life
life of "love the life"

落語初心者のメモ : 落語初心者のメモ 2009年1月

1/9。大手町・日経ホールで『桂春團治 春風亭小朝 二人会』。林家まめ平さんで「転失気」、桂吉坊さんで「千早ふる」 、桂春團治師匠で「祝いのし」 、仲入り、翁家勝丸師匠の大神楽、春風亭小朝で「中村仲蔵」。
上方と東京、双方の美しい言葉の響きを堪能させていただいた。春團治師匠の老いてなお粋(すい)な佇まいに思わず背筋を正し、時折見せる無邪気な笑みに癒される。「祝いのし」は本当にいい根多だ。小朝師匠は毒のある小噺を巧みにはさみながら、流れるような構成で見せる。談志師匠を彷彿させるイリュージョン性。良い席で見ることができて幸せ。小朝師匠周辺の方々は落語マニアからはなぜか避けられることが多いようだが、勿体ないことだ。
経団連、JA、日経が連なる複合ビル3Fにある日経ホールは白木丸太の壁造作が美しい。東山魁夷の緞帳も良い取り合わせ。ただ、この会場ならではの客層なのか、身なりの良さのわりにマナーの悪い中高年が目についた。日本経済の中枢に近いところはおそらくこの辺の方々が占めていらっしゃるのだろう。

1/20。みたか井心亭で『寄席井心亭 百七十六夜』立川志らく師匠の会。立川らく太さんで「ざるや」、立川志ら乃さんで「壺算」、志らく師匠で「たぬき」、仲入り、志らく師匠で「富久」。
荒んだキャラクターが板に付いて高座に凄みを増しつつある志ら乃さん。実に腹黒く、かつ能天気で魅力的な「壺算」だった。志らく師匠の「たぬき」は子狸の脊髄反射的な言動が可笑しく、実に可愛らしい。そして素晴らしい「富久」。酒癖が悪くて欲深く、間抜けでお人好し。俗人の業を全部背負い込んだがゆえに誰にも憎まれない幇間の久さん。単純なようで複雑な人物像と、それをとりまく境遇を、志らく師匠は極めて自然に造形してゆく。どんでん返しのサゲに心から「久さん良かったね」と言いたくなる。

1/27。三鷹市芸術文化センター星のホールで『立川談春独演会』。立川春太さんで「千早ふる」、談春師匠で「百川」、仲入り、談春師匠で「包丁」。
「百川」を談春師匠で見るのは初めて。キュートで怪しい百兵衛さんが独特。居るだけで笑いがこみ上げる。でも実際側に居るとちょっとヤだな。「包丁」を談春師匠で最初に拝見できたのは幸運。悪巧みあり、啖呵あり、与太郎キャラあり。水を得た魚、とはまさにこの高座での師匠のこと。そして脱力を誘いつつも実に切れ味鋭いサゲ。それぞれに業の塊のように思えたアクの強い登場人物たちが、ここに来て見事に愛すべき人々へと転化される。粋だ。

2010年03月01日 23:30 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ : 落語初心者のメモ 2009年12月

12/10。鈴本演芸場12月上席楽日。春風亭朝呂久さんで「出来心」、三遊亭天どんさんで「たらちね(改)」、鏡味仙三郎社中の大神楽、春風亭柳朝師匠で「武助馬」、昭和のいるこいるの漫才、柳家三三師匠で「加賀の千代」、春風亭百栄師匠で「激突道案内」、五街道雲助師匠の「強情灸」で仲入り。柳家紫文師匠の三味線漫談、入船亭扇辰師匠で「紋三郎稲荷」、アサダ二世先生のマジック、トリは三遊亭白鳥師匠で「メルヘンもう半分」。
元気でかつ安定感のある前座離れした朝呂久さん。天どんさんの「たらちね(改)」はお千代さんがアメリカ人とのハーフ。文語調とブロークン過ぎる英語が混じって滅茶苦茶に。シンプルかつ巧妙に練られた爆笑根多。まくらの脱力具合も含め独自の領域に。百栄師匠もならではの勢いある新作で嬉しい。雲助師匠はお下劣なギャグ満載の噺を明るく粋に。
扇辰師匠はこの日初めて拝見した。どうして今までチェックしなかったのか、と悔やまれる素晴らしさ。単純で間抜けで丸きり古典的な噺をチャーミングなキャラクター造形とともに情感たっぷりに描いて会場をタイムスリップさせる。なんとも綺麗で、力強い。
白鳥師匠の新作は「もう半分」の登場人物をムーミンのキャラクターに置き換えてしまう力技。細かいくすぐりに爆笑しつつ、その丁寧な作り込みに驚嘆。ついには独特の哀感まで生み出されてしまっている。いやはや、凄いものを見させていただいた。

12/17。水天宮前・日本橋劇場で『日本演芸若手研精会 第三百四十回 師走特別公演』。古今亭志ん坊さんで「元犬」、入船亭遊一さんで「真田小僧」、春風亭一之輔さんで「河豚鍋」、桂平治師匠で「鈴ヶ森」、仲入り、瀧川鯉橋さんで「粗忽長屋」、柳家三之助さんで「芝浜」。
明朗さが好感度大の志ん坊さん。自らの毒舌で勝手に追い込まれてゆく一之輔さんのまくらはいつもスリリングで良い。食事シーンのオーバーアクションに爆笑。初めて拝見した平治師匠はエンターテイメント性抜群。新米泥棒の悪ノリぶりが可笑しいのなんの。どういうわけか仕草が権太楼師匠にそっくりだ。
そして、この年末最初(でおそらく最後)の「芝浜」をまさか三之助さんで拝見するとは。真打昇進直前の貴重な時期に遭遇出来たのが有り難い。練り上げられたオリジナリティのあるディテール。幕切れの格好良さは秀逸。いいものを見せていただいた。中盤までの流れは今後さらに進化するだろう。楽しみ。

12/21。代官山で『+ing Attic寄席』。立川志の春さんで「花色木綿」、立川メンソーレさんで「堀之内」、仲入り、志の春さんで「宿屋仇」。
志の輔師匠の三・四番弟子のお二人。師匠の居ない会は初めてとのことで最初は極度に緊張なさっていたようだがどうして、安定感のある高座で大いに笑わせていただいた。志の春さんはフリートークでもセンスが光る。根多は終盤にテンションがやや落ち気味か。メンソーレさんは元来腹黒さが持ち味と見た。お上手なだけ余計に素の面白さを発揮するまでが難しいのかもしれない。とは言え、恐らくお二人ともブレイクスルーは間近だろう。またどこかで拝見できるのが楽しみだ。

12/22。池袋・東京芸術劇場小ホールで『百栄落語ぐっちょり』。春風亭百栄師匠で「七つのツボを押す男」と「トンビの夫婦」、柳家喬太郎師匠で「柚子」、仲入り、林家きく麿さんで「パンチラ倶楽部」、百栄師匠で「最期の寿限無」。
以前に拝見した時よりもぐんとキレ味を増した「七つのツボを押す男」。その構造が浪曲「石松三十石船道中」になっていることに今ごろ気がついた。「トンビの夫婦」は三升家う勝さんの作で長屋が舞台のDV根多。ほのぼのした展開がなんとも不思議。喬太郎師匠は季節に因んだ親子人情根多。師匠演じる子供は野蛮でアンバランスでハイテンションで可愛らしい。きく麿さんは下らないギャグをひたすら連ねて微妙な雰囲気のままバッサリ、というまさに期待を裏切らぬ高座。
「最期の寿限無」は虚実が危うく入り混じる百栄師匠ならではの根多だった。「天使と悪魔」よりも設定が数段シンプルな分、哀感と滑稽さの対比が凄まじい。最高に切なく、馬鹿馬鹿しいサムアップ。

2010年03月01日 23:00 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ : 落語初心者のメモ 2009年11月

11/7。吉祥寺・前進座劇場で『噺を楽しむ その40 柳家小三治』。柳亭こみちさんで『本膳』、古今亭朝太さんで『壺算』、五街道雲助師匠で『ずっこけ』、仲入り、三増紋之助師匠の曲独楽、小三治師匠で『お茶汲み』。
久方ぶりのこみちさんは高座に風格が。雲助師匠を拝見するのは初。なるほどこれは極めて独特かつ完成された口調。後半は下ネタばかりとなる酔っ払いの噺を嫌味なく聞かせる。カッコいい。紋之助師匠はいつも以上にトラブル含みの高座。場内が異様な盛り上がりとなる中、小三治師匠の登場。登場人物たちのゆったりとした会話から吉原の風情が立ち現れてゆく。シンプルでナンセンスな展開。粋なサゲ。なんと心地良いことか。

11/11。みたか井心亭で『寄席井心亭 百七十三夜』。柳家花緑師匠の会。柳家まめ緑さんで『道灌』、花緑師匠で『蜘蛛駕籠』、立川談春師匠で『一分茶番』、仲入り、花緑師匠で『笠碁』。
次々登場する癖の強いキャラクターをコントラストも鮮やかに演じ分ける花緑師匠。その表情の可笑しいこと。談春師匠は『権助芝居』のフルバージョンを軽妙かつ丁寧に。確信犯的な権助がいい。花緑師匠の『笠碁』は二回目。数ヶ月前とは全くと言って良いほど造形が異なっていた。二人の旦那が年寄りらしくないことも気にならなくなるくらいに感情の機微を徹底して現代化。演劇的誇張とともに描き切る。驚くべき進化。
最後の質問コーナーで印象深かったのは、弟子は師匠の悪いところから似てくる、才能やセンスがあってもアンテナが壊れてる奴は決して上手くならない、という話。そういうものかもなあ。先日若くして逝去された立川文都師匠の話題も。前座時代、明け方の下宿への帰路、缶コーヒーを飲む文都師匠の「コーヒーは甘うて美味いなあ」とのつぶやきに関西弁の美しさを感じたと言う談春師匠の話しが心に染みた。談志・文都の独特の師弟関係が糖尿病談義から垣間見得るエピソードも泣けた。「一番未練があるのは本人でしょう」と談春師匠。

11/13。上野・鈴本演芸場で『寄席DAYパート39 鈴本特選会 市馬落語集』。柳亭市也さんで『真田小僧』、柳亭市江さんで『無精床』と『夕霧』(踊り)、柳亭市馬師匠で『試し酒』、仲入り、寒空はだか先生のスタンダップコメディー、市馬師匠で『抜け雀』。
ディテールに個性が自然に表れるまでになってきた市也さん。はだか先生はなんと鈴本初登場とのこと。貴重なステージを拝見できて大変有り難い。市馬師匠は二席をそれぞれたっぷりと。特に『抜け雀』は絶品。お人好しな宿屋の主人が絵師に翻弄される様子が明るくコミカルにテンポ良く描かれる。登場人物の繰り広げる会話のリズムの実にタイトなこと。まるでジャズカルテットのようだ。冷たい雨の中、心はほっこりと暖まって帰宅。

11/18。みたか井心亭で『寄席井心亭 百七十四夜』。林家たい平師匠の会。たい平師匠で『親子酒』、柳家小太郎さんで『時そば』、三遊亭丈二師匠で『極道のバイト達』、仲入り、たい平師匠で『宿屋の富』。
小太郎さんの『時そば』は小箱で聞くとやや抑揚に乏しい印象。丈二師匠はヤクザものながらなんとも軽妙で楽しく細部まで丁寧につくり込まれた新作根多。まくらがもう少し短ければもっとウケたかも。たい平師匠の『親子酒』は母親の確信犯的ボケが前面に押し出されるという意外なスタイルでこれでもかとくすぐる。ヤクルトってちょっと可笑し過ぎでしょう。『宿屋の富』は短めながら最後は酸欠気味の熱演。湯島天神以降のエスカレート具合が凄まじいのなんの。見ている方も抱腹絶倒だ。

11/27。水天宮前・日本橋劇場で『長講三人の会』。春風亭昇々さんで『雑俳』、柳家さん喬師匠で『鴻池の犬』、柳家権太楼師匠で『二番煎じ』、仲入り、昔昔亭桃太郎師匠で『らくだ』。
初めて拝見した『鴻池の犬』は元来上方落語で、筋立ては極めてシンプル。さん喬師匠一流の話芸とアレンジによって切なく味わい深い噺となっていた。『二番煎じ』を聞くと冬が近いな、と思う。権太楼師匠の高座は多彩な登場人物がそれぞれに際立って、実に楽しく賑々しい。桃太郎師匠の『らくだ』は突発的に挿入される下らない小ネタにくすぐられっぱなし。火屋へ向かう場面での「夢中になって羽織脱ぐの忘れてた」には会場大ウケ。半次を演じる師匠の独特の凄みも印象的だった。

2009年12月23日 20:00 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ : 落語初心者のメモ 2009年10月

10/16。日本橋社会教育会館で『人形町市馬落語集』。柳亭市楽さんで『天災』。柳亭市馬師匠で『巌流島』、続いて『親子酒』、仲入り、市馬師匠で『王子の狐』。のどかなトーンの根多が続いて会場はほんわかした雰囲気。絶品は先代小さん師匠もお得意だった『親子酒』。酔っ払い親子がチャーミング過ぎる。幸福感満点。

10/19。練馬文化センター小ホールで『柳亭市馬立川談春二人会』。柳亭市楽さんで『鮫講釈』、談春師匠で『牡丹灯籠 - お札はがし』、仲入り、笑福亭鶴瓶師匠で『オールウェイズお母ちゃんの笑顔』、市馬師匠で『らくだ』。情念の塊のようなエピソードを、伴蔵、お峰の夫婦のやりとりに焦点を当てつつ、滑稽かつドライに描写してしまう談春師匠。それがかえって登場人物の業の深さを印象づける。鶴瓶師匠はお得意の私落語。さらりとスピーディーな展開に爆笑を詰め込んで最後にほろり。市馬師匠の「らくだ」を通しで拝見したのは初めて。師匠ならではの軽快な展開に半次の極悪さが際立つ。幕切れはなんとも爽やかで、心晴れ晴れとした終演。

10/23。練馬文化センター小ホールで『ふたりのビッグショー』。柳亭市也さんで『出来心』、寒空はだか先生のスタンダップコメディー、柳家喬太郎師匠で『中華屋開店』、仲入り、柳亭市馬師匠のデビュー三十周年口上、柳家さん弥さんで寿舞『九段の母』、市馬師匠で『淀五郎』。口上で涙に声を詰まらせる喬太郎師匠。さらに、はだか先生の落研時代の高座名・大詰亭冷奴(おおつめていひややっこ・字は確証無し)が判明。個人的にツボだったのは喬太郎師匠。中華屋開店を目指す心理学者とその助手、心理学者をストーキングする女子大生とその執事・長谷川の4人が繰り広げる不条理劇。サブカルにハマったことのない層には理解し難いであろう喬太郎ワールド。そして完璧なる古典落語的サゲ。終演後「中華屋開店、どう思う?」と言った会話がそこかしこから聞こえて来たのが面白かった。高度な実験性と洗練性。まさに問題作。市馬師匠は流麗な芝居噺にうっとり。

10/28。なかのZERO小ホールで『落語教育委員会』。柳家喜多八師匠、三遊亭歌武蔵師匠、柳家喬太郎師匠の刑事ものコントに続いて柳家小太郎さん(前座名・小ぞう)で『時そば』、喬太郎師匠で『錦の袈裟』、仲入り、歌武蔵師匠で『植木屋娘』、喜多八師匠で『棒鱈』。小太郎さんのポテンシャルを再確認。しゃくれ顔の小男が妙にフェミニンな仕草を見せるのが気持ち悪くて良い。喬太郎師匠は与太郎のキャラクターが独創的で愛らしい。歌武蔵師匠は間抜けな植木屋夫婦の凄まじい暴走ぶりに爆笑。喜多八師匠もいつに増してアグレッシブで痙攣的な語り口が大いに冴える。

10/29。浅草橋区民館で『鳥越落語会』。春風亭昇吉さんで『道灌』、春風亭一之輔さんで『提灯屋』、柳家喜多八師匠で『鈴ヶ森』、仲入り、林家花さんの紙切り、喜多八師匠で『片棒』。昇吉さんは古典の方がお得意の様子。江戸っ子口調が板に付いている。初めて拝見した一之輔さんは聞きしに勝る達者な高座。端正な容姿とクールな語り口から透けて見える腹黒さが実にいい。花さんの高座は俗曲の師匠に通じる客あしらいと紙切りの組み合わせがユニーク。こりゃ新しい。二日連続で拝見の喜多八師匠は今日も軽妙かつアグレッシブ。『片棒』の息子の丸っきり適当で能天気なキャラクターと、心底弱り果てて死にそうな旦那。このギャップが可笑しいのなんの。

2009年11月10日 00:00 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ : 落語初心者のメモ 2009年9月

9/9。浅草公会堂で『第二回落語大秘演会 笑福亭鶴瓶 JAPAN TOUR 2009-2010 WHITE』。最初に鶴瓶師匠のトーク、桂南光師匠で『素人義太夫』、仲入り、鶴瓶師匠で『らくだ』。
両師匠ともに同じ根多を拝見するのは二度目。しかしどちらも以前の印象とは全く別物に仕上がっていた。南光師匠はゆったりとしたリズムの長講。これがもうしびれるような絶品。角ばったところの一切無い語り口で、噺の世界にどっぷりと引き込まれる。仲入り後の鶴瓶師匠は南光師匠とは対照的な凄みを見せる。歌舞伎座よりも一層研ぎ澄まされた『らくだ』。鋭利な大阪言葉が突き刺さるような高座に思わず息を呑んだ。「なにどくされてけつかんねん」とか言ってみたいなあ。

9/26。三鷹市芸術文化センター星のホールで『柳家権太楼独演会』。柳家おじさんさんで『子ほめ』、柳家甚語楼師匠で『権助芝居』、権太楼師匠で『化物使い』、仲入り、柳家亀太郎師匠で三味線曲弾、権太楼師匠で『百年目』。
この日の権太楼師匠は小言全開モード。まくらで協会のことをいろいろと。根多も二席ともに小言満載なのが実に可笑しかった。特に『百年目』は鳴りもの入りで、ほぼ正調の鮮やかな上方スタイルが嬉しい。これまでに拝見した師匠の高座の中でも最もドラマティックに笑わせ、泣かせる内容だった。初めて拝見した亀太郎師匠は見事な曲弾に拍手喝采。

9/30。みたか井心亭で『寄席井心亭 数えて百七十二夜 長月』立川志らく師匠の会。立川らく八さんで『牛ほめ』、立川らく次さんで『三方一両損』、志らく師匠で『笠碁』、仲入り、志らく師匠で『唐茄子屋政談』。
志らく師匠の二席には心底驚かされた。あんなにアグレッシブで、かつ愛情に溢れた『笠碁』が有り得るとは。『唐茄子屋政談』は元来通しでやると展開的に無理が生じやすい根多。ところが志らく版は各登場人物にリアリティを与えながら細部を絶妙にリファインすることで、ジェットコースターのような爆笑人情根多に。さすがの一言。これだから師匠の会からは目が離せない。

2009年10月20日 22:00 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ : 落語初心者のメモ 2009年8月

8/17。上野・鈴本演芸場で『第20回 納涼名選会 鈴本夏まつり 吉例夏夜噺 さん喬 権太楼 特選集』。柳家喬之助師匠で『寄合酒』、三増紋之助師匠の曲独楽、柳亭燕路師匠で『だくだく』、ロケット団の漫才、古今亭菊之丞師匠で『片棒』、柳家甚語楼師匠で『狸賽』、鏡味仙三郎社中の太神楽、桃月庵白酒師匠で『佐々木政談』、仲入り、柳家小菊師匠の俗曲、柳家さん喬師匠で『木乃伊取り』、林家正楽師匠の紙切り、柳家権太楼師匠で『佃祭』。
燕路師匠は間抜けな登場人物ばかりのナンセンス極まりない噺を軽快に。菊之丞師匠は祭り好きの息子の場面だけをたっぷり。からくりの動作が最高。権太楼師匠の『佃祭』は期待を遥かに上回る素晴らしさ。多くの登場人物がそれぞれ魅力的に描かれ、それでいて全体の印象がちっとも重くならない。賑々しく、心を浮き立たせる。

8/18。お江戸日本橋亭で『第27回 オリンパスモビー寄席 春風亭百栄独演会』。春風亭ぽっぽさんで『ん廻し』、百栄師匠で『引っ越しの夢』、米粒写経の漫才、百栄師匠で『午後の審理』、仲入り、百栄師匠で『尼寺の怪』。
米粒写経が凄い。右翼とオタクが機関銃を打ち合うような掛け合い。こんな芸が見られるのが生の有り難いところ。百栄師匠の『午後の審理』は暴走するエロ妄想とキツい風刺の新作。こうした挑戦は今後もぜひ。対照的に前後の古典は至って馬鹿馬鹿しく長閑。師匠ならではのとぼけた風合いがほのぼのとして暖かい。

8/23。有楽町・よみうりホールで『立川志らく林家たい平 二人会』。立川らく兵さんで『洒落小町』、たい平師匠で『青菜』、仲入り、翁家勝丸さんの太神楽、志らく師匠で『子別れ』。
らく兵さんから大いに笑う。こうした大きめの会場に向いた落語家さんかもしれない。たい平師匠の『青菜』は実に丁寧でくすぐりどころ満載。サービス精神のなんと旺盛なことか。お腹痛い。次が仲入りで命拾いした。志らく師匠の『子別れ』は亀吉以上に熊五郎とお光のふたりが可愛らしい。ラブコメとしての普遍性が高純度で抽出された素敵な高座。

8/28。人形町・日本橋社会教育会館で『市馬落語集』。柳亭市也さんで『道具屋』、柳亭市馬師匠で『お化け長屋』、仲入り、市馬師匠で『居残り佐平次』。
『居残り佐平次』の独創性に驚嘆。この佐平次は極めつけにドライな悪人だ。それまでのナンセンスな展開と、市馬師匠一流の明朗な口調が、サゲの恐さをより一層際立たせる。市馬師匠のダークサイドを垣間見たような気がした。『お化け長屋』も素晴らしかったと思うけど、おかげで吹っ飛んだ。

8/29。吉祥寺・前進座劇場で『寄席「噺を楽しむ」その三十八 納涼寄席 桂南光 米團治 ふたり会』。桂二乗さんで『子ほめ』、桂米團治師匠で『掛け取り』、桂南光師匠で『花筏』、仲入り、米團治師匠で『高津の富』、南光師匠で『あくびの稽古』。
たっぷりを二席ずつ。米團治師匠の『掛け取り』はオペラ根多を織り込んで賑々しく。初めて見た『高津の富』はサゲが可愛らしく控えめで魅力的な噺。大阪の風景が高座に浮かぶような好演。南光師匠は『花筏』が素晴らしいのなんの。提灯屋の徳さんと千鳥が浜がクラマックスに向けて次第に追い込まれてゆく様子が鮮やかな場面転換とともに小気味良く描かれる。『あくびの稽古』は極めつけに明るく軽妙に。お腹いっぱいの贅沢な会だった。

2009年09月25日 07:00 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ : 落語初心者のメモ 2009年7月

7/5。内幸町ホールで『桂雀三郎独演会』。桂雀太さんで『天狗刺し』、雀三郎師匠で『胴乱の幸助』、仲入り、柳亭市馬師匠で『あくび指南』、雀三郎師匠で『三十石』。幸助のいびつなキャラがいかにも自然に淡々と描かれ、河畔の眺望が高座から蜃気楼のようにひろがる。『三十石』は演者の方によって、同じ淀川でもずいぶんと風情が異なる。この日はとりわけ未明以降の様子が心に残った。すっかり夢心地。でも、雀のおやどで拝見したような爆発的な高座を東京でもぜひ拝見したいなあ、と思ったり。

7/8。みたか井心亭で『寄席井心亭 数えて百六十九夜 文月』柳家花緑師匠の会。柳家緑君さんで『真田小僧』、花緑師匠で『高砂や』、仲入り、柳貴家雪之介師匠の大神楽、花緑師匠で『宮戸川』、花緑師匠で『二階ぞめき』。はじめて拝見した雪之介師匠が凄い。日本刀に生卵。座敷は驚愕と拍手の渦。この狭い場所でそこまでやるか。花緑師匠は軽妙な根多をみっつ。流れもテンションもいつも通り。しかし拝見する度に師匠ご自身が「落語化」し、高座の面白味が増大する。『二階ぞめき』の若旦那との同化ぶりはほとんど幻惑的だった。

7/11。三鷹・星のホールで『柳亭市馬独演会』。柳亭市也さんで『道具屋』、市馬師匠で『ふだんの袴』、恩田えり師匠を高座へ迎えてのお囃子の演奏、市馬師匠で『締め込み』、仲入り、市馬師匠で『船徳』。『締め込み』が素晴らしかった。庶民生活の悲哀と強烈なナンセンス。堪らない。

7/15。みたか井心亭で『寄席井心亭 数えて百七十夜 文月』林家たい平師匠の会。林家たこ平さんで『長短』、たい平師匠で『七段目』、三遊亭歌奴師匠で『寝床』、仲入り、たい平師匠で『千両みかん』。流麗の一言に尽きる歌奴師匠。心地良過ぎて思わずうとうとしそうになるのもまた落語の幸せ。たい平師匠の『七段目』は何度拝見しても爆笑。『千両みかん』は番頭の心境を丁寧に描いての静かな幕切れに思わずしみじみ。

7/24。人形町・日本橋社会教育会館8Fホールで『WAZAOGI落語会 円丈フェスティバル2009「百年目の夜」』。三遊亭丈二師匠の小噺、三遊亭円丈師匠で『文七元結』、仲入り、円丈師匠・丈二師匠・千葉しん師匠で『DJトークショー』、円丈師匠で『百年目』。お久と文七の関係にオリジナルのエピソードを追加することで物語としての奥行きを増した『文七元結』に驚き。『百年目』は花見の番頭のはじけ具合に爆笑。一転、終盤では旦那と差し向かいの場面が極めて丁寧に描かれ、涙を誘う。結果、展開そのものは鉄壁のスタンダードさで、そのことにかえって驚いた。円丈師匠の古典はやっぱり「新しい」。

2009年08月16日 22:00 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ : 落語初心者のメモ 2009年6月

6/12。新宿・紀伊國屋サザンシアターで『新にっかん飛切落語会 第8夜』。瀧川鯉八さんで『牛ほめ』、柳亭市馬師匠で『転宅』、桂ざこば師匠で『子別れ』、仲入り、柳家喬太郎師匠で『頓馬の使者』、瀧川鯉昇師匠で『佃祭』。
やっと出会えたざこば師匠の『子別れ』は期待通りの素晴らしさ。これまでに拝見した流麗な高座とは違い、どもったり詰まったりしながら、いかにも情けなく、可愛らしく、時に毅然とした表情を見せる登場人物たちには作意も造形も無い。おそらく皆、師匠の人格そのものなのだ。感涙。『頓馬の使者』は山田洋次監督が五代目柳家小さんのために書いた演目。至ってシンプルな粗忽噺を軽妙に、かつギャグたっぷりで演じる喬太郎師匠。さらに鯉昇師匠は小さな突発性ギャグを散りばめての見事な『佃祭』。なんとも上質な後味の会だった。

6/13。吉祥寺・前進座劇場で『寄席「噺をたのしむ」その三十七 さん喬 喬太郎 親子会』。柳家さん若さんで『野ざらし』、柳家さん喬師匠で『お菊の皿』、柳家喬太郎師匠で『死神』、仲入り、喬太郎師匠で『路地裏の伝説』、さん喬師匠で『たちきり』。
幕が上がるといきなりさん喬・喬太郎師匠のトーク。ちょっと怪談っぽい根多を、とその場で決まる。嬉しかったのはさん喬師匠の『お菊の皿』。師匠が滑稽噺の高座で見せる太陽のような明るさが私たちは大好きだ。喬太郎師匠自作の新作『路地裏の伝説』は身近な生活描写の積み重ねから紡ぎ出されるちいさなファンタジー。笑えて、ジンと来る。いいなあ。

6/14。三鷹・星のホールで『林家たい平独演会』。桂三木男さんで『看板のピン』。たい平師匠で『たがや』と『長短』、仲入り、たい平師匠で『薮入り』。
めくりが「こたい平」と間違って出てしまい、やや調子が狂ったたい平師匠。客としてはそれもまた一興。だれも死なない改作の『たがや』に相変わらず絶品の『長短』。『薮入り』はちょうどその朝の「日本の話芸」で三遊亭楽太郎師匠が演じていた根多。きっと偶然ではないだろう。平和的なふりをして、実は戦う人なのだ。この日は楽太郎師匠の圧勝。次にたい平師匠の『薮入り』を見る時は、きっとぐんと進化しているに違いない。

6/23。上野広小路・鈴本演芸場で『寄席DAYパート38 鈴本特選会 さん喬・権太楼二夜』の第二夜。三遊亭多ぼうさんで『寿限無』、柳家甚語楼師匠で『権助芝居』、柳家権太楼師匠で『蛙茶番』、柳家さん喬師匠で『寝床』、おたのしみビンゴ大会、仲入り、さん喬師匠で寄席の踊り『奴さん』と『深川』と『なすかぼ』、権太楼師匠で『居残り佐平次』。
どの高座も素晴らしかったが、『居残り佐平次』ですべて吹っ飛んだ。構造的に平坦な上に無理だらけのストーリーを、佐平次のキャラクターの魅力のみで爆笑のうちに押し通す。不条理が臨界に達したようなサゲが実に爽快なことこの上ない。久しぶりに奇跡を体験した。感動。

6/30。人形町・日本橋社会教育会館で『市馬落語集』。柳亭市也さんで『たらちね』、柳亭市馬師匠で『野ざらし』、仲入り、市馬師匠で『唐茄子屋政談』。
市也さんの声が良くなった。市馬師匠の『野ざらし』は美声のサイサイ節を経て幇間のくだりまでたっぷりと。楽しい。『唐茄子屋政談』は若旦那が吉原を懐かしむ田舗のシーンが心に残る。

2009年07月13日 06:00 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ : 落語初心者のメモ 2009年5月

5/1。神楽坂フラスコで『スイッチ寄席』。春風亭百栄師匠の会。『新生徒の作文』、『お血脈』、『天使と悪魔』。
着物展示会のイベントとして、ギャラリーショップ奥の座敷に高座を設えて行われた落語会。アウェイな状況を意識され過ぎたのか、ことごとく噛み噛みに。最後の根多でようやく復調。内幸町以来久しぶりの『天使と悪魔』が嬉しい。真打昇進からしばらく経って、まるで落語好きの青年に戻ったような百栄師匠がなんだか可笑しかった。

5/3。よみうりホールで『立川談志独演会』。立川談修さんで『看板のピン - なすとかぼちゃ(踊り)』、談志師匠で『短命』、仲入り、談志師匠で『金玉医者 - 女給の文(焼き肉屋版)』。
声の調子がずいぶんと良好なご様子で一安心。それにしても、こんなにさらりとした談志落語を立て続けに聞いたのは初めて。『短命』では浪曲でガラガラ声のくだりさえカットしてシンプルに。極めつけに軽妙かつ馬鹿馬鹿しい『金玉医者』ですっかり幸せな気分に。最後は改作『女給の文』で思い切り毒をまき散らして終了。下ネタ三連発。なのになんだろうかこの爽やかさ、可愛らしさは。

5/5。鈴本演芸場で『五月上席 権太楼噺爆笑十夜』の第五夜。林家正楽師匠で紙切り、柳亭燕路師匠で『初天神』、柳家甚語楼師匠で『黄金の大黒』、古今亭菊之丞師匠で『棒鱈』、昭和のいる・こいるで漫才、三遊亭歌武蔵師匠で『だるま』、柳家小三治師匠で『二人旅(ににんたび)』、仲入り、鏡味仙三郎社中で太神楽、春風亭正朝師匠で『家見舞』、柳家紫文師匠で粋曲、柳家権太楼師匠で『幽霊の辻(ゆうれんのつじ)』。
菊之丞師匠の『棒鱈』が絶品。こんなにカラフルな根多だっけ?と目を疑うほどキラキラしたイリュージョンな高座だった。寄席でお目にかかるのは初めての小三治師匠。なんとも長閑なリズムが心地良い。紫文師匠を拝見するのは初めて。松鶴家千とせ師匠を彷彿させる超絶なナンセンスさにシビれる。『幽霊の辻』は小佐田定雄先生の新作で二代目枝雀の得意根多。権太楼師匠のバージョンはいくつか新しいエピソードを追加してからりと除湿。サゲもかるーく笑わせるかたちとなっていた。今後さらに変化してゆきそうで楽しみ。

5/14。浅草橋区民館で『鳥越落語会』。柳家喜多八師匠の会。春風亭昇吉さんで『もみじ水産』、喜多八師匠で『旅行日記 - 愛宕山』、春風亭百栄師匠で『マザコン調べ』、仲入り、喜多八師匠で『遊山船(ゆさんぶね)』。
昇太師匠のお弟子さんは月に一本新作をつくらなくてはならないとのこと。そりゃ大変だ。『旅行日記』はどなたの作だろうか。喜多八師匠にぴったりのブラックで風刺の効いた根多。『愛宕山』は前半をバッサリ省いて茶店に着いてからのエピソードをたっぷりと。百栄師匠は客層を測りかねたのか、まくらで手を替え品を替え。満を持しての『マザコン調べ』はキレ味抜群。『遊山船』は上方の噺。一昨年のざこば師匠に続いてまさか喜多八師匠で拝見できるとは。『愛宕山』といい、師匠ならではの発作的な台詞運びが間抜けなキャラクターに見事にハマる。

5/25。なかのZERO小ホールで『瀧川鯉昇独演会』。鯉昇師匠で『船徳』、立川志の輔師匠で『バールのようなもの』、仲入り、両師匠の対談、鯉昇師匠で『武助馬(ぶすけうま)』。
鯉昇師匠のふわふわした雰囲気が徳さんにぴったりの『船徳』。川に出てからの描写が細かくて笑いの切れ目が無い。死ぬー。やっと拝見できた『バールのようなもの』は、『やかん』をベースとするシンプルな展開の中に、風刺、不条理、追いつめられる男、と言った志の輔落語に欠かせない要素がさらりと盛り込まれた自作の新作。カッコいい。方向性は違えど、つかみどころの無い者同士の対談は、オムライスのエピソードでひたすら爆笑。ドタバタの中にのんびりした雰囲気漂う『武助馬』でこれまた死にそうになる。

5/27。みたか井心亭で『寄席井心亭 数えて百六十八夜 皐月』。立川志らく師匠の会。立川らく兵さんで『十徳』、立川志らべさんで『粗忽長屋』、志らく師匠で『目薬 - 義眼』、仲入り、志らく師匠で『たちきり』。 
『目薬』の後日談としての『義眼』。ややグロテスク、かつ素晴らしくナンセンス。これぞ志らく落語、の高座にいきなりガツンとやられたが、続く『たちきり』のショックはさらに大きなものだった。元来ドラマがあるような無いような、救いのあるような無いような噺の後半を大胆にアレンジ。小糸のか細い独白が胸に迫り、鳥肌が。なんという凄み。そして優しさ。

5/30。三鷹市芸術文化センター星のホールで『柳家喬太郎みたか勉強会』。柳家小ぞうさんで『粗忽の釘』、柳家喬の字さんで『棒鱈』、喬太郎師匠で『へっつい幽霊』、仲入り、喬太郎師匠で『青菜』。
皆さんそれぞれに勉強モード。こんなのんびりした会もなかなか良い感じ。かなり緊張気味ではじまった喬の字さんの『棒鱈』は終わってみればほぼ完成された印象。喬太郎師匠は最初に小ぞうさんを呼んで小太郎襲名の紹介。無言で土下座したりすねた仕草をしてみたりの小ぞうさんが可笑しかった。『へっつい幽霊』は銀ちゃんの不思議キャラぶりがナイス。『青菜』は極悪な女房に爆笑。

2009年06月15日 21:00 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ : 落語初心者のメモ 2009年4月

4/4。深川江戸資料館で『第13回特撰落語会』。三遊亭歌る美さんで『たらちね』、柳亭市楽さんで『長屋の花見』、瀧川鯉昇師匠で『千早振る』、仲入り、柳亭市馬師匠で『あくび指南』、柳家さん喬師匠で『井戸の茶碗』。
微妙過ぎる間合いと仕草。のんびりと自由な雰囲気のなかに突発的な笑いどころが断続する鯉昇師匠の高座の楽しさは、ちょっと殺人的だ。おなか痛い。市馬師匠はさらりと終えて、さん喬師匠は安心のお得意根多。とても贅沢で幸せな気分の残る会だった。

4/9。青山・OVEで『古今亭菊之丞独演会』。柳家花いちさんで『たらちね』、菊之丞師匠で『茶の湯』、利休饅頭とレモングラスほうじ茶付きの仲入りを挟み、菊之丞師匠で『お見立て』。
ギャグ満載でたっぷりの『茶の湯』から仲入りのおやつへの流れが楽しかった。利休饅頭は丸きり想像通りのデンジャラスなビジュアル。食べてみると意外な美味しさに二度びっくり。続いての『お見立て』は極めて丁寧に、それでいてのびのびと。楽しいと同時にため息の出るような絶品の高座。会場設備や音響がもう少し整えば相当良い会になりそう。ぜひ続けていただきたい。

4/11。三鷹市芸術文化センター星のホールで『柳家さん喬独演会』。柳家わさびさんで『狸の鯉』、さん喬師匠で『らくだ』、仲入り、ダーク広和先生のマジック、さん喬師匠で『たちきり』。
二席ともに圧巻。噺の流れを簡略化しつつ、細部を徹底して情感豊かに描く。それによって、特に『たちきり』は終盤わずかにカットインする三味線に加え、夢から覚めたような軽やかでバッサリとしたエンディングが鮮やかに際立つ。

4/17。なかのZERO小ホールで『落語教育委員会』。三師匠のコントに続いて春風亭一左さんで『幇間腹』、三遊亭歌武蔵師匠で『寝床』、仲入り、柳家喜多八師匠で『明烏』、柳家喬太郎師匠で『肥辰一代記』。
旦那と繁蔵の絶妙な掛け合い、さらに細かなギャグをこれでもかと散りばめて、笑いを途切れさせない歌武蔵師匠。爆笑。続く喜多八師匠は源兵衛と多助のキャラクターを生き生きと魅力的に描く。緩急激しい展開に目はもう釘付け。そして喬太郎師匠は三遊亭円丈師匠の新作。思い切りシモな設定の噺を、端正な語り口でなんだかイイ噺にねじ伏せてしまうイリュージョン。汲めるっ!

4/18。三鷹市芸術文化センター星のホールで『立川志らく独演会』。柳家一琴師匠で『真田小僧』、志らく師匠で『短命』、仲入りを挟み志らく師匠で『紺屋高尾』。
三人家族のほのぼのしたやりとりがホームドラマを彷彿させる一琴師匠。ミラクルなボケっぷりの八五郎と、暴走する隠居の会話がスリリングな志らく師匠。なんとも楽しく、凄い。『紺屋高尾』は久蔵の狂気を際立たせる演出が新鮮。全体的には未完成の感はあるものの、今後の進化が実に楽しみ。またぜひ拝見せねば。

2009年05月20日 03:00 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ : 落語初心者のメモ 2009年3月

3/4。みたか井心亭で『寄席井心亭 数えて百六十五夜 如月』。林家たい平師匠の会。たい平師匠で『二番煎じ』、林家たけ平さんで『星野屋』、神田茜師匠で『あの頃の夢』、仲入りを挟んでたい平師匠で『らくだ』。
たい平師匠の『らくだ』はこれまでに見た誰の『らくだ』よりも綺麗で無駄がない。落語の構造を徹底的にシンプル化しながら、味わいあるディテールを丹念に積み重ねてゆく。そのやり方は『二番煎じ』も、と言うよりむしろ、たい平師匠の落語そのものが、まっすぐ同じ方を向いているのではないか。そう思い当たるには十二分の力演だった。さらには茜師匠のほんわか高座がものの見事に緊張感を緩和。まさに強力タッグ。たけ平さんも今後要チェック。

3/6。新宿区立箪笥町区民センター神楽坂劇場で『神楽坂劇場二人会』。立川志らく師匠と柳家喬太郎師匠の会。立川らく兵さんで『十徳』、志らく師匠で『洒落小町』、喬太郎師匠で『古典七転八倒』、仲入りを挟んで喬太郎師匠で『たいこ腹』、志らく師匠で『浜野矩随』。
独特な力配分で目が離せないらく兵さん。志らく師匠の『洒落小町』はお松さんの暴走ぶりが絶品。カリフラワーの業平。続く喬太郎師匠は根多を決めかねている様子。『錦の袈裟』を冒頭でつまづいて、長屋の連中が今日は落語に出るの出ないのと話し合いを始め、ついには会場にリクエストを求めたりとご本人が暴走。ようやく『初天神』がはじまったと思ったら『反対俥』を織り交ぜつつ筋は『粗忽長屋』へとスライド。さらには『黄金餅』、『寝床』、『らくだ』が小気味良く連なり渾然一体となったところでサゲ。爆笑に次ぐ爆笑。それにしても手に汗握るミラクル高座だった。仲入り後はお二人とも至って端正に。

3/19。練馬文化センター小ホールで『談春、喬太郎、桃太郎 3人会』。瀧川鯉斗さんで『転失気』、昔昔亭桃太郎師匠で『弥次郎』、立川談春師匠で『白井権八』、仲入りを挟んでトークショー、柳家喬太郎師匠で『死神』。
桃太郎師匠の新作かと思うくらいにナンセンスギャグ満載の『弥次郎』。そのエピソードつながりで談春師匠は『白井権八』。リラックスした様子で軽快に。トークショーの桃太郎師匠は普段着で登場。その時点でもう爆笑。協会がらみの話題に三者三様、接点の無いコメントが続いて、結局のところ喬太郎師匠がいじめられ役。談春師匠の容赦のないツッコミをのらりくらり、かわしたりかわさなかったりの桃太郎師匠がキュート。久々に見た喬太郎師匠の『死神』は映像的かつSF的で実に鮮やか。カジカザワカンタンジャナイトオモイマス。

3/21。よみうりホールで『よってたかって春らくご 21世紀スペシャル寄席ONEDAY』。柳亭市丸さんで『牛ほめ』、春風亭百栄師匠で『お血脈』、三遊亭白鳥師匠で『真夜中の襲名』、仲入りを挟んで柳家三三師匠で『加賀の千代』、柳家喬太郎師匠で『純情日記 - 横浜編』。
三平師匠に絡めたタイムリーでナンセンス、かつ美談な根多で会場を完全掌握の『真夜中の襲名』。個人的ベスト白鳥師匠高座。擬人化最高。三三師匠は季節外れの大晦日の根多。馬鹿でがさつだが根っからの善人である甚兵衛の人物像がなんとも魅力的に描かれる。ほのぼの。喬太郎師匠は自作の甘酸っぱい新作。

3/27。雀のおやどで『桂雀三郎還暦記念30日間連続落語会』。桂吉の丞さんで『米揚げ笊』、 桂雀三郎師匠で『悋気の独楽』、林家花丸師匠で『あくびの稽古』、雀三郎師匠で『雨月荘の惨劇』。
雀三郎師匠を拝見するのは歌舞伎座以来二度目。そのパワフルさときたら大阪・鶴橋のちいさな会場が爆発するんじゃないかと思うほどだった。特に小佐田定雄先生作の『雨月荘の惨劇』は、冒頭からぐんぐん加速しエスカレートするナンセンスさに振り回されっ放し。そして美声炸裂のサゲ。なんという独創性。この根多を見ることができて幸運だ。東京にもぜひお越しいただきたいなあ。対して花丸師匠の高座は流れるように美しく。東京でよく見る型よりもずいぶんとエピソードが多いのが興味深かった。

3/28。ワッハ上方ホールで『第六回東西師弟笑いの喬演』。内海英華師匠で女道楽、柳家喬太郎師匠で『粗忽長屋』、笑福亭松喬師匠で『崇徳院』、仲入りを挟んで笑福亭三喬師匠で『べかこ』、柳家さん喬師匠で『柳田格之進』。
上方ならではの淡々とした展開の端々に松喬師匠ならではの可愛らしい人物描写が登場する『崇徳院』。敢えて控えめな根多を選びつつも見応えは十二分。三喬師匠は泥丹坊堅丸なる落語家が登場する珍しい顔芸根多。救いの無さゆえに思わず吹き出す破壊的なサゲがいい。東京の両師匠は得意の根多を丁寧に。

3/29。天満天神繁昌亭で『早朝もっちゃりーず寄席』。桂佐ん吉さんで『阿弥陀池』、桂三ノ助さんで『河豚鍋』、桂福車師匠で『手紙無筆』、内海英華師匠で女道楽、笑福亭仁福師匠で『始末の極意』。
大きな表情、大きな仕草の佐ん吉さん。明るく迫力ある高座に引き込まれた。今後要チェック。でも東京で見れるのか。仁福師匠はケチのキャラクターを生々しく描きながらも、ゆるーいムードで総体を包み込んでしまう。サゲの間違いも根多のうちではないか、と思わせるところが凄い。浅草在住者の心を鷲掴みにするナンセンスぶり。と言っても、やっぱり東京じゃ見れないんだろうなあ。

2009年05月07日 14:00 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ : 青山で本格落語・古今亭菊之丞独演会@OVE

レクチャーで love the life がお世話になっている青山の穴場スペース『OVE』で4/9(木)落語会が催されます。登場されるのは考えうる限り最も青山の地が似合うであろう落語家の一人・古今亭菊之丞師匠。「お茶のある暮らし」がテーマのお洒落なイベントの一環なのですが、根多出しされているのが『茶の湯』他一席。内容がアレなだけになんとも挑戦的でデンジャラスな感じです。前売りなら3000円でお菓子(この会のためのオリジナル)とお茶付き。ちょっと心配なくらいに贅沢かつ良心的です。落語ファンなら足を運ぶ価値は十二分。青山近辺にお勤め・お住まい方ならもちろん必見。落語を見たことが無い方にも最初から良いものをご覧になることのできる絶好の機会としてお薦めします。私たちも楽しみにしています。

古今亭菊之丞独演会
「茶の湯」他、一席/お菓子とお茶付き
・日時  4/9(木)19:00開演
・場所  OVE(オーブ)
・木戸銭 前売り3000円(当日3500円)

2009年04月07日 02:00 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ : 落語初心者のメモ 2009年2月

2/18。みたか井心亭で『寄席井心亭 数えて百六十五夜 如月』。柳家花緑師匠の会。柳家花いちさんで『狸札』、花緑師匠で『権助提灯』、立川談春師匠で『六尺棒』、仲入り、花緑師匠で『竹の水仙』。
続けて聞いても楽しい花緑師匠の『権助提灯』。談春師匠の『六尺棒』は親子の言い争いの切れ味が洒落にならない凄さ。なのに味わいは軽やかで、どことなく楽しそうにさえ見える。カッコいい。花緑師匠の『竹の水仙』は宿屋の夫婦のキャラ立ちが抜群。この根多でこんなに爆笑したのは初めてだ。

2/25。千代田区立内幸町ホールで『権太楼ざんまい』。柳亭市也さんで『転失気』、柳家小権太さんで『のめる』+寄席の踊り(奴さん、姉さん)、柳家権太楼師匠で『宿屋の仇討ち』、仲入り、権太楼師匠で『一人酒盛』。
お杯にはじまって全根多酒繋がり。流れよくまとまった素晴らしい会だった。バカボン顔の小権太さん。声の通りがいい。ロボコップな「踊り」はある種才能を感じさせる。権太楼師匠の『宿屋の仇討ち』は似たシチュエーションの繰り返しが実に軽快で爆笑を誘う。ラストのどんでん返しもからりと爽快。一転して『一人酒盛』はほとんど一人の人物だけを演じつつ、丁寧にディテールを積み重ねてゆく。酔っぱらいの理不尽な振る舞いが生々しい。やっぱり権太楼師匠の酒飲みキャラには独特の凄みがある。

2/27。日本橋社会教育会館ホールで『市馬落語集』。柳亭市也さんで『子ほめ』、柳亭市馬師匠で『山崎屋』、仲入り、市馬師匠で『あくび指南』。
「百そこそこ」のいい間違いで一気に会場を暖めたりしつつも、通してそつのない高座の市也さん。今回の市馬師匠の根多下しは『山崎屋』。内容的にものすごく設定が細かく、かつボリュームが大きい。それでも師匠の手に掛かるとなんとも粋で軽やかに。この先、多少枝葉を整えれば、ますます師匠ならではの見応えある根多になりそうな期待大。『あくび指南』は驚きの小気味良さ。のんびりした展開でしか見たことがないだけに、こんな演り方があったか、と目から鱗。

2/28。三鷹市芸術文化センター星のホールで『立川談春独演会 冬談春』。立川春太さんで『間抜け泥』、談春師匠で『除夜の雪』、仲入り、談春師匠で『宿屋の仇討』。
『除夜の雪』は桂米朝師匠の根多(永滝五郎作)。町中の寺の大晦日。3人の修行僧の滑稽なやりとりが丁寧に描かれる。やがて静かな雪の夜の空気感がかたち作られ、その静けさのまま幕切れ。救いの無い噺なのに、不思議と暗さも無いのが粋であり、米朝的だ。この乾き切ったニヒリズムを表現できるのは、東京だと談春師匠くらいか。米朝版のサゲ(バッサリ)と談春版のサゲ(やや文学的)の微妙な違いが興味深い。『宿屋の仇討』は一転してお祭り騒ぎ。はじけた三人衆の愛すべき下品さに涙が出るほど爆笑。こーしてこーしてこーなるのっ。

2009年03月05日 21:00 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ : 落語初心者のメモ 2009年1月

1/21。みたか井心亭で『寄席井心亭 数えて百六十四夜 睦月』。立川志らく師匠の会。立川らく太さんで『親子酒』、立川志ららさんで『壺算』、志らく師匠で『松竹梅』、仲入り、志らく師匠で『付き馬』。
暴走機関車のような『松竹梅』。笑い過ぎて死にそう。『付き馬』は掛け取りの男が下らない蘊蓄を並べ立てながら早桶屋へ向かう場面が見物だった。志らく師匠ならではのいかがわし過ぎるキャラクター。

1/22。赤坂区民センターホールで『夕刊フジ第13回平成特選寄席』。立川らく次さんで『やかん』、春風亭百栄師匠で『岸柳島』、立川志らく師匠で『抜け雀』、仲入り、立川生志師匠で『寿限無』、柳家花緑師匠で『不動坊』。
らく次さんの講釈根多は安心感があって楽しい。ナンセンスで芝居掛かったところのある『岸柳島』は百栄師匠に大いにハマる。サゲがなんとも粋。志らく師匠の絵師は思い切りエキセントリックで抱腹絶倒。芸術は爆発だ。花緑師匠は愛すべきダメ男たちのドタバタ劇をじっくり丁寧に描く。前半をバッサリ切り捨てることによって自由度がぐんと拡がった。見事な演出。

1/31。三鷹市芸術文化センター星のホールで『柳家花緑独演会』。柳家緑君さんで『金明竹』、花緑師匠で『無精床』、『権助提灯』、仲入り、花緑師匠で『片棒』、『笠碁』。
『無精床』が凄かった。ぞっとするくらいに存在感のある床屋の親父。静かにデンジャラス。やはり花緑師匠の本領はダークサイドにあると見た。続く三席は明るく剽軽に。『笠碁』の雨のシーンがやや臨場感を欠く印象。個人的にはやっぱりこの根多は鬱な演り方が好みかも。

2009年02月20日 07:00 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ : 落語初心者のメモ 2008年11・12月

11/13。関交協ハーモニックホールで『第18回オリンパスシンクる寄席スペシャル 』。春風亭ぽっぽさんで『子ほめ』 、春風亭百栄師匠で『コンビニ強盗』、立川談笑師匠で『片棒・改』 、仲入り、談笑師匠で『時そば』、百栄師匠で『茶金』(はてなの茶碗)。
初めてしっかりと見せていただいた談笑師匠。ふたつとも実に凄まじかった。特に『時そば』。細かなチューニングのみでベタ根多に異空間を構築してしまうセンスと力技。

11/19。みたか井心亭で『寄席井心亭 数えて百六十二夜 霜月』。林家たい平師匠の会。たい平師匠で『家見舞』、柳亭こみちさんで『四段目』、林家源平師匠で『蒟蒻問答』、仲入り、たい平師匠で『長短』。
こみちさんの定吉がチャーミング。たい平師匠の『長短』は間合いも描写も至ってミニマムでありながら、味わい深く、美しい。なんとも贅沢な時間。

11/20。練馬文化センター小ホールで『史上最笑の2人会』。春風亭昇々さんで『たらちね』、昔昔亭桃之助さんで『熊の皮』、昔昔亭桃太郎師匠で『ぜんざい公社』、仲入り、トークショー、笑福亭鶴瓶師匠で『青木先生』。
桃之助さんが面白い。今後要チェック。歌入りの『ぜんざい公社』は殺人的馬鹿馬鹿しさ。私的ベスト桃太郎落語。きゅっきゅきゅー。トークで時間が押した分、アグレッシブになったのが幸いした『青木先生』。鶴瓶師匠の生の迫力を改めて思い知る。

11/22。三鷹市芸術文化センター星のホールで『立川志らく独演会』。立川らく次さんで『鮫講釈』、志らく師匠で『寝床』、仲入り、ミッキー・カーチス師匠のハーモニカと歌で『枯葉』、志らく師匠で『芝浜』。
講釈根多が見事に滑らかならく次さん。ミッキー師匠の醸したしっとりと肌触りの良い空気を受けての『芝浜』。質素ながらも晴れがましい大晦日に、どことなく居心地の悪そうな魚屋の表情がたまらない。狂気を発散するような『寝床』とのコントラストが凄まじいこと。

11/24。内幸町ホールで『栄助改メ春風亭百栄真打昇進披露目…っぽいね。』。三遊亭玉々丈さんで『酒の粕』、林家きく麿さんで『金明竹(博多弁)』、百栄師匠で『時そば』、春風亭栄枝師匠はお馴染みの小噺をあれこれ、三遊亭円丈師匠で『新蝦蟇の油』、仲入り、口上、百栄師匠で『マザコン調べ』。
百栄師匠を除き全員私服の口上に場内大爆笑。皆さん自由過ぎ。「もうたくさんです…」と漏らす百栄師匠にまた爆笑。きく麿さんの『金明竹』翻案は完璧。サゲのどうでも良さがまたいい。

12/3。みたか井心亭で『寄席井心亭 数えて百六十三夜 師走』。柳家喬太郎師匠の会。喬太郎師匠で『まんじゅうこわい』、柳家獅堂師匠で『たいこ腹』、仲入り、林家久蔵師匠で『町内の若い衆』、喬太郎師匠で『禁酒番屋』。
意外にもスタンダードナンバーが揃う。喬太郎師匠の『禁酒番屋』は苦手とのコメントもまた実に意外。軽く、和やかで暖かい雰囲気が年末らしくて心地良い。

12/8。国立演芸場で『百栄の落語ぷれいばっくPART1』。柳家小ぞうさんで『初天神』、春風亭百栄師匠で『素人義太夫』、柳家喬太郎師匠で『粗忽の使者』、仲入り、対談、百栄師匠で『リアクションの家元』。
国立の空気感をついに掌握した小ぞうさん。今後ますます要チェック。百栄師匠はお疲れか、動きの激しい根多もやや空回り気味。ま、そんなこともあるさ。喬太郎師匠は設定的に無理だらけの根多を流れるように見せる。カッコいい。

12/25。天満天神繁昌亭で『天神寄席 第二十六回・十二月席』。笑福亭たまさんで『動物園』、桂わかば師匠で『いらち俥』、笑福亭仁嬌師匠で『代脈』、笑福亭福笑師匠で『はははぁ家族』、仲入り、桂三風師匠で『祭り囃子が聞こえる』、露の都師匠で『堪忍袋』、林家染丸師匠で『掛取り』。
仁嬌師匠が凄い。静かで淡々とした語り口はまさに極上。上方落語ならではの可笑しさだが、今この感じは東京の方がウケるかもしれない。一転、福笑師匠の圧倒的なアヴァンギャルドさに涙が出るほど爆笑。都師匠の『堪忍袋』は関西のおばちゃんにしか演じられないベタさが素敵。染丸師匠の軽妙な話術と多芸ぶりが遺憾なく発揮された『掛取り』はまさに絶品。感動。

同日。天満天神繁昌亭で『できちゃったらくご クリスマススペシャル』。全員のじゃんけんで出演順を決めたりのトークに続いて、旭堂南湖笑福亭たま桂三風のリレー落語。滅茶滅茶な流れがいつのまにやらいい話に。続いて月亭遊方桂三金桂あやめのリレー落語。いじられまくりの三金さんに下ネタ爆発のあやめ師匠。なぜか林家彦いち師匠が引っ張り出されての賑々しいエンディング。それぞれの出来がどうこうと言うよりも、各師匠の持ち味を垣間見せていただけたことが大きな収穫。楽しみが増えた。

2009年02月10日 20:00 | trackbacks (0) | comments (2)

落語初心者のメモ : 落語初心者のメモ 2008年10月

10/2。紀伊國屋サザンシアターで『笑福亭鶴瓶落語会』。先ずは鶴瓶師匠が洋服で登場してのトーク。林家たい平師匠で『不動坊』、さらに鶴瓶師匠で『青木先生』とお得意の根多が続く。どちらも構造が見事に完成されていて、何度聞いてもその細部を楽しめる。『青木先生』のバックに登場した松のセットがカッコ良かった。仲入を挟んで、最後は鶴瓶師匠で『死神』。バックには無数の蝋燭のセット。死神を女性にしての斬新な改作。あの風貌にしてあの艶っぽさ。登場人物たちの業の深さに思わずぞっとするサゲ。今後の可能性に期待の高まる根多だった。残念だったのは音響効果の酷さ。それと客の質の低さ。家でテレビでも見てるような感覚でホール落語に来ないでほしいもんだ。

10/4。国立演芸場で『第五回東西笑いの喬演』。最初は柳家小ぞうさんの『初天神』。小ぞうさんには珍しくやや不調か。続いて笑福亭三喬師匠で『あみだ池』。まくらからして地元西宮根多で爆笑。阿呆らしくも軽妙なやりとりを見るうちに、なんだか急に関西が懐かしくなった。さらに柳家さん喬師匠で『福禄寿』。六代目三遊亭円生作の冬の人情噺。至ってシンプルな筋立てにあって緻密な場面描写が際立つ。仲入を挟んで柳家喬太郎師匠自作の新作で『派出所ビーナス』。有り得ないキャラ設定とその演じ分けのみで成立するファンタジー。トリは笑福亭松喬師匠で『質屋蔵』。質草の背景にありそうな細かな事情を旦那が延々妄想しつつ劇中劇を繰り広げる場面が素晴らし過ぎる。淡々としたトーンで、かつ随所に笑いを生み出しながら感情の機微を織り上げてゆくが、その内容自体になんら意味は無い。その音楽性と、東京とは異なる上方の「粋」に感動した。

10/8。新宿末廣亭十月上席夜の部。この日は平成二十年落語協会新真打披露興行でトリは春風亭栄助改め百栄師匠。この日の百栄師匠はお得意の『お血脈』。五右衛門が馬鹿っぷりが素敵。よちみちゅっ!

10/10。練馬文化小ホールで『ふたりのビッグショー』。柳家喬の字さんのとても丁寧な『短命』に続いて寒空はだか先生のスタンダップコミック。久しぶりに『東京タワーの歌』が聞けて幸せ。柳亭市馬師匠は『鼠穴』。江戸に上って商売をする兄弟の成功と転落。師匠一流のからりとした口調によって、運命の非情さがくっきりと浮かび上がる。市馬師匠の落語は都会的なんだ、と気付く。仲入の後は千代馬・千代衿(市馬&恩田えり師匠)の民謡音曲漫才。ふわふわした千代馬先生のボケ。さらに輪をかけてふわふわした千代衿先生のツッコミ。ほんわかと脱力した心持ちになったところで、柳家喬太郎師匠はなんと『双蝶々』と超ヘビーな根多。極めて生々しく、魅力的な人物描写。終盤、芝居調の動作が鮮やか。正調の『双蝶々』を堪能させていただきつつ、逆に以前拝見した志らく師匠の『双蝶々』の演出がいかに優れたものだったかを思い知る。

10/14。浅草演芸ホール十月中席昼の部。この日は平成二十年落語協会新真打披露興行でトリは春風亭栄助改め百栄師匠。この日の百栄師匠はなんと京都が舞台の『はてなの茶碗』。以前に『リアクション指南』を拝見したときにもそう思ったが、百栄師匠の京言葉は流暢で違和感が少ない。油売りを江戸者にすることで会話に独特のリズムが生まれる。サゲはとことん能天気で歯切れ良く。素晴らしくカッコいい。

10/15。練馬文化小ホールで『長講三人の会』。開口一番は柳家右太楼さんで実に堂々とした『元犬』。右太楼さんは要チェックだ。続いての昔昔亭桃太郎師匠は『お見立て』。これはハマった。桃太郎師匠一流のナンセンスなくすぐりが筋立ての中で断然生きる。爆笑。さらに柳家権太楼師匠で『粗忽の釘』でこれまた爆笑。亭主のハチャメチャでチャーミングな粗忽ぶりが、映像でしか見たことの無い枝雀師匠の『宿替え』に重なる。仲入を挟んで柳家さん喬師匠で『福禄寿』。これが4日に国立で拝見したときよりもさらに研ぎ澄まされたものだった。高座と客席は完全に一体となり、ホールは年末のしんとした空気感に包まれる。三様の話芸。来年もあれば必ず来よう。

10/26。なかのZERO小ホールで『柳家さん喬柳家喬太郎 親子会』。柳家喬之進さんの『家見舞』に続いて喬太郎師匠自作の新作で『すみれ荘201号』。他愛も無い学生カップルの別れ話が、落研の設定を絡めることで妙にシュール、かつ滑稽で哀感に満ちた物語になってしまう不思議。さらに続いては、なんとさん喬師匠と喬太郎師匠が高座に並んで座っての対談。これがこの日一番ジンと来る素敵なものだった。中身自体は特に脈絡のない公開小言。だがその端々に喬太郎師匠の落語家としての苦しみと、さん喬師匠の達観、そして弟子への暖かい眼差しが垣間見える。そうか。いっそ潰れちゃって、もう一度作り直さなきゃダメなんだ。何度でも。と、表現者の端くれとして共感しつつ、師弟関係とはほとんど無縁でやってきたことを少しだけ後悔した。仲入の後はさん喬師匠で『妾馬』。城内に上がってからの八五郎を実に丁寧に描く。

2008年11月28日 01:00 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ : 落語初心者のメモ 2008年9月

9/7。三鷹市芸術文化センター星のホールで『林家たい平独演会』。桂三木男さんの『猫の皿』に続いてたい平師匠で『金明竹』。仲入を挟んで柳貴家小雪師匠の太神楽。最後はたい平師匠で『幾代餅』。
関西弁を交えた流麗なやりとりに惚れ惚れの『金明竹』。終盤、女将さんの登場タイミングが微妙におかしなことになったのが余計に笑えた。『幾代餅』では師匠ならではのふうわりとやさしい空気感が会場を包むが、権太楼師匠の超絶『幾代餅』を見たばかりだったため、やや印象は弱め。おそらくこの根多を演るには、たい平師匠は男前過ぎるのだ。

9/12。港区赤坂区民ホールで『夕刊フジ第12回平成特選寄席』。立川志らべさんの『湯屋番』に続いて春風亭栄助さんで『新・生徒の作文』。立川談笑師匠の『堀の内』で仲入。古今亭菊之丞師匠で『紙入れ』に続いて、最後は立川志らく師匠で『源平盛衰記』。
いつもクールな毒舌が冴える志らべさん。栄助さんはお馴染みの根多を一段とゆるゆるに。談笑師匠を拝見するのは初めて。危険なくすぐり。恐ろしく粗忽な亭主とそれを見守る家族の日常。乾いた悲哀を基調に、異様にキャラの立った人物たちが無理矢理なストーリーを展開してゆく。ほとんど萌え落語とでも言いたくなる新鮮な高座だった。もう少し着物とかに気を使っていただけると集中して聞けるんだけどなあ。菊之丞師匠は『紙入れ』でさらりとお後にバトンタッチ。これがもう完璧なハマり根多。女将さんと亭主と間男の演じ分けがあまりに鮮やかで爆笑しつつ惚れ惚れ。志らく師匠は映画のパロディが満載の熱演。カラフルで軽快。志らく師匠以外では決して見ることのできないなんとも楽しい『源平盛衰記』。

9/23。鈴本演芸場九月下席夜の部。この日は平成二十年落語協会新真打披露興行でトリは春風亭栄助改め百栄師匠。歩道に並んでいると、三つボタンスーツにスヌーピー柄タイの百栄師匠がハイチュウ(グリーンアップル味)を一個ずつ配って下さった。演目は春風亭正太郎さんで『狸札』。柳家三之助さんで『堀の内』。アサダ二世先生の奇術。三遊亭歌武蔵師匠で『だるま』。柳亭市馬師匠で『目黒のさんま』。ペペ桜井先生のギター漫談。柳家権太楼師匠の『壺算』。春風亭栄枝師匠(百栄師匠の師匠)で『蜀山人』、鈴々舎馬風会長の漫談。仲入を挟んで真打昇進襲名口上。昭和のいる・こいるの漫才。春風亭一朝師匠で『初天神』。鏡味仙三郎社中の太神楽。春風亭百栄師匠『鮑のし』。
安定感とチャーミングさ抜群の三之助さん。歌武蔵師匠の新作は落選政治家の救い難さをリアリティたっぷりに。市馬師匠はお馴染みの根多を明るく軽快に。権太楼師匠の『壺算』は瀬戸物屋のパニック振りがあんまり見事過ぎて死にそうになった。栄枝師匠の根多は小咄と狂歌をとつとつと。窓際のおじさんが間違えて高座に上がってしまい緊急事態、みたいな可笑しさに衝撃を受ける。馬風会長はお馴染みの毒舌漫談。
口上は一朝師匠が進行役。権太楼師匠の「噺家にとってお客様の拍手がどれほど助けになるか」との言葉に思わずジン。無言でにらみを効かせる馬風会長の過剰な存在感と、栄枝師匠のマイペースぶりが爆笑を誘う。中央にひれ伏しつつ汗だくの百栄師匠。相当緊張なさっているのかと思ったら最後は「イタイタしいほど頑張るぞっ」。なんとも微笑ましく幸せな気分で三本締め。
時間が押したようで、のいる・こいる両先生、一朝師匠、仙三郎師匠はそれぞれ早送りバージョン。百栄師匠の『鮑のし』は幼児的粗忽の亭主と強面の女房という最強の布陣。爆発する客席。しかも立て板に水の流麗さ。まさに「栄助」の完成形を見る思いだったが、百栄師匠はここからさらに上を目指されるのだ。そう考えると本当に嬉しく、ワクワクする。終演後の割れんばかりの拍手にまたジンと来てしまうにわかファン。

9/24。みたか井心亭で『数えて百六十夜 寄席井心亭 長月』。立川志らく師匠の会。立川らく八さんで『家見舞』。立川志ら乃さんで『堪忍袋』。志らく師匠で『お化け長屋』。仲入りを挟んで志らく師匠で『お若伊之助』。
性格は真逆っぽいけど落語は明るく楽しい志ら乃さん。「納屋変態野郎〜!!」。『お化け長屋』は明らかにホラー映画見過ぎの杢兵衛さんと、師匠お得意「あうあうあうっっっ!!」の江戸っ子によるドタバタ劇で爆笑。『お若伊之助』の終盤は師匠の改作だろうか。美しくファンタジックな幕切れだった。

9/27。三鷹市芸術文化センター星のホールで『柳家権太楼独演会』。柳家ほたるさんで『一目上がり』。柳家右太楼さんで『野ざらし』。権太楼師匠で『井戸の茶碗』。仲入を挟んで伊藤夢葉先生のマジック。権太楼師匠で『らくだ』。
初めて見た右太楼さんは明朗快活で力強い落語をなさる方。今後要チェック。権太楼師匠は最初に屑屋二題を根多出し。俄然高まる期待に違わず、凄い高座を見せて下さった。ややお調子者にアレンジされた賑やかな屑屋が喜劇性を高める『井戸の茶碗』。ずっしりとドスの効いた『らくだ』は火屋までたっぷり。

2008年10月20日 21:00 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ : 落語初心者のメモ 2008年8月

8/2。三鷹市芸術文化センター星のホールで『夏談春』昼の部。立川こはるさんの『浮世根問』に続いて、立川談春師匠で『鰻の幇間』。仲入を挟み談春師匠で『厩火事』。
ちくちくとねちっこいのになぜか嫌な気がしないのが師匠ならではの『鰻の幇間』。同じ根多でも市馬師匠とは丸きり印象が異なる。『厩火事』を談春師匠で聞くのは二度目。間抜けで、口が悪く、強烈にたくましい江戸っ子の夫婦喧嘩。最高に笑えてスカっとする。

8/2。新宿末廣亭で深夜寄席。柳家さん若さんで『棒鱈』。桂三木男さんで『猫の皿』。三遊亭金兵衛さんで『船徳』。春風亭栄助さんで『お血脈』。
それぞれに個性の際立った内容で大いに楽しませていただく。でもやはり栄助さんは別格。シュールかつ切れ味鋭いくすぐりの連続。馬鹿馬鹿しいことこの上ない石川五右衛門。

8/5。湯島天神で『市馬・三三ふたり会』。柳亭市朗さんの『湯屋番』に続いて柳家三三師匠で『南瓜屋』、柳亭市馬師匠の『佃祭』。仲入を挟んで市馬師匠で『山号寺号』。最後は三三師匠で『笠碁』。
人情味に溢れ、粋で滑稽な『佃祭』は実に完璧なる江戸落語。市馬師匠で拝見できて良かった。100%駄洒落の『山号寺号』も師匠に掛かれば大いに盛り上がる。喬太郎山肥満寺。三三師匠の2席はどちらもとぼけた味わいが絶品。たっぷりの『笠碁』で幸せな気分に。

8/6。みたか井心亭で『寄席井心亭 数えて百五十九夜 葉月』。柳家小んぶさんの『道灌』に続いて柳家さん若さんで『棒鱈』、柳家喬太郎師匠の『牡丹灯籠 刀屋』。仲入を挟んで古今亭志ん八さんで『黄金の大黒』。最後は喬太郎師匠で『鬼背参り』。
喬太郎師匠による感情の昂りの表現はつくづく鮮やかでカッコいい。シビれる『刀屋』。ホラーでスペクタクルな『鬼背参り』は夢枕獏氏の新作。あまりに切ない幕切れに涙。

8/13。鈴本演芸場で『納涼名選会 鈴本夏まつり 吉例夏夜噺 さん喬・権太楼特選集』三日目。柳亭市馬師匠で『たらちね』。鏡味仙三郎社中の太神楽。柳家我太楼師匠で『強情灸』。ロケット団の漫才。柳亭左龍師匠で『お菊の皿』。春風亭一朝師匠で『唖の釣り』。ダーク広和先生の奇術。柳家喬太郎師匠で『夫婦に乾杯』。仲入。昭和のいる・こいるの漫才。柳家権太楼師匠で『蛙茶番』。林家正楽師匠の紙切り。柳家さん喬師匠で『らくだ』。
市馬師匠の前座噺は何席でも見たくなる素晴らしさ。左龍師匠のハイテンションに抱腹絶倒。私的ベストオブ『お菊の皿』。初めて拝見した一朝師匠はカラフルで濃密。のいる・こいる両先生も初めて拝見。モザイクを思わせる繊細で完成された掛け合いに感動。権太楼師匠の半公は最高にチャーミング。さん喬師匠の『らくだ』は火屋のサゲまで一気に。まさに比類の無い流麗さ。

8/16。鈴本演芸場で『納涼名選会 鈴本夏まつり 吉例夏夜噺 さん喬・権太楼特選集』六日目。柳家甚語楼師匠で『つる』。鏡味仙三郎社中の大神楽。柳亭市馬師匠で『芋俵』。ロケット団の漫才。柳家喬之助師匠で『寄合酒』。春風亭一朝師匠で『芝居の喧嘩』。ダーク広和先生の奇術。柳家喬太郎師匠で『落語大学』。仲入。あしたひろし・順子の漫才。柳家さん喬師匠で『船徳』。林家正楽師匠の紙切り。柳家権太楼師匠で『幾代餅』。
甚語楼師匠の密度の高い『つる』。三日目以上にカラフルさ全開の一朝師匠。前に登場した師匠先生方の演目をアドリブで見事に組み込んでしまう喬太郎師匠には思わず唖然。ひろし・順子両先生を拝見するのは初めて。一見和やか。しかしシュールなことこの上ないビジュアルが強烈な印象を残す。さん喬師匠の『船徳』はため息ものの素晴らしさ。緻密なディテール。ええカッコしいな徳さんのダメさが愛らしい。最後は権太楼師匠で感涙。師匠の演ずる女性はどうしてこんなに魅力的なのか。談志師匠の『紺屋高尾』がオーバーラップするようにして思い出された。

8/16。鈴本演芸場で『納涼名選会 鈴本夏まつり 吉例夏夜噺 さん喬・権太楼特選集』九日目。柳家我太楼師匠で『強情灸』。鏡味仙三郎社中の太神楽。古今亭菊丸師匠で『たがや』。ホームランの漫才。柳亭左龍師匠で『初天神』。春風亭一朝師匠で『祇園祭』。ダーク広和先生の奇術。柳家喬太郎師匠で『孫、帰る』。仲入。昭和のいる・こいるの漫才。柳家権太楼師匠で『寝床』。林家正楽師匠の紙切り。柳家さん喬師匠の『明鳥』。
金坊の表情が絶品の左龍師匠。私的ベスト2オブ『初天神』(ベスト1はやっぱりさん喬師匠)。一朝師匠は嫌みな京都人と短気な江戸っ子の対比に思わずにんまり。喬太郎師匠の新作は祖父と孫の微笑ましい会話から急転直下の涙へ。権太楼師匠の『寝床』とさん喬師匠の『明鳥』は事前の想像を遥かに超える可笑しさ。番頭の造形が際立つ『寝床』。吉原の光景が目の前に拡がるような『明鳥』。

8/30。谷中・全生庵で『第8回特撰落語会 全生庵で聴く 林家正雀夏の怪談』。春風亭一左さんの『金明竹』に続いて林家彦丸さんで『粗忽の釘』、林家正雀師匠で『真景累ヶ淵 深見新五郎』。仲入を挟み正雀師匠で『怪談累草紙 親不知の場』。師匠とオフィスぼんがさんとの対談があって、さらに『奴さん』と『姐さん』の踊り。
正雀師匠の緻密な情景描写に思わずのめり込む。園朝直系の名人芸を実感。最後は彦六の物真似を交えた見事な踊りで爆笑させていただいた。

8/31。お江戸日本橋亭で『第16回 無限落語』。三遊亭たん丈さんの『漁師親子』に続いて三遊亭亜郎さんで『桃園の誓い』、林家彦いち師匠で『さいとう』、三遊亭円丈師匠で『あんたのせい家族』。仲入を挟んで柳家小ゑん師匠で『トニノリ』、最後は柳家喬太郎師匠で『同棲したい』。すべて自作の新作。
ナンセンスでホラーで不条理な展開に彦いち師匠の風貌や芸風が最高にハマる。古典になりうる傑作。ハイテンションで押し切る円丈師匠もたまに拝見する分には魅力的。この日個人的に一番感動したのは小ゑん師匠。ほぼ全編を通じて電車の車中だけでの展開。淡々とした声色。時折垣間見せる表情が剃刀のように鬼気迫るリアリティを醸し出す。ライブじゃないと絶対に伝わらない凄み。喬太郎師匠の根多は団塊世代のハートを直撃の内容。それにしてもくすぐりが見事。

2008年09月24日 12:00 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ : 落語初心者のメモ 2008年7月

7/7。下北沢「劇」小劇場で『第5回 栄助・天どん会』。お二人のゆるゆるな前説に続いて春風亭栄助さんで『芝居の喧嘩』。派手なキャラが続々と登場するだけのナンセンスな展開は古典ながらまさに栄助さんに打ってつけ。さらに三遊亭天どんさん(拝見するのは初めて)自作の新作で『ひと夏の経験』。こちらもキャラ描写が主題でヘンな女性ばかりが現れる。天どんさんが気持ち悪くていい。仲入を挟んで栄助さん自作の新作で『7つのツボを押す男』。じわじわと追い込まれてゆくケンシロウ。最後は天どんさんで『妾馬』。人間的深みの全く無いどこまでもダメな八五郎が新鮮で、かえって共感。

7/10。国立劇場小劇場で『桂文珍 大東京独演会 vol.2』。林家うさぎ師匠で『手水廻し』の後、巨大な演目表を背に文珍師匠がリクエスト受付。客席から『青菜』の声がかかり、あれがああなってこうなって、、、と早口で内容をおさらいする師匠。1、2分後「あ、全部やってしもた」で会場は爆笑と拍手に包まれた。決まった演目は『七段目』、『地獄八景亡者戯』と『商社殺油地獄』。抜粋版ながら『地獄八景亡者戯』の素晴らしいこと。文珍師匠ならではの時事感覚満載の駄洒落とくすぐりにお腹を抱えっ放し。

7/11。大井町きゅりあん大ホールで『きゅりあん寄席夏特選落語会』。春風亭正太郎さんの『たらちね』に続いて柳家喬太郎師匠で『竹の水仙』。傲慢でマイペースでアーティスト肌の左甚五郎が素晴らしく魅力的。現代的な人物描写にシビれる。仲入を挟んで柳家三三師匠で『五目講釈』。こんなに時事根多満載の三三師匠を見たのは初めて。大いに盛り上がって、最後は立川談春師匠の『らくだ』。丁目の半次はもっと恐い方が好み。

7/19昼。銀座小劇場で『大銀座落語祭2008 春風亭栄助独演会』。桂笑生師匠の『表彰状』に続いて栄助さんで『浮世床』。妄想根多がどんどん膨らんで、膨らみ切ったところでサゲ。仲入を挟んで元気いいぞう先生(拝見するのは初めて)のギター漫談。これがもう震撼ものの凄まじさ。アヴァンギャルドなことこの上ないステージ後には、まるでロックコンサートを見終えたような高揚感と虚脱感。ダメ過ぎてカッコ良過ぎる中年男子。きっと明日はイエスタデイ!!最後は栄助さん自作の新作で 『マザコン調べ』の序。マキヒコの母の極悪なキャラに爆笑しつつも、空恐ろしさがトラウマのようにいつまでも残る。

7/19夜。博品館で『大銀座落語祭2008 米團治への道/可朝・鶴光二人会』。桂吉坊さんの軽快で綺麗な『商売根問』に続いて桂小米朝師匠の『青菜』。こんな噺だっけ?と思うほどの圧倒的濃厚さは師匠ならでは。さらに林家いっ平師匠(拝見するのは初めて)で『浜野矩随』。見事な熱演にもかかわらず、空々しいのは何故か。第一部の最後は小米朝師匠で『景清』。京都の木彫職人の噺。定次郎の虚勢と俗人ぶりが師匠ご自身のキャラクターと重なり、なんとも痛々しく、涙を誘う。二世であることや育ちの良さが、これほどの魅力に結びつき得るとは。やはり落語は人間力なんだなあ。
仲入を挟んで笑福亭学光師匠で『試し酒』。続いて笑福亭鶴光師匠で『竹の水仙』。軽妙にして流麗。素晴らしい。最後は待ちに待った月亭可朝師匠(拝見するのは初めて)で『狸賽』とギター漫談『出てきた男』。とびきり下品で哀愁漂う根多。逮捕の前に拝見できて良かった。

7/20。博品館で『大銀座落語祭2008 三遊亭白鳥vs旬のお笑いたち/電撃ネットワーク/昔昔亭桃太郎の「死神」』。5GAP、ハイキングウォーキング、髭男爵、フルーツポンチ、はんにゃ、狩野英孝を立て続けに。巧みな観客いじりを交えた髭男爵が抜群。さらに三遊亭白鳥師匠自作の新作で『はらぺこ奇談』。擬人化と可哀想な子供は師匠のお得意。
仲入を挟んで電撃ネットワーク(拝見するのは初めて)。花火は鳴るわ牛乳は飛ぶわで場内は悲鳴と爆笑の坩堝。体を張った変態芸で観客と博品館をこれでもかと蹂躙する。カッコいい。
仲入と掃除を挟み、花火の煙がおさまるまでの繋ぎに三遊亭かっ好さんが急遽高座へ。やっつけの小咄が大いにウケたが、『からぬけ』はイマイチ。「落語やらなきゃよかった」でまたウケる。最後に昔昔亭桃太郎師匠で根多下しの『死神』。客層が若い上に必ずしも落語を聞きに来たわけでもなく、完全にアウェイの状況で桃太郎師匠の良さが出ないまま終演。

7/24。博品館で『昔昔亭桃太郎独演会 桃太郎三番勝負 第三夜』。春風亭昇吉さんの『たらちね』に続いて桃太郎師匠で『春雨宿』。師匠のために作られた根多では、と思うくらいにとぼけた味わいの絶品。続いて立川談春師匠で『紙入れ』。絶体絶命の状況下で浮気をさらりと誤摩化してしまう女将。その凄みと色気、そして軽妙な展開の素晴らしいこと。これまでに見た談春師匠による女性キャラ中ダントツのベストアクト。仲入を挟んでお二人のトーク。互いの腹黒さが滲み出た内容に爆笑。最後は桃太郎師匠で『死神』。大銀座落語祭の時とは打って変わった盛り上がりよう。客席との一体感無しに落語は有り得ないことを痛感。桃太郎師匠ならなおさらか。

7/27。深川江戸資料館で『特撰落語会第7回 柳家喬太郎・真夏の夜の怪談噺』。柳家小んぶさんの『道灌』に続いて喬太郎師匠で『へっつい幽霊』(このときの出囃子は『怪奇大作戦』)。鮮やかで小気味良い。仲入を挟んで柳亭左龍師匠の『片棒』。荒唐無稽な葬儀プランを超ノリノリでプレゼンする長男と次男が絶品の味わいでこれまた最高。最後は喬太郎師匠で『牡丹灯籠』のお札はがしから栗橋宿まで。期待に違わぬ緻密さと生々しさを大いに堪能させていただいた。

2008年09月09日 06:00 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ : 落語初心者のメモ 2008年6月

6/2。なかのZERO小ホールで『落語教育委員会』。最初は御三方によるコント。柳家喬太郎師匠が高校の先生、三遊亭歌武蔵師匠が生徒、柳家喜多八師匠が授業参観のお父さんという役回り。喜多八師匠は建設作業員の出で立ち。セリフを一言も喋らず怪演。巨漢・歌武蔵師匠の無理矢理な学ラン姿も可笑しい。続いて登場したのはなんと春風亭栄助さん。『新・生徒の作文』はTVではおそらく放送できそうにない危険で捩れた根多。以後しばらく「僕は空を飛びたいな」がわが家で流行。場内の不穏な盛り上がりを前にいかにもやり辛そうだった喜多八師匠は『盃の殿様』。酔狂な武士ばかりが登場する根多をさらりと粋に。仲入を挟み喬太郎師匠で『稲葉さんの大冒険』。三遊亭円丈師匠の新作。あれよと言う間に窮地に陥る稲葉さん(柳家さん喬師匠がモデルとか)。追い討ちをかける長谷川さん(犬連れのおじいさん)の凶悪なボケっぷり。トリは歌武蔵師匠で『かんしゃく』。無闇にエラソーで神経質な金持ちの旦那のキャラクターがハマる。

6/7。三鷹市公会堂で『立川談志立川志らく親子会』。立川志らべさんの小気味良い『たらちね』に続いて志らく師匠で『鉄拐』。中国の伝説・歴史上の人物たちを茶化し倒しながら暴走するストーリーがいかにも志らく師匠にぴったり。続いて談志師匠。声の調子が相当悪い様子ではあったものの、実にチャーミングな『やかん』を見せて下さった。仲入を挟んで志らく師匠は『品川心中』の通し。金蔵のお人好し振りが際立つ意外なサゲ。なんとも微笑ましい気分で会場を後にした。

6/13。ソフィアザールサロンで『林家ぼたん勉強会 倶楽部ぼたん』。最初にぼたんさんで『豆や』。明るく楽しい売り声。続いて春風亭栄助さん。お馴染みのチェーン枕かと思いきや真っ直ぐ『ぞろぞろ』に入ったのがかえって新鮮。荒物屋主人の驚き顔が可笑しい。仲入を挟んで栄助さんで『新・生徒の作文』。時節柄あのサゲはどうだろうか、と思いきやそのままやってしまう。おお、チャレンジャー。トリはぼたんさんで『悋気の火の玉』。女性目線で描かれる嫉妬の応酬がいい。これはぜひさらに膨らませていただきたいなあ。

6/14。深川江戸資料館小劇場で『第6回特撰落語会 さん喬・市馬・菊之丞』。柳家小ぞうさんの『金明竹』に続いて柳家喬の字さんで『短命』。そして柳家さん喬師匠で『心眼』。梅喜の悲哀が実に生々しく心に迫る。重厚でありながらさらり美しい。仲入を挟み柳亭市馬師匠で『らくだ』の上。あの朗らかな師匠が丁目の半次をどう演るんだろう、と興味深く拝見するとこれがもう素晴らしいのなんの。こんなにカラリと清々しい『らくだ』が有り得たか。トリは古今亭菊之丞師匠で『唐茄子屋政談』の通し。若旦那キャラが見事にハマる華やかで楽しい高座。

6/17。国立演芸場で『三遊亭円丈・白鳥親子会 - 円丈の骨、白鳥の肉 - 』。最初に両師匠が揃ってステージに登場し、プロジェクターでDVDを上映しながらのトーク。20年くらい前のビデオを編集した実験精神満載の小根多集で爆笑。これだけで2時間くらいもつんじゃないか。そんな企画希望。続いて三遊亭白鳥師匠で『金さん銀さん』。円丈師匠の新作。思いのほかさらりと終わってしまってとまどう白鳥師匠が可笑しい。円丈師匠は『シンデレラ伝説』に挑戦。こちらは白鳥師匠の新作。詰まりがちながらも随所に織り交ぜたくすぐりが凄い。「朝青龍と40人の小結」って。仲入を挟み白鳥師匠で『悲しみは日本海に向けて』。円丈師匠の新作『悲しみは埼玉に向けて』の翻案。修業時代の苦悩を笑い飛ばす快作。まさか羽織が擬人化されてしまうとは。トリは円丈師匠で『夢一夜』。死を間近に控え無茶な蕩尽に走る資産家。不条理の中に漂う哀愁。まさに円丈節。素敵。「末期ガンジョーク」。

6/25。三越劇場で『笑福亭松喬 噺.はなし・話の会』。笑福亭生喬師匠の『青菜』に続いて松喬師匠で『へっつい幽霊』。昨年の『渋谷繁昌亭』以来二度目。アナーキーかつ気品ある大阪言葉はやはり絶品。中条きよし氏と松喬師匠の対談の後仲入。さらに松喬師匠で『帯久』(おびきゅう)。商人の町、大阪ならではの仁義無きドラマを流麗に。思わず膝を叩きたくなる裁きの場面で幕切れ。粋で鮮やかなサゲに心が晴れる。

6/26。シアターイワトで『いわと寄席 柳亭市馬の日』。柳亭市也さんの『たらちね』に続いて市馬師匠で『大工調べ』。この根多を通しで聞いたのは初めて。最後は師匠も立ち上がれなくなるほどの長講であったにも関わらず、軽妙な調子で流れるように聞かせる。棟梁の啖呵に思わずうっとり。仲入の後は市場師匠がタキシードに身を包んでの歌謡ショー『市馬の好きな昭和の歌』。途中なんと白山雅一先生が飛び入りゲスト出演。『ニコライの鐘』は御年を微塵も感じさせない声量での大サービス。感動的。最後に荒木とよひさ岡千秋両氏作の市馬師匠歌手デビュー曲が初の披露となった。ノーコメントだよねこれは(笑)。

6/27。シアターイワトで『いわと寄席 桂吉坊の日』。最初に笑福亭呂竹さんで『寄合酒』。「出家した橋本徹」というつかみに爆笑。続いて吉坊さんで『遊山船』。童顔とは対照的に骨太な芸風に驚く。さらに桂まん我さんで『佐々木裁き』。演じ分けのスマートさ、子供キャラの可愛らしさが実に見事。仲入の後、吉坊さんで『仔猫』。後半が少々お疲れ気味だったように思うが、綺麗に聞かせていただいた。破格の可能性を感じさせつつどことなく陰性の吉坊さんと、陽性の人間臭さが魅力的なまん我さん。お二人とも拝見したのはこの日が初めて。今後要チェック。

2008年07月18日 03:00 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ : 落語初心者のメモ 2008年5月

5/1。しもきた空間リバティで『「らくご渦」春風亭栄助独演会「食らえ丼飯っ!!」』。普段着っぽい格好で栄助さんが登場。何の前振りも無く淡々と一人コントが始まる。落語家の育成施設・NRC(New Rakugoka Creation)の面接というシチュエーション。落語界をくすぐり倒しつつ、ベタ根多の実演で爆笑させる。続いて栄助さんで『野ざらし』。小気味良い展開。八五郎の妄想ぶりが圧巻。東京ガールズの寒風吹きすさぶ俗曲に衝撃を受けた後、三たび栄助さんで自作の新作『リアクション指南』。京言葉のお師匠さんがサディスティックな高笑いとともに暴走する。猛毒のような落語。ヤバい。もうかなり効いてきた。

5/14。国立演芸場で『柳亭市馬独演会』。開演に少々遅れて市馬師匠から。徹頭徹尾無駄を削ぎ落としたミニマルな『不動坊』。たい平師匠の『不動坊』のオリジナルはこれか、と納得。仲入を挟んで白山雅一先生の歌謡声帯模写ショー。御歳83。ささやくようでいて限りなく透明でのびやかな歌声に痺れる。続いて市馬師匠で『鰻の幇間』(うなぎのたいこ)。はめられたことを了解しつつ、全く暗くならずにその境遇を楽しんでさえいるような太鼓持ち。清々しく、見ていて晴れやかな心持ちになる。この感じは市馬師匠にしか表現できないんじゃないか。

5/17。三鷹市芸術文化センター星のホールで『立川談春独演会 春談春』。開演前に『赤めだか』サイン会。首尾よくゲットして感激。立川こはるさんの『手紙無筆』に続いて談春師匠で『天災』。クールに登場するも徐々に煽られてしまう心学の先生と、どうしようもなく凶悪なのにどこか憎めないがらっぱちの決して噛み合うことのない問答が絶品。仲入を挟んで談春師匠で『大工調べ』。師匠の『大工調べ』を聞くのは昨年3月以来二度目。八五郎のとぼけ具合が見事に制御され、前回以上に登場人物の個性がかみ合い、棟梁の啖呵も絶好調に冴え渡る。鳥肌もののカッコ良さだった。

5/26。東京芸術劇場中ホールで『三遊亭白鳥柳家喬太郎二人会 デンジャラス&ミステリアス』。白鳥師匠の『ねずみ』を枕の終盤から。ご自身の貧乏体験を絡めたりしつつ、宿屋の親子をちょっと意地の悪いキャラクターとして描く。動物の登場する根多は白鳥師匠にぴったり。筋書き通りでありながら、見事に個性的な『ねずみ』に思わず唸る。続いて喬太郎師匠で自作の新作『ハンバーグができるまで』。メロドラマ的展開の小品。仲入の後、ふたたび喬太郎師匠でやはり自作の新作『夜の慣用句』。セクハラ&パワハラオヤジの生態を思い切り誇張しつつ克明に描写する。ある意味『大工調べ』の棟梁にも通ずる切れ味とアナーキー。喬太郎師匠の禍々しくも魅力的な一面を久しぶりに拝見した。トリは白鳥師匠で自作の新作『アニメ勧進帳』。ややエピソード多め。それにしても給食の献立のところでは思い切り爆笑させていただいた。

5/30。深川江戸資料館小劇場で『笑福亭三喬独演会』。笑福亭喬若さんの『へっつい盗人』に続いて三喬師匠で『禁酒関所』(禁酒番屋)。話芸そのものは至って緻密かつ端正。それでいてビジュアルと噺のトーンからはなんともとぼけた味わいが漂う。会場がすっかりほんわかした空気感で包まれた後、ふたたび三喬師匠で自作の新作、と言うかご自身の家族の変遷とその周辺にまつわるエピソード根多にした『我家のアルバム』。関西ならではの親密な人間模様にますます和む。仲入を挟んで三喬師匠で『三十石船』。舟歌に鳴りもの入り、登場人物入り乱れての楽しく華やかな根多。見たことのあるはずもない淀川下りのイメージが、高座から客席へふわりとひろがった気がした。品ある緩さ。

2008年07月04日 08:00 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ : 落語初心者のメモ 2008年4月

4/6。三鷹市公会堂で『立川志の輔独演会』。立川志の彦さんの『つる』に続いて志の輔師匠で『みどりの窓口』。珍客の応対に次第に追いつめられてゆくJR職員、と言う展開は師匠のお得意ではあるものの、やはり緻密なディテールに引き込まれ、意外にして鮮やかな下げに思わずのけぞった。仲入を挟み、志の輔師匠で『柳田格之進』。この根多を師匠で聞くのは昨年の大銀座落語祭以来2度目。つくづくカッコいい。

4/8。紀伊國屋ホールで『第520回紀伊國屋寄席』。柳家三之助さんの『棒鱈』を途中から。綺麗で明朗。次に古今亭志ん橋師匠で『池田大介』。志ん橋師匠を見るのは初めて。子供を演じる様子が実に愛らしく、なんとも幸せな気持ちになる。続いて桂文楽師匠で『素人うなぎ』。単純な滑稽話も師匠が演じると格調高いものに。仲入後の一席は柳家喬太郎師匠で軽〜く『母恋いくらげ』。ほのぼのしてホッと一息。退場の仕方が素晴らしい。トリの桂歌丸師匠は交通トラブルで東京に戻れず、立川志らく師匠が自作のシネマ落語『たまや - 天国から来たチャンピオン - 』を代演。目まぐるしい展開とオーバーアクションを思い切り楽しんで、最後の最後にほろり。力の入った高座。ここに来てついに志らく落語を楽しむための脳内回路がカチリと繋がったような感覚が。

4/12。深川江戸資料館小劇場で『第五回 特撰落語会 ほたると白酒と権太楼』。桃月庵白酒師匠の『あくび指南』を枕の途中から。白酒師匠を見るのは初めて。繰り返しの多いシンプルな構成の根多が、細部を端正に積み重ねることで次第に奥行き深いものとなる。品があって、しかも楽しい。続いて柳家権太楼師匠で『死神』。脚色無しで真っ直ぐに聞かせる。にも関わらず心底可笑しく、最後には背筋が寒くなった。にっこり微笑むだけで見るものを幸せな心地にさせる素敵なお顔をしていらっしゃる師匠なだけに、余計に恐い。さらに白酒師匠で『突き落とし』。『あくび指南』とは打って変わって登場人物が多く場面描写のややこしい噺を、丁寧に、それでいて軽妙に演じる。
仲入の後、権太楼師匠、白酒師匠、柳家ほたるさんが揃って登場。ほたるさん二ツ目昇進の口上。続いてほたるさんで『お菊の皿』。お菊の動作が激し過ぎて爆笑。トリは権太楼師匠で『試し酒』。これまたシンプル極まりない筋書きだが、久蔵の愛すべきキャラクターが見事に際立ち、噺の世界へどっぷりと引き込まれてしまう。大盃を飲み干す場面の凄まじさは筆舌に尽くし難い。ギラつく眼光。狂気をはらんだ名演に場内は割れんばかりの拍手で包まれた。この落語は「身体で演じる」という域を超えている。感動とともに、なぜか枝雀師匠を思い出した。

415。お江戸日本橋亭で『市馬落語集』。柳亭市也さんの『道灌』に続いて、柳亭市馬師匠で『明烏』。仲入を挟んで市馬師匠で『寝床』。根多下ろしの『明烏』も素晴らしかったが、『寝床』はさらに輪をかけていい。カラリとして、味わい深い。市馬師匠の高座にしかないこの感覚は一体どうやって表すべきか。市也さんは前日が初高座とのこと。枕で市馬師匠が話されたご自身の初高座と柳家小さん師匠のエピソードが実に暖かく、心に響いた。

4/16。みたか井心亭で『寄席井心亭 数えて百五十五夜 卯月』。柳家喬太郎師匠の会。最初は柳家小ぞうさんで『がまの油』。才気あふれる前座さん。いきなり大いに楽しませていただく。立ち居振る舞いのがさつさが取れれば一気に開花しそうな予感。続いて喬太郎師匠で『百川』。百兵衛のふわふわしたキャラクターが妖怪的でいい。さらに小宮孝泰氏で『青菜』。その見事さに驚くと同時に「高座が楽しくてしょうがない」という様子が伝染してこちらまで嬉しい気持ちになる。仲入を挟んで寒空はだか先生の登場。高座と客席の狭間で窮屈そうに根多を繰り出す姿が妙に可笑しい。見上げ位置で聞く『東京タワーの歌』は格別。トリは喬太郎師匠で『宮戸川』通し。前半のラブコメ的展開と、後半のサスペンスフルな展開。その極端な対比は終演後に悪寒を覚えるほどの違和感を伴うものだった。ある意味、師匠の自作以上に喬太郎落語的だ。

4/20。三鷹市芸術文化センター星のホールで『柳家さん喬独演会』。柳家小んぶさんの『小町』、柳家喬四郎さん自作の新作『せれぶ』に続いてさん喬師匠で『百川』。先日に見た喬太郎師匠の『百川』は、ストーリー、演出的にほぼさん喬師匠の完全コピーであることが分かる。にも関わらず印象が大きく異なるのが不思議で興味深い。さん喬師匠の人間味溢れる百兵衛は最高に魅力的だが、喬太郎師匠の妖怪百兵衛も捨て難い。
仲入の後、さん喬師匠が羽織を着けずに高座へ上がられ「会場にお子様がいらっしゃるので」と予定外の『初天神』をショートバージョンで見せて下さった。これがもう絶品。動作ひとつひとつが実にリアルで可笑しいのなんの。単に面白くしようとすると父親とこまっしゃくれた息子との間柄が荒んで見えてしまいそうな噺だが、さん喬師匠演ずる父親の眼差しには溢れんばかりの愛情が感じられる。柳家小菊師匠の粋曲にうっとりした後、三たびさん喬師匠で『柳田格之進』。ずっしりと重厚。これまた比較になるが、志の輔師匠の『柳田格之進』がいかにクールにモダナイズされたものであるのかが分かった。やはりどちらも素晴らしい。

2008年06月18日 14:00 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ : 落語初心者のメモ 2008年3月

3/13。東京芸術劇場小ホール2で『瀧川鯉昇 柳家喬太郎 二人会 古典こもり』。瀧川鯉斗さんの『動物園』に続いて喬太郎師匠で『転宅』。泥棒の愛すべきダメっぷりが何とも素晴らしい。次に鯉昇師匠で『明烏』。鯉昇師匠を見るのは初めて。まことに失礼ながらお顔からは想像のつかない綺麗で繊細な芸にうっとり。仲入を挟んで再び鯉昇師匠で『長屋の花見』。先とは打って変わったからりとして滑稽な貧乏ネタはハマり過ぎてもう爆笑。トリは喬太郎師匠の『綿医者』。不条理な展開とあまりにナンセンスな下げに衝撃を受ける。

3/14。連日の東京芸術劇場小ホール2で『昔昔亭桃太郎独演会 春の桃太郎』。春風亭昇々さんの『子ほめ』に続いて桃太郎師匠の『受験家族』と風間杜夫氏の『風呂敷』。風間氏の落語を見るのは初めて。桃太郎師匠による飄々とした新作と風間氏による端正な古典。この何とも不思議な対比を味わえただけでも儲け物。仲入を挟み、両氏の対談に続いて三たび桃太郎師匠が登場。演ずるはなんと『不動坊』。とぼけたくすぐりをてんこ盛りにした冒頭の展開からして、舞台は完璧なる桃太郎ワールドに置き換わっている。幽霊役が頭上にセリフを訪ねる仕草が可笑し過ぎて忘れ難い。

3/19。みたか井心亭で『寄席井心亭 数えて百五十四夜 弥生』。林家たい平師匠の会。最初にたい平師匠で『不動坊』。何度出会っても聞き惚れる完成された芸。桂三木男さんの『猿後家』で仲入。続いてたい平師匠の『文七元結(ぶんしちもっとい)』をたっぷり。これが凄まじいまでの熱演で聞き終えて思わずぐったりしたが、今後一気に進化しそうな予感のある根多。近いうちにぜひまたどこかで聞いてみたい。

3/23。三鷹市芸術文化センター星のホールで『柳家花緑独演会』。最初に柳家花いちさんの『饅頭こわい』。続いて花緑師匠で『片棒』と『禁酒番屋』、仲入を挟んで再び花緑師匠で『出来心』と『お見立て』というなんとも嬉しい盛り沢山な内容。個々の根多はもちろん素晴らしいが、何より高座から伝わるカラフルな空気が楽しく、心地良い。花緑師匠の芸は独演会でこそ最大限に生きるのでは、と考えたのは正解だった。

3/27。内幸町ホールで『WAZAOGI ろっく・おん 三遊亭円丈コレクションVol.1』。円丈師匠を見るのは初めて。三遊亭玉々丈さんの小咄の後、円丈師匠で『ぐつぐつ』。柳家小ゑん師匠による新作。円丈版は哀感をベースにえも言われぬ可笑し味を湛えた大作だった(小ゑん版はどんなだろう)。以後しばらく「ぐっつぐっつ!」がわが家で流行。
続いて春風亭栄助さん(今秋真打昇進と共に「百栄」に改名予定)が元気無く登場。こちらも初めて拝見。掴み所の無い枕に翻弄される落語通の小咄に始まって、自作の新作『古典の天使・新作の悪魔』へ。アニメ声の天使とデーモン小暮風の悪魔の板挟みに苦しむ二ツ目さん。落語の世界を落語のフォーマットで茶化し倒す。くすぐりといい流れといいあまりに見事で、大爆笑の後、半ば呆然として見送る。以後しばらく「このうつけ者!(アニメ声で)」がわが家で流行。
さらに円丈師匠で『新がまの油』。これは自作だろうか。正調の口上と、オリジナルの口上の両方が聞けて実に愉快で得した気分。仲入を挟んで三たび円丈師匠で自作の新作にして名作の誉れ高い『遥かなるたぬきうどん』。円丈師匠の高座は声の抑揚が極めて激しい。無駄にドラマティックな筋立てのシュールな根多がその調子にぴたりとはまり、ジェットコースターのように展開する。爽快。斬新。落語はここまで自由なものだったか。

2008年06月16日 13:00 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ : 落語初心者のメモ 2008年2月

2/14。なかのZERO小ホールで『柳屋喬太郎独演会』。こちらの大ホールには以前に何度か訪れたことがある。あまりに空間が広過ぎて、落語の場合どうもステージに集中し辛いため、最近はここでの公演チケットを取るのを避けていた。初めて入った小ホールは客席の奥行きが小さく、傾斜が大きくとられており、後方でもステージの様子が手に取るように分かる。かなり古そうな施設で、時折外の音がわずかに漏れ聞こえたりはするものの、落語を見る分にはほぼ言うこと無し。いいハコだ。
柳屋こぞうさんの『真田小僧』に続いて喬太郎師匠の登場。バレンタインデーに因んでの演目は自作の新作『白日の約束』。同僚のOLとモテ男社員の演技が違和感アリアリに誇張されるのに対して、噺の中心となる男は丸っきりの与太郎で、そのギャップが面白い。夜のデートの途中でOLに「そろそろ行こうか」と連れ出されてからの不条理な展開で観客を一層引き込んだと思ったら、見事な駄洒落でさげて終わってみるとちゃっかり落語になっている。流石。
さらにねこマジさんの美声で寿限無を堪能してから仲入り。この流れで最後に喬太郎師匠が持ってきたのは驚いたことに人情噺バージョンでの『おせつ徳三郎』通し。師匠一流の美しく映像的なラストシーンに涙。

2/17。三鷹市芸術センター星のホールで『林家たい平独演会』。こたい平さん(たい平師匠の御子息。小学生!)の『転失気』(てんしき)に続いてたい平師匠の『不動坊』。終盤、幽霊登場の場面の描写がやたらと細かくて、もう笑いっ放し。
仲入りに続いて花島世津子師匠のゆるーいマジックで和んだ後、たい平師匠の『愛宕山』。以前からこの演目は師匠にハマるだろうな、と思っていたが、これがもう想像以上の素晴らしさ。最初から最後まで、先ほどの『不動坊』を上回る鮮やかさでディテールを紡ぎながら、まさに全力疾走での熱演は感動的なものだった。いやーよく笑った。

2/23。深川江戸資料館小劇場で『特撰落語会第4回 柳屋喬太郎とすわ親治の二人LIVE』。柳屋小きちさんの『松竹梅』、喬太郎師匠の『金明竹』(きんめいちく)に続き、楽しみにしていたすわ親治氏の一人コメディ。静かにステージへと登場し、自己紹介がてらあの甲高い笑い声を一瞬聞かせて下さった。この時点ですでに私たちは鳥肌状態。イッセー尾形方式でステージ袖で衣装替えをしつつ、次々に繰り出されるコントはどれも短時間で極めつけにシンプル。一瞬の間合いで虚を突くようにして挿入されるオチが凄い。ショックと同時に爆発的な笑いが劇場を包み込む。新鮮さと懐かしさ。私たちが目の当たりにしたのは間違いなくあのドリフターズの笑いであり、そのひとつの進化形だった。今後のライブをしっかりチェックせねば。お二人の対談後、仲入り。
続いて喬太郎師匠で『錦木検校』(にしきぎけんぎょう)。三味線栗毛のエピソードを前半に置いて、人情噺に仕上げたもの。角三郎が友人の按摩師・錦木に口語で話しかけるところで思わず涙。また泣かされた。喬太郎師匠の演じる武士は本当に格好良い。

2/27。東京芸術劇場小ホール2で『上方落語の花形来る!vol.2 桂南光・こごろう親子会』。最初に登場した桂ちょうばさんの『時うどん』が良かった。上方の若手は人材豊富だ。続いて桂こごろう師匠で『動物園』。シンプルな根多を豊かな表情と丁寧な演技で見事に膨らませる。園長が着ぐるみの男に虎の歩き方を教えるところがいい。そしていよいよ南光師匠の登場。演目は『初天神』。軽めに終わるかと思いきや、師匠の手にかかるとこれが実にひねりと小技の詰まった根多となるのに驚いた。買い物をせがむ子供がなんともしたたかさで憎たらしい。
仲入り後、こごろう師匠の『阿弥陀池』(東京に『新聞記事』と言う似た根多がある。何か関係がありそうだが、はて)。知ったかぶりの男の間抜けぶりが、上方落語らしくオーバー気味に描写されるのがこれまたいい。軽妙にして濃厚。最後は南光師匠の『素人浄瑠璃』(『寝床浄瑠璃』とも言う。東京の『寝床』の原型)。以前林家染丸師匠で見た時とはがらりと印象の異なる爆笑根多だった。先の『初天神』といい、エピソードだけを抜き出すとえげつなかったりしつこかったりするはずが、流麗な関西言葉や巧みな間合いと相まって、終わってみると不思議なくらいに上品な後味を残す。独特のかすれた声質もまた耳に心地良い。格調高く骨太な芸を堪能させていただいた。もっと東京で演って下さらないものか。

2008年03月13日 07:00 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ : 落語初心者のメモ 2008年1月

1/7。横浜にぎわい座で『立川談春独演会』。横浜にぎわい座は桜木町駅近くのビル内にあるホール。訪れたのはこれが初めて。座席は背に小さな折り畳みテーブル付きで、2F桟敷席下には提灯がずらり。ステージには寄席囲い(提灯付きの和風プロセニアムみたいなもの)も仮設され、体裁はすっかり寄席仕様。客席には適度な傾斜があって割合に前が見易く、シートは小振りながら「きゅうきゅう」と言うほどではない。鈴本に比べれば天国のように快適だ。いいなあ横浜。
立川こはるさんの『小町』に続いて談春師匠の登場。演目は初めて聞く『棒鱈』(ぼうだら)。この噺の構造が実に面白い。
表面上は田舎侍の無粋に江戸っ子が腹を立ててひと騒動、という筋書き。田舎侍がマグロの刺身のことを「赤ベロベロの醤油漬け」と言うあたりで爆笑とともに噺が急展開し始めるが、ここでの笑いは田舎侍のおかしな言葉遣いと同時に江戸の悪食に対して向けられることになる。田舎では刺身と言えば白身であり、赤身やタコを濃い味にしたものなど下衆な食い物に過ぎない。垢抜けないのはお互い様なのだ。田舎侍の台詞はおそらく九州弁であろう訛で演じられる。時代背景は幕末。薩長と、国のイニシアチブをさらわれつつある江戸との微妙な力関係が噺の伏線として効いて来る。
シンプルなようでややこしい噺も談春師匠にかかればさらりと小気味良い。仲入りに続いての演目は談春師匠では2度目の『妾馬』。東京国際フォーラムで聞いたときよりもさらに可笑しく、かつ流麗。感動が沸き上がった。

1/29。よみうりホールで『第二十六回東西落語研鑽会』。先ずは柳家三三師匠で『権助提灯』。軽めの根多ながら、初めて聞く三三師匠の落語は力強かった。初っ端にもかかわらず客席との間合いが絶妙。こ、これはヤバい。今後チェックしなくちゃ。続いて二番目にはなんと桂春団治師匠が早々の登場。しかも『桃太郎』に『鋳掛屋』と上方の小憎たらしい子供の噺を立て続けに。以前に渋谷で拝見した折は惚れ惚れするような男前だったが、この日はなんとも可愛らしい春団治師匠だった。さらに続いては柳家小三治師匠。春団治師匠主演の映画『そうかもしれない』(小三治師匠も通行人Aで出演とのこと)の話題を枕に『あくび指南』へ。師匠ならではのとぼけた味わいが凝縮された根多。淡々としているのに聞き入ってしまう。
仲入りに続いて春風亭昇太師匠の『茶の湯』。毒性の高さとチャーミングさが見事にマッチして爆笑。ハマり根多。そしていよいよのトリは林家染丸師匠。鳴物に踊りまで加えての大胆で華やかな演出。それでいて落語の粋は決して失われることがない。この楽しさは染丸師匠の高座でしか味わえない貴重なものだ。いやはや、今回の『研鑽会』もお腹いっぱい。

2008年02月12日 12:00 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ : 落語初心者のメモ 2007年11・12月

11/3。三鷹市芸術文化センター・星のホールで『立川志の輔独演会』。開口一番・立川志の春さんの『道灌』に続いて志の輔師匠の登場。あまり声の調子が良くないとのことで、枕を長めにとっての演目は自作の新作『買い物ぶぎ』。買い物を頼まれてドラッグストアへ来たおじさんにマーケティングの不条理を延々掘り起こされてパニックに陥る店員に大笑いしつつ、その設定の綿密さに舌を巻く。
仲入りを挟んで『井戸の茶碗』。二組の武士の意地の張り合いの板挟みとなるお人好しの屑屋。終盤、屑屋をキレさせてしまうのは実に師匠らしいユニークな演出。制度に潜む矛盾に蟻地獄のようにはまってゆくキャラクターの悲喜劇を、志の輔師匠はいともスマートかつ現代的に描く。

11/21。みたか井心亭で『寄席井心亭 数えて百五十夜 霜月』。林家たい平師匠の会。井心亭は1983年に三鷹市の和風文化施設として設けられた木造平屋の建物。設計は番匠設計。最初にたい平師匠の『反対俥』(はんたいぐるま)。人力車夫に引っ張り回される客のハチャメチャな根多を、思い切り今風にアレンジしてさらにハチャメチャに。続いて三遊亭歌彦さんの『新聞記事』。さらに 林家久蔵師匠の『浮世床』で仲入り。
最後にたい平師匠で『粗忽長屋』。これが実に鮮やか。ところどころ時事ネタでくすぐりながら、まともな人物をほとんど介在させずに、ナンセンス極まりない根多を破綻無く飄々と演じる。笑いの向こうに芸の凄みが垣間見える落語。終演後にサインをいただいた。

11/26。よみうりホールで『第25回東西落語研鑽会』。先ず桂つく枝師匠で『四人癖』。初っ端から品のある見事な上方落語。その表情の楽しく豊かなこと。今後要チェック。続いて全国落語台本コンクール優秀賞作品の 『夢で逢えたら』 (冨田龍一氏作)を柳家喬太郎師匠で。切ない幽霊根多を師匠らしく怪しく映像的に力演。続いて林家正蔵師匠と柳家花緑師匠のダブル司会でコンクールの表彰式。こちらにも喬太郎師匠が登場。さりげなくコケてみたり、椅子の後ろに恨めしげに立ったりするのが妙に可笑しい。本当にちょっとした動作が舞台に映えるのだ。コントとか芝居もやってみてほしいような、やらないでほしいような。
仲入りを挟み花緑師匠で『唖の釣』。 師匠の落語は人数の出る会ではあまり印象に残ったことが無いのだが、この日は違った。テレビでは口演の難しい根多を嫌味無く粋に演じて正蔵師匠に繋ぐ。『鬼の面』は林家しん平師匠の新作(正:上方由来の古典・0802/22訂正)。正蔵師匠らしい人情味の豊かな根多。人は悪くないが悪戯心が過ぎて事件を引き起こしてしまう旦那のキャラクターが師匠自身に重なる。最後は桂三枝師匠で自作の新作『宿題』。お馴染みの根多ながら、各師匠が盛り上げた会場の空気を一身に引き受ける熱い高座だった。涙ぐむくらいに爆笑。

12/12。博品館劇場で『たい平たっぷりナイト2』。先ずは林家たい平師匠で『七段目』。上方由来のはめもの(口演途中のお囃子)入りの芝居噺。歌舞伎のパロディを相当上手く演らなくては面白くならない根多だが、さすがは師匠。役者の物真似を分かりやすく織り交ぜて巧みに現代化しつつ、抜群のテンポで華やかに演じる。林家ペタ子さんの歌の後仲入り。たい平師匠がiMovieで作ったと言う空の写真のスライドショーに続いて最後は『芝浜』。
無知な素人が言うべきことではないかもしれないが、『芝浜』の山場は前半の財布を拾うシーンにあるのではないか。そこで観客に芝の浜の風景を想起させることが出来るかどうかが、この根多の良し悪しを決定付ける。とすれば、この日のたい平師匠の『芝浜』は文句無しの佳作だった。思わず魚屋夫婦に感情移入して涙、涙。

12/18。内幸町ホールで『東西若手落語家コンペティション2007 第5回』。出演陣がじゃんけんで登場順を決めて、トップは立川志ら乃さんの『火焔太鼓』。志らく師匠ゆずりの暴走機関車のようなスピード感と脱線具合に爆笑。次は三遊亭歌彦さんの『片棒』。声が非常に良く、言葉使いは流れるように美しい。しかし、申し訳ないことに何故か眠たくなる(11月の井心亭でもそうだった)。続いて桂春菜さんの『七段目』。歌舞伎部分が今ひとつ未完成で、根多全体に一体感を欠く印象ではあったが、独特の色気を感じさせる噺家さんだった。
仲入りを挟んで三遊亭遊馬さんの『佐野山』。江戸後期の相撲取・谷風と佐野山にまつわる講談由来の根多。伏線、登場人物ともに多く、落語としては面白くし辛そうな構成ながら、表情豊かでメリハリの効いた遊馬さんの口演は素晴らしかった。最後まで明確な種明かしをせずにお終いにしてしまうがこれまた粋だ。最後は桂かい枝さんで自作の新作『ハル子とカズ子』。熱演が続いて観客も疲れただろう、と思われたのか、お得意の軽めの根多。とは言え、関西のおばあちゃん同士の会話は実に良く練られており、客との間合いの取り方もまた一流だ。終演後、観客による投票が行われ、この日の優勝者はかい枝さんに決定。正直、この場においてはラッキーな選出であったと思うが、おそらくかい枝さんはまだ爪を隠しておられる。2月のグランドチャンピオン大会が楽しみだ。と思ってたんだけど、迂闊にもチケットを取り損なってしまった。。。無念。

2008年01月19日 10:00 | trackbacks (0) | comments (2)

落語初心者のメモ : 落語初心者のメモ 2007年10月

10/11。イイノホールで『三遊亭白鳥 柳家喬太郎 二人会 デンジャラス&ミステリアス』。客席を見回したところ、いつもの落語会よりも平均年齢が20才くらい若いような気がした。それでもせいぜい40才くらいだが。18:30開演の落語会を平日に見に来れるダメ人間が同年代にこんなに大勢居るとは実に心強い。
お二人でのトークに続いて、喬太郎師匠の『午後の保健室』。お得意の誇張・デフォルメされたキャラクターの立ち具合、それのみで根多を成立させてしまう。極めてシンプル。これはもう喬太郎師匠以外の人には出来ない力技だ。強力なオヤジキャラを与えられた中学生の繰り出すギャグが吹雪のように吹き荒れ、ねじれた笑いが爆発する。
そして白鳥師匠の『サーカス小象』。白鳥師匠の高座を見るのはこの日が初めて。アニメや漫画のストーリー設定をもじりつつ細かなギャグをてんこ盛りにしたウケる世代の限定されそうな根多。少々詰め込み過ぎのきらいはあったが、その後2週間近く語尾に「…だぞ〜う」を付けるのが我家で流行するくらいに洗脳されてしまった。
仲入を挟んで再び白鳥師匠の『アジアそば』。蕎麦が食べたい客とインド人とのまるで噛み合ない会話にスパイシーなギャグが散りばめられる。内容は現代的、その実、構造的には完璧なる古典落語。馬鹿馬鹿しく、短い根多だが素晴らしく気が利いている。粋だ。
最後は喬太郎師匠の『ハワイの雪』。仕込(落語前半の根多設定の説明となる部分)を間違えるなどのトラブルがあり、星のホールで見た時ほどの締まりはなかったが、やはりいい根多。

10/23。深川江戸資料館小劇場で『入門30周年記念 桂小春團治独演会』。天井が高く、綺麗で立派なホール。
先日渋谷繁昌亭で拝見し、上方にもこんなに凄い新作をやる人が!と驚いて、すぐにこの日のチケットを取った。開口一番、笑福亭呂竹にさん続いて小春團治師匠の『冷蔵庫哀詩』。桂春雨師匠の『稽古屋』と来て再び小春團治師匠の『職業病』。仲入を挟んで小春團治師匠のヴィジュアル落語『漢字悪い人々』。
冷蔵庫の中、ファミリーレストランの中と、極めて限られた空間を舞台としながら、そこにバラエティ豊かなキャラクターをこれでもかと盛り込んで、全てを破綻無く演じ分けてしまう小春團治師匠の話術は実に幻惑的だ。『冷蔵庫哀詩』に至ってはプッチンプリンを主人公にしながら微妙に人情話のテイストまで含むのだから信じ難い。『職業病』では元葬儀屋のウェイターの緻密な描写に感心しつつ爆笑。『漢字悪い人々』はプロジェクターを使用し、小春團治師匠自らPCを操作しながらの高座。ロードオブザリングとスターウォーズをごっちゃにしたようなストーリーの舞台となるのは擬人化された文字の世界。一体スケールが大きいんだか小さいんだか。おもちゃ箱の中を鮮明な広角レンズ越しに覗くような、不思議な世界観を堪能させていただいた。東京ではまだ知名度が低いのか、客席の入りが2/3程だったのがなんとも惜しい。今後要チェック。

10/28。歌舞伎座で『第一回落語大秘演会 伊藤園 鶴瓶のらくだ』。
以下はまだ公演中につきネタバレを含むため続きへ。

2007年11月16日 08:00 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ : 落語初心者のメモ 2007年9月

9/7。練馬文化センターで『市馬・喬太郎 ふたりのビッグショー』。
開口一番、柳亭市朗さんに続いて寒空はだか師匠の登場。師匠のステージを見るのはこれが初めて。歌と物真似を織り交ぜた素敵に下らないネタのオンパレード。客席との距離の置き方が絶妙で、思わずぐんぐんと引き込まれてしまう。さすがにあの浅草東洋館を湧かせる芸人さん。テレビの一発屋とはわけが違う。と言いつつ東洋館には行ったことがないんだが。
そしていよいよ柳亭市馬師匠の『お化け長屋』。4月の花緑まつり以来なかなか拝見する機会がなく、じっくりと聞けるのを楽しみにしていた。素晴らしく豊かな声色と声量。根多の後半に威勢のいい間借り人が登場すると、ハイテンションな言葉遣いがなんとも小気味良い。流麗にしてカラフル。江戸落語の楽しさを満喫。
仲入を挟んでの演目はなんと市馬・喬太郎師匠による歌謡漫才。アニマル亭 馬夫・豚夫の登場。市馬師匠のフリフリタキシード、喬太郎師匠の眼鏡にダークスーツ姿は、ビジュアルのみでもう爆笑。西武池袋線の駅名に無理矢理因んだ市馬師匠の歌の数々が馬鹿馬鹿しくも可笑しい。続いては昔昔亭桃太郎師匠のトーク。ご自宅が近いからお呼びがかかった、なんてことも含め、相変わらずどこまでがウソかホントか分からない話題の連続で会場を煙に巻きつつ大いに湧かせる。
最後は柳家喬太郎師匠の『彫師マリリン』。誇張、デフォルメされたギャルキャラと職人気質の掘駒師匠の鮮やか過ぎる対比。喬太郎師匠の新作ならではの見事な風刺、演技力と構成力を堪能させていただいた。

9/9。内幸町ホールで『落語家生活三〇周年 雀々十八番』最終日の昼の部と夜の部通し。
昼の部の開口一番は桂雀喜さん。続いて桂雀々師匠『がまの油』、林家たい平師匠『明烏(あけがらす)』、雀々師匠『仔猫』。仲入を挟んで雀々師匠『疝気の虫』。
夜の部の開口一番は桂都んぼさん。続いて雀々師匠『子ほめ』、春風亭昇太師匠『おやじの王国』、雀々師匠『夢八(夢見の八兵衛)』。仲入を挟んで雀々師匠『愛宕山』。
少々大人しい印象を受けた大銀座落語祭での高座とは打って変わって、この日の雀々師匠はとにかくハイスピードでハイテンション。よどみなく繰り出される大阪言葉の迫力が圧倒的。しつこいリフレインが次第にエスカレートして、爆発的な笑いへと膨らんで行く様はまさにスペクタクル。
どの根多も甲乙つけ難いが、強いて挙げれば下げの鮮やかさとファンタジックな展開の際立つ『仔猫』と『夢八』が秀逸。また『愛宕山』の荒唐無稽さと異様な勢いはほとんど狂気の沙汰とも思える凄まじさだった。おそらく、雀々師匠は枝雀落語を消化すると同時に、独自の爆笑スタイルを確立することに成功したのだ。

9/21。川崎市麻生市民館で『桂三枝独演会』。演目は桂三段さん『憧れのカントリーライフ』、続いて桂三枝師匠『宿題』。仲入を挟んで桂三歩師匠『青い瞳をした会長さん』、最後は三枝師匠『誕生日』。全て三枝師匠の創作落語。
『青い瞳をした会長さん』は三歩師匠のキャラクターにぴったりのナンセンスな根多。三枝師匠の『宿題』は昨年4月のよみうりホールで一度聞いたが、分かっていてもやはりお腹のよじれる傑作。『誕生日』を聞くのはこの日が初めて。現代的でつつましやかな米寿祝い。爆笑の中にもほっと心温まる下げが見事。絶滅寸前の家族愛を滋味深く描く素敵な根多。会場を出て、電車に乗る頃になってふいにじんと来た。

9/26、27。渋谷セルリアンタワー東急ホテルボールルームで『第三回 大・上方落語祭 渋谷繁昌亭』夜の部を二日続けて。
26日は開口一番、桂しん吉さんに続いて笑福亭三喬師匠『おごろもち盗人』、笑福亭仁智師匠『スタディーベースボール』、桂ざこば師匠『青菜』。仲入を挟んで桂きん枝師匠『親子酒』、林家染丸師匠『寝床浄瑠璃』。
この日最も印象深かったのは三喬師匠。間の抜けた夫婦の会話やコロコロ態度を変える盗人の様子が、流れるような大阪言葉で描写される。瑞々しく映像的な上方落語。ざこば師匠の『青菜』は涙もろい庭師のキャラクターが可笑しい。染丸師匠得意の華やかで滑稽な芝居噺も実に見事なものだった。
27日は開口一番、桂市之輔さんに続いて桂小春團治師匠『さわやか侍』、笑福亭松喬師匠『へっつい幽霊』、桂春団治師匠『野崎詣り』。仲入を挟んで笑福亭鶴光師匠『西行鼓ヶ滝』、桂三枝師匠『悲惨な夏』。
この日の内容はまた一段と濃厚だった。『さわやか侍』は小佐田定雄氏の新作で時代劇仕立てのナンセンスな根多。膨大な登場人物を全く違和感無く演じ分けながら爆笑を誘う小春團治師匠の話芸に舌を巻く。この根多は果たして小春團治師匠以外の人に出来るのだろうか?一転して松喬師匠はスタンダードな古典根多。これがまた凄かった。道具屋、熊五郎、銀ちゃんと言った各登場人物が、言葉使いはもちろんのこと、その表情や仕草などのディテールに至るまで実に緻密に、まるで別人のように生き生きと描かれる。時にはんなりと、時に豪快に聞かせる大阪言葉が魅力的で、すっかりファンになってしまった。ぜひこの人の『らくだ』を見てみたい。大阪言葉の魅力、と言う点では春団治師匠の『野崎詣り』もまた見事と言うより他は無い。何年か大阪に住んだことのある私たちにとっても聞き慣れない言い回しが何度も登場したが、その響きは美しく、楽しく、なんともカッコいい。1930年生まれの春団治師匠のお元気な姿を東京に居ながらにして拝見することが出来るとは幸せだ。
立て続けの至芸と仲入の後に登場した鶴光師匠だったが、その高座は一切霞むことの無い鮮やかさだった。西行の短歌という古めかしいにもほどかあるような題材を用いながら、鶴光師匠らしい駄洒落やキツいジョークを織り交ぜて、爆笑落語に仕立ててしまう力技。恐れ入りました。

終わってみれば上方落語月間、と言った具合の9月。『雀々十八番』でも『渋谷繁昌亭』でも、おそらくは独特のニュアンスとノリについて行けないのであろう、大方の盛り上がりをよそにキョトンとした様子の方が散見されたことが記憶に残っている。上方の言葉に多少なりとも親しみのあることは私たちにとって非常に幸運なことだと痛感した。一方、三枝師匠の落語はその辺りの障壁を巧みに取り除いてあるような気がするのだが、実際のところどうなのか、興味深いところだ。

2007年11月14日 12:00 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ : 落語初心者のメモ 2007年8月

8/7。東京芸術劇場小ホールで「昔昔亭桃太郎三番勝負」第二夜。桃太郎師匠を見るのはこれがはじめて。訥々とした語り口で客の反応を見ながら次々と小ネタを繰り出す枕にぐいぐいと引き込まれる。そのままのノリで『金満家族』に突入。金が余り過ぎて困っている家族の夕食風景を描いた恐ろしくナンセンスな新作落語だが、途中の味噌汁をすする動作の表現などは見事な名人芸。現実と非現実の激しいギャップをひょいひょいと超えてゆく様子がなんとも軽妙だ。続いてゲストの柳家喬太郎師匠による『禁酒番屋』。師匠の声の良さが武士言葉で大いに際立つ。番屋役人の過剰なへべれけぶりに大笑いしつつ、古典の文脈に現代的な狂気を埋込む手法の巧みさに唸らされた。仲入と両師匠の対談を挟んで、桃太郎師匠の『御見合中』。こちらも新作落語。先刻に負けず劣らずの馬鹿馬鹿しい掛け合いの応酬に爆笑したり思わず引いたりの繰り返し。この正しく都会的なお笑いは、今や60代以上の人にしか演じられないだろうし、テレビの押し付けがましい一発芸に慣らされてしまった世代には理解することすら難しいかもしれない。また時代が一巡するまでの間、桃太郎師匠にはぜひとも頑張ってもらいたいと切に思う。

8/18。松戸市民会館で「柳家小三治独演会」。少し遅れて会場に着くと、柳家禽太夫師匠の『蜘蛛駕篭』が中盤に差し掛かったところ。キレのある江戸言葉が魅力的。これはちゃんと最初から聞かせていただくべきだった。要チェック。小三治師匠は唱歌・青葉の笛にまつわる長大な枕から『宗論』へ。真宗の親父vsカトリックの息子のいかにもステロタイプで間抜けな掛け合いに爆笑。仲入を挟んで、前の根多を枕さながらに、小三治師匠はいきなり『こんにゃく問答』を始める。終盤の問答でのジェスチャーや表情が面白過ぎてお腹が痛くなってしまった。キリストも仏も笑い飛ばして終了。師匠ならではのとぼけた味わいと、その場の空気の震えまで感じさせるようなデリケートな表現を久しぶりに堪能させていただいた。

8/26。三鷹市芸術文化センター星のホールで「柳家喬太郎独演会」。最後列ではあったものの、250の座席には十分な傾斜がとられておりステージが非常に見やすい。ここで喬太郎師匠の『死神』を見ることが出来たのは幸せだ。ベースとなる根多に細かな設定や登場人物の揺れ動く感情を描き加えた『死神』は極めてオリジナリティが高く、ぞっとするほど映像的だった。仲入を挟んで柳亭左龍師匠の『青菜』。流麗な語り口。表情が実に豊かで楽しい噺家さんだった。要チェック。続いての喬太郎師匠は新作落語『ハワイの雪』。お爺ちゃんと大学生の孫娘、お爺ちゃんの昔の恋人と力自慢のライバル、と言った人物設定やエピソードが絶妙に無理だったりリアルだったりして抱腹絶倒。「地獄に堕ちろ!」のところでは危なく笑い死にしそうだった。幕切れはそれまでの展開が嘘のように切なく、静かで美しい。思わず泣けた。聞きしに勝る名作。

2007年09月09日 10:00 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ : 落語初心者のメモ 2007年7月

7/12。銀座ブロッサムで「大銀座落語祭」初日。第1部はコント劇団、ザ・ニュースペーパーのスペシャルライブ。テレビでは放送不可能であろう際どい政治ネタの応酬に爆笑しつつも時折冷や汗をかいたり感心したり。これほど骨太で、丁寧に練り上げられたコントを目の当たりにするのは十数年ぶりではないか。恐ろしくカッコいい芸だ。こりゃまた拝見しなくちゃ。
第2部は桂ざこば桂南光桂雀々三人会。この三師を東京で揃って聞くことが出来るとはなんたる幸せ。最初に登場した雀々師匠の演目はなんと『代書屋』。しかも「ポンでーす」のバージョン。さすがに少々緊張の面持ちではあったが、枝雀落語の継承者としての覚悟を感じさせる高座に笑い泣き。南光師匠は『ちりとてちん』。独特の枯れた声質と柔らかな口調が上方落語のトーンを際立たせる。カラフルな表情に枝雀落語の面影を見てまた泣き笑い。ざこば師匠は『遊山船(ゆさんぶね)』。お馴染みの怒り顔と素っ気無い枕が嬉しい。お囃子を取り入れての華やかな演出は上方落語ならでは。時折大阪ことばの解説を織り交ぜながら、素晴らしくテンポ良く聞かせる。そのサービス精神と技の凄みに心打たれた。
第3部は立川志の輔の会。『柳田格之進』をたっぷりと。抑制された展開の中で、師匠ならではの緻密な人物描写が見事に際立つ。もう言うこと無し。ただ感涙。

7/18。よみうりホールで「談志・志らく親子会」。最初は立川志らく師匠の『片棒』。映画ネタ、懐メロネタを軸に据えた大胆なアレンジと目まぐるしい展開が圧倒的。続いて立川談志師匠の『木乃伊取り(みいらとり)』。『木乃伊取り』を師匠で聞くのは2度目だが、印象は前回とは全く別物。特に間にお囃子を入れての関西風の演出と、サゲの意外なアレンジには驚いた。途中一度噺に詰まる場面はあったものの、座布団から転がり落ちたりしながらの(「弟子の前でやる芸じゃねえなあ」には笑った)熱演。久々に師匠ならではの鋭さを感じさせる嬉しい高座だった。仲入を挟んで志らく師匠の『茶の湯』と『浜野矩随(はまののりゆき)』を立て続けに。こうした聞かせ方は実に楽しく、志らく師匠らしい。ようやく私たちなりに志らく落語の楽しみ方が分かってきたかも。いや、まだまだ甘いな。

7/20。紀伊國屋サザンシアターで「桂文珍大東京独演会vol.1」。ビデオ上映を開口一番にかえて文珍師匠の登場。先ずはお馴染みの小咄『マニュアル時代』でタイムリーな時事ネタを織り交ぜつつ客慣らし。続いて柳貴家小雪師匠の水戸大神楽。変わらぬ芸の安定感と美しく切れのある所作が素晴らしい。再登場の文珍師匠の演目は『らくだ』。大阪ことばでの『らくだ』を聞くのは初めて。豹変するくず屋の丁寧な描写には大いに笑いながらもぞっとさせられるものがあった。この凄みもまた文珍落語か。仲入を挟んでは桂米左林家うさぎ林家市楼の三師による大阪・天神祭りのだんじり囃子の演奏。重厚で複雑なリズムが超クール。二丁鐘(すり鐘)の響きに汎アジア的な雰囲気がある。トリは文珍師匠の得意演目の中でも私たちが最も好きなもののひとつ『商社殺油地獄(しょうしゃごろしあぶらのじごく)』。見事な老松の描かれた鏡板を背に、途中お囃子を従えての豪華バージョン。何度聞いても抱腹絶倒の傑作。

7/31。紀伊國屋ホールで「第三回黒談春」。黒談春は立川談春師匠によるマニア向けの会。最初は謎の前座・春作さん(眼鏡をかけた談春師匠)の『力士の春』(春風亭昇太師匠の新作)とそのパロディ『噺家の春』を立て続けに。力の抜けまくった棒読みっぽい口調が妙に可笑しい。『噺家の春』の内容はかなりマニアックで、落語初心者の私たちには半分くらいしか分からなかったが、全部分かりたいような、分かりたくないような。それにしても斬新な演出だなこりゃ。続いては着替えを挟んで談春師匠による根多おろしの『質屋庫(しちやぐら)』。しつこいくすぐりが延々続く展開のためか、東京ではあまりやる人が居ないとのことだが、力量によっては大ネタに化ける演目。私たちは以前桂歌丸師匠で聞いたことがあるがそれはもう見事なものだった。談春師匠は笑福亭仁鶴師匠の演出を下敷きに、得意の流麗な江戸ことばであえて淡々とよどみなく聞かせる。仲入に続いて登場した談春師匠は「会場に録音している奴が居るらしい」と凄むといきなり三遊亭圓朝作の怪談『真景累ヶ淵(しんけいかさねがふち)/豊志賀(とよしが)』へ。これも根多おろし。途中、枕代わりとばかりに嫉妬にまつわる打ち明け話を挟んで笑わせつつ、これまた流れるような口調で語り終える。『質屋庫』といい、師匠の話芸の卓越ぶりと今後の可能性とを同時に感じさせる高座だった。

2007年08月06日 06:00 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ : 落語初心者のメモ 2007年6月の残り

時間があれば落語の日々。しかし見れば見るほど、落語に接することは落語家という人間そのものに接することに相違無いと思う。分かった気になることはできても、実際は分からないことだらけ。どうやら「落語通」には一生なれそうにない。デザインもまた然り。

6/14。武蔵野市民文化会館で「桂歌丸笑福亭鶴瓶林家正蔵 夢の三人会」。最初は鶴瓶師匠。赤茶地に大胆な黒い雪輪柄の着物が素晴らしくカッコいい。上方の落語家には伝統的にお洒落な方が多いのだろうとは思うが、中でも師匠はトップクラスではあるまいか。演目はお馴染みの『青木先生』。以前青山で聞いた時とは違い、静かな幕切れが切なさを残す。仲入を挟んで正蔵師匠は『悋気の独楽(りんきのこま)』。師匠お得意の可愛らしい丁稚が印象的な好演。トリは歌丸師匠による左甚五郎もの『ねずみ』。見事な語り口とキレの良いサゲにシビれた。

6/15。赤坂区民センターで「第7回夕刊フジ平成特選寄席」。ホールとその周辺施設のインテリアデザインは1995年に近藤康夫氏が出掛けている。オーバル形の天井造作が特徴的。コンパクトな空間には傾斜がたっぷりとられており、ステージが非常に見やすい。
最初は三遊亭遊馬さんの『酢豆腐』。噺と動きのテンポが抜群に良く、豊かな声量が生きる。久々の爆笑落語だった。ブレイクの予感。続く柳家喬太郎師匠は池袋と今は無き東横線高島町駅への熱い思いを延々と。「前座さん、今日のネタ『高島町』でいいから」のところではお腹がよじれて死ぬかと思った。長大な枕に連なる演目は『諜報員メアリー』。凄まじいまでのナンセンスさ。衝撃的。仲入を挟んでの林家彦いち師匠は『熱血怪談部』。お得意の体育会系な語り口からは意外なサゲのシュールさが妙に味わい深い。トリは立川志らく師匠。激しい新作が二人続いた後に選んだ演目は、古典の中でも一際アクションが需要となる『愛宕山』。師匠らしく息つく間もなく一気に演じ切る。ある種異様な盛り上がりの楽しい会だった。

6/19。なかのZEROホールで「立川志の輔独演会」。落語向きとは言い難い大きなホールで、少々風邪気味だったとは言え、久しぶりに見た志の輔師匠の落語はやはり格別。丹念につくり込まれたディテールが実に楽しく、それを追ううちに巨大な重力に捕われるがごとく、ぐんぐんと噺の世界へと引き込まれる。演目は番頭さんの暴走ぶりが印象的な『千両みかん』と、愛すべきダメキャラクターの演じ分けが楽しい『へっつい幽霊』。

6/28。保谷こもれびホールで「桂歌丸独演会」。演目は『お見立て』と『白木屋』。特に『白木屋』は素晴らしかった。江戸落語の開祖とされる初代三笑亭可楽作の三題噺。定八の転落までの芝居掛かった展開、裁きの場での東海道五十三次をもじった申し開き、そして軽妙な駄洒落でのサゲが師匠ならではの流麗な口調で語られる。これが堪らなくいい。白木屋は日本橋に実在した小間物・呉服店で、現在の東急百貨店にあたる。

7月の分はまた今度。

2007年08月03日 08:00 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ, 身体と空間の芸術 : 落語と歌舞伎と二人喜劇

先月から6/11までの間に見たイベントについての簡単な覚え書き。

5/7。東京国際フォーラムで 「特選落語名人会」。出演は春風亭小朝林家たい平立川談春の三師。
開口一番・三遊亭歌ぶとさんの『道具屋』に続いて、いきなり小朝師匠の登場(普通どう考えても出番はトリだ)。この会はちょっと特別かもしれない、と予感。で、これまたいきなりの『浜野矩随(はまののりゆき)』。実在した江戸の名工を主人公とする講談がベースの大ネタだが、ここは軽妙に聞かせる。流石。そう言えば小朝師匠の古典を聞いたのはこれが初めてだ。
仲入を挟んでたい平師匠。『明烏』とまたもや大きな演目。吉原を舞台に商家の坊ちゃんが活躍、と来ればそれはもう師匠の持つ品と色気が最高に際立つ。野球ネタやドラえもんネタを挟みつつ、爆笑の中に爽やかさな後味を残す。
と、すでにお腹いっぱいのところでトリは一番若い談春師匠。「ジャンケンで負けた」、「イジメだ」、とボヤきながらも衣装は羽織袴と気合い十分。演目は『妾馬』の上(八五郎出世)。母親のキャラクターに若干の弱さを感じたものの、八五郎のガラの悪さとダメっぷりがなんとも魅力的。ハマり役だ。一見浮世離れして見える城の住人たちが八五郎のセリフに思わず涙を流すところでは、私たちも号泣。幕が降りる瞬間、談春師匠が客席に向かって拍手をする姿が見えた。ああ、今日は凄い会を見たんだな、と確信。

5/13。よみうりホールで「桂文珍独演会」。文珍師匠の会は一年ぶりくらい。演目は『マニュアル時代』と題した小噺、『天神山』と『七段目』。
とりわけ印象的だったのはこの日初めて聞いた『天神山』。内容は至ってシンプルでナンセンスだが、師匠の上品な語り口と、切ない狐の歌でのサゲが深い余韻となって心に響く。芝居台詞とお囃子を絶妙に織り交ぜながらの『七段目』は何度聞いても最高に楽しい。

5/23。歌舞伎座で「團菊祭五月大歌舞伎」昼の部。演目は『泥棒と若殿』、『勧進帳』、『与話情浮名横櫛(よはなさけうきなのよこぐし)』の二場(木更津海岸見染の場、源氏店の場)と『女伊達』。歌舞伎を見るのはこの歳にして初めてのこと。落語の簡素さや生々しさとは対極的な、仕掛けと約束事の巨大な塊。その細部に役者の個性が時折こぼれるようにして露になる様子が興味深かった。
名優揃いの豪華なプログラムの中でも、市川海老蔵氏のセクシーさと存在感は群を抜いていた。こりゃ多少の悪さはしょうがないな、と納得。

6/1。世田谷パブリックシアターで「びーめん生活スペシャル」。小松政夫イッセー尾形両氏の二人喜劇。
はっきり言って、小松の親分さんを生で見ることができるだけで涙が出るほど有り難いのだが、その内容は期待をはるかに上回る鮮烈さ。親分さんが尾形氏の作法に従って舞台の袖で観客の眼にさらされながらの衣装替えをすることにも驚いた。終止神経質そうな表情で下目使いのまま鬱々と狂気を発散する親分さんに対して、容赦なくツッコミを入れつつ(イッセー尾形のツッコミ!!)時たま意表をつく展開を持ち出して舞台を翻弄する尾形氏。ねじれた構図が強烈な可笑し味に満ちた空間を出現させる。そのシュールさは『みごろ!たべごろ!笑いごろ!』(1976-79)でさえ到達しなかった地点にあるのではないかと思われた。こ、これはぜひともまた見なくては。親分さん、どうぞお達者で。

6/11。イイノホールで「立川談春独演会」。ここは素晴らしく舞台の見やすいワンスロープのホール。しかも座席は中段の真ん中と絶好の位置。おかげで談春師匠の細かな表情をしっかりと見て取ることができた。
藤原・陣内カップルを『紺屋高尾』に例えたりしつつ、結婚にまつわる心理を毒舌に次ぐ毒舌で茶化して大いに笑わせた枕に続き始まったのは『厩火事』。上記の会では「もしかして女性を演じるのは苦手なのかな?」と思ったのだが、この日のおさきさんの江戸っ子の年増女ぶりは素晴らしかった。得意のマシンガントークが可笑し過ぎて涙。怠け癖があって口の悪い八五郎が思わぬ優しさを見せるところで盛り上がりは最高潮。いい話しになりかけて感涙したところでストンと落とす。この展開だと結局のところ八五郎の本心がどうなのかは謎のまま。粋だ。
仲入に続いて『らくだ』を火屋までたっぷりと。後半は駆け足となったが、丁目の半次の描写は実に凄まじく、それでいて魅力的だった。

2007年06月13日 10:00 | trackbacks (1) | comments (0)

日々の生活と雑記, 落語初心者のメモ : 鈴本演芸場

4/13。花緑まつりの幕が上がる前の鈴本演芸場。元浅草に引っ越してからまる2年が経とうとしているが、寄席を訪れるのはこれがはじめて。

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ステージも客席もぎゅぎゅっとコンパクト。親密な間合いが新鮮だ。なるほど、これが鮨詰めと言うやつか。

客席の傾斜はゆるく、前に客が居るのと居ないのとでは、眺望が天と地ほど違う。私たちは後半ずっと頭を横に傾けながら見ていたので、さすがに首が痛くなった。また、幸いこの日は何の問題も無かったが、最近の寄席では客のモラルの低下が問題視されているらしく、高座の最中に携帯電話が鳴るのはザラで、フラッシュが光ることさえ珍しくないようだ。もともと寄席や演芸場と言うものはゆるいシステムの中で客側の質と常識を頼りに運営されるだけに、こうした風潮は致命的になりかねない。

有名落語家の高座がテレビか大ホールでしか見られなくなる日もそう遠くないかもしれない。それまでに間に合えばぜひこうした落語や演芸の打てる小劇場を設計してみたいものだ。今は機会をつくってなるべく多く、この雰囲気を楽しんでおくことにしよう。

鈴本演芸場

2007年04月21日 10:00 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ, 身体と空間の芸術 : 中目黒系と人情噺

コーネリアスと花緑師匠。

4/5。CORNELIUS GROUP(小山田圭吾(Gt),あらきゆうこ(Dr&Fl),清水ひろたか(Gt&Bs),堀江博久(Key&Gt))のライブを見に渋谷AXへ。“SENSUOUS SYNCHRONIZED SHOW”のタイトルを与えられたステージは、4人の演奏とその背後一面の映像スクリーン、そしてフルカラーLEDを用いたライティングが見事にパッケージされたもの。カラフル。完璧。特に映像の素晴らしさは際立っていた。早くソフト化されないものか。
観客の年齢層はわりと高めで、まるで旧知の知り合いを見守るような、独特な暖かさのある落ち着いた雰囲気が心地良かった。かつてロリポップソニックだった人が、まさかこれほど強靭なオリジナリティを獲得し、『point』『sensuous』のような傑作を生み出すとは世の中分からないものだ。歳をとるのも悪くないな。

CORNELIUS


4/13。鈴本演芸場4月中席夜の部へ。この日の鈴本は開席百五十周年記念特別公演として、『花緑まつり』と銘打ったプログラムが組まれていた。台所鬼〆さん『金明竹』、林家二楽師匠の紙切り、林家彦いち師匠『みんな知っている』、柳亭市馬師匠『一目上り』、林家たい平師匠『あくび指南』、翁家勝丸さんの太神楽曲芸、橘家圓太郎師匠『馬の尾』、林家正蔵師匠(この時はまだ祝儀隠しはバレていなかった)『豆腐小僧』で仲入り、と言う贅沢さ。皆さん素晴らしかったが、個人的に一番シビれたのはたい平師匠。あざとい顔芸でもやらない限りあまり笑いどころの無い地味めな演目を、なんとも味わい深く、かつ上品に演じられていた。
最後はいよいよ柳家花緑師匠の『子別れ』。上・中・下を通しでたっぷりと。くすぐるような笑いを散りばめながらの情感のこもった人情噺に何度も涙。明らかにこの日の花緑師匠は以前曳舟で見た時とは次元の違う輝きを放っていた。仲入り後の時間を独り占めできたことも功を奏し、そこには完成された骨太な世界がかたち作られていた。
おそらく落語家・花緑師匠の魅力は“語り部”としての無二の資質にあるのではないか。演じる人の生き方そのものが反映されるのも落語なら、噺の持つ可能性を最大限に引き出すのもまた落語なのだろう。表現する行為の持つ様々な側面とその奥深さについて、思わず考えを巡らせた。

柳家花緑(Wikipedia)

2007年04月20日 16:00 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ, 身体と空間の芸術 : 落語と一人喜劇

1、2月はなぜか落語を見る機会が少なかったが、今月は3本。加えてイッセー尾形の一人喜劇。

3/9。立川志らく独演会を銀座ブロッサムへ見に行った。昭和の三大名人に挑戦と銘打った高座での演目は『心眼』、『お直し』と『双蝶々』。どれも陰惨な内容の噺をどれだけ陽気に演じられるか、というのがテーマ。
志らく師匠の落語を見るのはこれが初めて。若干くぐもった言葉使いと、時折突発的に時事ネタを交えたりしながらの軽妙な話芸に独特の味わいがある。その場では大いに笑いながらも、後にはしんみりと重たい気分が残された。この感じはペドロ・アルモドバルか、北野武の映画を見た後にちょっと似ている。機会があれば志らく師匠の創作落語もぜひ見てみたい。

立川志らく

3/13。柳家花緑・林家たい平二人会を曳舟文化センターへ見に行った。
たい平師匠の演目は『お見立て』。お大尽を上手く騙そうとする喜助どんの芝居振りがみるみるエスカレートする様子があまりに見事で、お腹が痛くなるほど爆笑。たい平師匠の落語を見るのは昨年11月以来2回目だが、モダンで品格ある話芸に改めて感銘を受けた。今度は独演会を見なくちゃ。
花緑師匠を見るのは初めて。『不動坊』は以前に桂文珍師匠で見たことのある演目。両者を比較しながら興味深く拝見した。まだ独自の世界観を持つには到っていない印象ではあったが、仕草、動作の表現の仕方など抜群の演劇的上手さには見るものを引き込む力がある。今後が楽しみ。

林家たい平
柳家花緑(Wikipedia)

3/15。赤坂レッドシアターの『イッセー尾形のとまらない生活 2007 in 赤坂』10日目へ。イッセー尾形氏の公演にはここ1、2年プレリザーブに申し込んではハズれっ放し。念願かなって小さな劇場で見ることのできたステージは、想像をはるかに上回る洗練性と、アヴァンギャルドさを兼ね備えたものだった。この日最初に演じたのはムード歌謡グループ・東京ナイツの老齢のバンマス。大道具無し、BGM無し、照明効果無しの舞台にキャラクターが克明な姿を持って立ち表れ、その瞬間ステージは錦糸町のホテルのラウンジとなる。以降、数本の演目の間に幕は無く、尾形氏が舞台の脇で観客の眼にさらされながら着替えとメイクを行うことにも驚いた。なんと凄まじい喜劇か。

イッセー尾形

3/17。春風亭昇太・立川談春二人会を町田市民ホールへ見に行った。
初めて見た談春師匠は『大工調べ(上)』。高座の前にマッサージを受けて力が抜けたので、と与太郎の登場する噺を選んだそうだがどうして、凶悪で小賢い与太郎は実に個性的。長屋の大家との交渉でブチ切れた棟梁の啖呵はまさしくマシンガンのスピードと重量感。以前に小三治師匠で見たものとはまるで別物の『大工調べ』に談春落語の片鱗を見せていただいた。ぜひ独演会を見たいが、全然チケットが取れないんだよなあ。。。
昇太師匠を見るのは2度目。演目は『愛宕山』。小判欲しさに荒唐無稽な大暴れを見せる太鼓持ちのキャラクターはまさに師匠のハマり役。

春風亭昇太(Wikipedia)
立川談春

2007年03月31日 01:00 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ, 身体と空間の芸術 : 落語とダンスと映画と音楽

怒濤の年末年始も2月に入ってようやく終息を迎えつつある。11月時点で4つあった仕事は、ひとつが完成し、ふたつが途中で無くなり、またひとつ増えた。現在は店舗と住宅の現場が同時進行中。

以下はそんな状況下で無理矢理時間をつくって見に行ったイベントなどの簡単な覚え書き。

12/12。柳家小三治独演会を銀座ブロッサムへ見に行った。教育問題を枕に会場を大いに湧かせた後の演目は『大工調べ』。与太郎の間抜けぶりが最高だ。家主との口論の場面で終了。
中入りを挟んで『小言念仏』。最初の枕がかなり長かったため、こちらは手短に。独特の間合いで十二分に笑わせていただいたが、もう少し聞きたかった気も。また別の機会を楽しみにしよう。

柳家小三治(Wikipedia)

12/16。勅使川原三郎『ガラスの牙』を新国立劇場へ見に行った。ステージは大量のガラスの破片を敷き詰めたふたつのエリアと、その周辺で展開される。以前に見た『KAZAHANA』(2004)や『LUMINOUS』(2001)に比べると、セットもライティングもつくり込み自体はシンプルだが、ガラスの反射光の使い方が実に巧み。空間全体の表情が繊細に、刻々と変化する光景を目の当たりにして思わず息を呑む。
ダンスのテンションの高さはさらに強烈だ。特に勅使川原氏のソロパートは凄まじく、空恐ろしいほど。他のパートでのマイクを通した囁き声や叫び声、ひょっとこ踊りのようなユーモラスな動きも印象に残った。

karas / saburo teshigawara

1/3。TOHOシネマズ錦糸町で『鉄コン筋クリート』を見た。果てしなく重層する背景画によって作り上げられた世界と、その中を自在に飛び回り、加速減速するキャラクターたち。これは2Dアニメの限界を突破した21世紀の絵巻物語だ。
声優陣も、Plaidによる音楽も素晴らしい。演出的には終盤クロの精神世界を描くシーンが個人的に今ひとつ感情移入し辛かったが、他のまとめあげ方は見事。原作の感動を削ぐこと無く、質の高い映像作品となっている。
しかし最後の最後に流れるアジカンは最低。明らかに蛇足で、映画を汚している。

鉄コン筋クリート

1/8。スターパインズカフェで近藤等則 ULTRA SESSIONS 2007 VOL.1の3日目を見た。正確無比な湊雅史のドラム、自由な展開を生み出す高田宗紀のターンテーブル、そしてメンバーを煽り、轟音を繰り出すレックのベース。ジャンル分け不能なグルーブを漂い、時に金切り声を上げるエレクトリックトランペット。フロアも終止大変な盛り上がり。
この日の近藤氏は心底楽しそうだった。20年ほど前に何度かみたIMAのライブではあり得なかったことだ。彼が日本のオーディエンスに失望して渡欧し、メジャーレーベルでは作品を発表しなくなってからずいぶん経った。おそらくその間に時代は変わったのだ。
年始早々凄いものを見た。幸先いいぞ。

近藤等則(Wikipedia)

2007年02月09日 03:00 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ, 身体と空間の芸術 : ダンスと落語とポルトガル音楽

ここのところlove the lifeとしてはかつてない忙しさ。クライアントの異なるちいさな仕事がいくつも同時進行していると、常に頭を使いっ放しの状態となり、作業を外注することが難しい。まさに孤軍奮闘(2人だけど)。一杯いっぱいとはこういうことか、などと思ったりもするが、今のところどの仕事もそこそこ楽しくやらせてもらっているので気分は良い。来週あたりにはそうも言ってられなくなるだろうけど。

さて、そんな状況下でも以前からチケットを取っておいたホールイベントにだけは足を運んでいる。以下はその内容についての覚え書き。

11/26。フィリップ・ドゥクフレ『SOLO』を天王洲・銀河劇場へ見に行った。
フィリップ・ドゥクフレ氏は一般的にはアルベールヒル冬期オリンピック開閉幕式の演出を手がけたことでよく知られるフランスの振付・演出家。氏のステージを実際に見るのはこれがはじめて。
フィリップ・ドゥクフレ氏と言えば奇抜なコスチュームとアクロバティックな演出、といったイメージが強いが、『SOLO』に登場するのはほとんど本人のみ。ダンスとそのライブ映像にビデオエフェクトを組み合わせての演出は、極めてシンプルながらまるで万華鏡を覗くかのように多彩なものだった。途中展開されるのは自身の生い立ちや家族を写真で紹介するパートと、それにまつわるエピソードから着想を得たパート、氏の身体表現のルーツである新体操の爆笑もののパロディや、尊敬するバスビー・バークレー(ミュージカル映画監督)へのオマージュなど。四十代も半ばを迎えたダンサーが、文字通り全身全霊をかけた貴重なパフォーマンスは、ダンスを見たと言うよりもエッセイか私小説を読み終えたかのような、不思議な印象を残した。

Cie DCA (Philippe Decoufle)

11/29。にっかん飛切落語会第308夜をイイノホールへ見に行った。演目は三笑亭亀次『道灌』、林家たい平『二番煎じ』、桂歌丸『井戸の茶碗』、桂快治『笠碁』、立川志の輔『Dear Family』。
たい平師匠を見るのは初めてだったが、正直、あんなに品格のある落語家だとは全く想像していなかった。今後はしっかりチェックさせていただかねば。歌丸師匠の演目は身分の違う2人の武士が正直者の屑屋を介して奇妙な縁で結ばれる人情話。美しい江戸弁が冴え渡り、可笑しくも心温まる。快治さんの芸は静かだが洗練されている。この人は大化けするんじゃないか。トリの志の輔師匠(やはり見るのは初めて)は現代ものの創作落語。セリフそのものは核家族にいかにもよくありそうなものだが、絶妙に練り込まれたシュールな展開と師匠の素晴らしく良く通る声が、狂気と爆笑の波動となって観客席を包み込む。凄いものを見た。

12/7。マドレデウスのコンサートをオーチャードホールへ見に行った。ポルトガルの5人ユニット。2本のクラシックギターとアコースティックベースとシンセサイザー、そしてテレーザ・サルゲイロの神懸かり的なヴォーカル。透きとおるようなハイトーンヴォイスをファド(ポルトガルの歌謡)特有のビブラートが揺らす。これ以上何も言えない。号泣。

Madredeus
MADREDEUS unofficial website

2006年12月16日 03:00 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ : 談志ひとり会 - 秋冬三夜・2006/11/13

11/13。『談志ひとり会 - 秋冬三夜』の第二夜を見た。国立劇場演芸場はこぢんまりとしたいい会場だった。しかしアプローチに華やかさのかけらもないのが勿体ない。

この日の立川談志師匠は声の調子がかなり悪いようだった。この三年くらいの間に何度か見た高座の中でも、これほど辛そうな状態を見るのは初めてのこと。ご本人曰く「自殺しないので精一杯」。それでも『つるつる』で演じた太鼓持ちの、軽薄でしかも奥行きのある人物像は素晴らしく味わい深いものだった。こうした卓越した表現としみじみとした感覚は、やはり近年の談志師匠ならではのものだ。
仲入りをはさんでの『青龍刀権次』は講談がベース。ある事件を目撃してしまったばかりに牢屋と娑婆を行き来するはめになる運の悪いちんぴらのエピソードが、江戸末期から明治初期の時代の移り変わりを背景に、淡々と語られるのが印象的だった。

全体に談志師匠の芸を見る上では十分な内容ではあったものの、過去に見た高座のような研ぎ澄まされた空気感はそこには無かったと言わざるを得ない。聴衆を前にして満足な芸を見せることができないことの辛さ、もどかしさは相当なものだと思う。この至芸を見ることができるチャンスはもう数少ないかもしれない。

公演のパンフレットに載せられた談志師匠の愚痴まじりのコメントに面白いくだりがあった。曰く、立川流の落語はその内容こそ現代的・個性的にアレンジしてはいるものの、発声については伝統のトーンが残されている、とのこと。トーンの違った落語はもはや落語と呼ぶには怪しいが、確実に落語は変わり、立川流は大衆から浮いてしまった、とこぼしている。
芸は世につれ。愚痴を額面通りに受け取るつもりはないが、一見アヴァンギャルドな立川流にこそ伝統が色濃く残っているのだとすれば、落語を見る側としても考えさせられるものがある。

何を持って「伝統」とするか、と言う問題は、デザインの現状においても重要なんじゃないか。

立川談志
立川談志(Wikipedia)
立川談志独演会・2004/5/28
立川談志独演会・2005/1/22
談志VS文珍ふたり会

2006年11月17日 18:00 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ : 桂三枝独演会 4/23/2006

4/23。よみうりホールへ桂三枝独演会を見に行った。構成と演目(全て三枝師匠の創作落語)は下記の通り。

桂三若『待合せ』
桂三枝『妻の旅行』
桂三歩『国技・インターナショナル大相撲』
桂三枝『宿題』
中入
桂三枝『涙をこらえてカラオケを』

三枝師匠の近作の凄さは「いかにも面白そうなこと」を全く喋らないところにあるように思う。登場人物の会話はほとんど関西人の日常のなかに普通にありそうなものばかりだ。ところが、三枝師匠の手にかかると、その一見なんでもなさそうなやり取りの中から次々と爆発的な可笑しさが紡ぎ出される。
いささか短絡的に過ぎるかもしれないが、おそらくこの不思議な魅力に満ちた独特の話芸は、師匠が長年素人相手のテレビやラジオ番組で活躍する中で培った鋭い人間観察眼があってこそ成り立つものではないかと思う。この日の演目の中でも特に『妻の旅行』と『宿題』は、未来の古典と呼ぶにふさわしい風格を感じさせるものだった。

なんでもない日常の中からさりげなく可笑しさを取り出してみせる、という創作行為には、落語のみならずデザインの本質にも通ずる部分があるように思えてならない。さて、果たして私たちは未来の古典とされるような作品を生み出し得ているだろうか。

カフェテリアのマスターと心配性の男性客との会話で展開する『待合せ』は三若さんの芸風にマッチした軽妙な演目。三歩さんの『国技・インターナショナル大相撲』はほとんど駄洒落ばかりで残念ながら今ひとつ。ところでお囃子の代わりに関西ローカルTV番組のジングルみたいなBGMが流れるのは三枝師匠の会らしい演出かもしれないが、慣れるのはちょっと難しいなあ(笑)。

席亭桂三枝のいらっしゃーい亭

2006年04月25日 04:00 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ : 談志VS文珍ふたり会

談志VS文珍ふたり会

9/10。東京芸術劇場へ『東西落語名人会/立川談志・桂文珍』を見に行った。老齢に入った東の名人と、今や誰もが突出した実力を認める西の天才との夢の競演。

立川志ら乃さんの『真田小僧』に続いて先ずは文珍師匠が登場。タイムリーな選挙の話題(東京芸術劇場のある場所は小池百合子氏が出馬した東京10区にあたる)を枕の中心に据えて、「談志師匠はまだ見えておりません。ま、いつものことなんですが。」と楽屋ネタも交えつつひとしきり盛り上げた後、始まった演目は関西落語のスタンダード『舟弁慶』。これがもう素晴らしかったのなんの。文珍師匠一流の美しくもファンキーな大阪ことば、キレの良い展開、チャーミングな仕草などなど、どこをとってもまさに絶品。今までに何度か見た師匠の落語の中でも最高の高座のひとつだった。

いきなり文珍落語の真骨頂をこれでもかと見せつけられた後、中入りを挟んで文珍師匠が再度登場。枕の途中で談志師匠がまだ楽屋に現れないことをバラしたところで客席の出入口から大きな声がかかった。これが談志師匠。いかにもらしい登場の仕方に会場は大ウケ。
文珍師匠の演目は創作落語『老楽風呂』。メインディッシュ後のデザートという感じの軽めの演目。以前に一度聞いた時よりもスーパー銭湯に登場する老人のキャラクターが強力に描かれ、テンポの良い展開。爽快な印象とともに高座を後にする文珍師匠。

で、いよいよ談志師匠の登場。「文珍があれだけ笑わせたんだから」というわけでいつもの小咄はそこそこに落語と狂気にまつわる持論をはなしはじめた。そして突如はじまった演目は『居残り左平次』。遊郭の勘定を煙に巻いたあげく大金をせしめて去ってゆく主人公・左平次の強烈なキャラクターはまさしく“狂気”をテーマにするにはもってこいだ。
ところがなんと談志師匠は途中うっかりはなしを抜かし、展開の順序を入れ替えて無理矢理通してしまう。図らずも(もしかするとわざとだったのか?)そのことがこの演目の持つ不条理さとナンセンスさを増幅していたように思われてならない。

なんとも言えない新鮮な感覚が残された後、文珍師匠が三たび登場し、談志師匠とふたり並んでのトーク。談志師匠は先ほどの枕での話題をさらに展開させ、「どこまでもドライで、全ての感情表現の裏にまた別の感情が存在するような落語を演りたい。できるような気がする。」と語る。「ご立派な病気だと思います」と笑顔で受け流す文珍師匠を談志師匠が「妖怪のようだ」と評していたのが印象的だった。

ただの失敗か、名人ならではのひらめきか。おそらくこの日の談志師匠の高座の評価は人によって真二つに分かれるだろう。少なくとも私たちは貴重でスリリングな体験ができたことを幸運だと思った。文珍師匠の至芸がますます研ぎすまされてゆくことも楽しみなら、枯れてなお新しい境地を目指す談志師匠の落語も一層楽しみだ。

立川談志
桂文珍 (geinin.jp)

2005年09月15日 05:59 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ : 桂枝雀七回忌追善落語会

3/28。歌舞伎座に『桂枝雀七回忌追善落語会』を見に行った。

南光師匠を中央に据えての枝雀一門による口上の後、先ずは雀三郎師匠の『時うどん』。シンプルなことこの上ない噺の流れにねちっこいギャグがこれでもかとばかりに投入されたサービス満点の熱演。おかげですでに落語満腹中枢が刺激されつつあった観客の状態を察してか、続いて登場したざこば師匠は予定されていた演目をやめて家庭生活への愚痴と兄弟子である枝雀師匠への愚痴をたっぷり喋って下さった。これがもう異常に可笑しいのだ。ずーっと怒り口調で喋り続けて、あれだけ観客を喜ばせ、爆笑させられる人は他に居ないのではあるまいか。なんとも凄い芸だ。

続いてはいよいよ米朝師匠(枝雀師匠の師匠)の登場。パンフには“お楽しみ”と書かれていたので、小咄でさらりと切り上げるのかな?と思っていたのだが、ご本人曰く、体調によって何が出来るか(そもそも出演できるのかどうか)分からないご高齢のためそういう書き方にしてあるそうで、「何も楽しいことなんかあらしまへん」とのこと(もちろんここは笑うところだ)。そして嬉しいことに『鹿政談』を聞かせて下さった。さすがに途中何度か噺の詰まるところがあって、はらはらしたりもしたが、往年の美しい話芸を十分に彷彿させる一席だった。生で見ることが出来て本当に良かった。

中入り後、舞台上のスクリーンに枝雀師匠が登場。『枝雀寄席』(朝日'79-99)オープニングでのトーク。一気に懐かしさがこみ上げた。続いて南光師匠を司会に森末慎二氏、司葉子氏、早坂暁氏をゲストに迎えてのトーク。そしてついに、この日実は一番楽しみにしていた柳家小三治師匠が登場。とつとつとした、いや、余白の多い、と言うべきか、独特の口調で遠方のライバルであり同士であった枝雀師匠の思い出を丁寧に噛み締めるように語るまくら。もういきなり感動で涙目の私たち。するとしんみりした空気を振り払うように、小三治師匠は『一眼国』をはなし始めた。やはりトーンを抑えた言葉や仕草、表情。そこから観るものの想像を促すわけだが、ゆったりとした間合いの取り方が何しろ絶妙。余白もその使い方次第で噺に遊びを与えるものにもなれば、緊張感を与えるものにもなることを思い知らされた。乗せられ易い私たちなんかは草原の場面で本物の風が吹いたような気さえしてしまったくらい。ヘンなたとえだが、まるで俳句のような落語。粋だ。

さらに続いて舞台上にスクリーンが再登場。枝雀師匠のビデオ落語が始まった。事前に公表されていなかった演目がテロップで表示された途端、客席のあちこちから「代書屋や」「代書屋や!」とささやき声。それほど『代書屋』は枝雀師匠の持ちネタとして有名なものだったのだろう。この日の『代書屋』は枝雀師匠オリジナルの「ポンでーす」のバージョンではなく、「ガタロでーす」の一般的なショートバージョン。噺の流れが一般的な分、枝雀話芸の独自性が余計に際立つ。なにしろ登場人物の演じ分けのコントラストが凄まじい。ツッコミ役である代書屋を演じる師匠と、ボケ役である客を演じる師匠とのテンションの違いは、まるで別人格じゃないかと思われるほど。おかげで見てる方は始終お腹がよじれるほど笑い転げていられるが、なるほど演る方にとっては神経をすり減らす芸であるに違いない、と思ったのもまた事実だった。
歌舞伎座でのビデオ落語の満足感は期待をはるかに上回るものだった。この感じは家庭のテレビやDVDで落語を観るのとは比べようが無い。観衆の中に身を置いて、笑いの波を肌で感じながら見るスクリーンに居たのは、あの世から舞い戻った枝雀師匠その人であったように思えてならない。その思いはおそらく舞台の袖にいた人たちにとっても同じだったのだろう。上映後。もう一度舞台上に並んで最後の挨拶を勤める枝雀一門のどの目にも涙が光っていた。偉大な師匠を持つことはかくも幸せなことであり、また重荷でもあるのだろう。

『桂枝雀七回忌追善落語会』はこの歌舞伎座公演を皮切りに名古屋、大阪、京都などでも開催される予定。

桂枝雀七回忌追善落語会(歌舞伎座)

2005年04月02日 14:59 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ : 立川談志独演会・2005/1/22

1/22。北とぴあ・さくらホールで『立川談志独演会』を見た。

時事ネタ満載の小咄や雑談がこのまま終演まで行っちゃうんじゃないかというくらいに延々続いたかと思うといきなり演目に突入、というのが談志師匠の高座のスタイル。さらには演目の途中で急に雑談の続きに戻ったりするんだけど、最終的にはひとつながりのパフォーマンスとして実に奇麗にまとまったように感じさせられてしまう。前にも書いたが、この人の芸とこの人が日々考えたり感じたりしていることとの間には全く境目が無さそうだ。

で、演目は『木乃伊とり』(みいらとり)と『死神』。『木乃伊とり』ではハチャメチャな展開に爆笑の連続。一方、『死神』ではキレ味抜群にアレンジされたなんとも粋なエンディングに痺れた。どちらも談志師匠の抜群の演技力を強力に印象づける演目。特に死神の表情は本当に怖かった。。。

談志師匠はこの日の雑談の中で、現代の事情とは随分違った古典落語の時代背景について触れ、『芸をやる人間には古典と現代とのあいだを繋ぐ覚悟がなくちゃだめだ』と言ったことを話していた(実際の言い回しとは少々違うが)。重たい言葉だと思う。今この時代にデザインを手がけている私たちにも、おそらくそれだけの覚悟が必要なのだ。

立川談志
立川談志独演会・2004/05/28

2005年01月25日 10:33 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ : 笑福亭鶴瓶・第三回青山寄席

もう一ヶ月も前の話しだけど忘れないうちに書いておく。11/6に青山円形劇場で第三回青山寄席・笑福亭鶴瓶落語会を見て来た。鶴瓶師匠の演目は「へっつい幽霊」と「青木先生」のふたつ。以下、落語初心者の書くことなので、的外れには温かいご指導をゼヒ。

「へっつい幽霊」はへっつい(かまど)に住み着いた博打好きの幽霊をめぐる騒動を描いた上方の古典落語。登場人物は見事にダメ野郎ばかりなんだけど、鶴瓶師匠の噺にかかるとその全員がなんとも愛らしいキャラクターとして演じ分けられるのが印象的。
「青木先生」は鶴瓶師匠の実体験が下敷きの創作落語(こういうのを師匠は私落語(わたくしらくご)と言う)。高校時代、授業中にクラスぐるみでさんざんからかった老教師・青木先生のエピソードが若干の脚色とともに語られる。まずはスルガ少年を中心に手を替え品を替えて繰り返されるシュールかつハイレベルな悪ふざけの数々に驚くとともに抱腹絶倒(こんな男子校の先生にだけはなりたくないと思った)。最後は少々いびつなかたちの師弟愛に曲がりなりにもほろりとさせられそうになったところで急転、青木先生の絶叫とともにおしまい。師匠の演技力はひたすら青木先生の物真似のみに注がれて、噺は極めてシンプルに展開する。高座は異様な迫力に満たされ、観客席は笑いの渦とともに一言一句聞き漏らすまいとする緊張感に包まれた。この感覚は以前見た談志師匠とも文珍師匠とも全く別物だ。

この日は鶴瓶師匠の他に桂昇蝶さんと笑福亭達瓶さんが登場。前説で二人のことを面白可笑しく丁寧に紹介する鶴瓶師匠は実に親分肌だなあ、と感心。そして昇蝶さんの噺を見ることができたのは思いがけず大きな収穫だった。
この人は故・二代目桂春蝶師匠の筆頭弟子。演目は師匠の傑作「昭和任侠伝」。前半、任侠映画のカメラワークを事細かに説明する部分があって、これが完全に落語になっているのが素晴らしい。後半は高倉健に憧れる間抜けな八百屋の倅の噺。昇蝶さんの軽妙な語り口や表情は泣けてくるくらい在りし日の春蝶師匠にそっくり。しかしそのディテールには彼だけが持つ乾いた感覚と鋭いエッジがはっきりと存在する。凄いぞ。これは春蝶落語の現代版だ。しかも最高に面白い。
ところが昇蝶さんには引きこもりの気があるらしく、高座で姿を見ることのできる機会はほとんど無いらしい。なんとも落語のようなはなしだ。ああ、しかしなんと勿体ない!

笑福亭鶴瓶

2004年12月03日 19:40 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ : 立川談志独演会・2004/5/28

5/28。例によって前日からずーっと仕事。少し仮眠して夕方に目を覚まし、有楽町・東京国際フォーラムへ。立川談志独演会『知らねえよそんな事ぁ』を見る。談志師匠を見るのも初めてなら落語を生で見るのも初めてのこと。「落語は100人や200人を前にやるもんだけど、不本意ながらこんなところでやっております」から始まって、延々と世間話(放送やCD化は完全に不可能な内容)やジョークが続いたあげくに始まった演目は『疝気の蟲』。ハチャメチャなアドリブが冴えまくり。仕草や表情が可笑しいのなんの。
15分休憩を挟んで、またしばらく世間話が続いたところで最近何演ったっけ?と、お弟子さんに根多帳を持ってこさせて、じゃ、これ演ろうか、と言う事で『紺屋高尾』。前のとは打って変わった演目でホロリ。普通この演目は瓶のぞきのくだりまで続くんだけど、この日の談志師匠は高尾が紺屋町にやって来た辺りで終わってしまう。で、作り話だと思うんだけどね、と、余韻を残しつつおしまい。これにはシビれた。粋だ。
幕が下りたと思ったら、これを忘れてた、と『落語ちゃんちゃかちゃん』(落語の名場面や名台詞を抜き出してリミックスした小演目)。キレ味抜群で実に楽しい。最後に「いい風を送って下さった皆さんに感謝致します」と、深々とひれ伏して終演。

なにしろ私たちは落語初心者(にすら達していない)なので、感想を書くのもおこがましい気はするんだけど、世間話と演目と下らないジョークとが渾然一体となった(演目の途中にさっきまでの世間話の続きがまた始まったりするのだ)談志師匠の高座を目にして、この芸はこの人の生き方そのものだな、と強く感じさせられた。人生を楽しみ、しがらみのなかでも自由な精神を失わずに居られる人じゃないと、同じ事をやったところで可笑しくもなんともないだろう。

私たちも“生き方そのもの”と言われるような作品を生み出したい。そう心底思った。

2004年05月31日 04:24 | trackbacks (0) | comments (0)
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