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落語初心者のメモ : 笑福亭鶴瓶・第三回青山寄席

もう一ヶ月も前の話しだけど忘れないうちに書いておく。11/6に青山円形劇場で第三回青山寄席・笑福亭鶴瓶落語会を見て来た。鶴瓶師匠の演目は「へっつい幽霊」と「青木先生」のふたつ。以下、落語初心者の書くことなので、的外れには温かいご指導をゼヒ。

「へっつい幽霊」はへっつい(かまど)に住み着いた博打好きの幽霊をめぐる騒動を描いた上方の古典落語。登場人物は見事にダメ野郎ばかりなんだけど、鶴瓶師匠の噺にかかるとその全員がなんとも愛らしいキャラクターとして演じ分けられるのが印象的。
「青木先生」は鶴瓶師匠の実体験が下敷きの創作落語(こういうのを師匠は私落語(わたくしらくご)と言う)。高校時代、授業中にクラスぐるみでさんざんからかった老教師・青木先生のエピソードが若干の脚色とともに語られる。まずはスルガ少年を中心に手を替え品を替えて繰り返されるシュールかつハイレベルな悪ふざけの数々に驚くとともに抱腹絶倒(こんな男子校の先生にだけはなりたくないと思った)。最後は少々いびつなかたちの師弟愛に曲がりなりにもほろりとさせられそうになったところで急転、青木先生の絶叫とともにおしまい。師匠の演技力はひたすら青木先生の物真似のみに注がれて、噺は極めてシンプルに展開する。高座は異様な迫力に満たされ、観客席は笑いの渦とともに一言一句聞き漏らすまいとする緊張感に包まれた。この感覚は以前見た談志師匠とも文珍師匠とも全く別物だ。

この日は鶴瓶師匠の他に桂昇蝶さんと笑福亭達瓶さんが登場。前説で二人のことを面白可笑しく丁寧に紹介する鶴瓶師匠は実に親分肌だなあ、と感心。そして昇蝶さんの噺を見ることができたのは思いがけず大きな収穫だった。
この人は故・二代目桂春蝶師匠の筆頭弟子。演目は師匠の傑作「昭和任侠伝」。前半、任侠映画のカメラワークを事細かに説明する部分があって、これが完全に落語になっているのが素晴らしい。後半は高倉健に憧れる間抜けな八百屋の倅の噺。昇蝶さんの軽妙な語り口や表情は泣けてくるくらい在りし日の春蝶師匠にそっくり。しかしそのディテールには彼だけが持つ乾いた感覚と鋭いエッジがはっきりと存在する。凄いぞ。これは春蝶落語の現代版だ。しかも最高に面白い。
ところが昇蝶さんには引きこもりの気があるらしく、高座で姿を見ることのできる機会はほとんど無いらしい。なんとも落語のようなはなしだ。ああ、しかしなんと勿体ない!

笑福亭鶴瓶

2004年12月03日 19:40 | trackbacks (0) | comments (0)
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