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オルタナ系日本茶 : 静岡/藤枝・マルミヤ製茶

煎茶のなかでもごく限られた量しか流通していない品種・産地別ストレート煎茶に興味をそそられる機会があり、ごく最近になって情報を集めはじめた。

現在日本で生産されている緑茶葉の多くは「やぶきた」と言う品種の茶木から採られているのだそうだ。「やぶきた」は気候の変動や病虫害に強く、戦後大いに普及した。ただし茶葉としての味は、さほど悪くもないが決して良くはない、と言った程度のものらしい。一般的なルートで入手のできる煎茶葉はほぼ100%が極端な深蒸しなどの製法によって玉露っぽい風味と鮮やかな緑色を付加された「やぶきた」だ。他にも良い品種はいくつもあるし、今後の研究開発の余地も大いにあるわけだが、残念ながら私たち一般消費者に選択権は無いに等しい。なにしろ「やぶきた」以外の茶木は、日本の茶畑にはもうほとんど植わっていないのだから。
そんなわけで、中国茶や紅茶ではごく当たり前に行われている品種や産地ごとのストレート茶の販売が、緑茶では不可能に近い。嗜好品としての緑茶はすっかり壊滅状態にあると言っていいが、ペットボトル緑茶や健康食品としてのパウダー緑茶の需要によって、近年緑茶の生産量そのものは増加傾向にある。なんとも皮肉なものだ。

国内のほんの一部の農家で栽培され、ほんの一部の茶商のみで細々と売られている「やぶきた」以外の茶葉による緑茶は「品種茶」などと呼称される。また、品種の整理が行われる以前から栽培されていた(あるいは自生していた)各地の茶木は「在来種」と呼ばれ、それを原料とする緑茶もほんのわずかながら存在する。

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上の写真は静岡県藤枝市のマルミヤ製茶の煎茶商品の一部。左から『藤枝かおり』の釜炒茶(50g)、『おくむさし』(50g)、『在来』の釜炒茶(50g)。少量の購入で恐縮ではあったが、ウェブとメールで迅速に対応していただき安心した。

『藤枝かおり』は1996年に品種登録された「ふじかおり」(「印度雑種131号」と「やぶきた」の交配種)のストレート茶。釜炒りは古くからある煎茶の製法で、蒸し製が主流の現在ではどの産地でもほとんど行われていない。急須にお湯を注いだ途端、ふわりとやわらかく、かつ濃厚な香りがひろがる。とろけるように一体となる豊かな甘味と爽やかな渋味。パンチ力抜群。
『おくむさし』は「さやまみどり」と「やまとみどり」の交配種「おくむさし」(もとは埼玉県で育成された品種)によるストレート茶。こちらは蒸し製と思われる。香気のインパクトは『藤枝かおり』ほどではないが、爽やかで強い。風味はより複雑で奥深く、かすかに果実を思わせるような清涼さがある。
『在来』は藤枝の在来種によるお茶。釜炒り製。香気は弱いが、風味の強さは『藤枝かおり』に匹敵し、豊かな甘味はそれを上回る。

と、我ながらボキャブラリーが貧困だとは思うのだが、遅ればせながら煎茶に開眼させていただくには、どれも十分過ぎるくらいに素晴らしいお茶だった。品種の違いのみならず、一煎めと二煎めでの明確な風味の違いもまた面白く、煎茶ならではのものだ。

有り得べき品種・産地別ストレート煎茶。こいつはどうやら相当に楽しいぞ。

マルミヤ製茶

2007年11月27日 23:00 | trackbacks (0) | comments (0)
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