life
life of "love the life"

名言コレクション : 倉俣史朗の言葉

さほど機能に左右されないもの、たとえばコンセントやスウィッチプレートの位置をきめるとき、ぼくはその部屋の中でどこが一番きれいに見える位置かを自分の感性できめる。
そのことをある雑談のとき知人の建築家に話をしたところ、その事務所では“きれい”とか“美しい”というのは軽蔑の言葉であると聞き、多少揶揄的な意味を含んでのことであろうが、しばしとまどいおどろいてしまった。
誤解を受けることを承知でいうならば、あらゆる意味においてぼくが寸法を決める裏付は、その良し悪しは別として全て自分の美感である。それがいかなる形の上の美であろうとも。
大きなものを造る建築家にとってミリ単位で鎬を削り美を捜し求める愚かさよりも、もっと“大きな”次元での社会的提案性(テーゼ)の方がはるかに重要なことかもしれない。
今までも、そしてこの小さな室内にもテーゼなどは微塵もない。自分のたいして恵まれてもいない感覚をミリ単位でこつこつと研ぎ積みかさねてきたにすぎない。
それは思考のない無責任な気楽さでもあり、見るまえに跳べてしまう阿呆の幸せでもある。(倉俣史朗)

「Japan Interior Design」No.202,1976年1月号
パブ『LOS・COS・MOS』記事より
発行:インテリア出版株式会社

2008年08月29日 22:00 | trackbacks (0) | comments (0)

身体と空間の芸術, 都市とデザインと : 展覧会行脚のメモ 2008年7月

7/1。印刷博物館で『デザイナー誕生:1950年代日本のグラフィック』。日本のグラフィックデザインの最初の大きな発展期の作品が一同に会した展覧会。ポスターや包装紙、雑誌や書籍、商品パッケージなどなど、あらゆる印刷物を網羅した展示点数は500あまり。物量も凄ければ中身もまた凄い。『グラフィック'55』展の参加メンバー(伊藤憲治大橋正亀倉雄策河野鷹思早川良雄原弘山城隆一の7氏)をはじめとする先駆者たちの作品は、クオリティにおいてすでに欧米のグラフィックデザインと同列にあり、その斬新さ、力強さはいまだ色褪せることが無い。細谷巖氏による『1958年三菱化成工業のカレンダー』(1957)は鳥肌もののクールさ。三越の包装紙(白地に赤い切り絵風のもの/1950)をデザインしたのが猪熊弦一郎であることは恥ずかしながらこの日初めて知った。Mitsukoshiの文字レイアウトは当時三越宣伝部員であった柳瀬たかし(やなせたかし)氏とのこと。

7/4。成山画廊で『松井冬子について』。思いのほか小さなギャラリーで、一度に入室できるのは6人まで。前の人が出るまでしばらく廊下で待つ。その甲斐あって松井作品の精緻な画面を息のかかりそうなくらい間近に見ることができた。ところが、そこかしこにぐしゃっと無造作に置かれた多量の生花の香りがあまりにきつくて十数分で退散。それもまた展示演出のうちだったのかどうかは良くわからない。
偶然、何日か後にNHKで松井氏の特番の再放送を見た。フェミニズム方面からの薄っぺらな解釈を自信満々に押し付ける社会学者がやけに滑稽だった。ジェンダーが先か。芸術が先か。

7/8。ギャラリー夢のカタチで『「倉俣史朗+小川隆之」展』

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ギャラリー自体のオープニングでもあったため、大勢の来場者が歩道にまで溢れ出していた。ギャラリー入口のドアハンドルは『イッセイ・ミヤケ・メン』(1987)と同じものだろうか。フロアには倉俣の家具作品がいくつか(ピラミッドの家具(1968),硝子の椅子(1976/写真),ミス・ブランチ(1988/写真1234)など)。壁には小川氏の撮影した写真の小さなモノクロプリント数十枚が、3つ4つのグループに分かれてランダムに配置されていた。『エドワーズ本社ビルディング』(1969)の1人用エレベーターに『引出しの家具』(1970)が収まった写真にびっくり。松屋デザインギャラリーで催された『倉俣史朗の造形』(1973)の展覧会風景の中には渡辺力氏による序文を読み取ることができた。しかし、この日個人的に最もインパクトが大きかったのは三保谷友彦氏(三保谷硝子店代表)の粋な夏着物姿。カッコ良過ぎ。

7/10。東京国立博物館で『対決 巨匠たちの日本美術』。日本美術の蒼々たる巨匠の作を二人一組で計12のコーナーに区切って展示する内容。それぞれの個性が対比され、実に分かりやすい。楽しく、大いに勉強になった。特に印象に残ったのは長谷川等伯の『萩芒図屏風』(はぎすすきずびょうぶ/16-17世紀)。琳派に先行してここまでグラフィカルで洗練された表現が完成されていたとは。また、曾我蕭白による一連の大作(群仙図屏風(1764頃),寒山拾得図屏風(1759-62頃),唐獅子図(1764頃))のエキセントリックさには度肝を抜かれた。俵屋宗達による『蔦の細道図屏風』(烏丸光広賛/17世紀)のミニマルな表現も忘れ難い。

7/20。21_21 DESIGN SIGHTで『「祈りの痕跡。」展』。文字と文字以前のプリミティブな表現行為によって遺された人間の思考の痕に着目した展覧会。ディレクションはアートディレクターで地球文字探検家の浅葉克己氏。展示作品は神前弘氏の封筒の連作、大嶺實清氏の作陶の連作、浅葉氏による世界の文字の紹介やご自身の10年にわたる制作日誌など。それぞれコーナーごとに十分な余白を設けてボリュームたっぷりに展示されており、この場所でこれまでに見た企画展の中では抜群のまとまりと見応えを感じさせる内容だった。会場デザインは内田繁氏、照明デザインは藤本晴美氏が手掛けている。会期中にもう一度見に行きたい。

7/24。西村画廊で『町田久美 Snow Day』。全て売り切れの作品価格表を見て「バブルの一種だな」と思った。マンガやアニメのひとコマを思わせる構図に伝統的な童子のキャラクターをミックスし、現代的日本画のテクニックで描く手法はネオポップ以降のトレンドに正しく収まっているが、それでも(あるいは、それゆえに、か)2004年の『日本画二人展』で町田氏の作品を初めて目にしたときほどの妖しい輝きは感じられなかった。手跡に技量の不足を残した画面は、縮小コピーされることでようやく力を得る。500円の展覧会カタログは買い得だ。

7/25。スパイラルマーケットで『Taichi Glass Art』伊藤太一氏によるヴェネチアングラスの手法で制作された吹きガラスの器の展示。造形は微妙にいびつでサイズもまちまちだが、色ガラスの描く極細のラインや編目(その間に小さな気泡がひとつずつ配置されていたりする)は手作りであることがほとんど信じ難いほどに緻密。「これってCGですか?」と訊きたくなるような超絶技巧に思わず見附正康氏の作陶を連想した。

2008年08月27日 07:00 | trackbacks (0) | comments (0)

都市とデザインと : 表参道・浅葉克己デザイン室

7/25。OVEでレクチャーの打ち合わせ後、少し時間が空いたので周辺の裏通りを久方ぶりに散策。フロラシオンの正面から青山通りへの抜け道の中ほどにある『浅葉克己デザイン室』の前を通り掛った。言わずと知れたグラフィックデザイナー・浅葉克己氏のオフィス。建築設計はアルド・ロッシ+モリス・アジミ。1991年完成。

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ブルーのスペイン瓦屋根に煉瓦タイルの袖壁。開口部にスライド式の板戸がずらりと並び、正面を覆う。窓枠のライトブルー、金物部分のグリーンが曇り空の下にも鮮やかに映える。3階建てのちいさなビルにはアルド・ロッシ好みのディテールが散りばめられ、オフィスにしてはなんとも楽しげで賑やかだ。全体の可愛らしい佇まいに対して、金色の鉄板で囲われた重厚なエントランスはまるで取って付けたような具合でやけに印象に残る。敷地左右の塀の表には竹垣を模したグリーンのパイプが並ぶ。

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築後17年を経て、木部や塗装の傷みは少々目立つものの、そのくたびれ具合がかえって建物の魅力を増している。一方、近隣にはここ1年ほどのうちにますます空き地が目立つようになっており、本格的な再開発の気配が漂う。このままひっそりと生きながらえてくれれば良いが。

2008年08月08日 12:00 | trackbacks (0) | comments (0)

研究活動のご連絡 : 9/5にレクチャーやります

9/5(金)に一般公開のレクチャーをやらせていただきます。love the lifeの集めた研究資料を大画面でご覧いただきながら「インテリアデザイン愛」満載の辛口漫談をお楽しみ下さい。特製おにぎりも美味しいですよ。

チラシ(PDF)


レクチャー 商環境デザイン史概論 ver.1.3
インテリアデザインは進化してるんですか?
話す人:ヤギタカシ+勝野明美 (love the life)

2008.9.5(金)19:00-22:00 途中休憩あり
参加費:3500円 特製おにぎり+ソフトドリンク付
会場・申し込み・お問い合わせ:Life Creation Space OVE(オーヴ)
港区南青山3-4-8 / www.ove-web.com / 外苑前駅1a出口徒歩約10分
予約制 定員:40名様 先着順・定員になり次第締め切り
メール:info@ove-web.com / 電話:03-5785-0403 担当:古田さんまで

日本のインテリアデザインは1950年代以降の経済成長と建設ラッシュを背景に、「環境芸術」の一分野として世界にも類を見ない発展を遂げました。中でもレストランやカフェ、衣料品店などの商環境は、剣持勇、境沢孝、倉俣史朗らに代表される多くのデザイナーによる先鋭的な表現の場としての役割を果たしています。
黎明期から半世紀以上を経て、インテリアデザインは一見隆盛ですが、私たちの暮らしに豊かさや驚きを提供してくれているかと言うと意外にそうでもありません。今やインテリアデザインは独自の進化を止め、流行の家具や内装アイテムの単なる羅列になってしまったようです。
このレクチャーではデザイン史上に「伝説」として記憶される商環境の数々をたっぷりと紹介しながら、その変遷を再評価することを通して、私たちの生活の場を捉え直す新しい視点を提供したいと考えています。デザインに詳しい方も、ぜんぜん詳しくない方も、「こんな店があったのか!」と、目からウロコをポロポロ落としつつ、どうぞごゆっくりとお過ごし下さい。
はたしてインテリアデザインは、もう一度進化を始めることが可能でしょうか。

皆様お誘い合わせの上どうぞお気軽にお越し下さい。

2008年08月05日 14:00 | trackbacks (0) | comments (2)

日々の生活と雑記 : iPhoneと桂三枝と安藤忠男

なんだか微笑ましい光景ですね。

http://sanshi.jugem.jp/?eid=2173

しかし三枝師匠と言えどもさすがに普通の携帯電話の方が無難かと。。。

2008年08月03日 01:00 | trackbacks (0) | comments (2)
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