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身体と空間の芸術 : パフォーミングアート観覧メモ 2008年後半

8/2。国立能楽堂で『納涼茂山狂言祭2008』。演目は『船渡聟(ふなわたしむこ)』、『蝸牛(かぎゅう)』、『髭櫓(ひげやぐら)』。
船頭(茂山千之丞)と聟(茂山宗彦)の能天気な掛け合いが微笑ましい『船渡聟』。“ちりとてちん”宗彦氏のいかにも意志が弱そうな感じが素敵。ほのぼの。『蝸牛』の印象が弱かったのは、たぶん以前に見た野村萬斎氏が鮮やか過ぎたせい。『髭櫓』はDV亭主(茂山千五郎)と女房軍団の荒唐無稽な対決シーンがあまりに馬鹿馬鹿しくて爆笑。いつもながら、千五郎氏の演じる強面キャラはなんとも魅力的で味わい深い。

9/21。彩の国さいたま芸術劇場大ホールで勅使川原三郎『Here to Here』(1995初演)。三方と天井を白い面が囲うステージ。完璧にフラットな空間。そこには勅使川原氏の動きだけが対置され、影さえもすっかり消去されている。一体どこから照明が当たっているのか。途中、氏が壁際ぎりぎりにまで近づくと、ようやくその影らしいものがうっすらと現れるが、壁から離れても影は消えずに残る。目を疑うようなシュルレアリスティックな光景に思わず息を呑む。
やがて天井がゆっくりと落下し、勅使川原氏がその下敷きとなる場面で、ようやく私たちは白い面が弾力性のあるファブリックで出来ており、その裏側からの照明によって空間全体が行灯の状態となっていることを推測する。先ほどの影は、壁の裏側に居た別のダンサーの影だったのだ。さらに宮田佳氏と佐東利穂子が登場し、ダンスに巨大な影絵の演出を交えながらステージは賑々しく展開。やや唐突な印象の幕切れへと向かう。ミニマルな中に、後の勅使川原作品の雛形がぎっしりと詰まった野心作。見応えがあった。

10/3。世田谷パブリックシアターで山海塾『降りくるもののなかで - とばり』(2008初演)。背景にひろがる星空。ステージ一面に象牙色の細かな砂が敷かれ、中央には砂漠のオアシスを思わせる巨大な楕円形の鏡面。その裏側に仕込まれた無数の白色LEDが、途中鏡面を星空へと変換する。それを周回したり横切ったりしながらさまざまな動作を見せるダンサーたちの様子は、なんとも奇妙でユーモラスだ。やがて夜明けとともに沈黙が訪れる。前回に見た『時の中の時 - とき』の純粋・高潔さとは一変した、とめどなく具象の溢れ出すような演出。こんな山海塾もまた楽しい。

2009年02月20日 13:00 | trackbacks (0) | comments (0)
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