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食べたり飲んだり : 神保町・丸香/赤羽・すみた

1/29。午後から神保町『丸香』へ。2003年開業のさぬきうどん店。12/16に一度伺っており、この日は二度目。神保町の交差点を東へ進み、靖国通りが折れ曲がるところを左折。少し進むと右手に白地に「うどん」の大きな暖簾が現れる。見上げると板張りに木彫文字のロゴマーク。暖簾をくぐるとこれまた大きな木製サッシ。簡潔ながらなかなかインパクトのある店構えだ。

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左手の入口から店内に入ると、フロア右側に対面式のカウンター席が3列。左側通路の中央にちいさなレジ台。突き当たりの大きなオープンキッチンにはカウンター席が5つほど張り付いており、その向こうに釜、最奥にガラス張りの麺打ち場が配されているのが伺える。内装は右側の壁が白い塗装で左側の壁がステンレス張り。スケルトンの天井はダークグレーに塗装され、ガラスシェードのペンダントライトが下がる。店構え同様簡潔な空間を、要所に施された白木の木造作(カウンターなどは白木風の化粧板張り)とキッチン正面の間接照明が引き締めている。良い仕事。BGMはビートルズ。一人客、女性客の姿が目立つ。

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上の写真は前回にいただいたざるうどん。“さぬき”と称するにはややねばりと弾力に欠けるがなかなか美味い。いりこが効いた薄味の上品な出汁はまさに私たちの好み。一緒に注文したげそ天は期待通りの素朴な味だった。
おそらく“かけ”で真価を発揮するうどんかな、と判断し、この日はひやあつと山かけを比較。やはりこちらのうどんはやや温かめが良い。断然美味かったのはひやあつだ。丸天との相性も見事。
雰囲気も、味も、価格設定も実に気軽で、かつ一定のスタイルを感じさせる店。こういうさぬきうどん店が都内にあることをもっと早く知っておきたかった。今後はちょくちょく利用させていただこう。

丸香/東京都千代田区神田小川町3-16-1/電話非公開
11:00-19:30LO(売切仕舞/土-14:00)/日祝休

2/5。夕刻に赤羽『すみた』へ。1999年に中十条に開業し、2009年に現在の場所に移転したさぬきうどん店。JR赤羽駅東口正面をしばらく進んだところにあるアーケード街を抜けたところで左折。人気の少ない通りをしばらく行くと右手にこじんまりとした居酒屋風の店構えが現れる。夜の営業開始後すぐではあったがすでに満席。20分ほど外で待つことに。

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店内には中央の通路を挟んでテーブル席がいくつか。奥にレジがあり、その向こうにキッチン。内装は白い壁紙に暗色の木造作。おそらく居抜きに若干の手を加えただけのものだろうと思われる。ざるうどんとわかめうどん、げそ天とかしわ天とおでんを注文。

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ざるのうどんは実につややかでコシが凄い。本場の名店に比べるとのびやかさには欠けるものの、この手の力強いうどんにお目にかかるのは東京では初めてのことだけに嬉しい。この食感を味わうためだけにでも足を運ぶ価値がある。個人的には麺を味わう品にきざみ海苔は無い方が良いと思う。つけ出汁はやや甘い。一方、かけ(わかめうどん)の印象はかなり弱く残念なものだ。出汁は食べ進むにつれやはり甘ったるく感じる。とは言え、都内のさぬきうどん店のパイオニアとして北東京で10年あまりを生き延びるには、こうしたアレンジが必要不可欠だったのかもしれない。
辛子味噌でいただくおでん、ボリュームたっぷりの天ぷらはなかなかのもの。他のテーブルを見ると宴会メニューやうどんすきなども用意されている様子。地元では使い勝手の良い店として定着しているのだろう。なるほど、これもまたさぬきうどん店のひとつのあり方なのだ。

すみた/東京都北区志茂2-52-8/03-3903-0099
11:00-14:00,18:00-21:30(土日祝-15:00)/月・第3日休

2010年03月30日 05:00 | trackbacks (0) | comments (0)

日々の生活と雑記 : 誰も本気で白熱電球を無くそうとはしない・補01

一般白熱電球の製造中止について(March 17, 2010/東芝ライテック)

と、そんなプレスリリースが出回ったところで以前の記事「誰も本気で白熱電球を無くそうとはしない」に新しい情報を補足しておく。2009年にはランプメーカー各社からいわゆる「LED電球」(ふつうの電球の代替として開発されたLEDを光源とするE26口金のランプ)が概ね出揃った。その辺りに関する情報は下のリンク先に実に分かりやすくまとめられている。

【特別企画】LED電球、どれを買う?(November 26, 2009/家電Watch)

つまるところLED電球は全般的に見てまだまだ暗い。またメーカーやタイプ、取り付ける照明器具によっては光の拡散の仕方が電球とはかなり異なるため、使用に適さないケースも生じている。とは言え、スローペースの進化ではあるものの、LED電球の性能が徐々に「ふつうの電球なみ」に近づいていることは間違い無い。特に調光の可能な製品の選択肢が増えつつあることはまずまず喜ばしい。
記事中、最も注目すべきは「 東芝ライテック E-CORE 一般電球形 8.7W 」の項目ではないかと思う。このLED電球は実質的にふつうの60W電球に遜色無い明るさを持つ唯一の製品として紹介されている。しかし、その消費電力は60W型の電球形蛍光灯とほぼ同じだ。交換のコストを勘定すれば若干有利ではあるが、性能を追求した結果がこんな具合ではLEDを「環境重視型照明の本命」と目することは難しい。はたして次なる技術革新はあるだろうか。

さて、もうひとつ別の話題を。2009年4月に大型居酒屋チェーンがLEDランプを全面的に採用した店舗をオープンしている。通常ハロゲン球が多用される飲食店でのこうした試みは興味深い。

居食屋「和民」渋谷道玄坂店出店について(東京都環境局)

ハロゲン球を一部代替しうるLEDランプが登場するにあたっては、フィリップスライティングやスタンレーなど、自動車用ランプを手掛けるメーカーが重要な役割を果たしている。応用されているのは主に特殊なミラーによる光の拡散の制御技術だ。数ヶ月前に実物を拝見したLEDランプはE11プラグのダイクロイックハロゲン球とほとんど同じ外形で、既存のスポットライトやダウンライトにそのまま取り付けられるものだった。明るさは20Wのハロゲン球と同程度で照射角度はまだ狭く調光不可ではあったが、いまごろはさらに優れた製品が開発されているかもしれない。ことによってはLED電球を上回る環境効果を生む可能性があるだけに、ハロゲン球型LEDランプの進化には期待している。

冒頭のプレスリリースからリンクされている「製造中止・製造継続対象機種について」のページを見ると、実際に製造中止される白熱電球の種類がいかに限定的であるかが良く分かる。以前の記事から2年弱。ランプメーカー各社が「本気」になるのは、どうやらまだ当分先のことだ。

誰も本気で白熱電球を無くそうとはしない(June 29, 2008)

2010年03月18日 09:00 | trackbacks (0) | comments (0)

食べたり飲んだり : 人形町・ワコー

1/25。人形町での打ち合わせ後、『ワコー』で遅い昼食。人形町交差点南西角の三角形の敷地にある喫茶店。オープン年は不明。伺うのはこの日が初めて。

レンガタイルとグリーンのテントの店構えに大きく設けられたサンプルショーケースが一際目立つ。店内には変形テーブルをフロア中央に据え、その周りにカウンター席やテーブル席が整然と配置されている。コンパクトながら落ち着きのある空間だ。コテ跡の大きなオフホワイトの左官と煉瓦積の壁、飴色の木造作による内装はおそらく30年前後を経たものだろう。小倉ホットケーキとハンバーグスパゲッティ、ブレンドを注文。

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ホットケーキは目を疑いたくなるくらいにフラットな表面とシャープなエッジを見せる。その美しさには思わず驚嘆した。スパゲッティのゆで具合、すっきりしたブレンドからも、丁寧な仕事ぶりが十二分に伺える。どれも特別傑出した味ではないが、ほんの少し期待を上回る質を伴って提供されるのが嬉しく、安心感がある。これもまたひとつの理想的な喫茶店。

ワコー/東京都中央区日本橋人形町2-6-4/03-3666-7631
9:00-22:00(土-17:00)/日休

2010年03月17日 22:00 | trackbacks (0) | comments (0)

日々の生活と雑記 : たまごかけご飯つくりました


まぜ過ぎだ。。。

2010年03月17日 06:00 | trackbacks (0) | comments (2)

食べたり飲んだり : 人形町・壽堂

1/24。人形町『BROZER'S』で遅めのランチの後、水天宮前駅へと向かう途中で『壽堂』に初めて立ち寄った。1884年創業の和菓子店。場所は人形町通り沿い東側。甘酒横丁と水天宮前の交差点の間にちいさな店を構える。中央のエントランスを挟んで左右にあるショーウィンドウにはいつも生菓子や干菓子とともに質素ながら季節感のあるディスプレイを見ることができる。その存在はさりげないが、確かに人形町の風情を高めるものとなっている。

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長く下がった暖簾を分けて入るとすぐ正面にカウンターショーケース。その向こうの板の間で数名の店員さんが働いている。棚や間仕切りはいかにも長年使い込まれた暗い飴色の木造作。八畳間程度の店先のほとんどは積み上げられた商品パッケージで埋まっており、飾り気は全く無い。温かい焙じ茶をありがたくいただいて、看板商品の黄金芋を購入。

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黄金芋のサイズは大振りなおはぎ程度。左右を捩った黄色い薄紙から取り出すと、薄い皮にシナモン(ニッキ)をまぶしたややいびつな姿がなるほどさつま芋を思わせる。

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一口かじるとほくほくした質感の黄色い餡が現れる。おお、これはますますさつま芋だ。にもかかわらず原材料にさつま芋は一切含まれていないと言うのが面白い。

素朴ながらインパクトのあるビジュアルに上品な風味。日持ちがする(7日間)上に値段が手頃と来たらちょっとした手みやげにもぴったりだ。もっと早くに知っておくべきだったなあ。今後はちょくちょく利用させていただこう。

壽堂/東京都中央区日本橋人形町2-1-4/03-3666-4804
9:00-21:00(祝9:30-17:30)/不定休

LIVRO ぶらり甘味散歩 第2回「壽堂」の黄金芋

2010年03月15日 05:00 | trackbacks (0) | comments (2)

食べたり飲んだり : 押上・スパイスカフェ

1/17。両国・江戸博でいけばな展、清澄白河・深川番所で古田先生のイベントを覗いてから押上へ移動。『スパイスカフェ』に初めて伺った。木造アパートを改装したカレーレストラン。オープンは2003年とのこと。

浅草通り側に駅を出て、建設中の東京スカイツリーを間近に見上げながら水路沿いを東へ。十間橋の交差点を左折し、通りをしばらく進んで右手の住宅街へ。ほどなく路地の右側の雑然とした物置のような場所の一角に店の置き看板が現れる。その佇まいは気をつけないと季節外れのクリスマスディスプレイか何かと見間違うくらいに控えめだ。さらに簾と障子で出来た細いアプローチを奥へ進み、抜けたところがようやく店先。エントランス右脇のギャラリースペースが無ければほとんど古びた一般住宅にしか見えない。全くもって常識外れなロケーションに感心しつつ、ぐにゃりと曲がった木の棒を取手にしたドアを開けて店内へ。

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過剰な隠れ家感の溢れる外観に比べると、内装はずいぶんと丁寧に仕上げられている。手仕事の跡が残るベージュの左官に暗色の木造作、電球色の光に包まれた店内に思わずほっとした。エントランスの正面には、これで本当に大丈夫なのか、と心配になるくらいにコンパクトなオープンキッチン。その左手のフロアにテーブル席が並ぶ。キッチン手前の中廊下を右に進むと突き当たりにWCがあり、その脇にギャラリースペース。この日は満席だったため、そちらで陶芸展を拝見しつつしばらく待たせていただくことに。幸い十数分でキッチンの見えるテーブル席に落ち着くことができた。ホールを仕切るのは3、4名の女性スタッフ。メニューの説明も応対も十分に行き届いており一層安心。ラッサムカレーとかきカレーのセット、サラダを注文。

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写真は上がラッサムカレーで下がかきカレー。上質な出汁のインパクトを鮮やかなスパイスが引き立てる。実にシンプルでストレート。どちらも美味い。それにしてもかきとトマトがこれほど合うとは。デザートは柚子と大葉のシャーベット金柑のタルト。これまたハイセンスな仕事で大いに満足させていただいた。

ワイルドな構えと品良い中身。この激しいギャップもこちらならではの味わいだ。次の機会には他のカレーメニューをいただきがてら、昼間の雰囲気を拝見してみるのも良いだろう。ぜひ予約して伺うとしよう。

スパイスカフェ/東京都墨田区文花1-6-10/03-3613-4020
11:45-14:00LO,14:00-15:00LO,18:00-21:30LO/月・第3火休

2010年03月05日 03:00 | trackbacks (0) | comments (0)

update info : profile, contactをアップデート

profilecontactのページにTwitterのlove the life公式アカウントへのリンクを追加しました。現在のところはブログと連動しながら独自の活用法を模索中です。よろしければお気軽にフォローしてみて下さい。

勝野とヤギの個人アカウントは放言満載につき鍵付きです。仕事関係の方とメディア関係の方、素性のさっぱり分からない方やbotぽい方にはご遠慮いただいていますが、その他の方のフォローリクエストは大抵受け付けています。もしお気が向いたら探してみていただけると幸いです。

2010年03月05日 02:30 | trackbacks (0) | comments (0)

食べたり飲んだり : 丸の内・ビモン

1/9。日経ホールで春團治・小朝師匠の高座を見た後、和牛ステーキ店『ビモン』で食事。オープンは2004年10月とのこと。伺うのはこの日が初めて。

場所はJR東京駅1Fの飲食店街・キッチンストリート内。中央の通路をちょっと心配になるくらいに奥まで進むと、突き当たりの手前左手に横長の黒いサッシで囲われた店構えが現れる。内装は一転して白い。造作には角Rが多用され、カフェテリアを思わせる明るい空間となっている。エントランスのすぐ左脇にレジ。その奥のフロアにはテーブル席。正面にある長いコの字のカウンター席の向こうは広々したオープンキッチン。中の仕上げも白とステンレスが基調で、耐火ガラスのスクリーン越しにやや強面のシェフ氏が鉄板に向かう様子がよく見える。この日はエントランス右手通路沿いのテーブル席に落ち着いた。とろハンバーグと特選いちぼステーキ、グリーンサラダを注文。

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肉はあらかじめ岩塩で薄く味付けされている。何も付けず、熱いうちにがつがついただくのが一番だ。ステーキも期待に違わぬ素晴らしさだったが、驚いたのはむしろハンバーグ。ごく粗挽きのテクスチャーからぎゅっと肉汁がほとばしる。まさに旨味の塊。ボリュームたっぷりのサラダ、スタッフ方のスマートな応対もありがたい。

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そして会計時にはその安さにまたびっくり。この内容に対して、リーズナブルと言うには少々気の毒なくらいだ。またぜひ伺わねば。今度はカウンター席でシェフ氏のお手前をとくと拝見させていただこう。

ビモン/東京都千代田区丸の内1-9-1 東京駅1Fキッチンストリート
03-3283-1841/11:00-23:00(LO22:00)/元日休

2010年03月03日 14:00 | trackbacks (0) | comments (0)

身体と空間の芸術, 都市とデザインと : 展覧会行脚のメモ 2009年12月-2010年1月

12/11。初台・東京オペラシティアートギャラリーで『ヴェルナー・パントン展』。デジャヴと言うかなんと言うか、実に不思議な感覚にとらわれた。20年近く前から作品集で見るたび大きな刺激をもらっていた「ファンタジーランドスケープ」。本物を体験できるとなると感動で涙ぐむんじゃないかと思っていたが、いざ中に入るとまるで実家に帰ったみたいに懐かしく、すっかりリラックスしてしまった。あまりに好きで、すでに自分の一部になってしまっていたんだろうか。ビデオ映像のパントン師匠が、デザインにおいて先ず考えるのは機能、フォルムよりも重要なのは色、と語っておられたのが特に印象深い。

1/8。三菱一号館で『一丁倫敦と丸の内スタイル』。これは予想外の収穫だった。1968年に解体、2009年に復元された三菱一号館の詳細な建築的解説を中心に、3作家の写真展を絡めながら、丸の内の発展史とそこでのライフスタイルを紹介する内容。ホンマタカシ氏の作品は230万個の煉瓦を製造した中国の工場を取材したもの。神谷俊美氏の作品はこの10年間の丸の内の風景をモノクロで捉える。順路の一番最後に控えた梅佳代氏の作品は三菱一号館の復元を工事現場で支えた人々のスナップ写真。この構成はずるい。泣ける。

1/10。サントリー美術館で『清方ノスタルジア』。最終日手前の会場は着物のご婦人方で盛況。お一人でじっくり鑑賞なさっている姿が多数あった。都市部での着物ブームと日本美術ブーム、双方が定着しつつあるような。
鏑木清方は美人画があまりに有名な明治前期生まれの画家。そうした代表作もさることながら、個人的に最も関心を覚えたのは風俗画と風景画。「朝夕安居」や「明治風俗十二ヶ月」は庶民生活の描写がなんとも瑞々しい。卓越したデッサン力。「暮雲低迷」の幽玄な空気感は「松林図屏風」(等伯)を彷彿させる。三遊亭円朝の肖像、その円朝の高座に落涙する月岡芳年の肖像など、清方が明治期サブカルチャーの直中に居たことを伝える作品も興味深い。「絵をつくるに、私は一たい情に発し、趣味で育てる。絵画の本道ではないかも知れないが、私の本道はその他にない」との気概には時代を超えての共感を覚える。

1/17。両国・江戸東京博物館で『いけばな - 歴史を彩る日本の美 - 』。ややシブめの内容だが、日本のディスプレイデザインの基本を知る上では外せない。仏事の供花から書院の成立、茶花から生花の発展までを網羅。元来男のものだったいけばなが江戸時代前期以降には女郎衆の芸事として広まり、明治以降には一般女性のたしなみとなってゆく過程も興味深いものだった。初代池坊専好による大砂物の再現CGは圧巻。信じ難い贅沢さ。

1/20。青山・スパイラルで『九谷焼コネクション』。最終日に滑り込み。これは本当に見逃さなくて良かった。上出恵悟氏が伝統工芸としての九谷焼を最少限の操作によってパロディ化した陶器とインスタレーションの数々。見附正康氏といい、九谷には突出した才能が生まれる土壌がありそうだ。

1/24。日本橋・三井記念美術館で『柴田是真の漆×絵』。柴田は江戸末期から明治にかけて活動した超絶技巧の漆芸家。軽妙で洒落っ気のある作風、抜群のグラフィックセンスに大いに刺激を受けた。多くの作品は米国キャサリン&トーマス・エドソン夫妻のコレクションから。図録にあるお二人の言葉「是真という人物の中に、私たちが時間をかけてこたえていきたくなる人間性を発見したのです。」との言葉は感動的だ。

同日、銀座・松屋銀座デザインギャラリーで『碗一式』。蒼々たるデザイナー師匠方が飛騨の春慶塗の手法による汁碗、箸、盆のデザインに挑む。小さなスペースながら破格の見応え。個人的に最も欲しいと思ったのは川上元美氏の一式だった。なんと簡潔で瑞々しく張りのあるフォルム。

1/29。六本木・サントリー美術館で『おもてなしの美 宴のしつらい』。サントリーの所蔵品から日本のパーティーグッズを集め、いつもよりゆったりとフロアを使いながらの展示。
個人的ハイライトは「月次風俗図屏風」(1600年代)。六曲一隻を上下二段の画面に分け、京都庶民の12ヶ月の風俗を描いたもの。群衆の生き生きとした様子のみならず、その装束や持ち物、当時の京町家の様子も克明に極めて克明に描かれている。さしづめ「熈代勝覧」の京都版。楽しい。平安セレブの新年会のセッティングを詳細に記録した「類聚雑要抄指図巻」の実物を見ることができたことも商売柄大変有り難かった。江戸末期の料理屋の様子を透視図的に描いた広重の「江戸高名会亭尽」の存在をこれまで知らなかったのは何とも迂闊。勉強しとかないと。
他の工芸品にも「縞蒔絵徳利」、「牡丹沈金八角食籠」、「吉原風俗蒔絵堤重」、「銀象嵌花丸文手燭」などなど、デザイン的に見応えのあるものが多い。「色絵春草文汁注」他で乾山の魅力も再確認。根来の漆器類の力強いフォルム、光悦の「赤楽茶碗 銘 熟柿」も素晴らしかった。

1/30。勝どき・btfで『鏡の髪型 清水久和』。平面的な作品かと思いきや実物は物体としての存在感が凄い。素朴なフォルムのインパクト。バリエーションが一気に増えたことが作品性を一段と強化する。もはや登録商標。路線継続に期待。

同日、銀座.松屋デザインギャラリーで『重と箱 見立てる器』。『碗一式』に続いて8名のデザイナー師匠方による飛騨春慶漆器の展覧会。
今回個人的に最も印象的だったのは岩崎信治氏による菱形の重。春慶の特徴を最大限に引き出す鋭角的フォルム。深沢直人氏の手提げ仕切り重も素晴らしい。簡潔なフォルムから匂い立つ趣味の良さ。川上元美氏の作品は鼓の形態を持つ弁当箱とへぎ目を生かした縁高重。前回のミニマリズムから一転、具体的な景色を感じさせる。恐るべき懐の深さ。数寄者だ。

1/31。上野・東京国立博物館で『国宝 土偶展』。土偶ってこんな感じ?という固定概念がものの見事に崩壊した。時代によってポーズや装束などに一定のフォーマットがあるにはあるが、造形そのものは皆さん自由過ぎ。
特に印象的だったのは「縄文のビーナス」と通称される品。フォルムといい文様といい、極めて簡潔で力強い。「立像土偶」や「ハート型土偶」などはシビれるファッショナブルさ。お洒落でカッコいい。かと思えば、同時代の土偶の仲間には腰の砕けそうな品も。アヒルとカメのハイブリッドのような「動物型土製品」など全く訳が分からない。アホアホかつシュール。「釣手土器」に付いたコウモリの装飾のポルコロッソぶり、「人と頭型土製品」の深遠な表情も忘れ難い。

2010年03月02日 00:00 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ : 落語初心者のメモ 2009年1月

1/9。大手町・日経ホールで『桂春團治 春風亭小朝 二人会』。林家まめ平さんで「転失気」、桂吉坊さんで「千早ふる」 、桂春團治師匠で「祝いのし」 、仲入り、翁家勝丸師匠の大神楽、春風亭小朝で「中村仲蔵」。
上方と東京、双方の美しい言葉の響きを堪能させていただいた。春團治師匠の老いてなお粋(すい)な佇まいに思わず背筋を正し、時折見せる無邪気な笑みに癒される。「祝いのし」は本当にいい根多だ。小朝師匠は毒のある小噺を巧みにはさみながら、流れるような構成で見せる。談志師匠を彷彿させるイリュージョン性。良い席で見ることができて幸せ。小朝師匠周辺の方々は落語マニアからはなぜか避けられることが多いようだが、勿体ないことだ。
経団連、JA、日経が連なる複合ビル3Fにある日経ホールは白木丸太の壁造作が美しい。東山魁夷の緞帳も良い取り合わせ。ただ、この会場ならではの客層なのか、身なりの良さのわりにマナーの悪い中高年が目についた。日本経済の中枢に近いところはおそらくこの辺の方々が占めていらっしゃるのだろう。

1/20。みたか井心亭で『寄席井心亭 百七十六夜』立川志らく師匠の会。立川らく太さんで「ざるや」、立川志ら乃さんで「壺算」、志らく師匠で「たぬき」、仲入り、志らく師匠で「富久」。
荒んだキャラクターが板に付いて高座に凄みを増しつつある志ら乃さん。実に腹黒く、かつ能天気で魅力的な「壺算」だった。志らく師匠の「たぬき」は子狸の脊髄反射的な言動が可笑しく、実に可愛らしい。そして素晴らしい「富久」。酒癖が悪くて欲深く、間抜けでお人好し。俗人の業を全部背負い込んだがゆえに誰にも憎まれない幇間の久さん。単純なようで複雑な人物像と、それをとりまく境遇を、志らく師匠は極めて自然に造形してゆく。どんでん返しのサゲに心から「久さん良かったね」と言いたくなる。

1/27。三鷹市芸術文化センター星のホールで『立川談春独演会』。立川春太さんで「千早ふる」、談春師匠で「百川」、仲入り、談春師匠で「包丁」。
「百川」を談春師匠で見るのは初めて。キュートで怪しい百兵衛さんが独特。居るだけで笑いがこみ上げる。でも実際側に居るとちょっとヤだな。「包丁」を談春師匠で最初に拝見できたのは幸運。悪巧みあり、啖呵あり、与太郎キャラあり。水を得た魚、とはまさにこの高座での師匠のこと。そして脱力を誘いつつも実に切れ味鋭いサゲ。それぞれに業の塊のように思えたアクの強い登場人物たちが、ここに来て見事に愛すべき人々へと転化される。粋だ。

2010年03月01日 23:30 | trackbacks (0) | comments (0)

落語初心者のメモ : 落語初心者のメモ 2009年12月

12/10。鈴本演芸場12月上席楽日。春風亭朝呂久さんで「出来心」、三遊亭天どんさんで「たらちね(改)」、鏡味仙三郎社中の大神楽、春風亭柳朝師匠で「武助馬」、昭和のいるこいるの漫才、柳家三三師匠で「加賀の千代」、春風亭百栄師匠で「激突道案内」、五街道雲助師匠の「強情灸」で仲入り。柳家紫文師匠の三味線漫談、入船亭扇辰師匠で「紋三郎稲荷」、アサダ二世先生のマジック、トリは三遊亭白鳥師匠で「メルヘンもう半分」。
元気でかつ安定感のある前座離れした朝呂久さん。天どんさんの「たらちね(改)」はお千代さんがアメリカ人とのハーフ。文語調とブロークン過ぎる英語が混じって滅茶苦茶に。シンプルかつ巧妙に練られた爆笑根多。まくらの脱力具合も含め独自の領域に。百栄師匠もならではの勢いある新作で嬉しい。雲助師匠はお下劣なギャグ満載の噺を明るく粋に。
扇辰師匠はこの日初めて拝見した。どうして今までチェックしなかったのか、と悔やまれる素晴らしさ。単純で間抜けで丸きり古典的な噺をチャーミングなキャラクター造形とともに情感たっぷりに描いて会場をタイムスリップさせる。なんとも綺麗で、力強い。
白鳥師匠の新作は「もう半分」の登場人物をムーミンのキャラクターに置き換えてしまう力技。細かいくすぐりに爆笑しつつ、その丁寧な作り込みに驚嘆。ついには独特の哀感まで生み出されてしまっている。いやはや、凄いものを見させていただいた。

12/17。水天宮前・日本橋劇場で『日本演芸若手研精会 第三百四十回 師走特別公演』。古今亭志ん坊さんで「元犬」、入船亭遊一さんで「真田小僧」、春風亭一之輔さんで「河豚鍋」、桂平治師匠で「鈴ヶ森」、仲入り、瀧川鯉橋さんで「粗忽長屋」、柳家三之助さんで「芝浜」。
明朗さが好感度大の志ん坊さん。自らの毒舌で勝手に追い込まれてゆく一之輔さんのまくらはいつもスリリングで良い。食事シーンのオーバーアクションに爆笑。初めて拝見した平治師匠はエンターテイメント性抜群。新米泥棒の悪ノリぶりが可笑しいのなんの。どういうわけか仕草が権太楼師匠にそっくりだ。
そして、この年末最初(でおそらく最後)の「芝浜」をまさか三之助さんで拝見するとは。真打昇進直前の貴重な時期に遭遇出来たのが有り難い。練り上げられたオリジナリティのあるディテール。幕切れの格好良さは秀逸。いいものを見せていただいた。中盤までの流れは今後さらに進化するだろう。楽しみ。

12/21。代官山で『+ing Attic寄席』。立川志の春さんで「花色木綿」、立川メンソーレさんで「堀之内」、仲入り、志の春さんで「宿屋仇」。
志の輔師匠の三・四番弟子のお二人。師匠の居ない会は初めてとのことで最初は極度に緊張なさっていたようだがどうして、安定感のある高座で大いに笑わせていただいた。志の春さんはフリートークでもセンスが光る。根多は終盤にテンションがやや落ち気味か。メンソーレさんは元来腹黒さが持ち味と見た。お上手なだけ余計に素の面白さを発揮するまでが難しいのかもしれない。とは言え、恐らくお二人ともブレイクスルーは間近だろう。またどこかで拝見できるのが楽しみだ。

12/22。池袋・東京芸術劇場小ホールで『百栄落語ぐっちょり』。春風亭百栄師匠で「七つのツボを押す男」と「トンビの夫婦」、柳家喬太郎師匠で「柚子」、仲入り、林家きく麿さんで「パンチラ倶楽部」、百栄師匠で「最期の寿限無」。
以前に拝見した時よりもぐんとキレ味を増した「七つのツボを押す男」。その構造が浪曲「石松三十石船道中」になっていることに今ごろ気がついた。「トンビの夫婦」は三升家う勝さんの作で長屋が舞台のDV根多。ほのぼのした展開がなんとも不思議。喬太郎師匠は季節に因んだ親子人情根多。師匠演じる子供は野蛮でアンバランスでハイテンションで可愛らしい。きく麿さんは下らないギャグをひたすら連ねて微妙な雰囲気のままバッサリ、というまさに期待を裏切らぬ高座。
「最期の寿限無」は虚実が危うく入り混じる百栄師匠ならではの根多だった。「天使と悪魔」よりも設定が数段シンプルな分、哀感と滑稽さの対比が凄まじい。最高に切なく、馬鹿馬鹿しいサムアップ。

2010年03月01日 23:00 | trackbacks (0) | comments (0)

研究活動のご連絡 : 元浅草勉強会 10 ご報告

2/21に『元浅草勉強会 10』が開かれました。都内に現存する20世紀の商環境デザイン関連物件を一巡りしてあらためて確認できるのは、境沢作品や倉俣作品は言うに及ばず、70年代、80年代にあれほど登場した名作の数々も、ほぼ都内から消滅しつつあると言う事です。おそらく今後数年内が商環境デザイン黄金期(60年代半ばから90年代末まで)の名作を実際に目にする事のできる最後のチャンスになるでしょう。私たち自身、まだ訪ねた事のない作品がいくつもありますから、そろそろ巡礼の足を速めなくてはなりません。
現在、商環境デザインは都市に開かれた生活装置を担う分野として、その領域を再構築されつつあります。私たちが後戻りや足踏みをせずにデザインの未来へと歩を進めるには、今のうちに過去の名作からそのエッセンスを学び取っておくことが不可欠です。

この勉強会で使用したマップをこちらに公開しておきます。
・インテリアデザイン危機遺産マップ 東京編
ご活用いただけると嬉しいです。

love the lifeの勉強会第一期はこれにて終了。おかげさまで私たちにとっても毎回収穫のある楽しい勉強会でした。ご参加、申し込みをいただいた皆様に心よりお礼を申し上げます。次の企画でまたぜひお目にかかりましょう。詳細が決まりましたらこちらでご連絡致します。

『元浅草勉強会 10』でご提供したお茶とお茶請けは下記の通りです。

・レモングラスティ(佐賀県武雄・800 for eats・2009)
上勝阿波晩茶(徳島県上勝・山田産業・2008)

・桜餅(蔵前・栄久堂
・のぼりあゆ(蔵前・栄久堂

love the life / stady(元浅草勉強会)
元浅草勉強会 10 のお知らせ(February 10, 2010)

2010年03月01日 18:00 | trackbacks (0) | comments (2)
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