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身体と空間の芸術, 都市とデザインと : 展覧会行脚のメモ 2008年6月

6/6。東京国立博物館で『国宝薬師寺展』。噂通りのものすごい観客数ではあったものの、平成館での企画展には珍しくスペースをゆったりと確保した贅沢な展示構成のおかげで、割合しっかりと鑑賞することができた。スロープを設えた順路から『日光菩薩立像』と『月光菩薩立像』(7-8世紀)の様々な表情を拝む。視線を計算しての絶妙なアンバランスさ。最も心惹かれたのは『聖観音菩薩立像』(7-8世紀)。サイズ的には『日光・月光菩薩立像』より随分と小振りながら(それでも身長190cmくらいある)、真っ直ぐに正面を見据える左右対称の洗練された造形、緻密な衣装の表現がその姿を屹然として見せる。

6/8。アクシスギャラリーで『チャールズ・イームズ写真展 100 images x 100 words』。チャールズ・イームズ撮影の写真の裏側に、デザインにまつわる彼の発言がひとつずつ記され、そのパネルがワイヤー支持で宙空にある。パネルは50枚ずつ2列に構成され、観客は各列の周りを歩きながらその写真と言葉を「鑑賞」する。直球かつ極めてメッセージ性の強い会場デザインとグラフィックデザインは廣村正彰氏によるもの。唯一メモしたのはこの言葉「テーブルに食器を並べるたびに、私は何かをデザインしている」。

6/12。上野の森美術館で『井上雄彦 最後のマンガ展』。井上氏の作品は一切読んだことがない。それでもこの展覧会のインパクトはあまりに強烈だった。

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冒頭、ケント紙にペン描きのマンガ原稿からして恐るべき画力に驚愕。通常の美術館順路を逆行するかたちでストーリーが展開し、途中から全てのコマが墨描きとなり、その大きさや筆致は展示空間と呼応しながら変化する。緩急自在にして独創的。伸びやかな水墨画の技量たるや実に凄まじい。美術館は完膚なきまでに一連のマンガへと変換されていた。この膨大な作品量が、ほとんど会期前の3、4週間に制作されたものであるとはにわかに信じ難い。おそらくこのままのかたちでは巡回不可能な一期一会のマンガの「内部」でゆっくりと歩を進めながら、北斎が存命なら嫉妬に狂うだろうな、と思った。

6月某日。サントリー美術館で『KAZARI 日本美の情熱』。最初に展示された深鉢形土器(縄文中期)のグラフィカルなデザインにいきなり釘付けに。並びでおなじみの火焔型土器を見ると、その印象は今までとは丸きり別物。呪術的と言うよりも、むしろ整然として装飾的。鎌倉期の超絶金工に続いて『浄瑠璃物語絵巻』(伝岩佐又兵衛筆/1600年代)と念願の対面。室内装飾の描写の緻密さは想像を上回るもの。鍋島大皿の洗練を堪能後、平成ライダーも逃げ出しそうな江戸初期の兜、平田一式飾り辺りからいよいよヤンキー的センスが全開。最後の『ちょうちょう踊り図屏風』(小沢華嶽筆/1800年代)では被り物集団の奇態に思わず腰が砕けた。

2008年07月13日 20:00 | trackbacks (0) | comments (2)
comments

しまった、イームズ写真展を始め色々見損ねてしまった。
こういった展覧会はたとえチェックしていても、「そのうち行こう」と思っていると駄目ですね。

posted by: doku(fukuma) : 2008年07月14日 00:40

>dokuさん
同感です。長くやってるのに限って見逃してしまいがちだったり。。。

posted by: 勝野+ヤギ : 2008年07月14日 17:41

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