life
life of "love the life"

珈琲の美味しい店 : 千歳船橋・堀口珈琲

10/4。『成城コルティ』から千歳船橋へ。『堀口珈琲』世田谷店に初めて足を運んだ。オープンは1990年と比較的新しいが、オーナーの堀口俊英氏は珈琲の研究で著名な人物。氏の指導を受けた珈琲店は全国に数限りない。

061004_horiguchicoffee01.jpg

店内に入ると左手に長いキッチンカウンターがあり、右手にはテーブル席が比較的ゆったりと配置されている。チェアやテーブルのデザインは全くのバラバラで、スタルクの隣に出自不明の籐椅子が置かれている、と言った具合。内装全体を見ても統一感は無く、木部材にはあちこちで濃淡も樹種も異なるものが使われ、壁にはクロスの箇所もあれば左官もある。
キッチンカウンターの先の店内最奥にガラスで仕切られた一角がある。中の棚には無数のグラス類や何種類ものエスプレッソマシンなど、さまざまなカフェの道具がずらり。さらに客席のつきあたりの棚にはさまざまなスタイルのカップ類がずらり。
なるほど。どうやらここは決まったスタイルをプレゼンテーションする珈琲店ではない。カフェ開業を目指す人たちに「こういった道具がありますよ」と一通り紹介するためのお教室なのだろう。

061004_horiguchicoffee02.jpg

最もベーシックなメニューのひとつであろうシティローストの味わいブレンドを注文。コーノ式のペーパードリップ。予想通り見事にクリアで、申し分無く均整がとれている。が、「美味しいか」と訪ねられたら、ちょっと首を傾げざるを得ない。さらにフレンチローストの深煎りブレンドを飲むと、まさしく理屈通りに苦味が少しばかり際立って感じられる。この調子で他のメニューも飲み進めると、味覚の座標上にきれいな等間隔の点がプロットされそうだ。

一方、アイスコーヒーはドリップコーヒー由来のバランスの良さに深みを加えたさわやかな味わい。製氷機の氷がわずかに(しかし明らかに)クリアさを損なってはいたが、迷い無く美味しいといえるものだった。また、さっくりと軽い食感のバナナのケーキとハムタル(ロールハムとタルタルソースのアメリカンサンド)はコーヒーと実に良く合う。

061004_horiguchicoffee03.jpg

そしてこの日の一番の驚きはエスプレッソ。上の写真は飲みかけ(すみません)。
通常、エスプレッソは雑味も何もかもが全部入りの中に砂糖をどばっと入れて飲むものだが、このエスプレッソはなんともまろやか。期待されるコクと同時に、上品さすら感じさせる。

バランス重視のドリップコーヒーは、味の評価基準を持たない人に対しては有効な教材となるだろう。しかし、ひとたび珈琲好きの道に足を踏み入れ、他店のさまざまな味を知ってしまった人にとって、何の表現も持たない珈琲はわざわざ飲む価値のない珈琲でしかない。
ただ、徹底的な没個性が個性に転じることも世の中にはあるものだ。突出したところが無く、それでいてパンチのあるエスプレッソ。これは立派なオリジナルだと思う。

堀口珈琲世田谷店/東京都世田谷区船橋1-12-15/03-5477-4142
9:00-20:00/無休

2006年10月10日 06:00 | trackbacks (0) | comments (4)
comments

エスプレッソは気圧が高く短時間で抽出するので
通常、雑味のないものなのでは?

posted by: pon : 2007年07月14日 09:49

>ponさん
ご指摘を大変ありがとうございます。浅学な私たちは美味しいと感じられない成分まで抽出されている状態を通常一括りに「雑味がある」と言ってしまっていましたが、不味いエスプレッソが明らかに持つあの「余計なものまで出ちゃった感じ」を表すには、たしかに語義的に少々問題があるような気もします。平易に「えぐ味」などと言った方が良いのかもしれませんね。

「雑味」の用法を冷静に考えてみると、なんだか意外に深いものがあるような。

posted by: 勝野+ヤギ : 2007年07月14日 14:13

「気圧が高く短時間で抽出する」ことが「雑味がない」ことの十分条件ではありません。

そもそも短時間の抽出にもかかわらず、エスプレッソがあれだけ濃厚な液体になるのはなぜでしょうか?気圧が高いから?それもあります。強制的に高い圧力をかけてコーヒー粉から成分を絞り出しているわけですから。それだけでも、いろんな成分がコーヒー粉から抽出される気がしませんか?

フィルターの目が粗い。これも一因ですね。紙のフィルターだったら透過しないような成分も通過します。エスプレッソのクレマはまさにその所産です。

そもそも短時間抽出を可能にする原因はコーヒー粉の粒度の小ささです。ドリップに比べて非常に細かいからこそ、コーヒー粉が熱湯に触れる面積が大幅に増え、抽出されやすくなるわけです。試しにドリップ用のコーヒー粉でエスプレッソを抽出してみてください。薄くてまったく飲用に絶えない代物になってしまうでしょう。

このように「気圧が高く短時間で抽出する」からといって「雑味がない」(=クリーンな味わいになる)とは必ずしも言えないのです。エスプレッソというコーヒーを成立させている機序に目を向ければ、それがわかると思います。

もちろん、「勝野+ヤギ」さんのおっしゃるとおり、「雑味」の定義が重要なのですが。

posted by: ふにゃ : 2007年07月21日 16:54

>ふにゃさん
丁寧なコメントをいただき心より感謝致します。とても分かりやすく、勉強になりました。ありがとうございます。
察するに、美味しいエスプレッソの条件は、やはりドリップとは全く異なるようですね。その成立のメカニズムには大変興味をそそられます。
私たちは今までに国内では2、3店でしか美味しいと思えるエスプレッソをいただいた経験がありません。久しぶりに堀口珈琲を訪ねてみたくなりました。

posted by: 勝野+ヤギ : 2007年07月22日 03:28

post a comment




*ご記入のメールアドレスはブログ管理者にのみ通知され非公開となります。



back|mail
copyright