
love the lifeの最新作『阿佐谷銘茶楽山新店』の完成写真をアップしました。worksからご覧下さい。フォトグラファーは佐藤振一さん。

『阿佐谷銘茶楽山』は日本茶と海苔の製造販売を長年手掛け、JR阿佐ヶ谷駅にほど近い低層商業ビルの一角に店舗を構えていました。今回私たちが手掛けたのは、同駅北口そばのちいさな商店街沿いにある店舗付き住宅に計画された『新店』の内外装デザインです。近隣には煎餅店、米穀店、和菓子の有名店『うさぎや』など古くからの生活に密着した店舗が多く、新店の場所でも過去に精肉店、美容院、電気工事店などが営まれていました。築後50年以上を経た木造2階の建物はもともと長屋の一部で、左右の壁には隣接部を切断して土壁とトタン板で塞いだ様子が見て取れます。
2月半ば、新店の責任者である『阿佐谷銘茶楽山』二代目・古川貴則さんに案内されて訪れた26平米ほどの空間の印象は、私たちが2000年からの5年間を過ごした大田区のアトリエを彷彿させました。やはり商店街の店舗付き住宅であったあの場所は、かつて日本茶店として使われていたことがあると当時近所の方から聞きかじった話が思い出されました。目の前の現実的な要件と、不思議に重なる個人的な記憶を整理しながら、私たちは少しずつデザインを進めてゆきました。
駅からの人の流れを自然に受け止めるために、ここでは敢えて不整形な平面プランが採用されました。エントランスの木製サッシは道路に対して斜めに配置され、そのラインにブーメラン型のカウンターショーケースが呼応します。区画左右の内装造作は道路側から奥へとゆくに連れて間口を狭めるよう構成されています。エントランスゲート前面での造作の厚みはほぼゼロとなり、最大限に開放的な店構えが実現されます。その分、道路側の商品棚は幅の狭いものとなりますが、もとより奥行きの小さな商品の多い日本茶、海苔販売店においてはさほど問題ではありません。むしろ商品ディスプレイに多様性をもたらし、訪れる人の視線を店内奥へと自然に導く効果を生む合理的なプランニングであると言えます。
天井面には30cm余りの段差が設けられています。カウンターショーケースと給茶レジカウンターの連なる区画右側の造作は栓(セン)柾目の練り付けで仕上げ、天井レベルはエントランスの引戸の高さに合わせて低く抑えました。一方、主要な客動線である区画左側には2.6mの天井レベルを確保し、全面をバナナ繊維壁紙張りとしました。素材の異なる左右のエリアが間接照明を介して上下に重なり、平面を支配する斜めのラインと相まって、簡潔な折り紙を思わせる空間が立ち現れます。商品棚手前、バックヤード間仕切りの角、商品棚奥にはそれぞれ直径や長さの違うステンレスパイプが高低差をもって配置され、店内に破調のリズムを与えます。客動線の突き当たりに設けられたタペストリーミラー(サンドブラスト+フッ酸処理によって表面に均一な曇りを施された鏡)は、店内の様子を掛け軸状に切り取られた淡色の移ろいへと変換します。
カウンターショーケース内側のバックカウンターと吊戸棚の間に残った横長の壁は、ゆるやかな円弧で二分されており、各面に堀切健治氏の手で表情の異なる左官仕上げが施されています。そこには『阿佐谷銘茶楽山』オリジナルの日本茶を産する静岡の地から望む富士の裾野の光景が暗示されています。
施工担当はイカハタの清原さん、竹内さんと武田さん。準備期間の少ない中で質の高い施工を手掛けていただけたことを心より感謝します。ライティングデザインに協力して下さったのはmuse-Dの八木さん。皆様お疲れさまでした。そして、様々なデザイン上の試みを喜んで受け入れ、スケジュールの遅れを飲み込んで下さったクライアントの古川さんに敬意と感謝を表します。この店を起点に、新しい時代に通用する「町のお茶屋」のスタンダードを完成して下さることを願っています。
阿佐谷銘茶楽山新店/東京都杉並区阿佐谷北1-3-6
03-3330-0210/9:00-19:00/土休
5/31。夕刻、銀座『野の花司』で姫令法(ヒメリョウブ)、小手毬(コデマリ)、深山鳴子百合(シンザンナルコユリ)と河原撫子(カワラナデシコ)を買って阿佐ヶ谷へ。駅前のとんかつ店『かつ久』で腹ごしらえをしてから開店準備の進む『阿佐谷銘茶楽山新店』にお伺いした。22:00過ぎまでオーナー・古川さんと歓談後、完成写真の撮影準備を開始。

商品ディスプレイを撮影用に整え、花を生け、暖簾にアイロンを掛けて、フォトグラファー・佐藤振一さんがいよいよカメラを構えたのが24:00過ぎ。

つい先日まで空っぽだった空間の、あるべき場所にあるべきものが収まると、途端に店は生き生きとした表情を見せ始める。

内装のトーンを厳しく制限したのがここでは思いのほか有効だった。商品パッケージと、空間そのものの素の造形が互いに引き立つ。


今回店内のライティングには白熱系のダウンライトと、T6タイプ(直径20mm)蛍光灯の間接照明が併用されている。撮影にあたっては各部のスイッチを点けたり消したりしつつ、蛍光灯の色被りを防ぐためその都度フィルターを入れ替えての多重露光方式がとられた。その分、カットごとに随分と時間を要する。大きな空間の撮影ではなかなかここまでの手間は掛けられない。

ほとんど休憩なしで作業は続き、翌朝6:30頃にようやく撮影終了。雨が降らなくて良かった。マクドナルドでコーヒーを飲んで解散。写真の仕上がりが楽しみ。
その翌日、6/2(月)に『阿佐谷銘茶楽山新店』はオープンを迎えた。お近くの方には普段使いの日本茶をぜひこちらでお求めいただければ幸いだ。量販店のお茶とは比較にならない豊かさを味わっていただきたい。
阿佐谷銘茶楽山新店/東京都杉並区阿佐谷北1-3-6/03-3330-0210
9:00-19:00/土休
5/26の夕刻に『阿佐谷銘茶楽山新店』の現場引き渡し。これにて店の管理は施工監理担当のイカハタさんからクライアントの古川さんへ移り、開店準備がいよいよ本格化する。工事は一通り完了。若干の補修作業と残工事を残すのみとなった。
翌27日に合羽橋のオクダ商店で花手桶と柄杓を購入。その足で阿佐ヶ谷へ。

店ではちょうどイカハタ・竹内さんと武田さんが補修工事の作業を終えようとしていた。お二人に補修の追加を少しばかりお願いし、ついでにダウンライトの微調整もしていただく。

おかげで左側壁際の棚什器の上が一気に華やかになった(上の写真左奥)。前日にはカウンターショーケースの内部と足下の間接照明も点灯(上の写真右)。店の床レベルが道路面から30cmほど上がっているため、外から店内を見た時に足下の照明が想定以上に効果的だった。

店内奥にはステンレスの飾り柱が取り付けられ、棚の先端を支える。突き当たりの壁はバナナ壁紙とタペストリーミラーで仕上げを切り分け、足下に墨入モルタルを立ち上げた。その手前のローチェスト上には芋きん型のクッションが2つ(上の写真左)。
エントランスゲートの左内面にはステンレス切文字の店名サインが取り付けられた(上の写真右)。

先日施工されたカウンタバック壁面の飾り壁は乾燥が終わって落ち着いた表情に。

懸案となっている天井面のバナナ壁紙の継目は、貼り直しの甲斐があって引き渡しの時点では見事に目立たなくなっていたのだが、一日経って見るとまた継目が浮き出てしまっていた(写真ではほとんど分からなくはなった)。竹内さんはオープン前に再度貼り直し(これで4回目)に挑戦して下さるとのこと。その他、大きなところではエントランスゲートへの暖簾の取り付けが残っている。
5/24。黒門亭に栄枝・栄助親子会を見に行くも満員札止。意気消沈しつつ『うさぎや』でどら焼きを買って『ラパン』で昼食。台東デザイナーズビレッジの一般公開を覗いてから『阿佐谷銘茶楽山新店』現場へ。

エントランスゲートの左官工事がちょうど終盤に差し掛かっていた。ダークグレーのジョリパット(アクリル系汎用塗壁材の商品名)を割肌に仕上げる。細かなテクスチャーなどは左官職人の堀切氏におまかせ。やや大きめの骨材を混ぜ、調色に硝煙(墨入モルタルと同じ)を用いることで独特の深みが得られた。
仮設の引戸がようやく撤去され、道から店内の様子が伺える状態に。ガラス面にはオープニングセールのポスターが貼られた。通行の人々の多くが足を止めてゆく。

ガラス工事がほぼ完了。カウンターショーケースと給茶カウンターの外形が出来上がった。ケース内の照明はまだ工事中。

店内の間接照明は点灯した状態で見ることができるようになった。空間のイメージもいよいよ最終形に近い。

夕刻になり、カウンターバック壁面の左官工事が始まった。下地材を施し(写真左)、エントランスゲートよりも骨材の細かいジョリパットを薄塗りしてゆく(写真右)。上の写真は塗り終わったジョリパットにコテ跡を付けているところ。最初はほぼフラットな仕上げに留める予定だったが、少し表情を付けていただけるよう要望した。堀切氏から提案していただいた2種類の手法から細かくランダムなうねりのような仕上げを選択すると、ものの1、2分でみるみるうちに美しいコテ跡が出来上がった。驚くべき手早さに一同呆気にとられる。

上の写真左はその左官仕上げのディテール。円弧の下にあたる部分にコテ跡をつけ、上はフラットなままとした。
店内では先日から懸案のバナナ壁紙の貼り替えも同時進行中。綺麗に仕上げていただけるよう経師屋さんの背中に祈りつつアトリエへ引き揚げた。
5/23。ギャラリー間で杉本貴志展を見てから『阿佐谷銘茶楽山新店』現場へ。

工場製作の什器類が一度に設置され、店内の様子はがらりと変わった。手前にカウンターショーケース。右手に吊戸棚。その下にバックカウンターがある。左手には壁付きの棚什器。天井のダウンライトも取り付けが完了し、点灯。完成時にはさらに間接照明が加わる。
イカハタ・竹内さんと武田さんは奥の垂壁下端にコーナー材を取付中。

什器の仕上がりはほぼ文句なしの素晴らしさ。物販店では内装から家具工事に段階を経た途端に問題が山積みとなり、ストレスがぐんぐん溜まってゆくことがままあるが、今回は安心して肩の荷が下りた気分にさえなった。こんなことは初めてかもしれない。
店内間仕切りには行灯サインが埋込まれた(上の写真右)。ああでもない、こうでもない、とイカハタ・清原さんと何度もディテールを調整していたのはほんの1、2日前。その甲斐あってこちらも上出来。

上の写真左は養生シートの剥がされた店内間仕切り角の飾り柱。直径90mmのステンレスパイプ。上の写真左は壁付き棚什器の途中に差し込まれたカラーステンレスの一輪挿し。先端に試験管が嵌め込まれている。
いよいよもう一息。
5/21。14:00過ぎに『阿佐谷銘茶楽山新店』現場へ。

エントランスゲートに下地パテ処理が施された。ちょうど金物屋さんが水返しを取り付けているところ(上の写真左)で、邪魔になりそうなのでしばらく近くで待機。ほどなく15:00となり、作業休憩時間中に金物屋さんから『うさぎや』のどら焼きを分けていただく。ありがたや。
その後、クライアントの古川さんがいらっしゃったので、店内最奥壁まわりのディスプレイ用フックの取り付け位置をその場で決定(上の写真右)。

上の写真では分かりにくいが、店内左側の壁と天井が壁紙で覆われた。これで内装の仕上はほぼ完了。

使用した壁紙はバナナの廃木繊維を原料とする機械漉き和紙(上の写真左)。独特の繊細な光沢が美しい。上の写真左は先日工事が行われた床の洗い出しの様子。こちらも控えめながら質感の高い仕上がりとなって安心した。後日表面にワックス掛けを行う。

壁紙の継目が目立つ部分が一カ所天井にあった(上の写真)。一度貼った壁紙に大きな斑があったため貼り直した箇所とのこと。間接照明のあたる部分だけにこれは気になる。全体が綺麗に仕上がっているだけに、余計に残念でならない。極力目立たなくなるよう補修を依頼。
5/18。朝から『阿佐谷銘茶楽山新店』現場へ。日差しが強い。

この日は床の左官工事を一日で仕上げる。最初に自然光で墨入モルタルの色を確認。上の写真手前左にいらっしゃるのはクライアントの古川さん親子。勝野は三社見物仕様の出で立ち。

続いて店内で墨入モルタルに混ぜる小砂利の密度を確認。少しまばらな印象だったので、手の空いている全員でバラバラと砂利を投げ込む。このくらいかな?となったところで、残りの部分は左官職人の堀切氏にお任せする。堀切氏は目分量でざーっと一気に砂利を投げ込むが、その密度は的確で、しかも砂利の配置は私たちが投げ込んだところよりも明らかに自然で美しい。一同目を丸くしてうーむと唸る。一流の左官職人の手はまるで魔法使いのようだ。

下地モルタルの上にばらまかれた砂利をコテで適度に押さえつけ(上の写真)、

その上を一度全面墨入モルタルで覆う(上の写真)。ベニヤ板で体重を分散させながらの作業。

墨入モルタルを打ち終わると、それをブラシ状の道具で掻き出して表面を磨きつつ小砂利をあらわす作業に移る。最後まで見ることができなくて残念。イカハタ・竹内さんと堀切氏にご挨拶して15時前に別の打ち合わせへ。
浅草へ戻ったのは17時過ぎ。結局三社見物はあまりできなかったが、私服の談春師匠とすれ違った。高座で拝見する以上に大柄な印象で、迫力と有り難みは神輿並み(ちょっと大袈裟)。『キッチンイナバ』で夕食を採ってアトリエヘ戻る。
5/17。午後遅くに『阿佐谷銘茶楽山新店』現場へ。

天井や壁面の練付合板(ねりつけごうはん/薄くスライスした木材を合板の表面に貼り付けたもの)仕上げが佳境を迎え、現場は前日までとは打って変わったごった返しぶり。ちいさな空間のほとんど半分くらいが練付となるため、あちこちで作業が平行するとほとんど足の踏み場も無い。

上の写真は天井面の仕上の見切り部分。左が練付、右が塗装となる。紐(ひも)と呼ばれる細い木材(ここでは5mm角)で合板の切断面を隠す。

エントランスの木製サッシの取り付けも完了(上の写真左)。重厚なつくりの割に控えめな存在感。意図した通りのイメージに満足。
夕刻が近づくに連れて雲行きが怪しくなって来た。エントランスゲートの雨仕舞がまだ完了していないため、イカハタ・竹内さんと武田さんは急いで養生用のブルーシートの準備(上の写真右)。

店内の左半分は後日に和紙張で仕上げる。材料取りの関係上、和紙のピッチと練付のピッチが異なるため、練付合板の継目は極力目立たぬようぴったり突き付けていただく必要がある。どうぞ綺麗に仕上げて下さい。。。と祈りつつ次の打ち合わせへ。
5/16。アトリエでの作業後、夕刻に『阿佐谷銘茶楽山新店』現場へ。

この日の主な工程は電気配線とエアコンの取り付け。作業はすでに終了し、現場はひっそりとしていた。いつもながらイカハタさんの現場は片付けが実に綺麗に行き届いており感心する。

照明器具取付用の丸い穴が天井に開けられた。エアコンは下吹き出しのコーナータイプを一台エントランス側に設置し、店内奥へ送風する方式とした。ひとまず本体のみ取り付け、後日天井面と同色に塗装したカバーパネルを施す。
一部私たちの指示不足があり、エントランスの軒下ダウンライトの位置と、換気扇の位置が微妙に意図と違っていた。イカハタ・清原さんに電話で変更を依頼。翌日早くからは天井や壁を練付合板(薄くスライスした木材を合板の表面に貼り付けたもの)で仕上げる作業が行われるところだった。取り返しのつかないことにならずに済んで助かった。
5/15。午前中に別件の引き渡しを終えて一旦アトリエに戻り作業。15:00過ぎに『阿佐谷銘茶楽山新店』現場へ。

LGS下地にケイカル板が貼り終わり、店構えの外形がほぼ出来上がっていた。脚立に上った金物屋さんはゲート造作の上に取り付ける水返しの寸法を検討中。既設のシャッターが隠蔽され、道路と店を仕切るものが無くなってしまったので、イカハタ・竹内さんと武田さんは工事中にとりあえず現場を塞いでおくための引戸を仮設中。

店内の石膏ボード貼もほぼ完了。いつもならこの段階で完成形がほぼ想像できるが、今回は全体に占める家具・什器類のボリュームが大きく、それらが搬入されると空間の印象は丸きり違ったものになりそうだ。

他の金物工事に先行して、オフィス間仕切壁のコーナーにステンレス製の丸柱が取り付けられた(上の写真左)。まだ白い養生シートに覆われた状態。エントランスから見て左側の壁からは棚什器取り付けのための下地パイプと棚下照明用の電源コードが突き出している(上の写真右)。

上の写真はエントランス側の天井を見上げたところ。やがて店内を支配する斜めのラインが、徐々にその姿を現しつつある。
5/12。アトリエで作業後、夕刻遅めに『阿佐谷銘茶楽山新店』現場へ。

下地コンクリートが打ち終わり、エントランスからのフラットな床ができた。この日の工程は主な内装部分のLGS(軽量鉄骨)下地組。

最終的な床の仕上はグレートーンの小砂利を混ぜた墨入モルタルの洗い出しとなる。上の写真左は実際に使用する砂利のサンプル。サイズと色味を確認。
上の写真右は店内最奥の床。主要な造作の基準線がそこかしこに描かれている。現場監理担当のイカハタ・竹内さんによる墨出しは正確で美しい。今回のプランには微妙な斜めのラインが各所に現れるため、ちょっと不思議な交わり方をしたラインが多い。

施工状況を詳しく確認後、さらにイカハタ・清原さんと近くの喫茶店で打ち合わせ。建物自体の歪み、家具・什器の製作上の問題などが判明するとともに、細かな変更の必要がいろいろと生じて来た。
あたふたとアトリエへとんぼ返り。何度となく描き直した図面を、またも穴のあくほど眺めながら夜中に作戦を練る。今回は工期に全く余裕が無いため、何事にも即決が求められるわけだが、瞬発力に欠ける私たちの頭にはどうしてもこういう時間が必要だ。
それにしても眠い。
5/8。2月から調整とデザインを進めて来た『阿佐谷銘茶楽山新店』が着工を迎えた。この日の作業は既存内装の一部解体。

場所はJR阿佐ヶ谷駅からほど近いちいさな商店街沿いの木造店舗付住宅1Fで、なんと『ひねもすのたり』のとなり。堀部安嗣氏と面識は無いが、恥ずかしいものは作れない。
建物の築年数ははっきりしない。おそらく50年以上は経っているだろう。わずか26平米ほどの店先ではかつて肉屋、豆腐屋、美容室、空調設備工務店など様々な業種が営まれたそうだ。もとは長屋の一部だった様子で、左右の外壁の下地から隣接箇所を切り離した様子がうかがえる。コンクリート土間の入口側に割合急なこう配が設けられており、最上部には道路から30cmほどの高さがある。
上の写真は屋外テントと前面サッシを取り外し、解体業者さんの軽トラを店内に乗り入れた状態。テントの撤去跡の壁が予想外に痛んでおり、今後どう補修すれば良いものか少々悩ましいところ。

上の写真は店内の既存天井を解体した状態。白いビニールクロス張りの既存壁面に新しい床仕上レベルまで1mの墨出しラインが引かれている。幸い天井高さには余裕があり、最大で2.6m程度が確保できる。奥側に耐力補強を兼ねた間仕切りがあり、その向こう側にトイレとミニキッチン。今回そちらはそのままバックヤードとして使わせていただく。

上階の床裏には今ではほとんど見ることのない碍子配線が放置されていた。
久しぶりに味のある現場だな。
『阿佐谷銘茶楽山新店』は日本茶と海苔の専門店。オープンは6/2の予定。
love the lifeの最新作『alternative』の完成写真をアップしました。worksからご覧下さい。フォトグラファーは佐藤振一さん。

『alternative』(オルタナティブ)は、「和食」を「日本人が発想する料理」と再解釈し、現代的でユニバーサルな視点から創作されるユニークな料理を提供するレストランです。場所は東急自由が丘駅から歩いて12、3分の距離にある学園通りに面した築20数年のちいさなテナントビルの2Fです。近隣の多くは住宅地ですが、古くは『シェルガーデン(ザ・ガーデン自由が丘)』、新しいところでは『モンサンクレール』などの有名店に代表されるこの地域は自由が丘市街の北のエッジでもあります。
地上からのアプローチは専用階段ひとつだけで、100平米ほどの店舗区画には通りに面した開口部がほとんどありません。設計前にここを視察した際、特に印象的だったのは建物の南東側角に設けられたサンルームから差し込む穏やかな自然光でした。私たちはこの光を手がかりに、周辺の浮ついた雰囲気とは無縁の特別な場所をデザインすることは可能かもしれないと考えました。2004年に国立近代美術館で見た『松島図屏風』(尾形光琳)の波間の表現、あるいは絵巻の場面転換に用いられる霞の表現のようなものが、ぼんやりと頭に浮かびました。それはおそらく金地、銀地の鈍い光に包まれた「濃密な余白」のイメージだったように思います。
フロアは2つのレベルに分かれており、店舗区画のちょうど中央に50cmほどの段差がありました。私たちは既設のエントランスドアに面した西側のフロアにレセプションとキッチンを、サンルームとひと繋がりになった東側のフロアに客席を単純に割り当てました。客席東面と北面の壁沿いにはベンチシートを配置し、テーブルとチェアを含むそれぞれの領域をタペストリー加工(サンドブラスト+フッ酸処理)を施した強化ガラスのパーティションで曖昧に分けました。サンルームと客席の境にあった袖壁もまたパーティションと同サイズのタペストリーミラー張りとし、空間の連続性を強調しています。ベンチシートの背から天井までの壁面には上下で光源の異なる間接照明を施し、パーティションの配置とは無関係に客席全体をカバーする鍵型の光の面を構成しました。
客席の壁面とレセプションにかけての動線上には、緩やかなカーブを描くヘアライン加工のステンレスパイプをいくつか配置しました。階段状のディスプレイ台と円弧状にくり抜かれた天板を持つレセプションカウンターには一体的な艶消しの黒いボリュームを与え、茶釜とドリンクサーブのための設備、レジスターなどの機能を埋め込みました。これらの要素には『松島図屏風』のモチーフである波と岩場が、より抽象的なイメージとして引用されています。
オーナーシェフの渡辺佳則さんは和食のみならず様々な料理店の厨房を担当された経験豊かな人物で、『バワリーキッチン』や『ロータス』の立ち上げ時のチーフシェフでもあります。オープンキッチンで実に機敏に、いかにも楽しげに、たくさんの料理を魔法のようにつくり出す長髪のシェフを『ロータス』のカウンター席から「カッコいいなあ」と眺めていたのはもう7年も前です。その後長らく姿を見なかったそのシェフ、渡辺さんと昨年になってお会いし、オーナーとして取り組まれる初のレストランをデザインさせていただくことになるとは、まったく思いも寄りませんでした。縁は異なもの、です。
『alternative』の料理の素晴らしさは私たちが補償するまでもありません。果たして、その空間が当初の意図通りの「濃密な余白」として渡辺さんのクリエイションをより引き立てることに成功しているかどうかについては、ぜひ実際に訪れて確かめていただければ幸いです。
施工担当はイカハタの清原さん。万全なるサポートに心より感謝いたします。クールなグラフィックワークを一手に引き受けて下さったのはアラタメさん。ライティングデザインに関する協力と、LEDライティングの設計を手がけて下さったのはmuse-Dの鈴木さんと八木さん。キッチンのステンレス造作と厨房機器を手配して下さったのはホシザキの川田さんとウチダステンレス工業さん。ベンチシートとテーブルとチェアの製作はキノシタの西村さん。皆様大変お疲れさまでした。
alternative(オルタナティブ)/東京都目黒区自由が丘 2-3-16-2F
03-3725-6730/12:00-14:00,18:00-23:00(LO21:30)/日祝休
11/9。大阪から須賀さんご夫妻が来訪。これは滅多にない機会、とばかりにオープンしたての自由が丘『alternative』へと問答無用でお連れした。ディナーコースをいただくのは私たちも初めて。

本日の魚介のグリル(上の写真左上)はホタテとイカ。刻んだ梨と一緒にいただく。ドリンクにはプレミアムモルツ生の後、〆張鶴の純米吟醸を4合ボトルで。
コンソメの茶碗蒸し(写真右上)の具はフォアグラ。白いのはカリフラワーのピュレ。本日の魚のお刺身(写真左下)はムツとブリ。絶品。本日の碗物(写真右下)は金目。極めつけに上品な出汁。金目の食感も素晴らしい。

フランス産鴨胸肉のポワレ(上の写真左上)はまさしくコンテンポラリー鴨葱。お食事(写真右上)は鮭のまぜご飯と原木しめじの味噌汁。どちらもワイルドでインパクトのある品。
本日のデザート(写真左下)はピスタチオのアイスクリーム。コースを通してのボリュームは十二分。食後には香り高い阿里山金宣(写真右下/台湾茶)を何度かお替わりしつつ、ゆっくりと過ごさせていただいた。大満足。
シンプルかつ骨太な味わいの料理は、どれもオーナーシェフ・渡辺さんの人柄を思わせるものだった。特に最初の一皿は、北海道出身である渡辺さんのルーツと、この店のコンセプトである「オルタナティブな日本食」を同時に表明するものとして感慨深い。用いられる器もまた一見してシンプルながらその実ユニークなフォルムを持つものが選ばれており、さりげなく料理を引き立てる。
さて、love the lifeのデザインは少しばかりでも渡辺さんのお役に立てただろうか。その点についてはぜひ実際に訪ねた方のご判断をいただければ幸いだ。12日からはランチコースも始まっているので、まずはどうぞお気軽に。
alternative(オルタナティブ)/東京都目黒区自由が丘 2-3-16-2F
03-3725-6730/12:00-14:00,18:00-23:00(LO21:30)/日祝休
23時前に代官山へ移動。『dcb』へ。いつ来ても心地よく、時間の経つのを忘れる店。久方ぶりの長く楽しい夜となった。
そして、11/10夜に再び『alternative』へ。翌日の朝にかけて完成写真の撮影。

上の写真は明け方にサンルームを撮影中のフォトグラファー・佐藤振一さん。すでにお疲れの様子。全部を撮り終わった頃には10時を過ぎてしまった。ぐったりと疲れ果てた状態で『アンセーニュ・ダングル』で珈琲の後、解散。
11/5。未明にアラタメさんから『alternative』屋外サイン用POPのデータが到着。プリントアウトして台紙に貼り付け、POP用のスタンドと一緒に紙袋に入れて、ひとまず横須賀線とバスを乗り継ぎ鎌倉の別件現場へ。
15時過ぎに資料写真の撮影と現場採寸が完了し、小町通り外れの『cafe vivement dimanche』で食事と珈琲。横須賀線と東横線を乗り継いで自由が丘『alternative』に着いたのは18時頃。

POPをセッティングしてしまえば、あとは特にすることはなかったが、イカハタ・清原さんが様子を見にくると言うので少し待つ。

すっかり片付いた店内は、来客を迎えるばかりの状態。テーブルクロスは先日まで敷かれていたリネン素材ではなく、厚手の白いものに交換されていた。おそらくサイズに問題があったのかもしれない。“オルタナ系和食”という前例のない形態のレストランだけに、運営スタイルを確立することは容易ではない。オープン後もしばらくは試行錯誤が続くだろう。

清原さんが到着し、キッチンを含め一通り店内をチェック。郵便ポストの位置(大家さんのご指定。これが大変使い辛い)、エントランスドアの強風対策(建物に着いていたドアをそのまま使用。強風で若干バタつく)と言った施工とは関係のない共用部分での懸案事項を除けば、あとはほぼ問題無し。キッチンに漂う美味そうな出汁の香りに俄然食欲が湧く。作業途中、お店のスタッフの方に烏龍茶をいただいた。上品な甘味と香りにほっと一息。
翌11/6に自由が丘『alternative』(オルタナティブ)はオープンした。今後は客として訪れることになる私たちとしては、料理はもちろん、店をどう使っていただけるのかを拝見するのもまたひとつの楽しみだ。さて、いつ頃お伺いしようか。
10/31。午後一番に自由が丘『alternative』へ。

テーブル天板とチェアの交換が完了。木部の染色が木目を生かした薄いホワイトに変更された。ようやくイメージ通りの仕上がりに。

客席全体の印象もぐっと引き締まった。いろいろあったが、キノシタ・西村さんには最後まで良心的なご対応をいただいたので良しとしよう。

WCも完成。天井にステンレスの装飾パイプ。手洗台は黒い塊に白くて丸いボウル。

上の写真左はWCのドアサイン。16時頃からは屋外サインの設置作業が始まり、20時頃に完了。写真右は2Fのエントランスサイン。傘立兼用。

上の写真は1Fの専用階段サイン。配線モールを綺麗にカバーできるだけの予算が無かったのは残念だが、サインそのものは言うこと無しの仕上がり。今回は装飾パイプなどを含め、ややこしいステンレス造作が割合多かったが、金物屋さんの仕事は実に見事でスマートだった。サイン類のフォント製作とレイアウトは全てアラタメさん。
キッチンとサンルームの間のガラス窓にタペストリー加工調のフィルム貼り。エントランス脇の消防突破口上部にも間接照明の写り込み対策として同様のフィルム貼り。その他諸々の細かなフィルム貼りや塗装面のタッチアップなどは全てイカハタ・清原さんが直々に片付けて下さった。
レセプションカウンターとキッチンのコールドテーブルの入れ替えが完了。ビアサーバの収納部分に熱がこもるため、両開扉の片側を取り外し。後日、ここには客動線からの目隠し用のステンレス造作を取り付けることになった。
領収証用の店名スタンプを納品。予約席用のサインを組み立て。
オープンに向けて、私たちのお手伝いできることも残りわずか。
10/29。夕刻にアラタメさんと自由が丘『alternative』へ。オープン準備で大忙しのオーナーシェフ・渡辺さんに時間をいただき、メニュー表とホームページのデザインに関する打ち合わせ。

レセプションカウンターに中国茶器が飾られていた。可愛い。

DM、ショップカード、名刺など、アラタメさんにデザインをお願いしていた印刷物は27日に無事店へ到着。私たちはこの日初めて完成品を目にすることができた。モニターやダミーで見ていた印象をはるかに上回る素晴らしい仕上がり。
DMの拡大画像はこちら(表/裏)。オープンは11/6(火)に決定した。
18:00頃にキノシタ・西村さんが到着。木地染色に問題のあったチェアを新しいものに全交換。満足のゆく色に仕上がった。LED間接照明のアクリルカバーがトータルで3mmほど延びてわずかに浮いていたので、イカハタ・清原さんに補修を依頼。
10/26。15時過ぎに自由が丘『alternative』へ。照明計画をサポートして下さったmuse-Dの鈴木さんと八木さんがしばらく後に到着。ユニバーサル型ダウンライト(光の向きを変えられる天井埋込式照明)の微調整をしていただいた。

1時間半ほどかけてじっくりと調整。おかげでバシッとフォーカスの合ったようなシャープな雰囲気が出た。

クッションのセッティングが終わり、サンルームもようやく落ち着いた。夜はスタンドライトと間接照明だけではちょっと暗いかな、と気になっていたが、思いのほかいい具合。

照明の調整中にフォトグラファーの佐藤さんも到着。撮影スケジュールやフィルムサイズなどについて打ち合わせ。今回は予想されるカット数が多く、かなりの時間がかかりそうなので、店のご迷惑にならないよう定休日前の深夜から朝方にかけて撮ることになった。

仄かなグリーンに染まったモノトーンの空間を、ゆったりと間合いのとられた座席に掛けてぼんやり眺めていると、まるで水墨画の襖絵に囲まれているような心持ちがした。これで完成だ。
10/25。午後一番から自由が丘『alternative』の現場引き渡し。これをもって物件は晴れてオーナーシェフ・渡辺さんの管理下となる。いちおうその前に主な関係者での最終チェックは一通り行ったが、これまで足繁く現場に通ってその都度イカハタ・清原さんに細かく変更・修正の要望を伝えていたため、ほとんど何の問題もなく儀式はあっけなく終了。
LED間接照明にタペストリー調アクリルのカバーが被せられ、光の質がずいぶんと柔らかくなった(以前の写真と比べると如実に分かる)。幸いアクリルの継目は全く気にならない。清原さんがボックスにぴったりの寸法にアクリルをカットした上で、小口(切断面)をミガキ仕上げにして下さったのが功を奏したようだ。有り難い。

そうこうしている間にも食器、食材、備品など、運営物資が続々と到着。テーブルに漆の椀が並び、レセプションカウンターに茶釜が置かれると、店内の様相は急激に和風へと収束しはじめた。不思議なものだ。
コールドテーブルの入れ替え作業は31日に行われることになった。ついでにキッチン内の板金の補修も行っていただけるようホシザキ・川田さんに依頼。屋外のサイン(看板)もその日に取り付けられる予定。若干の補修作業を清原さんにお願いして、私たちは備品類の買い出しへ。
10/24。午前中から渋谷で『alternative』のための運営備品類の買い出し。14時頃に自由が丘の現場に到着。

この日のLED間接照明は白色だった。これまた悪くない。

客席ベンチシート下の化粧板仕上げがキノシタさんの手配で予定より一日早く行われた(上の写真左)。サンルームのベンチは壁や家具と同色のホワイトに再塗装。いやースッキリした。なんとなく部屋が広くなったような心地がする。これで工事らしい工事は全て完了。
その後、工事途中にキズや汚れのついた塗装面の気になる箇所にマスキングテープの切れ端をぺたぺたと貼り付けてチェック。イカハタ・清原さんと塗装業者さんに補修を行っていただく。今回は『dcb』と同じ業者さんに手がけていただいた甲斐あって、間接照明の当たる面の仕上がりを含め、内装塗装についてはほとんど言うこと無しの素晴らしい仕上がりだった。
16時頃に現場を離れ、ふたたび買い出しへ。21時過ぎにアトリエに戻ると、ちょうどキノシタ・西村さんが可動家具の再制作のための塗装色サンプルを届けて下さったところ。朝までに返事をするとお伝えする。
22時過ぎにイカハタ・清原さんから電話。この日から店内に入った運営スタッフの皆さんの要望で、レセプションカウンター内にある冷凍冷蔵用のコールドテーブル(テーブル型冷蔵庫)と、キッチン内にある冷蔵専用のコールドテーブルを入れ替えることになったそうだ。
どうやらこの現場もギリギリまで落ち着きそうにない。
10/23。午後遅くに自由が丘『alternative』現場へ。

この日のLED間接照明はオレンジ色だった。悪くない。
客席北面(写真奥)と東面(写真右)のベンチの設置がおおよそ完了。シート下のボックス部分の化粧板仕上げは25日に行われる。座り心地は上々。
可動家具(チェアとテーブル)も仮搬入された。こちらは先日のトラブルをふまえて木部を作り直し、29日に交換される予定。

850mm角のテーブルは実にゆったりとして具合がいい。営業時にはオーナーシェフ・渡辺さんの選んだリネンのクロスが掛けられる。

レセプションカウンターには装飾パイプの最後の一本が仮止めされた(上の写真左)。サンルームには大テーブルが搬入され、天井のテント地とブラインドが取り付けられた(上の写真右)。結局この日の午前中までかかったキッチンの工事も、ほぼ問題無く完了していた。

16時から保健所の検査。レセプションカウンター内の手洗シンク用のソープディスペンサーを固定するように言われたことを除いて、全く問題無く短時間で終了。29日には営業許可証が発行されるとのこと。心配無いとは思っていたが、やはり急に肩の荷が下りたような気持ちになった。

空間を構成するパズルのピースはこれで全て揃った。工事もあと残りわずか。
10/22。午後遅くに自由が丘『alternative』現場へ。

先日の写真と比べると間違い探しのようだが、東側(写真右側)壁面に装飾パイプが取り付けられた。午前中にクリーニングが一通り終わり、現場はピカピカに。

上の写真は東面装飾パイプの全体像。まだ仮止め中で所々テープで固定されている。ほぼ客席部分を縦断するサイズの大きな曲線がなかなか気持ちいい。
その下にある白いレザー張りのチェアは、前日にサンルームのベンチの塗装時に起こったトラブルをふまえて、この日急遽キノシタさんに届けていただいたもの。脚など木製フレームの塗装色にやはり赤みが強い。工場への確認をお願いしたところ、木地の色味ではなく塗料に赤が少量混じっているとのこと。それでは話と違う、と言うわけで、テーブル天板も含め全ての可動家具を作り直し、オープンまでに交換していただくことにした。

養生シートがすべて剥がされ、レセプションカウンターの不整形な黒い塊と、装飾パイプによる鋭利な曲線の厳しく対峙する様が、ようやく全貌をあらわした。

レセプションカウンターの上面越しに客席の方を見るとこんな感じ(上の写真左)。塊を円弧の連なりが抉り、装飾パイプのラインがそれに呼応する。
キッチンでは前日の緊急ミーティングで洗い出された残工事がようやく少しずつ片付きはじめた(上の写真右)。
イカハタ・清原さんと屋外に設置する店名サインについての打ち合わせ。その後新宿へ移動し、店内で使用する運営備品類の買い出しを行った。なかなか思うようなものが見つからず、いくつかは持ち越し。
23時過ぎにホシザキ・川田さんの携帯メールでキッチンカウンターの配線孔まわりの写真が届く。続いて24時頃に板金業者さんから確認用のスケッチがファックスで到着。
翌日は保健所の検査なんだが、大丈夫だろうか。
10/21。午前中に自由が丘『alternative』の現場からイカハタ・清原さんから電話。サンルームに前日取り付けられたパイン集成材のベンチ座面に染色を施したところ、イメージとはかなり異なる赤みの強い色調になってしまったとのこと。

写真左が午前中の状態。うーむ、これは赤いな。。。以前に塗装色サンプルとしてホワイト染色の可動家具の端切れを業者さんにお渡ししていたのだが、その地色を忠実に再現して下さったのが仇となったようだ。行き違いが重なった。
急遽その上からホワイトの塗装を上塗りしていただいたのが写真右の状態。ましになったような、なっていないような。先日に施工された墨入りモルタルの床は素晴らしくいい感じなんだけど。
熟考の結果、ベンチはペイント系の塗料でホワイトに塗り潰すことにした。集成材の表情がほとんど見えなくなってしまうのは残念だが、突板をベースにしたホワイトペイント、あるいは化粧板のホワイトよりも、集成材をベースにしたホワイトペイントの方が質感的には数段上ではある。これも贅沢と言うものだ。デザイン的にはかえってすっきりまとまるだろう。24日に再塗装の予定。

客席サービス用のワゴンが到着した(上の写真左)。コンパクトで可愛らしい仕上がり。上の写真右はエントランス脇壁面の様子。天井と突き当たり壁の装飾パイプが間接照明に浮かぶ。

もし可動家具(チェアやテーブルなど)の染色もベンチと同様に赤みが強く仕上がっているとすれば、マズいことになる可能性が大きい。キノシタさんに電話を入れ、念のためチェアとテーブル天板をひとつづつ翌日現場に持ち込んで頂けるよう依頼。
また、キッチンをチェックしたところ、ステンレス造作・家具の細かな工事が一向に進んでいない気がする。ホシザキ・川田さんと板金業者さんに電話。日曜日の夕方とあって、ご両人とも自宅でご家族とおくつろぎのようではあったが、急遽現場にお越しいただく。隅々まで残工事チェックをし終えた頃には時刻は21時をまわっていた。
上の写真は夜のサンルーム。
10/19。夕刻に自由が丘『alternative』現場へ。

客席腰高のフルカラーLED間接照明が点灯した。写真は淡いグリーンに発光した状態。コンパクトなコントローラーひとつで簡単かつ自在に調色・調光することができる。使い勝手は最高。これで取り付けがもっと楽なら言うこと無かったんだが。
床にグレーのカーペットが敷き詰められ、いよいよ内装は完成に近づいた。

上の写真はL字に連続する間接照明のコーナー部分。キセノンとLEDの光の交錯がうっすらとグラフィカルなパターンを描く。

レセプションカウンターには人工大理石の天板が取り付けられた。巨大な硯石のような質感。写真は職人さんがコーナー部分を溶接しているところ。

18時頃に左官職人さんが到着。サンルームの床に墨入りモルタルが塗られた。1時間あまりの作業で見事な床が完成。翌日の昼間にはほぼ乾くとのこと。どんな表情を見せてくれるのか、楽しみだ。

エントランス脇の消防突破口への間接照明の写り込みの処理についてイカハタ・清原さんと相談。避難誘導灯の取り付け位置を調整。
厨房機器と可動家具の工程が遅れている。特に客席ソファの取り付けがうまくゆくのか、どうも心配になって来た。頑張れキノシタさん。
10/18。夕刻に自由が丘『alternative』現場へ。

客席上部の間接照明(アドバンテージキセノン)が付いた。光のまわり具合がいつも以上にスムーズだ。最後まで粘って考えた甲斐があった。配線工事の難しかった特注LEDシステムも電気工事業者さんの工夫のおかげでおおよそ設置完了。こちらの点灯は明日以降となる。
エアコンの吹出口、給排気口の取り付けもさりげなく完了。

先日仮止めされた装飾パイプの上に間接照明の光源がかすかに写り込む。これは予想外ではあったが、おかげでパイプの存在がより一層生き生きとして見える。このままにしとこう。

客席とレセプションまわりの家具類の設置もこの日大部分が完了。黒い階段状のレセプションカウンターと、装飾パイプの関係が想像通りに出来上がった。写真奥のクローゼットまわりの家具も設置完了。キッチンではワインセラーまわりの家具が設置完了。現場監督のイカハタ・清原さんもこの日は実作業でてんてこ舞い。

階段脇のスピーカーボックス兼ディスプレイ台はほとんど現場作業で制作された(上の写真左の白い箱状の家具)。家具職人さんの見事な手際に感心。WCの手洗カウンターも設置完了(上の写真右の黒いかたまり)。その上の造作にはこの後すぐにミラーが取り付けられた。

オーナーシェフの渡辺さんに主にキッチンのつくりを確認していただきつつ、ホシザキ・川田さんを含めての打ち合わせ。その後、近くの『Paul Bassett』で引き続き印刷物に関する打ち合わせ。ダイレクトメール、ショップカード、名刺などのデザインが最終決定。ふたたび現場に戻り、家具類と間接照明の細かな納まりについて若干の変更を依頼。
あちこちで細かな作業が同時進行したため、この工事中で最もグチャグチャな現場となったが、作業が終わると家具業者さんは一通り掃除整頓して撤収。仕事場の綺麗な職人さんは腕がいい。
10/17。夕刻に自由が丘『alternative』現場へ。

前日の客席サッシにガラスが入った。
間接照明以外のライティングはほぼ全て取付けられ、点灯状態に。

客席北側の壁には装飾パイプが仮止めされていた。壁際に近づくとこんな感じ(写真左)。エントランス脇壁際の装飾パイプ(写真右)は取付完了。

キッチンでは厨房機器の設置がほぼ完了。巨大なカウンターや冷蔵庫が割合余裕を持っておさまった様子を見ると、なかなか充実した作業環境であることが実感される。客席と同じダウンライトを使用したこともあって、なんだかとてもムーディーなキッチンになりそうな予感。やり過ぎたかな。

上の写真左はエントランスからキッチンを見たところ。タペストリー加工のガラスを通して人の気配が伺える。写真右はサンルームから窓を通してキッチンを見たところ。ここは既存のガラスの上にタペストリー加工調のフィルムを貼る予定だが、なんとなくこのままの方がカッコいいような気もする。要相談。

懸案だったWC配線孔の目隠し方法、キッチンとサンルームのブラインド品番と納まり、キッチンの水栓位置などについてイカハタ・清原さんと打ち合わせ。
店内をしばらく眺めていると、連続するガラスのパーティションが、まるで大きな障子のように見えて来た。
10/16。午前中に自由が丘『alternative』現場へ。

客席のサッシ枠が取付けられた。このステンレス枠に後日タペストリー加工(サンドブラスト+フッ酸処理)を施した強化ガラスを嵌め込み客席をふたつのエリアに分ける。

キッチンでは長尺ビニル床シート貼りが進行中。袖壁には仕上げのステンレス板が貼られ、青い養生シートで覆われていたが、見付部分の納まりが打ち合わせと違っていたため板金業者さんに修正を依頼。電気工事業者さんとキッチン内のコンセントプレートの仕様についての最終確認を行う。

照明器具が到着(上の写真左)。午後から取り付けが始まる。
WCでは既存の黒いタイルの上に150角の白いタイルを貼る作業が進行中。天井の塗装色と照明器具品番の指定にミスがあったので変更をお願いする。また、手洗カウンターのちょうど上に建物の電源配線の都合上ちいさな開口(上の写真右の四角い穴)がどうしても必要であることが判明。うーん、これはいかん。。。どうしたものか。

最終形に向けて、徐々に空間全体のフォーカスがぴたりと合いつつあるが、その分、細かな問題が気になりはじめた。これから一週間ほどは気の抜けない日々が続くだろう。
10/12。15時過ぎに自由が丘『alternative』現場へ。職人さんはちょうど休憩中。

塗装工事がかなり進んだ。一気に白く、明るい空間に。

上の写真左は垂壁造作の付いたサンルーム。不整形な建物のおかげで苦労はしたものの、なんとか納まりそうな状態に落ち着きつつある。
写真右は客席からレセプションを見たところ。エントランス脇の壁面(ドアの向こう側)は寸法とコストの都合上、増し貼り(古い壁面を残したまま新しくボードを貼って仕上げること)にしたが、古い壁面の施工が極めて悪く、よくよく見ると微妙に全体が波打っている。消防突破口や間接照明との絡みが心配だ。

次週からは家具造作や厨房機器が続々と搬入される予定。工事はいよいよ山場。
16時に駅前に戻ってアラタメさんと待ち合わせ。『alternative』用の印刷物の打ち合わせを『Table Modern Service』の窓際の席で。DMのラフ案をiPod touchで見せてもらった。こりゃ便利だ。
10/10。午後過ぎに自由が丘『alternative』現場へ。

塗装工事が始まった。この日はボードの継ぎ目やビス跡を埋めるパテ塗りの段階。

レセプションから客席へと至る階段のコンパネ(コンクリートパネル)下地がほぼ完成。後日仕上げのカーペットが敷かれる予定。

キッチンとレセプションの一部の床下地もほぼ完成。配管が隠れ、全体がフラットになった室内はぐんとコンパクトな印象に。これらの床下地はこんな風にフレキシブルに高さ調整のできる樹脂脚をベースにパーティクルボードを乗せ、さらにその上にコンパネを敷き詰めることで出来上がっている。

上の写真はキッチンの出入口脇にある店内照明スイッチの取り付け位置の様子。みっちりと等間隔にスイッチプレートが並ぶ予定。電気工事業者さんの力作。

上の写真はキッチンからエントランスの方を見たところ。
いつもならここまで空間ボリュームがしっかり見えてくると、かなり出来上がったと感じるところなのだが、今回はまだその感覚が無い。思い描く最終形と、目の前にある空間の輪郭が、微妙にぴったりとは合わない感じ。おそらくこの違和感は、家具や造作類がパズルのピースのように空間に嵌め込まれてゆくに連れて、徐々に消えてゆくのだろうと想像される。
どうやらこの店はいつもとは異なるやり方でデザインされているみたいだ。私たち自身気付かないうちに。
10/6。午後過ぎに自由が丘『alternative』現場へ。

前日からボード貼が始まり、だいぶ整った空間になってきた。上の写真はほぼPB(石膏ボード)貼の終わった客席。

上の写真はレセプション奥から客席側を見たところ。ボード貼の業者さんがキッチンの壁・天井用のケイカル板(繊維混入ケイ酸カルシウム板)をカットしている。

ケイカル板張りのキッチン内は上の写真のような具合に。PBとの外見の違いがなんとなくお分かりいただけるかと思う。

サンルームのボード貼もほぼ完了。ここはこれから取り付けの始まる木工造作の分量が多いため、最終形にはまだほど遠い。

上の写真左は先日調整をお願いしたサンルーム・キッチン間の開口部ディテール。養生テープにイカハタ・清原さんのスケッチ。写真右は形状変更をお願いした客席の間接照明ボックス。どちらもバッチリ納まって少し安心した。
10/4。16時頃に自由が丘『alternative』現場へ。翌日から始まるボード貼に備え、LGS(軽量鉄骨)下地組が細部の調整段階に入っていた。

間接照明ボックスの取り付けもこの日ほぼ完了。

上の写真左はエントランス脇の壁際。右は最初の全景写真奥の右コーナー部分のアップ。天井・壁の際、または腰高の位置にある合板の造作が間接照明ボックス。

上の写真は客席からレセプションの方を見たところ。青い養生シートを巻かれた装飾パイプが大きな曲線を描く。床と天井とで固定するため、今回は下地の段階で取り付けておく必要があった。

上の写真左は装飾パイプが床に刺さっているところのアップ。直径16mmのステンレスパイプが2本束ねられている。右はレセプションとキッチンを区切るドア。ヒンジの見え方がちょっと気になる。さてどうしたものか。

天井の間接照明の光源が見え過ぎてしまいそうだったため、ボックスの形状を若干変更。消防突破口まわりの造作納まりを変更。サンルームとキッチンの間の開口部に納まりの悪い箇所が出たため若干の下地調整。
上の写真はイカハタ・清原さん、厨房機器担当のホシザキ・川田さん、電気工事業者さんと勝野での作戦会議の様子。
10/2。午後一番に自由が丘『alternative』現場へ。前日からLGS(軽量鉄骨)による内装造作の下地組が始まっていた。

サンルームを除く店内の下地組はすでに概形を伺える状態。

先日取付けられたエアコン本体にダクト類が繋がり上のような状態に。キングギドラ的迫力。

上はキッチン床下の設備配管。こちらもほぼ設置完了。

レセプションとキッチンの間にできる新設のサッシやドアの寸法、設備点検口のサイズや配置、家具造作について、イカハタ・清原さんと打ち合わせ。建築躯体の形状にかなり狂いがあるため、毎日が細かな変更の連続だ。
上は職人さんがLGSをぶった切っているところ。
現場には次第に緊張感が充満しつつある。
9/26。午後過ぎに自由が丘『alternative』現場へ。午前中にエアコンの本体が取付けられ、ようやく天井高さがほぼ確定できる状態となった。

上の写真でイカハタ・清原さんの頭上に見えるのがエアコン本体。でかい。低い。
ここから4本のダクトを客席の吹出口へと繋ぐ。うち1本のダクトは分岐してエントランス脇の吹出口へ。本体は吸気口を残して天井内に隠蔽される。

こちらはキッチン内のカセット式エアコン。天井スラブ下に露出した上階用の配管類を避けてこの位置になった。排水・給湯配管に若干の水漏れを発見。内装工事が本格化する前に直して頂けるようビルオーナーさんに依頼。
ちょうど木工担当の大工さんが現場にいらっしゃったので、クローゼットまわりのディテールについて打ち合わせ。この後、厨房機器担当のホシザキ・川田さんが打ち合わせに来られるとのことだったが、清原さんに最新の図面を託して私たちは別の現場へ移動。
客席の天井は事前の想定よりもほんの少し高くできそうだ。良かった。
自由が丘のレストラン物件『alternative』が9/21に着工。解体工事に始まり、23日から墨出し。24日に現場のチェックと打ち合わせを行った。
場所は八雲三丁目交差点にほど近い学園通り沿い。『ザ・ガーデン自由が丘』は斜め向かいと言って良いくらいの距離で、『モンサンクレール』もすぐそばにある。好立地ではあるが、駅から歩くと品の無い高級車がぶんぶん通るわりには道幅が狭く、ストレスを感じることは否めない。

グリーンのタイル張りが特徴的な低層ビル(築24年くらい)の専用階段を2Fへ上がったところが今回の現場。通りから店構えは全く伺えない。周辺の浮ついた空気感を遮断し、隠れ家的な空間を作るには最適な条件と言える。100平米ほどのフロアは約50cmの段差を持つ2つのエリアに分かれており、低い方のフロアは通りから離れたサンルームとひと続きになっている。

正確な建築図面が残っていないため、解体後に寸法や納まりを調整しなくてはならない箇所がかなりあちこちに生じた。施工を担当していただくイカハタ・清原さんと打ち合わせしながら、半ばその場で即興的に設計しているような感覚に。多少の調整はどこでも付き物だが、これほどの現場は久しぶり。天井の細かな高さ設定については、後日、空調機器を実際に吊ってみながら決定することになった。厄介なことも盛り沢山だが、その分楽しみなことも多い現場になりそうだ。

この日は左官屋さんが現場に入り、フロアの一部にあった凹みを埋める作業中。

既存の床タイルを残したまま施工するため、墨出しは上の写真左のように養生テープを併用しながら行われた。写真右は清原さんがその場で描いた階段造作の納まりスケッチ。
今のところオーナー・シェフの渡辺さんからは和食をベースにしたコース料理がメニューの中心になるとお聞きしている。私たちが多大にリスペクトする人物が創作の腕を振るう店だけに、一消費者としての楽しみも膨らむ。自由が丘にかつて有りそうで無かったゆとりの感じられる空間を提供したい。東京に越したばかりの頃、およそ4年間を過ごした街へのささやかな贈り物になればと思う。
オープンは11/6の予定。
現在新宿・リビングデザインセンターOZONEで開催中のイベント『布&トートバッグマーケット』で、勝野屋(love the lifeのプロダクトレーベル)が手拭を販売しています。普段Webでしかご覧いただいたり購入していただくことのできない勝野屋の手拭を、実際に手に取ってチェックしていただけるチャンスです。会期は6/2(土)、6/3(日)と6/9(土)、6/10(日)の計4日間。すでに初日が終了してしまいましたので、残りは本日を含む3日間です。

7Fのエスカレーター脇にひっそりと小さなブースを構えています。はっきり言って、けっこう寂しいシチュエーションです。お近くにお越しの際には、冷やかしでぜんぜん結構ですので、どなた様もぜひぜひお気軽にお立ち寄りいただけましたら幸いです。
love the lifeの最新作『studio graphia 丸の内店』の完成写真をアップしました。worksからご覧下さい。フォトグラファーは佐藤振一さん。

『studio graphia 丸の内店』を運営するマークスは1986年にエディトリアルデザイン会社としてはじまり、その後ステーショナリー製造を開始。現在関東圏を中心にいくつかの直営店を展開しており、特にこの店では自社製品に加えてバッグ、時計、書籍など、ユニセックスなテイストを持つデザイン性の高い商品が幅広く扱われています。
私たちはクライアントが主として紙製品と、紙を媒体とするクリエイティブワークを扱う企業であることに着目しました。紙の主原料は木材チップからなるパルプであり、木材は山林から生まれます。私たちはプランを進める上で、先ず最初に店の最奥を壁一面の雛壇什器とすることを決めました。その形状とスケールには山林の姿が暗示され、その配置によって店は共用通路に対する明確な正面性を得ます。
店内は向かって左側の白い空間と、右側のダークグレーの空間とに大きく二分されています。左側には間接光を多用することで茫洋としたひろがりを与え、右側には逆に陰影を強調するライティングを施しました。また、双方の空間にはスチールパイプにクロームメッキを施した折線形の造作が、それぞれに異なる姿で配置されています。これと言った機能を持たないふたつの造作がスクエアな空間に破調をもたらしながら互いに向かい合う構図は、俵屋宗達の画として多くの人々に記憶される風神雷神図屏風(1600年代初頭)の二曲一双の姿を参照したものです。それらはまさに山林を取り巻く万象の寓意に他なりません。
この店の空間に根ざした感性は、ユニバーサルであると同時に極めて日本的であると言えます。その象徴性は様々な商品が並べられ多くの人々が訪れることでより一層強さを増すでしょう。やがてこの店が、丸の内のちいさな遊山の場として記憶されることを心から願っています。
施工はCAリーディングの田代さんと米澤さんと藤倉さん。長引く現場をへこたれずにおつき合い下さったことに心から感謝致します。次回があれば、さらに良いものができるようお互い頑張りましょう。
studio graphia 丸の内店/東京都千代田区丸の内1-5-1新丸の内ビルディング4F
03-3211-5301/11:00-21:00(日-20:00)/無休
love the lifeの最新作『MOTTAINAI津島』(MOTTAINAIショップ)の完成写真をアップしました。worksからご覧下さい。フォトグラファーは佐藤振一さん。

『MOTTAINAI津島』は伊藤忠商事や毎日新聞社などが展開するMOTTAINAIブランドの実験店舗で、愛知県・ヨシヅヤ津島本店1Fのイーストコートと呼ばれる三層吹抜の空間に仮設されています。会計処理は近接するお客様センターで行い、店内にレジや事務設備はありません。機能的に商品ディスプレイと少量のストックだけしか必要とされないため、形式的としては物販店舗よりパビリオンに近いプロジェクトであると言えます。
正直なところ、MOTTAINAIブランドについて当初私たちは流行りもの的いかがわしさを感じていました。現状を伺うと、商品のボリュームもそのデザインやコンセプトの統一性も、ブランドとしてはまだまだ貧弱であると言わざるを得ません。しかし、伊藤忠商事のプロジェクトリーダー・高津正男さんはものづくりへのこだわりと誠実さを持った魅力的な人物でした。私たちは「高津さんの店」をデザインすることは可能かもしれないと考えました。
具体的にMOTTAINAIのコンセプトを空間として表現する上で、リサイクル素材を用いることは必ずしも重要ではありません。リサイクルそれ自体が過大なエネルギーを要する場合があることは周知の事実です。循環型社会の構築への貢献を目指すMOTTAINAIブランドの理念において、3R(Recycle, Reuse, Reduce)は主たる方便ではあっても目的ではありません。
むしろ積極的に消費を促すことによって、新たな循環が生み出される素材が私たちの身近に存在します。そのひとつが国産の森林資源です。古来より木曽、伊勢にほど近い尾張の要衝であった津島湊ゆかりの素材として私たちは国産の桧を選び、かつ従来有効活用されることの少ない部材でほぼ全ての造作を構成することにしました。また、そのデザインには今後のブランディングを牽引するアイコンとしての力強さが必要でした。
店舗の外形にはフレームとフロアとディスプレイウォールによって、設置面積の22.5平米を3mの高さに立ち上げた直方体のボリュームがそのまま示されています。什器についてはディスプレイウォールと正面通路側のローステージ、そしてフロア中央に並んだ丸テーブル、とエリアごとに大別される至ってシンプルな構成としました。
主構造であるフレームの素材は桧の節有120mm角材で、上面はランダムな梁組となっています。フロアとディスプレイウォールは木曽桧の節有材によるフローリング張りとしました。什器類に用いたエスウッドは岐阜産桧の間伐材チップを原料とする木質ボードです。ディスプレイウォールに付属したローステージの上面はガラス張りで、その内部には千葉産桧の残材チップが敷き詰められています。
各造作のデザインには雨や水たまり、木々の枝や幹の暗喩を込めました。ディスプレイウォールまわりの間接照明と、フレーム上部からのアーム式ライトがそれらを象徴的に照らし、また影を落とします。これらは総体として森の自然環境を、ひいては循環型社会を寓意的に表しています。
始動からオープンまで2ヶ月半と極めて時間の限られた中でのプロジェクトではありましたが、幸い完成形は写真の通り満足のゆくものとなりました。ただし商品ディスプレイや店舗運営については今のところまだまだ上手く行っているとは言えません。この実験店舗が意味ある一歩であったかどうか、その答えは今後のMOTTAINAIブランドの展開が物語ることでしょう。
施工はCAリーディングの下山田さんと山本さんと藤倉さん。粘り腰と見事なラストスパートで良いものに仕上げて下さいました。プロデューサーは伊藤忠商事の高津さん。そのタフネスに心から敬服します。ライティングデザインはmuse-Dの鈴木さんと八木さん。皆様、ひとまずお疲れさまでした。
MOTTAINAI津島/愛知県津島市大字津島字北新開351ヨシヅヤ津島本店1F
10:00-21:00/不定休
4/27の朝10:00。新丸ビルの『studio graphia』に先立って、もうひとつの仕事がオープンを迎えた。伊藤忠商事などが中心となって展開するMOTTAINAIブランドの実験店舗。現在のところプレス発表ではMOTTAINAIショップと称されているが、今後他にも出店する可能性があるため、とりあえずここでの作品名は『MOTTAINAI津島』としておく。プロジェクトが始動したのは2月初頭。一気呵成の特急仕上げとなった。

店舗は東海圏の大手スーパーマーケット『ヨシヅヤ』津島本店にある3層吹き抜けの空間に22.5平米の仮設ブースとして設置されている。上の写真は4/25の完成後引き渡し時の状況。奥で商品ディスプレイの作業を行っているのは伊藤忠・高津さんと立巳物産・矢野さん。
節有りの桧角材によるフレームに桧羽目板張りのディスプレイウォールと桧フローリングの床、置式の什器類にはエスウッドと呼ばれる桧チップの木質ボードを用いている。国産桧づくし。

上の写真は27日のオープン時の状況。セレモ