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落語初心者のメモ, 身体と空間の芸術 : 落語と歌舞伎と二人喜劇

先月から6/11までの間に見たイベントについての簡単な覚え書き。

5/7。東京国際フォーラムで 「特選落語名人会」。出演は春風亭小朝林家たい平立川談春の三師。
開口一番・三遊亭歌ぶとさんの『道具屋』に続いて、いきなり小朝師匠の登場(普通どう考えても出番はトリだ)。この会はちょっと特別かもしれない、と予感。で、これまたいきなりの『浜野矩随(はまののりゆき)』。実在した江戸の名工を主人公とする講談がベースの大ネタだが、ここは軽妙に聞かせる。流石。そう言えば小朝師匠の古典を聞いたのはこれが初めてだ。
仲入を挟んでたい平師匠。『明烏』とまたもや大きな演目。吉原を舞台に商家の坊ちゃんが活躍、と来ればそれはもう師匠の持つ品と色気が最高に際立つ。野球ネタやドラえもんネタを挟みつつ、爆笑の中に爽やかさな後味を残す。
と、すでにお腹いっぱいのところでトリは一番若い談春師匠。「ジャンケンで負けた」、「イジメだ」、とボヤきながらも衣装は羽織袴と気合い十分。演目は『妾馬』の上(八五郎出世)。母親のキャラクターに若干の弱さを感じたものの、八五郎のガラの悪さとダメっぷりがなんとも魅力的。ハマり役だ。一見浮世離れして見える城の住人たちが八五郎のセリフに思わず涙を流すところでは、私たちも号泣。幕が降りる瞬間、談春師匠が客席に向かって拍手をする姿が見えた。ああ、今日は凄い会を見たんだな、と確信。

5/13。よみうりホールで「桂文珍独演会」。文珍師匠の会は一年ぶりくらい。演目は『マニュアル時代』と題した小噺、『天神山』と『七段目』。
とりわけ印象的だったのはこの日初めて聞いた『天神山』。内容は至ってシンプルでナンセンスだが、師匠の上品な語り口と、切ない狐の歌でのサゲが深い余韻となって心に響く。芝居台詞とお囃子を絶妙に織り交ぜながらの『七段目』は何度聞いても最高に楽しい。

5/23。歌舞伎座で「團菊祭五月大歌舞伎」昼の部。演目は『泥棒と若殿』、『勧進帳』、『与話情浮名横櫛(よはなさけうきなのよこぐし)』の二場(木更津海岸見染の場、源氏店の場)と『女伊達』。歌舞伎を見るのはこの歳にして初めてのこと。落語の簡素さや生々しさとは対極的な、仕掛けと約束事の巨大な塊。その細部に役者の個性が時折こぼれるようにして露になる様子が興味深かった。
名優揃いの豪華なプログラムの中でも、市川海老蔵氏のセクシーさと存在感は群を抜いていた。こりゃ多少の悪さはしょうがないな、と納得。

6/1。世田谷パブリックシアターで「びーめん生活スペシャル」。小松政夫イッセー尾形両氏の二人喜劇。
はっきり言って、小松の親分さんを生で見ることができるだけで涙が出るほど有り難いのだが、その内容は期待をはるかに上回る鮮烈さ。親分さんが尾形氏の作法に従って舞台の袖で観客の眼にさらされながらの衣装替えをすることにも驚いた。終止神経質そうな表情で下目使いのまま鬱々と狂気を発散する親分さんに対して、容赦なくツッコミを入れつつ(イッセー尾形のツッコミ!!)時たま意表をつく展開を持ち出して舞台を翻弄する尾形氏。ねじれた構図が強烈な可笑し味に満ちた空間を出現させる。そのシュールさは『みごろ!たべごろ!笑いごろ!』(1976-79)でさえ到達しなかった地点にあるのではないかと思われた。こ、これはぜひともまた見なくては。親分さん、どうぞお達者で。

6/11。イイノホールで「立川談春独演会」。ここは素晴らしく舞台の見やすいワンスロープのホール。しかも座席は中段の真ん中と絶好の位置。おかげで談春師匠の細かな表情をしっかりと見て取ることができた。
藤原・陣内カップルを『紺屋高尾』に例えたりしつつ、結婚にまつわる心理を毒舌に次ぐ毒舌で茶化して大いに笑わせた枕に続き始まったのは『厩火事』。上記の会では「もしかして女性を演じるのは苦手なのかな?」と思ったのだが、この日のおさきさんの江戸っ子の年増女ぶりは素晴らしかった。得意のマシンガントークが可笑し過ぎて涙。怠け癖があって口の悪い八五郎が思わぬ優しさを見せるところで盛り上がりは最高潮。いい話しになりかけて感涙したところでストンと落とす。この展開だと結局のところ八五郎の本心がどうなのかは謎のまま。粋だ。
仲入に続いて『らくだ』を火屋までたっぷりと。後半は駆け足となったが、丁目の半次の描写は実に凄まじく、それでいて魅力的だった。

2007年06月13日 10:00 | trackbacks (1) | comments (0)
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