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life of "love the life"

身体と空間の芸術, 都市とデザインと : 展覧会行脚のメモ 2008年8月

8/3。サントリー美術館で『小袖 江戸のオートクチュール』。展示作品のほとんどは松坂屋京都染織参考館のコレクション。先ずはその質的内容の高さに驚く。国立博物館でもお目にかかったことの無い優れたデザインの小袖が延々並ぶ壮観に思わず目眩いがした。染色と刺繍とを巧みに組み合わせた超絶技巧は友禅を除いてほとんど桃山時代には完成されており、江戸時代を通してそのグラフィックセンスは最高潮に達することが見て取れる。中ほどに展示された雛形本(ファッション誌みたいなもの)にはお洒落を楽しむ女性たちが「気に入ッたもやうヲ見や」とか「めづらしいひながたじや」などとおしゃべりする様子も。これまた楽しい。

8/20。ギンザグラフィックギャラリーで『THA/中村勇吾のインタラクティブデザイン』。場内に入ると黒い壁をバックにモニターが縦位置でずらりと並ぶgggではお馴染みの展示風景。階段を降りて地下のスペースへ。こちらは白い壁にPCや配線が剥き出しのワイルドな展示手法。『FFFFOUND!』のネオンサインが絶妙にハマる。そして、数十秒後に鳥肌が立った。インタラクティブな作品も含む全てのモニター展示が突如連動し、1分ごとの時報とともにthaのロゴにポーンと切り替わるではないか。カ、カッコいい。多くは既にどこかで見たことのある作品ながら、こうして見事に整理して展示されることで、その表現はより明快になり強度を増す。パソコンの画面の中でこんなに凄いことが起こっていたのか、と、あらためて感動を覚えた。それはそうと、ここの係員はなんでいつもあからさまに不機嫌なんだろうね。

8/21。スパイラルマーケットで『モノエ(森昭子 尾上耕太)古展』。陶を主素材とするオブジェや容器の展示。手のひらに収まりそうな大きさの中に、古びた佇まいと乾いたユーモアを含んだ作品の数々。フォルムと質感に対する作家の繊細な感覚が伝わる。底に家のかたちがくっついたカップと、階段がくっついたカップをひとつづつ購入。

8/22。東京国立近代美術館工芸館で『所蔵作品展 こども工芸館 [装飾/デコ]』。1室から4室までの内容が素晴らしい。高度な伝統的技術と現代的なセンスがシンプルに、かつ分ち難く結びついた20世紀工芸の名品たち。中でも田口善国(たぐちよしくに)、佐々木英(ささきえい)、音丸耕堂(おとまるこうどう)、松田権六(まつだごんろく)、磯井如真(いそいじょしん)らの漆器が印象深かった。稲垣稔次郎(いながきとしじろう)の虎の型絵染のタペストリーはグラフィックセンス抜群。加藤土師萌(かとうはじめ)の磁器飾壺は実に繊細で可愛らしい。最後の5室はほとんど秘宝館もかくや、と言った有様。過剰なアイコンにまみれたドロドロな作品ばかり。蛇足の感は否めない。

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8/22。オカムラガーデンコートショールームで『伊東豊雄×タクラム・デザイン・エンジニアリング「風鈴」』。うすはりガラスシェードのLED照明が、うねるような高低差とともに斜めのグリッドに沿って細かなピッチで配置されていた。その天井取付部にはハンマー式のチャイムが内蔵されており、下を通るとその周辺でLEDが点灯し、涼しい音が鳴る。互いに連絡し合う人感センサーの微妙なチューニング、ローテクなサウンド、半工芸的なガラスの造形の組み合わせ。なんとも不思議な感覚を覚えるインスタレーションだった。

8/27。松屋銀座8階大催場で『デザイン物産展ニッポン』。デザイン性に優れた地域物産を各都道府県別に紹介する内容。各地域におよそ1m四方のステージが割り当てられ、その脇に下がった札を帰りに提示すれば展示品を購入することもできた。ただし品物を手に取ってみることはできない。必ずしも各地域において最高の品が選ばれているわけでもない。この程度がニッポンのデザインの実力だと思われたりするとちょっと困るな、と一瞬思ったが、おそらく一般消費者の見識はそんなに甘くはないから大丈夫だろう。とは言え、見たことがないものも多かったので簡易なショーケースとしてはそこそこ楽しむことができた。iPod touch / iPhone用の解説サイトは、会場では回線の混雑のためあまり活用できず、アトリエに帰ってからゆっくり拝見した。

8/30。全生庵で『円朝コレクション幽霊画展』。江戸後期から明治期にわたるコレクションは、事前の予想以上に質の高いものだった。各々個性的な幽霊の表現は見飽きることがない。渡辺省亭(わたなべせいてい)、月岡芳年(つきおかよしとし)、歌川国歳(うたがわくにとし)、河鍋暁斎(かわなべきょうさい)、高橋由一(たかはしゆいち)、尾形月耕(おがたげっこう)、伊藤晴雨(いとうせいう)、林隣(りんりん)、萩原芳州(はぎわらほうしゅう)など印象的な作品は数多い。しかしやはり池田綾岡(いけだあやおか)の『皿屋敷』の美しさは群を抜く。来年、またお菊さんに会えるだろうか。

2008年09月15日 13:00 | trackbacks (0) | comments (0)
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