。井上氏の作品は一切読んだことがない。それでもこの展覧会のインパクトはあまりに強烈だった。

080612_inouelastmanga.jpg

冒頭、ケント紙にペン描きのマンガ原稿からして恐るべき画力に驚愕。通常の美術館順路を逆行するかたちでストーリーが展開し、途中から全てのコマが墨描きとなり、その大きさや筆致は展示空間と呼応しながら変化する。緩急自在にして独創的。伸びやかな水墨画の技量たるや実に凄まじい。美術館は完膚なきまでに一連のマンガへと変換されていた。この膨大な作品量が、ほとんど会期前の3、4週間に制作されたものであるとはにわかに信じ難い。おそらくこのままのかたちでは巡回不可能な一期一会のマンガの「内部」でゆっくりと歩を進めながら、北斎が存命なら嫉妬に狂うだろうな、と思った。

6月某日。サントリー美術館で『KAZARI 日本美の情熱』。最初に展示された深鉢形土器(縄文中期)のグラフィカルなデザインにいきなり釘付けに。並びでおなじみの火焔型土器を見ると、その印象は今までとは丸きり別物。呪術的と言うよりも、むしろ整然として装飾的。鎌倉期の超絶金工に続いて『浄瑠璃物語絵巻』(伝岩佐又兵衛筆/1600年代)と念願の対面。室内装飾の描写の緻密さは想像を上回るもの。鍋島大皿の洗練を堪能後、平成ライダーも逃げ出しそうな江戸初期の兜、平田一式飾り辺りからいよいよヤンキー的センスが全開。最後の『ちょうちょう踊り図屏風』(小沢華嶽筆/1800年代)では被り物集団の奇態に思わず腰が砕けた。

July 13, 2008 8:00 PM | trackbacks (0) | comments (2)

身体と空間の芸術, 都市とデザインと : 展覧会行脚のメモ 2008年5月

5月某日。メゾンエルメス8階フォーラムで『サラ・ジー展』。ガラスブロックの外壁に囲われた明るいウッドフローリングのフロアに、近所の量販店やコンビニで買ってきたような雑貨、食品パッケージなどが大量にぶちまけられていた。その様子は一見雑然としているが、観る者はほどなく個々のオブジェクトの配置に一連の「物語」を思わせる緻密な流れが秘められていることを了解する。フロア中央のエレベーターから晴海通り側の丸柱を取り巻くタワー状の集積へ。エレベーター裏側のスペースから階段を上へ。歩調はゆっくりと、その流れに沿って自然に進んでゆく。所々、設備メンテナンス用の床パネルが剥がされた部分があり、消火栓や分電盤室のドアは半開きになっている。オブジェクトはスキ間に侵入し、建物と半ば一体化しつつあるように感じられる。大規模でありながら儚く繊細で、ゴミ同然でありながら圧倒的に美しい。

5月某日。サントリー美術館で『ガレとジャポニズム』。アール・ヌーヴォーの代表的ガラス工芸家、エミール・ガレの作歴を通して、当時のヨーロッパの美術シーンへの日本美術の影響がいかに大きかったかを体感することのできる内容。単純なコピーからスタートし、次第に精神性を増しつつ独自の世界観を確立してゆく過程が興味深い。最後の最後に展示されていた脚付杯『蜻蛉』(1903-4/最晩年のガレが製作し、限られた近親者だけが譲り受けていたという希少な作品。世界初公開)の深遠な表情に心打たれた。なるほど、これがガレの魅力か。この歳になってようやく理解できたかも。

5/10。水戸芸術館で『宮島達男 Art in You』。空間を贅沢に用いたシンプルな展示手法のおかげで、建物のもつ特徴的なプランニングが思いのほか際立っていた。動線を単純にも複雑にも設定し得るホワイトキューブの連なりは、まさに磯崎氏ならでは。展示作品の見所は新作の立体作品『HOTO』(2007-8)に尽きる。鏡面仕上げの金属による巨大なタワー状の塊。表面に取り付けられた無数のLEDがバラバラに明滅とカウントダウンを繰り返す。それは猥雑なエネルギーを、強力に、それでいて至って静謐に、あたかも堂内の御神体のように発散し続ける。

5/23。ギャラリー間で『杉本貴志展 水の茶室・鉄の茶室』。入場するとまず現れたのが『鉄の茶室』(1993)。パターン状に部材をくり抜いた余り鉄板を継ぎ接ぎした間仕切りは、重厚さと軽さを兼ね備える(写真/外観内部1内部2)。

080523_sugimototearoom02.jpg

展示室と中庭との間には『古梁の待受ベンチ』が横たわる。中庭には一抱えを超える大振りの『鉄の花器』。こちらも廃鉄を転用したもの。

080523_sugimototearoom05.jpg

中庭から上階へ。遮光された展示室内へ入ると『水の茶室』が。天地に張り渡された無数のワイヤーに沿って水滴がゆっくりと連続的に降下してゆく。ライトアップされた夥しい水滴の群れが間仕切りとなり、動線を示す(写真/123)。

080523_sugimototearoom07.jpg

どちらの茶室もいわゆる「茶室」としての完結性を目指すものではない。特に天井を持たないことは、シースルーの間仕切り以上に決定的な要素であるように思う。破格に開放的な空間性に対し、簡易な路地からはじまる動線の設定は、茶事を行う上で至って真っ当なもの。そこに在るのは「素材」そのものの豪放にして艶やかな佇まいであり、亭主と客との間に成り立つ「作法」そのものであって、おそらく「空間」ではない。当日『水の茶室』で実際に催された茶会を内外で眺めながら、杉本氏のインテリアデザインに共通する劇場性について思いを巡らせた。

July 11, 2008 5:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : JIN'S GLOBAL STANDARD 流山店

5/10。ウヱハラ先生のルーテシア号で水戸芸術館へ。宮島達雄展を見た後、ひたちなか市の『サザコーヒー』本店で珈琲と食事。帰りがけに千葉県『流山おおたかの森 S・C』に立ち寄り『JIN'S GLOBAL STANDARD 流山店』を見た。2007年3月オープンのアイウェア店。内装デザインは中村竜治建築設計事務所

ショッピングセンターはつくばエクスプレスと東武野田線のターミナル駅に併設されているが、道路からアクセスすると周辺は未開の荒野のような状態。唐突に出現する巨大な積み木状の建造物の姿は蜃気楼のようで現実味に乏しい。駐車場棟から売場へ入り、フロア中ほどの吹き抜けに横付けされたエスカレーターで2Fへ。目当ての店は通路を挟んだ正面右手に現れた。

080510_jinsnagareyama01.jpg

床も、壁も、天井も、全てフラットなオフホワイトに塗り込められている。角地にあるほぼ正方形の店舗区画を斜めにスライスするようにして壁造作が連続し、客はその間にある狭い動線を通り抜けつつ、壁に設えられた奥行きのちいさな棚什器に並んだ眼鏡フレームを手に取って吟味する(棚什器コーナー部分)。

080510_jinsnagareyama02.jpg

壁の途中には奥へとショートカットのできる開口があり、客は割合不自由無く売場を動き回ることができる(通路と壁の開口)。角から見て最奥の隣地側には検眼や眼鏡加工のためのスペースとレジカウンターが売場をL字に挟むようにして並んでいる。均質化された空間のそこかしこにあしらわれたサイズの異なるミラーの効果と相まって、店内はまるで迷宮のようだ。要所に用いられたモールディングがその印象をより強調し、深みを増す。

080510_jinsnagareyama03.jpg

什器構成そのものはアイウェア店として至極真っ当なもの。しかし店舗のプランニングとしてこれは全くの異常事態だ。なにしろ店内にその全体像を伺える場所がどこにも無いのだから。たしかにレンズも入っていない未調整の眼鏡フレームが万引きされることはほとんど無いだろうことは頭では理解できるとは言え、これを提案したデザイナーと了承したクライアントのチャレンジには心底敬服する。まさに目から鱗。

際限なく歩き回っているうちに、自分の居場所がはっきりしない感覚に陥って、なんだか少し気持ち悪くなってきた。吹き抜けのそばのベンチでひと休み。それにしても不思議で楽しい店だ。店舗のデザインにこんな可能性があったか、と思うと希望が湧いて来る。

JIN's GLOBAL STANDARD 流山店

JIN'S GARDEN SQUARE 青山店(May 6, 2008)

July 1, 2008 3:00 PM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 六本木・hLam

5/4。サントリー美術館でガレを見た帰りに『hLam』(ラム)の前を通り掛った。レナウンが取り扱うイタリアのアパレルブランドのブティック。2007年4月に東京ミッドタウンとともにオープン。その時点ではさほど気に止めなかった店だが、何度かミッドタウンへ足を運ぶうちに、その印象がだんだんと強くなってきた。内装デザインはWonderwall(片山正通氏)。

080504_roppongihlam01.jpg

可動什器を除く全ての造作はエントランスを中心軸とする左右対称に厳しく構成されている。羽目板張りの天井とウッドフローリングの床は同じピッチで仕上がっており、この空間の持つ緊張感を一層高める。設備類の配置は完璧以上。特に空調などはデザインの重要な一部と言って良い。ファサード両側のショーウィンドウと店内中央のショーケースを形作る大きな曲面ガラスは、冷たくぬめるような質感を主張する。

080504_roppongihlam02.jpg

一方、表面を白く塗り潰した細かな横格子のストック、斜めに立てかけられたミラー、エントランスのドアなどの佇まいはいかにも欧州ブランドのブティック然としている。徹底して人工的な入れ物としての空間と、古風なディテールの対比を、色温度の高い間接照明が白々と浮かび上がらせる。

美しきアンビバレンスとでも言おうか、この感じは片山氏の多くの作品に共通するが、『hLam』のそれは特別計算高く、洗練されたものであるように思われてならない。

hLam

June 30, 2008 1:00 PM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : JIN'S GARDEN SQUARE 青山店

4/10。原宿で打ち合わせの後、外苑前の駅への通り道にある『JIN'S GARDEN SQUARE 青山店』に立ち寄った。眼鏡などのアイウェアを中心に、バッグやアクセサリーと言った雑貨までを幅広く扱うショップ。同じ場所にあった『JIN'S GLOBAL STANDARD 青山店』(2006年3月オープン)を拡大リニューアルして2007年10月にオープン。内外装デザインを手がけたのは中村竜治建築設計事務所

その空間は物販店舗として極めてユニークで、しかも実に楽しい。ベースとなるのは床壁天井を白く塗り潰した直方形。前面道路側はサッシュレスのガラススクリーンによって半ば開放された姿となっている。内部には躯体柱、疑似柱を含め数十本の白い四角柱がバラバラと林立し、それらの周囲を木製の棚が円形に取り巻く。円の中心は微妙にズレており、その高さはまちまちに設定されている。ダウンライトのレイアウトもバラバラで、特にどこを照らすでもなくフラットな光が店内全体を包み込む。

080410_jinsgardensquareaoyama.jpg

外から覗く限りでは少々雑然とした印象があり、一見して全体像を想像することのできないなんだかミステリアスな店だ。ところが、一旦内部へと足を踏み入れ、柱の間に狭くランダムに広がる動線を縫うようにして歩きながら、そこかしこに気になる雑貨を発見する感覚には、まるで森の中を散策するような喜びがある。こんなのはまともな店ではまず体験し得ないが、店として破綻しているかと言うと、驚いたことに、全くそんなことはない。棚メインの什器構成自体はこの種の店舗としてごく真っ当なもの。適所にミラーやフックもさりげなく設置されており、売場として違和感無く成立してしまっている。商品ディスプレイから察するに、店のスタッフもこの空間の使い勝手を楽しんでいるようだ。

ついに「売場を料理できる建築家」が登場したか。改装前の店もぜひ拝見したかった。こうした優れた作品性と話題性のある店が登場することで、かつて建築家にとってほんのアルバイトのようなものだった商業建築や店舗が、むしろ「カッコいい」仕事と本格的に見なされるようになれば喜ばしい。

JIN'S GARDEN SQUARE 青山店

May 6, 2008 7:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 阿佐ヶ谷・ひねもすのたり

4/4。阿佐ヶ谷で打合せを二件。夕刻早めに『ひねもすのたり』で食事とひと休み。作家ものの器の販売も行うカフェ。2006年7月オープン。場所はJR阿佐ヶ谷駅北口を出て、線路沿いの小さな商店街にある小さな木造商店の2F。ポットのマークが入ったグリーンの小さなテントと、横長の行灯サインが目印(外観の写真)。地上階には韓国総菜店が入っている。初めて訪れたのは前月のことで、この日は2度目。

テントの下にほとんど軒は無く、すぐ目の前に急な階段が現れる。すれ違いの不可能な幅を白漆喰の壁に挟まるようにして上り、左手にある白い木枠の引戸から店内へ。

080404_hinemosunotari02.jpg

コンパクトな空間は、白漆喰の壁、シルバーにペイントされた合板張りの天井、暗色のウッドフローリングによって簡潔にまとめられている。客席としてはおそらくオリジナルのテーブルが4つあるのみ。その他のチェアや展示棚などには、中古品と思しい家具類がバラバラに用いられている。
一見したところ緩めで、ともすると家庭的と形容したくなる体裁ながら、細部に施された仕事は厳しいものだ。各造作の見切の納まりがシンプルで実に美しい。天井は底目地でグリッド状に区切られ、照明や換気、スピーカーなどの設備類は全てその中に整然とレイアウトされている。真四角に切り抜かれた箇所の上部にはどうやら天窓があるようで、ふと見る度に光の色が変化することに不思議な感覚を覚える。
北側に面した開口部まわりは大方新しく作り直されたもの。引き違い窓の気密性は高く、不要となった雨戸の戸袋は木造作で丁寧に封印されている。ほとんど白色で覆われた展開面の中で窓枠だけは黒くペイントされており、外を見ると逆光と植栽の中に溶け込んで、まるで影のように存在感が無い。
建築的基本性能が高く、緩さの中に節度を要求する空間デザインを手がけられたのは堀部安嗣氏。

080304_hinemosunortari01.jpg

上の写真は前回にいただいたおぜんざい(温)。玄米の餅(ワッフルメーカーで焼いたのだろうか)と甘さ控えめの汁粉。穀物の食感がいい。こちらはゆずと小豆のパウンドケーキ。これまた香ばしく美味い。お茶はそれぞれ浅煎り初摘み白折茶と煎茶。特に煎茶が素晴らしく、帰りに茶葉を購入。京都・和束町にある中井製茶場の有機栽培茶とのこと。

080404_hinemosunotari04.jpg

この日は上のおそうざいセット(上)とオムカレー(下)を注文。どちらも素材の持ち味が引き立つ品。オムレツ+カレー+雑穀のマッチングは意外で新鮮だった。それぞれに個性的な器も楽しい。隅から隅まで女性オーナーのセンスが行き届いている。

営業の終わる時刻が早く、週休2日というマイペースさだが、この店の持つ計算された素朴さは他に代え難い。わざわざ訪れる価値は十二分にある。また近々にお伺いしたいものだ。

ひねもすのたり/東京都杉並区阿佐谷北1-3-6-2F/03-3330-8807
11:30-19:00/木日休

April 28, 2008 2:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 東京メトロ日本橋駅コンコース

4/1。午後から原宿方面で打合せをふたつ。銀座へ移動して松屋でソットサス展。十一房珈琲に立ち寄ってから、そのままあれこれ話し合いつつ中央通りを北上。日本橋まで歩いたところで地下鉄へ。

080401_metronihonbashi.jpg

ラッシュアワーを過ぎて人通りのまばらなコンコースを見渡すと、いつも気になっていた不思議な天井造作が一際目立つように思えたので、少ししゃがんだ位置から撮影。

金属ハニカムを透明樹脂のシートで挟んだ六角形のパネルが頭上を埋め尽くす様子はなんだかレトロフューチャー的だ。蛍光灯のシーリングライトはパネルの形状に合わせたオリジナルだろう。なんでまたこんな凝ったデザインが施されたのか。働き蜂へのオマージュだとすれば悪趣味だが、おそらく気にするほどの深い理由は無いのだろう。

April 23, 2008 10:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 日本橋・カフェテラス東洋

2/28。午後一番に東新宿でプレゼンテーションの後、日本橋へ移動。諸々の視察と買い物の前に『東洋』の1Fカフェテラスで遅い昼食を摂ることにした。開業は1964年。インテリアデザインは故・境沢孝が手がけており、1981年に同氏のデザインで一度全面改装された。その後、1983年に2Fにレストラン(こちらのインテリアも同氏のデザイン)がオープン。2001年には両フロアに境沢健次(ケンジデザインスタジオ)氏による部分改装が施され、現在に至っている。2Fレストランなどについての記事はこちら

080228_nihonbashitoyo01.jpg

上の写真は中央通り側から店舗区画の奥側を見た全景。この眺めはおそらくほぼ1981年当時のままだ。入り組んだ斜め動線によるユニークな座席レイアウト、天井や壁面にちりばめられた摩訶不思議な照明オブジェはまさに「境沢節」と呼ぶにふさわしい。「造形のパターンはすべてが、たった今考えついたような執念のない、グラフィティのように実感のともなわない軽いものを考えて行った。」(境沢孝/商店建築1981年7月号)

080228_nihonbashitoyo02.jpg

上の写真は中央通りに面した2001年の改装部分。以前はシックなパブカウンターの設えられていた場所が、オープンなテーブル席に変わっている。赤、白、黒のグラフィカルな造作とナチュラルな節有りの羽目板との組み合わせが特徴的。あっけらかんとカラフルな印象ではあるものの、家具については81年当時のデザインが踏襲されていることもあって、新旧の空間にはさほど違和感は無い。

080228_nihonbashitoyo03.jpg

フードメニューは2Fのレストラン同様、これぞ軽食、と言った味わい(海鮮グラタンはなかなかの美味だった)。食後にいただいた苺ショートケーキとコーヒーも含め、昭和のカフェテラスとしての完成度は高い。

境沢デザインを詣でる意味も含め、これからも何度となく訪れたい日本橋の憩いの場。機会があれば各部のディテールをきちんと撮影させていただきたいものだ。

March 18, 2008 10:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 有楽町・よみうりホール

1/29。東西落語研鑽会の会場はいつもよみうりホール。場所は有楽町駅すぐ側の読売会館(元の有楽町そごう)7F。現在階下にはビックカメラが入居している。1957年築。建物とホールの設計は村野・森建築事務所。

080129_yomiurihall01.jpg

座席が小さめだったりトイレがビックカメラと共用だったりと、今時のホール施設としては設備的に少々厳しい面はあるものの、その空間の持つ魅力的は他に替え難い。

080129_yomiurihall02.jpg

1Fから2Fレベルへと優美なカーブを描く桟敷席。複雑な造形の天井面。1100席のキャパシティを持つにしてはステージが近い(柳家喬太郎師匠は「こっちに来てご覧なさいよ。被告みたいですよ。」と仰っていた。11/26)。落語を見るには打ってつけだ。

080129_yomiurihall03.jpg

客席両袖の壁は大きなリブが連続するように造形されており、その表面をガラス質のモザイクタイルが覆う。淡いブルーからイエローに至るグラデーションが間接照明に映えて美しい。全体にさほど豪華な意匠は施されてはいないとは言え、隅から隅まで紛れも無い村野藤吾作品。心斎橋そごうのようにあっけなく姿を消してしまわないことを祈りたい。

この日の終演後、印象的だったのは、私たち以外にもホール内を撮影している人が何人も居たこと。建築やデザイン関係者に潜在する落語ファンの割合が徐々に増えて来ているのだとしたら、私たちとしてはちょっと嬉しい。

よみうりホール
読売会館(旧有楽町そごう)(Citta'Materia)

February 18, 2008 11:00 AM | trackbacks (0) | comments (2)

都市とデザインと : 徳島・田中家と武知家住宅

12/26。午後早くにフジグラン石井を視察してから六條大橋手前の『田中家住宅』と『武知家住宅』に立ち寄ってみた。この付近は地名を藍畑と言い、藍商家などの古民家の点在する美しい集落となってる。

071226_tokushima_tanakake01.jpg

上の写真は『田中家住宅』(国指定重要文化財)の東側外観。田中家は江戸初期から続く藍商。この住宅は1859年から1887年の間に建設されたもので、1977年から1981年にかけて解体修理が施されている。左手の2棟が藍寝床(あいねこ/の葉を発酵させて「すくも」と呼ばれる染料に加工する場所)。中央に突き出して見える茅葺屋根が主屋。石垣には地元産の青石が用いられている。

071226_tokushima_tanakake06.jpg

南側にある表門から中へ入ると前庭(屋外作業場)がひろがる。上の写真は敷地の南西隅から撮ったもの。

071226_tokushima_tanakake05.jpg

上の写真は前庭の西側に面した藍納屋。巨大なシーソーのようなものはヒムロの古木で出来た跳釣瓶(はねつるべ)。その支柱や井戸まわりはやはり青石の見事な造作となっている(井戸まわりと表門内側の写真)。

071226_tokushima_takechike01.jpg

一方、『武知家住宅』もまた主屋(1862年築)を中心に据え、各棟が周囲をとりまく構成。青石がふんだんに用いられているのも『田中家住宅』と同様だが、主屋の屋根は入母屋の瓦葺。武知家が士分であったことを示している。上の写真は敷地西側の長屋門から撮ったもの。『田中家住宅』以上に広々とした前庭の南側(写真左)にあるのが県指定有形民俗文化財の藍寝床。

071226_tokushima_takechike04.jpg

長屋門の下に掛けられているのは竜吐水(りゅうどすい/消火用の水鉄砲)。

どちらの住宅も実際に住居として使用されており、残念ながら通常は公開されていない。この日は遠巻きに拝見するだけにした。『田中家住宅』は土日のみ見学可能(要予約)とのこと。次回の帰省時にはぜひ。

阿波の文化財建造物 - 民家 - (歴文クラブ)
石井町の民家(徳島県立図書館/阿波学会研究紀要

January 10, 2008 11:00 PM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 駒込・六義園

12/16。六義園の『紅葉と大名庭園のライトアップ』最終日。

071216_rikugien01.jpg

すでに紅葉は大方が落葉となり、園内は初冬の風情。それでも、思いのほか趣向を凝らしたライトアップのおかげで、十分に見応えのある散策となった。

071216_rikugien02.jpg

落葉樹に対しては暖色の、常緑樹に対しては寒色のライトアップ。上の写真は園内南側から見た中の島。見事に手入れされた植栽の織りなす見事な人工美は、まるで「日本庭園のフィギュア」のようだ。

071216_rikugien03.jpg

西側の吹上茶屋で松の雪吊り(樹木の雪よけのため円錐状に張り巡らされたロープの造作)越しに池を見ながらひと休み。

今度は昼間にぜひ来てみよう。

六義園(庭園へ行こう。/東京都公園協会)

January 2, 2008 1:00 PM | trackbacks (0) | comments (2)

都市とデザインと : 蔵前・厩橋地域安全センター

12/14。『KOJIRO』を出て春日通りを西へ。厩橋に少し近づいたところで見つけた物件。本所警察署『厩橋地域安全センター』。もとは『厩橋交番』として建てられたもの。警察庁による交番の統合整理によって2007年4月に衣替えとなったようだ。平日の8:30から17:15のみ地域安全サポーターが駐在する。1928年築。

071214_umayabashianzencenter01.jpg

大通りの交差点の隅切りに合わせた三角の平面形と、石造りを模したコンクリートの装飾が特徴。薄暗く人通りのほとんど無い中に、ブルーのランプがぽつんと目立つ。無人の内部から蛍光灯の光がこうこうと漏れ出す光景はちょっとシュールで印象的だ。

071214_umayabashianzencenter02.jpg

角から見ると上の写真のような具合。

「交番」から「地域安全センター」に移行(東京村.COM)
本所警察署厩橋交番(楓車輌)

January 2, 2008 7:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : IKEA港北

12/8。フランス車をたくさん見た後、ウヱハラ先生のルーテシア号で横浜方面へ移動。『IKEA港北』を訪れた。言わずと知れたスウェーデンの巨大ハウスウェアストア。『IKEA港北』は『IKEA船橋』(2006年4月オープン)に続き、2006年9月、ヤナセ横浜デポー跡地にオープンしている。商売柄、行っとかないとマズいかなあ、とは思いつつも、なぜか今まで縁のなかったIKEAの全貌を、この日ようやくじっくりと見ることができた。

到着したのは14時手前。お腹が空いていたため、先に2Fのレストランへ行くことに。ここだけでも一般的なファミリーレストランの3倍くらいの広さがありそうだ。しかも、ランチには遅めの時刻にもかかわらず、テーブルはほぼ埋まっていた。なんとか居場所を確保して、学食を思わせるデリカウンターへ。メニューはそれぞれ注文する場所が決まっており、迷ったり後戻りをしようものならたちまち混雑の原因となる。若干殺伐とした雰囲気の漂う中、どうにか食事を確保。

071208_ikeakohoku04.jpg

見た目はアレだが、味はそんなに悪くない(デザートは選びようによっては危険)。野菜料理のプレートは大方ポテトによって占められている。その他のプレートにもかなりの確率でポテトがごろんと添えられており、スウェーデンの人はそんなにポテト好きなのか、と不思議な気がした。写真のボリュームで1500円分くらい。欲張り過ぎ。ランチとしてはちょっとヘビーだった(特にポテトが)。

071208_ikeakohoku01.jpg

そして、いよいよ売場へ。入口は2F、レジは1Fにそれぞれ1カ所しかなく、客動線は大まかには一方通行に限定されている。各アイテムの売場脇に、その使用シーンを構成した四畳半から六畳間くらいのブースがずらりと並んでいるのが特徴的だ。ソファやチェア、テーブルや収納家具、テーブルウェアやファブリック、照明器具やキッチン造作に至るまで、住まいに関係するものについては置いていないものは無く、バリエーションも極めて豊富。その多くがアジア地域産のIKEAオリジナル商品であり、価格設定はかなり低く抑えられている。

071208_ikeakohoku02.jpg

上の写真は順路の終盤に登場する組み立て式の家具パーツ売場。目眩のするような圧倒的スケール。

071208_ikeakohoku03.jpg

上の写真はレジのエリア。かなりの台数が稼働してはいたが、それでも押し寄せる客をなかなかさばききれない様子だった。レストランと同様、ここでは客が多少我慢してでも店側のやり方に素直に従うことが求められる。

話にはなんとなく聞いていたものの、IKEAの広大さは想像をはるかに上回るものだった。見終わった後の疲労と充実感はほとんど東京モーターショーにも匹敵するほど。ただし、その安さについては商品の質からすると妥当であり、買い得だと思われるようなものはあまり無い。あれだけ夥しいボリュームの、衝動買いを誘発するには十分な価格帯の商品に囲まれていたのに、結局何一つ欲しいと思うものが無かったことには自分たち自身驚きを覚えた。

ヨーロッパの人々の生活において、IKEAの商品がどのように位置づけられているのか、私たちには分からない。はっきりイメージできるのは、おそらく日本人がこれらを後生大事にすることはまずない、と言うことだ。耐久性に乏しく、補修の難しい家具や雑貨は、値段相応の扱いを受けて短期間で使い捨てられるのだろう。

港北インターチェンジへと向かう車で、後ろを振り返って少しぞっとした。
夕闇に浮かぶIKEAの偉容が、まるでゴミ集積場のように思えたのだ。

IKEA港北
イケア(Wikipedia)

December 21, 2007 9:00 AM | trackbacks (0) | comments (6)

都市とデザインと : French-French-East 6th

12/8。ウヱハラ先生のルーテシア号で『French-French-East』へ。2004年から尼崎(兵庫)、南町田(東京)などで開催されているフランス車のミーティング。関東での開催はこれが6回目とのこと。会場はカルフール南町田店の屋上駐車場。

クルマについては運転が全く出来ない上に知識も乏しい私たちだが、乗せてもらったり眺めたりするのは大好きだ。とりわけフランス車特有の(どことなく歪んだ)モダニズムと先進性には心惹かれるものがある。とは言え、フランス車オーナーでもないのにこうしたミーティングを覗かせてもらうのは少々恐縮なわけで、どちらかと言うとこの日はルーテシア号でのドライブを楽しみに、とりあえず遠巻きに見ているつもりだった。しかし、続々と集結する珍車の群れをいざ目の前にすると、当初の奥ゆかしい思惑はものの見事に忘却の彼方へ。カメラを手に、小躍り気味に会場をぐるぐる歩き回ること3時間弱。いやはや、すっかり楽しんだ。

071208_frenchfrench_velsatis01.jpg

上の写真はルノー・ヴェルサティス。日本には正規輸入の無い大型高級車。ヘッドライトまわりの複雑な面処理と大味なグリルの意匠が一種独特な面構えをつくり出している。特に素晴らしいのが質感高く趣味の良いインテリア。鯨が口を半開きにしたようなダッシュボードの造形は極めて印象的だ。
その他の写真:1 / 2

以下、めぼしい物件をつらつらと。

071208_frenchfrench_ds01.jpg

世にも見目麗しいシトロエンDS。
その他の写真:1 / 2

071208_frenchfrench_sm01.jpg

エグいスタイルにマセラティ製エンジン、シトロエンSM。
その他の写真:1 / 2

071208_frenchfrench_gsa01.jpg

質素なハイドロニューマチック、シトロエンGSA Pallas。いい色。
その他の写真

071208_frenchfrench_cx01.jpg

ぬーぼーとした得体の知れないボリューム感、シトロエンCX。改めて見ると現行モデルのC6とのディテールや雰囲気の共通性が興味深い。CX Prestigeも見ることができた。
その他の写真

December 19, 2007 1:00 AM | trackbacks (0) | comments (4)

身体と空間の芸術, 都市とデザインと : 展覧会行脚のメモ 2007年11月・2

11/24。自由が丘『alternative』でランチの後、六本木へ移動。オオタファインアーツで『見附正康展』を見た。見附氏は1975年生まれの九谷焼の作家。現在「赤絵細描」の第一人者である福島武山氏(その作品と動画は必見)に師事し、石川県で活動している。「赤絵細描」は中国明代の赤絵金襴手を手本に金沢で発達した色絵のテクニック。
展示されていたのは大皿4点、蓋物2点、花瓶1点。シンプルなフォルムの器に描かれたパターンの細密さはあまりに凄まじく、じっと目を凝らさないとフォーカスが合わないほど。描かれているのは瓔珞(ようらく/古代インドの装身具をパターン化したもの)や七宝(しっぽう/円を重ねて繋いでいく仏教由来の吉祥文)と言った一般的な古文様だが、それらが同心円上に綺麗に配置された様は和風と言うよりむしろエキゾチック。異様なまでの細密さが、ある種呪術的な雰囲気を醸し出す。これまでに体験したことの無い感覚に、思わず息を呑んだ。

同日、銀座へ移動してMEGUMI OGITA GALLERYで『中村ケンゴ ”スピーチバルーン・イン・ザ・ビーナスと21世紀のダンス”』を見た。作品についての詳しい解説はこちら。マットな質感の中にやわらかな奥行きと光沢を秘めた画面(「近代の日本画」の技法で描かれている)が、ほぼモノトーンに近い配色によって力強く引き立つ。特に『21世紀のダンス』のシリーズは、マティスの絵画をサンプリング・再構成した結果、自然物モチーフのパターン(例えばトード・ボーンチェなど)を思わせるファッショナブルさと、暗くシニカルな批評性を同時に獲得しているのが興味深い。
シリーズ中にはダンサーが黒で描かれたものと、白で描かれたものの二通りがある。個人的に、そのミステリアスさに心惹かれるのはやはり「黒」の方だが、明るさを装った「白」の方がコンセプト的にはより捩れている。どちらも魅力的だ。

071130_kuramataexhibition.jpg

11/30。打合せからの帰りに青山のCLEAR GALLERYで『倉俣史朗 Liberated Zone』を見た。倉俣のデザインした家具・プロダクト作品のうち、アクリルとガラスを主素材とする代表作が8点余り展示されている。私たちにはどの作品とも10年以上ぶりの再会だ。以前ならその存在感に圧倒されるばかりで、まったく目に入らなかったアクリルの継目や金物の溶接箇所を、今では冷静に見ることができる。当時持てる知恵と技術の粋を凝らした倉俣と制作者の共同を物語るそうしたディテールの囁き声に、私たちはそっと耳を傾けた。
展示作品中、その洗練性において際立っていたのが『Glass Chair』(硝子の椅子/1976/三保谷硝子製作)と『Luminous Chair』(光の椅子/1969/イシマル製作)だった。とりわけ『Glass Chair』のもつ非現実性は、現物を目の当たりにしない限り、まず実感することはできないものだ。倉俣の作品について語られる場合、そこに込められた夢とポエジーに主眼が置かれることが多い。しかし椅子や家具という概念に対するパロディとしてあまりに完璧な『Glass Chair』のデザインは、甘いロマンチシズムの彼岸にあると言っていい。『Glass Chair』のとなりに佇む『Miss Blanche』(ミス・ブランチ/1988/イシマル製作)は、なんだか少々申しわけなさそうで微笑ましかった。
『Miss Blanche』を除き、全ての作品はギャラリーで購入することができる。家具類にはおおよそ数十万円から数百万円の値が付いていた。今はとてもじゃないが、『Glass Chair』と『Luminous Chair』はいつか何とかして手に入れたいものだ。まずはどこにどうやって置くかが問題だな。

工芸とデザインと現代美術。もはやぼんやりと霞んでしまったその境界を、行き歩いたような3つの展覧会だった。

December 11, 2007 6:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

身体と空間の芸術, 都市とデザインと : 展覧会行脚のメモ 2007年11月・1

11/3。『Noi Shigemasa Exhibition ~The glass~』を見にリスン青山へ。心の師匠・野井成正さんデザインの新作インセンスホルダー(香立)の展示。通常はこの店の主要な商品展示台として使われているガラスのカウンターの上の半分近くが、この日はガラスのインセンスホルダーで埋まっていた。スタッフの方いわく、それでもイベントが始まった頃よりは少なくなったとのこと。すでにけっこう売れてしまったのだ。

071125_noishigemasaglass.jpg

買ったのは新作インセンスホルダーの大中小三種類のうち中(直径95mmくらい)と小(直径65mmくらい)。ガラスの台に真鍮製のリングが嵌り、スティック香が立てられるようになっている。ぽってりとした手作りガラスのフォルムは今にもはじけそうな水滴を思わせる。あるいは桜あんパンみたいでもある。やわらかで無駄の無い造形、涼しげな質感、ずっしりとした重み。一見すると意外だが、じっくりと味わえばたしかに、これもまた紛れも無い野井デザインだ。

11/16。『鳥獣戯画がやってきた! - 国宝「鳥獣人物戯画絵巻」の全貌』を見にサントリー美術館へ。甲乙丙丁の4巻(鳥獣戯画として一般に馴染み深いのは甲巻)全てに加え、作画・由来的に関連性のある種々の作品を集めて展示する内容。昔の教科書だと鳥獣戯画は鳥羽僧正の作とあったが、実物を見ると甲乙巻、丙巻、丁巻で作者が異なることは素人目にも明らかで、クオリティ的にも雲泥の開きがある。特に甲巻は後年になってかなりの部分が継ぎ接ぎされており、もとはその一部だったものが切り取られて別の掛軸になっていたりもする。断簡と呼ばれるそうした部分や写し、模本などを手がかりに甲巻の原型について考察する展示は、難解ではあるがその分じっくりと楽しめるものとなっている。
それにしても、玉石含めて模造品には事欠かない甲巻だが、オリジナルの迫力は本当に凄い。迷い無く、生命感溢れる筆致で描かれた線画のキャラクターたちにすっかり心を奪われてしまった。とにかく凶悪なまでに可愛らしく、繊細で、完成度が高いのだ。現在は展示替えで各巻の後半部分を見ることができるようになっている模様。もう一度見に行かなくちゃ。

それから『佐藤卓ディレクション「water」』を見に21_21 DESIGN SIGHTへ。水にまつわる様々なインスタレーション、立体、平面作品が全部で38種。食材の製造に要する水の量を示す『見えない水の発券機』(竹村真一佐藤卓)、超撥水コーティングのステージに水滴が踊る『鹿威し』(原研哉)などが印象に残った。それぞれにスケールを置き換えた『猫の傘』と『ねずみの水滴』(佐藤卓)もチャーミングなインスタレーション。シンプルだが、リアリティのある作り込みにはっとさせられる。

ミッドタウンでもうひとつ。『とらや』に立ち寄ったところ、店内のギャラリーで『寿ぎのかたち展』が開催中。伝統的な折形、水引とその製作過程にまつわる展示に加え、オリジナル商品も見ることができた。田中七郎商店による水引の造形は実に優美なもの。伝統的折形の雛形に見られる工夫と、そのバリエーションの豊富さには驚いた。折形デザイン研究所、田中七郎商店、とらやの協同によるぽち袋を後で購入しようと思ったが、上のふたつの展覧会を見ている間にすっかり忘れていた。こちらも要再訪。

さらに同日、自由が丘に移動してバスで深沢不動前へ。天童木工PLYで『柳宗理 家具展 2007』を見た。現在新品として購入可能な柳デザインの家具を一覧することのできる内容。特にあまり出会う機会の無いダイニングテーブルを、スタッフの方からご説明をいただきながらじっくり見ることができたのは有り難かった。強度と機能の両立のために考え抜かれた天板裏の構造と、面取りの手法に思わず唸る。また、今年初めに東京都近代美術館の展覧会『柳宗理 生活のなかのデザイン』で見た『デスク』(1997)が新作の『Yanagi Desk』(白崎木工製)として販売されていた。鋭角的でソリッドなフォルムと重厚な無垢材の質感は柳デザインの家具には珍しい。こちらも興味深く拝見した。

071119_yanagikameguruma02.jpg

Tendo Classicsのカタログと『亀車』(1965/全長12cmほど/別アングルの写真)を購入。宮城県鳴子の木地こけしの老舗『高亀』のために柳氏がデザインしたもの。箱が無かったのは残念だが、入手できたのは幸運。ろくろ引きの手法を生かした見事な造形。キモ可愛い。

December 5, 2007 3:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 表参道・LOUIS VUITTONのディスプレイ

071103_lvomotesando.jpg

11/3。ルイ・ヴィトン表参道店前にて。ともすれば素人くさいインスタレーションになってしまいがちなシンプルなアイデアがそうならなかったのは、そのディテールゆえ。照明器具はおそらくオリジナルだろう。蛍光管の配線や支持部の処理のスマートさが印象に残っている。

ルイ・ヴィトン表参道ビル07年9月(JDN/東京ショーウィンドー)

November 27, 2007 7:00 PM | trackbacks (0) | comments (0)

身体と空間の芸術, 都市とデザインと : 展覧会行脚のメモ 2007年10月

10/16。午後過ぎから出光美術館の『没後170年記念 仙厓・センガイ・SENGAI 禅画にあそぶ』へ。仙厓(1750-1837)は日本最初の禅寺・博多の聖福寺の住職として1800年前後の再興に務めた禅僧。宗教者としての業績だけでなく書画においても優れた人物だったが、ある時期(1810年前後と言われる)を境に細密画を描かなくなり、以後「うまへた」な水墨作品を描き続けた。その過激なまでの脱力具合、禅を極めた境地から発せられる破壊的な賛文は、簡単に「ユーモラス」などと言えるような代物ではない。『一円相画賛』などはその最たるものだろう(「これくふて茶のめ」って。。。)。展覧会では出光美術館の有する日本最大のコレクションを通して仙厓の作品と生涯が網羅的に紹介されており、そのボリュームたるや大変なものだった。図録は『指月布袋画賛』や『○△□』が見開きでまっぷたつに掲載されていたのが残念。

071016_jimbochonanyodo.jpg

神保町へ移動して南洋堂書店の『菊地宏展 - 光の到達するところ』へ。菊地宏氏の手がけたリノベーション(2007年8月完成)によって、建物(1980年築/土岐新設計)は通りに対してずいぶんと開放的になり、客動線は整理されていた。4Fのギャラリースペース『N+』での展示は合板やコンクリートを用いた模型を中心とする内容。アーシーな質感が印象的。小さなモニターでループしていた各作品の紹介映像には工事中の風景が多く含まれていた。カオティックな現場に少ない手数で端正な表情が与えられてゆく様は興味深い。中でも『LUZ STORE』は現存しているうちにぜひ見ておきたかった作品。『毎週住宅を作る会』を見ていた頃はこんなに力強い作風の建築家になる人だとは予想していなかった。月日は人を変えるのだ。翻って見ると、ウチは当時からあまり変化も成長もしていないような。いかんなあ。

竹橋方面へ移動してKANDADAの『伊藤敦個展「"777"」』へ。パチンコにまつわる様々な社会的、あるいは個人的な事情を、批判するでも肯定するでもなく、端的に示す作品の数々。インスタレーションや立体、映像によるその乾き切った表現は時に痛々しく、時に生々しい。廃棄されたパチンコ台のパーツをそのまま簡潔に再構成したシリーズ『"777" - Flower - 』では、その過剰な造形とイルミネーションに息を呑んだ。脇のプラズマモニターから流れる地方のパチンコホールの映像へと目をやると、空間を覆いつくす凄まじいまでのアイコンの羅列に思わず目眩を覚える。パチンコホールは現代日本におけるウルトラバロックなのだ。彫刻作品『"777" - Home - 』はパチンコホールのちいさな模型。エントランスの脇にぽつんと置かれた姿は妙に懐かしく、郷愁に似た感覚を誘うものだった。

10/24。松屋のデザインコレクションで『alternative』のための資材調達をした際に、デザインギャラリーで開催中だった『PHランプと北欧のあかり』を見た。PHランプの開発過程とそのバリエーション展開を概観する内容は、個人的にはこれまでほとんどまとめて見たことのなかったもので、大変勉強になった。配布されていた資料に掲載されていたポール・ヘニングセンの言葉はなかなか辛辣で興味深い。以下引用。
「夜を昼に変えることなど不可能だ。わたしたちは24時間周期のリズムで生きており、人間は爽やかな昼の光から暖かみのある夕暮れへの移ろいに、ゆっくりと順応するようにできているのだ。家庭での人工照明は、言うなれば、黄昏どきの光の状態と調和すべきであり、それは、黄昏特有の暖かみのある色の光を使うことによって実現可能だ。夕刻、ほかの部屋にはまだ薄明かりが残っているような時間に、冷たい蛍光灯がリビングルームで煌々と光っていては不自然だ。そして、強烈な光は目をくらませ、物の色は正しく再現されず、自然な陰影は生まれない。」

さらに同フロアの画廊で開催されていた『寺本守 銀彩展』へ。まったくのノーチェックでふらりと訪れたが、これが素晴らしかった。線描の上絵付に銀箔・銀泥を施してから掻き落とし、低火度で焼きつける手法で作られた陶芸作品のシリーズ。深みのある表情とクールな佇まい。思わず衝動買いしそうになったが、なんとか思いとどまった。今度出会った時のために貯金しとこう。

November 23, 2007 8:00 PM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 東京モーターショー2007

11/7。『第40回東京モーターショー 2007』を見に幕張メッセへ。いつもは閉場の2時間ほど前に到着し、荒天に翻弄され、駆け足に疲れ果て、困憊の体でぎゅう詰めの京葉線に揺られながら帰るのだが、今回は珍しく早起きして、天気の良い日を選んで訪れたので気分は上々。展示ブースのデザイン視察に重点を置きつつ、じっくりと会場を巡った。

071107_motorshow_mb04.jpg

今回最も印象に残ったのはメルセデス・ベンツの展示ブース。照明入りのルーバー造作が流れるような曲線を描きながら展示スペースの上空をぐるりと囲う。通路部分の床は全面がグレートーンのシャギーカーペット敷き。こうした展示イベントではほとんど経験したことの無いふわふわした歩行感覚が新鮮だ。
間仕切やカウンターなど、他の造作は床から生えて来たような黒いボリュームとしてデザインされており、グラフィック類はごく控えめ。全体に要素が少なく、落ち着きと一体感のある空間が構成されている。

リサーチカー『F700』の展示エリアでは、プレゼンテーターが曲げアクリルの映像モニターを前に解説を行っていた。モニターには床下からビデオプロジェクターの映像が投影され、その内容は右側壁面の大型モニターと連動する。アクリル板を支えるフレームにはタッチセンサーが仕込まれているようで、素手で画面を操作しながらプレゼンテーションを行っていた(F700プレゼンテーションの様子)。微妙に未来的な演出が『F700』の堅実なコンセプトに良くマッチしているように思う。

その他の写真:全景部分1部分2スマート展示1スマート展示2

071107_motorshow_yamaha02.jpg

続いて挙げたいのはヤマハ(二輪車)の展示ブース。デザインを特徴づけるのはこれまたルーバーだが、独特の力強い造形感覚によってメルセデス・ベンツのブースとはひと味違う空間が構成されている。床面と展示用ステージの仕上げは共に薄塗モルタルを思わせる質感。軽快さと重厚感、鋭利さと量感の対比が際立つ。

その他の写真:全景ルーバー展示ステージ

071107_motorshow_fuso.jpg

三菱ふそう(商用車)の展示ブースはゲート状の造作の配置による極めてシンプルで大胆な構成。手前の大型観光バスが小さく見えるほどのスケールを持つ無柱の広場は、開放的でありながらまとまりを感じさせる気持ちのよい空間だった。

071107_motorshow_audi.jpg

アウディの展示ブースは巨大なボリュームを上部に浮かせたデザイン。造作を円筒形にくり抜いた内面に施されたグラフィックと、ダウンライトやスポットライトなどの点光源を主体としたライティングの手法は単純にオーソドックスであると言わざるを得ないが、空間全体の印象としては至って潔く、好感が持てる。

例年見事なデザインを見ることのできるBMW写真)とMINI写真)の展示ブースだが、今回は2005年のデザインをほぼ踏襲したものとなっていた。文字情報を大きくあしらったグラフィックの羅列はどうにも古びて見える。次回に期待。
その他、国内の乗用車メーカーの展示ブースとして、事前情報ではトヨタ写真)と日産写真)も注目を集めていたようだったが、個人的には印象に残らなかった。特に日産の展示ブースに見られる薄っぺらな和風趣味は、2001年、2003年の明快な建築的手法に比べてずいぶん後退してしまったように思えてならない。

国外メーカーが軒並み中国市場へとプロモーションの比重を移してしまった後に行われる初の東京モーターショーは、見終わってみるとやはりいつもに比べて少々華やかさに欠けるものではあった。国内市場の活性化を狙う国内メーカーを除いて、展示ブースは概ねヨーロッパ各地のショーで用いられたデザインを踏襲し、部材を流用したものであるとの話も聞く。
とは言え、極端な大画面映像や、無数のムービングライトなどの「これでもか」的な演出が下火となったことはむしろ喜ばしい。部材の持ち回りについてもヨーロッパのディスプレイデザインを(廉価版とは言え)概ねそのまま見ることができると言う面においては(また環境的見地からも)歓迎すべきかもしれない。展示ブースのデザイントレンドは企業の打ち出すテーマを冷静かつ確実に伝える手法へと移行している。

祝祭は終わり、クルマはその本質的な必要性を問われているようだ。

東京モーターショー

クルマについてはこの続きで。

November 9, 2007 5:00 AM | trackbacks (0) | comments (2)

都市とデザインと : 岩崎堅司展 IROIRO・DEKOBOKO

10/9。夕刻に大江戸線で六本木へ。ミッドタウンから真っ直ぐギャラリー間へ移動し『小嶋一浩+赤松佳珠子/CAt展』を見た。それから千代田線で表参道へ。ギャラリー5610で『岩崎堅司展 IROIRO・DEKOBOKO』を見た。

CAt展については特に書くことは無い。しかし岩崎堅司展は小規模ながら素晴らしい内容で、これを見るためだけにでも、仕事の合間にアトリエを抜け出した甲斐があった。グラフィックデザイナー・岩崎氏の経歴については残念ながら詳しいことが全く分からないが、ウェブ上の情報を継ぎ合わせて判断すると、おそらく御歳は古稀を過ぎておられる。杉浦康平氏、福田繁雄氏、仲條正義氏らとほぼ同じかほんの少し下の世代だ。
会場には岩崎氏がこの展覧会ために制作した平面作品と、スチールによる立体作品が並べられている。どれもが極めつけにミニマルなグラフィックアートで、その構成要素はほぼ無個性なフォントと色面のみという潔さ。連続する箱の凸凹がLIFEを描き、JOHNの細部にIMAGINEが潜み、ECOLOGYとECONOMYが微笑みながら出会い、PEACEとWARが表裏に重なり合う。作品からストレートに伝わるメッセージやユーモアが心を打つ。

この展覧会を見て私たちが感じたことを敢えて一言で表すと、それは“駄洒落力の凄味”であったように思う。こう書くとほとんどの人が引くんだろうな、と思いながら書くわけだが、あたまに“駄”とは付くものの、実のところ駄洒落は大変立派なものではないかと私たちは睨んでいる。
駄洒落とは、無縁の彼岸同士にあるふたつの概念を結びつけるパラレルな思考に他ならない。それは芸術の本質と言っても差し支えの無いものだ。あるいは駄洒落とは、“芸術を裸にしたもの”なのかもしれない。

私たち若輩デザイナーは自らのデザインをなんとなくおシャレな空気感で包んで、ぼんやり見ている人に「ちょっと良さげかも」と錯覚させることにかけては上の世代のデザイナーよりも長けているかもしれないが、表現の根本は脆弱だ。なにせ私たちはコンセプトを直接的に伝えることを“こっぱずかしい”と感じてしまう。裸では最初から勝負にならないのだ。

ギャラリーを出て骨董通りを渡り『蔦珈琲店』で庭の秋草を眺めながらぐるぐると考えを巡らせた。デザイナーたるもの、おシャレよりも駄洒落を磨かねば。
骨太で、力強く、かつなんともキュートな岩崎氏の作品は、正に裸のグラフィックアートだった。

Gallery5610

October 12, 2007 12:04 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 箱根・茶房菜の花と十六夜

9/17。『ポーラ美術館』を離れ東海道を東へ。再び渋滞に遭いつつ1時間余りをかけて箱根町湯本に到着。最終目的地の『まんじゅう屋 菜の花』を訪れた。街道沿いの小さなビルは3Fまでが店舗として使用され、1Fが『まんじゅう屋 菜の花』(2001)、2Fが『茶房 菜の花』(2001)、3Fが『そば切り 十六夜』(2006)。インテリアデザインは1Fが中村好文氏(レミングハウス)、2Fが小泉誠氏(コイズミスタジオ)の師弟共演。3Fのインテリアは小泉氏と彫刻家の神林學氏による共作(ロゴは望月通陽氏、焼物の器は内田鋼一氏の作)となっている。

箱根の宵は極めて短く、この店も1Fと2Fの営業時間は17:30まで。3Fも18:00にはラストオーダーとなる。残念ながら1Fをじっくり見ることはあきらめ、2Fでお茶とデザートをいただいてから3Fで蕎麦、という妙な順序での見学となった。

070917_nanohanasabo01.jpg

2F『茶房』のインテリアは、塗装と左官による白い空間に大型の木造作を配置することで大胆に構成されている。エントランスから区画の長手へのパースペクティブを強調するように、各造作はゆったりとした奥行きを持つ。開口部の大きさも手伝って、全体の印象は至って開放的だ。この「開放感」は小泉デザインとしてはユニークな要素かもしれない。

070917_nanohanasabo02.jpg

フロア中央の大テーブルに落ち着いてキッチン側を見ると、鋭角的に造形されたフードまわりの垂壁がシンプルな空間に絶妙な破調を加えていることが分かる。セットメニューは桐のプレートで、草木の飾りを沿えて提供される。

階段を上がって3Fの『十六夜』へ。スチールドアの向こう側に帯状の木材と和紙で出来たゲートが現れる。うねるような造形が『茶房』の直線的なデザインとの鮮やかな対比を印象づける。

070917_izayoi02.jpg

客席は三角形の小上がりと2つの大テーブルにゆったりと配置されている。武蔵美COZ15と店のスタッフも制作に加わったというインテリアは手作り感たっぷりの仕上がり。フロア中央には白漆喰のパーティションが象徴的に置かれ、沸き上がる雲を思わせる造形が目を引く。別アングルからの写真はこちら

070917_izayoi04.jpg

店主氏は京橋『三日月』にゆかりのある方とのこと。道理で二八のそばは見目麗しく食感・風味ともに素晴らしい。つゆは出汁の香りの際立つ上品で優しい仕上がり。インパクトには欠けるが、観光地の場所柄にはちょうど良いのかもしれない。今後趣味性と立地のどちらに比重を置いてゆかれるのか、少々気になる。
驚いたのはウヱハラ先生に分けてもらった納豆そば(撮影:ウヱハラ先生)。なんともふくよかでクリーミーな食感。そばとつゆとの相性も抜群。これはぜひともまたいただきたい。

和菓子 菜の花
そばきり 十六夜

September 30, 2007 7:00 PM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 箱根・ポーラ美術館

9/17。『とらや御殿場店』から箱根方面へ。途中地滑りによる渋滞に遭いつつ山道を登ると、両脇にギザギザとした造形的なガラスの屋根を持つバス停と『ポーラ美術館』のサインが現れた。

070917_hakonepola01.jpg

ブリッジを渡ってエントランスへ。免震構造の建物は谷あいに設けられた円形の壕に浮かぶようにして、控えめにその姿を覗かせている。

070917_hakonepola02.jpg

上の写真左がエントランス。巨大な扉はステンレスメッシュに覆われている。上の写真右はエントランスから下方を見た様子。壕と建物とが互いに切り離された構造であることが分かる。

070917_hakonepola03.jpg

ロビーへと向かうアプローチもまたガラス張り。自然光に満ちた吹き抜け空間がひろがる。左手に見えるコンクリートの鋭角的な造形と、右側の壁一面に用いられた分厚い波板ガラスの優しい質感の対比が印象的だ。

070917_hakonepola04.jpg

エスカレーターを下り、ロビーからさらに下方まで吹き抜けは続いている。奥へと進むに連れて、ガラス壁の存在は徐々に圧倒的なものへと転じてゆく。上の写真右はそのディテール。内側に照明器具とライトチューブが仕込まれており、壁全体がぼんやりと発光する。

070917_hakonepola05.jpg

巨大なボリュームを持つ空間ながら、細部はどこまでも端正そのもの。建築デザインは安田幸一氏(日建設計・現東京工業大学大学院)。施工は竹中工務店

壮麗なる力技に思わずため息。ここまで凄いの見ちゃうとかえって凹むなあ。。。時間が無かったので展覧会は見ずに移動。

ポーラ美術館

September 26, 2007 10:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : とらや御殿場店

9/17。久しぶりに丸一日のオフ。ウヱハラ先生のトゥインゴ号で御殿場・箱根の日帰りツアーに連れ出していただいた。最初の目的地は『とらや御殿場店』。2006年にオープン。建築デザインは内藤廣建築設計事務所

070917_gotenbatoraya01.jpg

外観は細い短冊の木材に覆われた箱に薄い屋根を乗せたシンプルなデザイン。深い軒と、それを支える細い柱が印象的だ。店舗部分の南北は全面ガラス張りで、エントランスから店内越しに向こう側の庭までが見通せる。正面外観はこちら

070917_gotenbatoraya03.jpg

軒下では屋根の軽快さがより強く感じされる。各部のディテール(上の写真)は繊細で美しい。昇降機構を持つ暖簾まわりの天井面を見ると、各パーツがグリッド状の底目地に合わせて厳しく配置されていることが分かる。

070917_gotenbatoraya04.jpg

店内に入ると、4m前後はあるかと思われる天井の高さに対して、インテリア造作の高さは極力低く押さえられており、極めて開放的な空間が確保されている。上の写真は左手奥から右手前方向を斜めに見たところ。飲食エリア(虎屋菓寮)は物販エリアと完全にひと繋がりで、客席の間隔は広い。

070917_gotenbatoraya05.jpg

上の写真はエントランス辺りから左手奥を見たところ。東西の壁面は外部と同様の木材に覆われ、床はほぼ同色のウッドフローリング。その上に置かれたインテリア造作は主に明るい色の竹の集成材と和紙で構成され、建物との対比を見せている。大テーブル席のアップはこちら。竹集成材のキャビネットにはIH調理器とシンクが埋込まれている。引出の取手は皮の帯。

070917_gotenbatoraya07.jpg

あんみつと葛切のセットを注文。さっぱりと上品。美味い。

到着したのが午前中で、店内にあまり客が居なかったからかもしれないが、ウヱハラ先生が店の内外を写真に撮っても良いかスタッフの方に訪ねたところ、あっさりと了解していただけた。外観の撮影中、強風で巻き上がっていた暖簾をわざわざ降ろして直して下さったことには驚くと同時に恐縮。大変ありがとうございました。

御殿場の『とらや』は人も空間も実におおらかで、都内からでもわざわざ和菓子を買いに行きたくなるくらいに居心地が良い。建築・インテリアデザイン好きの方には、マナーを守りつつ(フラッシュの使用や他の客に悪い印象を与えるような動きはなさらぬよう)大いに見学させていただくことをお薦めする。

現在、御殿場では『とらや工房』の建設が進行中とのこと。デザインはこちらと同じく内藤廣建築設計事務所。今年10月末のオープンが楽しみだ。

とらやグループ
とらや御殿場店(内藤廣建築設計事務所)

東京ミッドタウン・とらやとMUJI(April 29, 2007)

September 21, 2007 11:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

身体と空間の芸術, 都市とデザインと : 国立能楽堂・納涼茂山狂言祭2007

8/18。国立能楽堂『納涼茂山狂言祭2007』の夜公演へ。ここで茂山狂言を見るのは昨年に続いて2度目。相変わらず国立能楽堂は気楽でいい。勝野は竺仙の絹紅梅、ヤギはTシャツにジーンズ、という他の能楽堂だと着物マダムの皆さんに白い目で見られそうな出で立ちだったが、ここでは余計な気遣いをしなくて済む。

建物は大江宏建築事務所1983年の作。外苑西通りと明治通りを繋ぐJRの線路脇の道を、その中ほどで少し住宅街の側に入ると柿葺(こけらぶき)を模した金属屋根が折り重なって表れる。

070818_nogakudo01.jpg

ファサードや外構のデザインはまとまりに欠けるが、インテリアは見事なものだ。上の写真は終演後の舞台。光源をほとんど意識させない超フラットなライティングが異空間を浮かび上がらせる。

070818_nogakudo04.jpg

上の写真はエントランスロビー。上部に木製ルーバーを設けた開口部のデザインが巨大な半蔀(はじとみ)を彷彿させる。

070818_nogakudo03.jpg

上の写真はエントランスロビーからホワイエへと続くメイン通路。中庭(写真右)を半周するようにして横ルーバーの意匠が続く。

070818_nogakudo02.jpg

ホワイエで天井は一段と高くなる。上部はぐるりと光壁。縦向きとなった木製ルーバーがそのスケール感を強調する。見所の外側にある通路(写真左)を含め、舞台以外のライティングには蛍光灯が上手く使われている。

最初の演目は京極夏彦作の『豆腐小僧』。千之丞氏演じる豆腐小僧の可愛らしさと、千五郎氏演じる大名の雷親父ぶりの対比が実に鮮やか。休憩をはさんでの『三人かたは』はナンセンスの極み。笑いのパワーが凄い。最後の『神鳴』(かみなり)は田楽の流れを汲む楽しくおめでたい演目。八百万の神の国に住む民衆の厚かましさとたくましさに思いを巡らせつつ、大いに笑わせていただいた。

August 30, 2007 1:00 AM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 小泉誠展 匣&函

8/9。『小泉誠展 匣&函』を見にGALLERY le bainへ。

070809_makotokoizumi01.jpg

ギャラリーの正面は動線に対して斜めに設えた白い間仕切りで遮られていた。これは発泡スチロールの塊を積み上げたもの。小さく切り欠いたような入口から中に入ると、白いボリュームはガラス面を挟んで中庭からギャラリーへと貫入し、展示スペースはいつもと丸きり異なる印象に。コストをかけず、最少の手数で空間を変化させる手法にいきなりはっとさせられた。

070809_makotokoizumi03.jpg

白い箱の内外にはJパネル(杉)の箱と、それを組み合わせたいくつかの作品が、ごろんところがされるような姿で置かれていた。座ったり寝そべったりは自由。それぞれが家具でありつつパーソナルな空間でもある。どの作品もかたちそのものは至って単純で、一見無造作にも思えるが、中に入ってみると妥協無く細かな寸法調整が施されていることが分かる。居心地が良いのだ。しかも楽しい。

070809_makotokoizumi02.jpg

上の写真右はデスクとベンチの組み合わせ。上の写真左などはかなりアクロバティックな幾何学的構成。おそらく部分的に金物で補強されているのだとは思うが、外見上はふたつの木の箱でしかない。その佇まいはほとんどミニマルアートだ。

070809_makotokoizumi04.jpg

どの展示作品にもプロダクトとしての完成度と実験性とが高い次元で両立されていた。「箱」という素朴なテーマにこれほどの深みを与えた小泉氏の手腕とクリエイティビティに驚き、頭が下がる。大変勉強になりました。

Koizumi Studio(小泉誠)

August 15, 2007 2:00 PM | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 内田繁 DANCING WATER

7/8。渋谷・桑沢デザイン研究所に内田繁氏の展覧会「DANCING WATER - ミラノ’07作品展」を見に行った。展示内容は実に盛り沢山で、インテリアデザイナーの展覧会としては破格に見応えのあるものだった。

070708_shigeruuchida02.jpg

駐車場のスペースを利用したと思しい会場に入ると、いきなり3つの茶室が登場。手前から『受庵』、『行庵』、『想庵』(1993)。奥側2室の外観写真はこちら

070708_shigeruuchida04.jpg

茶室の中にも入ることができた。上は『受庵』の内部。外形は単純な直方体だが、メッシュの透かせ具合が部分ごとに異なることから微妙な奥行き感のある空間が生まれている。『行庵』の内部は和紙に覆われている。閉ざされ、フラットで柔らかな光に満たされた空間はある意味最も茶室らしいもの。ヴェネチアンガラスやデコラティブな金属器を交えた茶道具が違和感が無くコーディネートされているのが面白い。『想庵』の内部にはランダムなメッシュが木漏れ日のような影を落とす。座して眺めるのもいいが、立ち上がってあちこち見回すのも楽しい。

070708_shigeruuchida01.jpg

透明のビニールシートに一輪挿しをあしらった『フラワー・スクリーン』(2004)を向こう側にまわると、ゆらゆらと波打つような光を背景に、ガラスの幹と枝をもつ樹を白い毛むくじゃらの生き物が取り巻いていた。これらは2007年のミラノサローネに出品されたインスタレーションで、それぞれに『ダンシング・ウォーター』、『グラス・ツリー』、『ムー』という作品名が付けられている。ひとつひとつサイズやかたちの異なる『ムー』は、