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身体と空間の芸術 : 展覧会行脚のメモ 2009年5月

5/2。府中市美術館で『山水に遊ぶ 江戸絵画の風景250年』。江戸時代の人々による多様な「風景」の捉え方を紹介する展覧会。個人的にとりわけ記憶に残ったのが秋田蘭画の作家・小田野直武(おだのなおたけ/1749-1780)の一連の作品。小田野は平賀源内のもとで西洋画を研究した経歴を持つ。深い陰影をたたえた写実的な描法と大胆な余白を用いた構成。独特の空間感覚を伴う無国籍で叙情的な画面は極めて個性的だ。曾我蕭白が持てる技法をこれでもかと詰め込んだ六曲一双の大作『月夜山水図屏風』も期待以上の凄さ。

同日。青山・CLEAR GALLERYで『スズキユウリ The Physical Value of Sound』。アナログレコードの仕組みをバラバラに解体、再構成したガジェットの連作。単なるサウンドインスタレーションであることに留まらず、軽やかにメディアを越境してゆくコンセプトが実に痛快だ。それは塩化ビニルの円盤に極細の溝を与えた彫刻であり、無形の情報そのものでもある。

5/3。パナソニック電工汐留ミュージアムで『恵みの居場所をつくる ウィリアム・メレル・ヴォーリズ』。ヴォーリズのデザインする建物は、機能上・宗教上の要請に基づいて細部を丁寧に集積してゆくことで、いかにも自然に立ち表れる。その佇まいは、一定のシステムで全体を貫こうとする今時の建築的な力技からは見事に切り離されており、自由で、風通しの良さを感じさせる。大丸心斎橋店以外の作品を実際に見たことがないのは問題だ。いつかちゃんと訪ねてみなくては。

5/15。六本木・サントリー美術館で『一瞬のきらめき まぼろしの薩摩切子』。江戸末期の数十年のみ興隆した薩摩切子の全貌を概観。冒頭では薩摩切子のスタイルに直接影響を与えたとされるアイルランドとボヘミアのカットガラスをそれぞれいくつか見ることができた。ポスターなどの主要なビジュアルとして用いられていた『薩摩切子 紅色被皿』は直径18cmあまりの小品ながら、その妖しさは想像を遥かに超えるものだった。もし復刻されたりしたら後先考えずに買ってしまいそうで恐ろしい。篤姫所用と言われる『薩摩切子 雛道具 1式』のミニチュア精度にも驚愕。

5/21。京橋・INAXギャラリーで『チェコのキュビズム建築とデザイン 1911-1925』。ヨーロッパのデザイン・建築においてモダニズムが勢いを増す最中、よりヴァナキュラーなスタイルを目指し、当時オーストリア=ハンガリー帝国の支配下にあったチェコで模索された「キュビズム運動」を紹介する内容。ヨゼフ・ホホル、ヨゼフ・ゴチャール、パヴェル・ヤナークの3人の作品が展示の中心。左官で仕上げられ、入り組んだ幾何学面の構成を特徴とする建物は、総じて簡素であると同時に今なお新鮮で力強い印象を残す。直接の関係は無いものの、その造形感覚がどことなくレーモンドに共通するように思われるところが面白い。

同日。松屋銀座7Fデザインギャラリー1953で『イラストレーター河村要助 good news』。雑誌『Bad News』の表紙でお馴染みの河村氏の原画を小さなスペースにどっさり詰め込んだ展覧会。路上の猥雑な臭いが漂い、音楽が聞こえてくる。都会のプリミティブアート。

同日。ギンザ・グラフィック・ギャラリーで『矢萩喜從郎展 Magnetic Vision/新作100点』。槙文彦氏や谷口吉生氏とのコラボレーションでも有名なクリエーター、矢萩氏のグラフィックアート展。同じコンセプトでデザインされた同サイズの大判ポスターが1FとB1Fのスペースに至って単純に並ぶ。写真画像は網点がひとつひとつ判別できるほどに拡大されており、その中央にある白く縁取られたサークルの中に縮小されたイメージが収まっている。ポスターを見るに連れ、周辺から中心へ、中心から周辺へと視覚はダイナミックに誘導され、幻惑される。極めつけにクールで暴力的だ。

5/27。乃木坂・ギャラリー間で『20 クラインダイサムアーキテクツの建築』。既成の行灯看板を流用した作品展示と、クリスタルガラスにミニチュア建築を封じ込めたオーナメントたち。作品それぞれのコンセプトを伝える目的はほぼ放棄されている。ディスプレイとしては楽しい。

同日。西麻布・ギャラリー夢のカタチで『「倉俣史朗 To be free 」藤塚光政展』。倉俣作品の記録であると同時に、写真作品としての圧倒的な力を痛感させる直球の展示手法。二十数点のなかでも個人的に最も惹き付けられたのが『Carioca Building』。1971年当時の銀座の街並、ガラスとアルミのビルファサード、ミニマルなカフェのインテリア、それらを行き交う人々がモノクロの画面に重層する。商店建築1971年11月号に掲載されている写真だが、プリントのもつ迫力は別物だ。何としても購入せねばと売価を尋ねてはみたものの、先立つものが全く足りず断念。いつか必ず。。。

2009年06月27日 05:00 | trackbacks (0) | comments (0)
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