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身体と空間の芸術, 都市とデザインと : 展覧会行脚のメモ 2009年3,4月

3/6。青山・ワタリウム美術館で『島袋道浩展:美術の星の人へ』。島袋氏がゆるゆると手掛け続けるアートプロジェクトのうち、2001年から2008年までに手掛けられた十数点を主にビデオによって紹介する内容。オオタファインアーツで見た『シマブクロ・シマフクロウ』(1996)からいつの間にやら十数年。その作風はますます下らなさを増し、洗練され、強靭になっていた。探し物が見つかったり見つからなかったり、思わぬ出会いがあったり無かったりのプロジェクトは、どれも格好良く収束することはなく、ただ漫然と拡散してゆく。作品も下らなければ、それをぼんやり眺める私たちもまた実に下らない。生きてるってそんなもんだよね。と思ったり思わなかったりしながら会場を出た。何より最高だったのが『自分で作ったタコ壺でタコを捕る』(2003)。タコが捕れた瞬間の皆の嬉しそうな顔!、そして岸から海へと還されるタコの姿が忘れられない。

3月某日。初台・東京オペラシティアートギャラリーで『都市へ仕掛ける建築 ディーナー&ディーナーの試み』。これを見逃さなくて本当に良かった。スイス・バーゼルを拠点にヨーロッパ各地のプロジェクトを手掛けるD&Dの展覧会。彼らのデザインする建物は都市景観の中で擬態するように、あるいはひっそりと佇むように存在し、何らこれ見よがしなところがない。そこに周到に仕組まれた規則性と精緻なディテールが、日々建物を訪れ通り過ぎる人々の生活の中へと、美しい旋律を響かせるだけだ。会場の展示デザインもD&Dの手による。通常の展覧会では閉じられているギャラリー2手前の戸が、ここでは大きく開かれエントランスへと通じていた。些細なことながら、いつにないその風通しの良さが心に残る。チラシやポスターの「窓からの眺めも、私の部屋の一部なのでしょうか?」というコピーに『東京窓景』を思い出した。

3月某日。上野・東京都美術館で『「生活と芸術 - アーツ&クラフツ展」ウィリアム・モリスから民芸まで』。モダンデザインに反商業主義の遺伝子を組み込んだ男、モリスのことが最近とみに気になっている。タイミングよく拝見できてラッキーだ。会場冒頭、「役に立たないもの、美しいと思わない ものを家に置いてはならない」というモリスの言葉にいきなりガツンとやられる。ジョン・ラスキンのスケッチにはじまり、イギリスから中央ヨーロッパ、ロシア、北欧へのアーツ&クラフツのひろがりを一通り見ることができたのは有り難い。フィリップ・ウェッブのモダンな感覚、モリスのタペストリーの精巧さ(しかもかなり大きい)も印象的だった。後ろ1/3の日本の民芸運動に関するエリアにも見るべきものは多かった。でも全体としてはやや蛇足だったかも。

4/3。谷中・SCAI THE BATHHOUSEで『光の場 - 大庭大介』。7.5m×2mの大作を含む淡いパールカラーで点描された森の樹々のシリーズが素晴らしかった。角度によってその表情がダイナミックに変化することから、見るものは自然と身体を動かし、さながら絵の中を散策するような気分になる。ギャラリーを出ると、墓地周辺のあちこちで咲く満開の桜がこれまた点描の風景だった。
さらに同時開催の展覧会を見に4/5に恵比寿・magical ARTROOMへ。こちらは同様の画材を用いながらもぐっと抽象的な作品シリーズ。光学的イリュージョンの試行としてはより分かりやすいものの、細部に残る手仕事の跡がノイジーに感じられる。やっぱり森が好き。

4/5。パルコファクトリーで『浅田政志写真展 浅田家 - あなたもシャッター押してみて』。実在の「浅田家」であるご両親と兄弟の四人家族全員が揃って、大掛かりながら微妙にゆるいコスプレ(と言っても題材は「消防隊員」とか「ロックバンド」とか「選挙カー」とか)でおさまった写真がずらり。滑稽極まりないその様子が、やがていとおしくなる。なんて楽しそうなんだ、この家族は。馬鹿馬鹿しいくらいに単純であり、ハッピーであることが、なにより鋭く心に刺さり、泣ける。

2009年05月23日 16:37 | trackbacks (0) | comments (0)
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