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落語初心者のメモ : 落語初心者のメモ 2007年11・12月

11/3。三鷹市芸術文化センター・星のホールで『立川志の輔独演会』。開口一番・立川志の春さんの『道灌』に続いて志の輔師匠の登場。あまり声の調子が良くないとのことで、枕を長めにとっての演目は自作の新作『買い物ぶぎ』。買い物を頼まれてドラッグストアへ来たおじさんにマーケティングの不条理を延々掘り起こされてパニックに陥る店員に大笑いしつつ、その設定の綿密さに舌を巻く。
仲入りを挟んで『井戸の茶碗』。二組の武士の意地の張り合いの板挟みとなるお人好しの屑屋。終盤、屑屋をキレさせてしまうのは実に師匠らしいユニークな演出。制度に潜む矛盾に蟻地獄のようにはまってゆくキャラクターの悲喜劇を、志の輔師匠はいともスマートかつ現代的に描く。

11/21。みたか井心亭で『寄席井心亭 数えて百五十夜 霜月』。林家たい平師匠の会。井心亭は1983年に三鷹市の和風文化施設として設けられた木造平屋の建物。設計は番匠設計。最初にたい平師匠の『反対俥』(はんたいぐるま)。人力車夫に引っ張り回される客のハチャメチャな根多を、思い切り今風にアレンジしてさらにハチャメチャに。続いて三遊亭歌彦さんの『新聞記事』。さらに 林家久蔵師匠の『浮世床』で仲入り。
最後にたい平師匠で『粗忽長屋』。これが実に鮮やか。ところどころ時事ネタでくすぐりながら、まともな人物をほとんど介在させずに、ナンセンス極まりない根多を破綻無く飄々と演じる。笑いの向こうに芸の凄みが垣間見える落語。終演後にサインをいただいた。

11/26。よみうりホールで『第25回東西落語研鑽会』。先ず桂つく枝師匠で『四人癖』。初っ端から品のある見事な上方落語。その表情の楽しく豊かなこと。今後要チェック。続いて全国落語台本コンクール優秀賞作品の 『夢で逢えたら』 (冨田龍一氏作)を柳家喬太郎師匠で。切ない幽霊根多を師匠らしく怪しく映像的に力演。続いて林家正蔵師匠と柳家花緑師匠のダブル司会でコンクールの表彰式。こちらにも喬太郎師匠が登場。さりげなくコケてみたり、椅子の後ろに恨めしげに立ったりするのが妙に可笑しい。本当にちょっとした動作が舞台に映えるのだ。コントとか芝居もやってみてほしいような、やらないでほしいような。
仲入りを挟み花緑師匠で『唖の釣』。 師匠の落語は人数の出る会ではあまり印象に残ったことが無いのだが、この日は違った。テレビでは口演の難しい根多を嫌味無く粋に演じて正蔵師匠に繋ぐ。『鬼の面』は林家しん平師匠の新作(正:上方由来の古典・0802/22訂正)。正蔵師匠らしい人情味の豊かな根多。人は悪くないが悪戯心が過ぎて事件を引き起こしてしまう旦那のキャラクターが師匠自身に重なる。最後は桂三枝師匠で自作の新作『宿題』。お馴染みの根多ながら、各師匠が盛り上げた会場の空気を一身に引き受ける熱い高座だった。涙ぐむくらいに爆笑。

12/12。博品館劇場で『たい平たっぷりナイト2』。先ずは林家たい平師匠で『七段目』。上方由来のはめもの(口演途中のお囃子)入りの芝居噺。歌舞伎のパロディを相当上手く演らなくては面白くならない根多だが、さすがは師匠。役者の物真似を分かりやすく織り交ぜて巧みに現代化しつつ、抜群のテンポで華やかに演じる。林家ペタ子さんの歌の後仲入り。たい平師匠がiMovieで作ったと言う空の写真のスライドショーに続いて最後は『芝浜』。
無知な素人が言うべきことではないかもしれないが、『芝浜』の山場は前半の財布を拾うシーンにあるのではないか。そこで観客に芝の浜の風景を想起させることが出来るかどうかが、この根多の良し悪しを決定付ける。とすれば、この日のたい平師匠の『芝浜』は文句無しの佳作だった。思わず魚屋夫婦に感情移入して涙、涙。

12/18。内幸町ホールで『東西若手落語家コンペティション2007 第5回』。出演陣がじゃんけんで登場順を決めて、トップは立川志ら乃さんの『火焔太鼓』。志らく師匠ゆずりの暴走機関車のようなスピード感と脱線具合に爆笑。次は三遊亭歌彦さんの『片棒』。声が非常に良く、言葉使いは流れるように美しい。しかし、申し訳ないことに何故か眠たくなる(11月の井心亭でもそうだった)。続いて桂春菜さんの『七段目』。歌舞伎部分が今ひとつ未完成で、根多全体に一体感を欠く印象ではあったが、独特の色気を感じさせる噺家さんだった。
仲入りを挟んで三遊亭遊馬さんの『佐野山』。江戸後期の相撲取・谷風と佐野山にまつわる講談由来の根多。伏線、登場人物ともに多く、落語としては面白くし辛そうな構成ながら、表情豊かでメリハリの効いた遊馬さんの口演は素晴らしかった。最後まで明確な種明かしをせずにお終いにしてしまうがこれまた粋だ。最後は桂かい枝さんで自作の新作『ハル子とカズ子』。熱演が続いて観客も疲れただろう、と思われたのか、お得意の軽めの根多。とは言え、関西のおばあちゃん同士の会話は実に良く練られており、客との間合いの取り方もまた一流だ。終演後、観客による投票が行われ、この日の優勝者はかい枝さんに決定。正直、この場においてはラッキーな選出であったと思うが、おそらくかい枝さんはまだ爪を隠しておられる。2月のグランドチャンピオン大会が楽しみだ。と思ってたんだけど、迂闊にもチケットを取り損なってしまった。。。無念。

2008年01月19日 10:00 | trackbacks (0) | comments (2)
comments

>『鬼の面』は林家しん平師匠の新作。
とありますが、間違いではないでしょうか。
というか、間違いですよ。

posted by: ぴか : 2008年02月21日 03:52

>ぴかさん
あらま。ご指摘を大変ありがとうございます。すぐ訂正します。何分落語初心者なもので、どうぞご勘弁下さい。しかしどこでどう勘違いしたんだか?

posted by: 勝野+ヤギ : 2008年02月22日 12:06

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